業務改善助成金についての支給定義と入金までの流れを調べてみた

1. 業務改善助成金とは?

業務改善助成金は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図るための制度です。
生産性向上のための設備投資やサービスの利用などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成します。
参照:http://www.mhlw.go.jp/gyomukaizen/#how

1.事業場内最低賃金とは?

労働基準法などの法令には、難しい言葉が多く出てきますね。
一見、理解しなくても大丈夫でしょ!と思ってしまいがちなのですが、用語の定義を誤解してしまうと、検討違いの業務をしてしまったり、意図せず、やるべき業務を放置してしまい、受給対象外になってしまう可能性もある為、しっかりと理解しておきましょう。

まずは、“事業場内”という言葉の定義からです。
事業場の解釈としては、昭和47年9月18日発基第91号通達の第2の3「事業場の範囲」で示されていますが、だいぶ分かりにくい事も多いので、噛み砕いて解釈していきましょう。
昭和47年9月18日発基第91号通達の第2の3「事業場の範囲」

事業場とは、原則として、同じ場所にあれば、一つの事業場とみなします。
ただし、例外として、労働状態が違う場合は、別々の事業場とみなします。
例えば、工場で生産にあたる労働者と、工場内の食堂で食事を作る労働者は、業態が全く異なる為、別々の事業場とみなすことになります。
また、本社と営業所が離れた場所にあった場合も、営業所に常駐しているのは1人だけで、業務は営業のみ・管理的な業務は一切行っていない場合は、一つの事業場とする事も可能です。
もし会社が大きくなってきて、同じ建物の中にあっても、○○事業部と○○事業部といったように、業態が違い、かつ労働安全衛生法がより適切に運用できる場合は、2つの事業場としてみなすことが可能になります。

根拠として、厚生労働省が示している通達を記載します。(通達URL)
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事業場の解釈としては、昭和47年9月18日発基第91号通達の第2の3「事業場の範囲」で示されています。その中で、労働安全衛生法は、事業場を単位として、その業種・規模等に応じて適用することとしており、事業場の適用範囲は、労働基準法における考え方と同一です。つまり、一つの事業場であるか否かは主として場所的観念(同一の場所か離れた場所かということ)によって決定すべきであり、同一の場所にあるものは原則として一つの事業場とし、場所的に分散しているものは原則として別個の事業場とされています。例外としては、場所的に分散しているものであっても規模が著しく小さく、組織的な関連や事務能力等を勘案して一つの事業場という程度の独立性が無いものは、直近上位の機構と一括して一つの事業場として取り扱うとされています。
また、同一の場所にあっても、著しく労働の態様を異にする部門がある場合には、その部門を主たる部門と切り離して別個の事業場としてとらえることにより労働安全衛生法がより適切に運用できる場合には、その部門は別個の事業場としてとらえることとしています。この例としては、工場の診療所などがあげられます。なお、事業場の業種の区分については、「その業態によって個別に決するもの」とされており、事業場ごとに業種を判断することになります。例えば、製鉄所は「製造業」とされますが、その経営や人事の管理をもっぱらおこなっている本社は「その他の事業」ということになります。
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2. 最低賃金とは?そして、何故、最低賃金をあげることが必要なの?

次に、最低賃金について見ていきましょう。

「最低賃金」とは、最低賃金法に基づき、国が賃金の最低額を定めたものです。
最低賃金には、地域別最低賃金と特定最低賃金(特定の産業について設定されている最低賃金)の2種類があります。
その両方が同時に適用される場合には、使用者は高い方の最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。

最低賃金は、右肩あがりで上昇を続けており、平成28年10月1日から順次、すべての都道府県で改定地域別最低賃金額が発効されました。
平成27年度は798円だった全国加重平均は、改定後は823円まで上がり、25円の上昇となっています。
参考:地域別最低賃金の全国加重平均額と引上げ率の推移

※加重平均:平均値の算出方法の一つ。平均する各項の条件の違いを考慮に入れ、対応する重みをつけてから平均すること。
例えば,8,000円3人,10,000円5人,12,000円4人の労働者の平均賃金を算出するには,それぞれの賃金に労働者の数を重みとしてつけ,(8000×3+10000×5+12000×4)/(3+5+4)の算式によって算出。

何故、最低賃金をあげることが必要なのでしょうか。

今の日本には少子高齢化という構造的な問題があります。
少子高齢化の進行が、労働供給の減少のみならず、将来の経済規模の縮小や生活水準の低下を招き、経済の持続可能性を危うくするという認識が、将来に対する不安・悲観へとつながっている部分も否めません。
また、国際的には「人口が減少する日本に未来はないのではないか」との重要な指摘もあるようです。

「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)にも示されている通り、誰もが活躍できる一億総活躍社会を創っていくため、「戦後最大の名目GDP600 兆円」、「希望出生率 1.8」、「介護離職ゼロ」という強い大きな目標を掲げ、この3つの的に向かって新しい三本の矢を放つ、とあります。
三本の矢とは、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」です。

◆目標
「戦後最大の名目GDP600 兆円」
「希望出生率 1.8」
「介護離職ゼロ」

◆三本の矢
(抜粋:首相官邸HP ニッポン一億総活躍プラン
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①「希望を生み出す強い経済」:イノベーションと働き方改革による生産性の向上と労働力の確保により、サプライサイドを強化するとともに、経済の好循環を回し続け、潜在的な需要を掘り起こして内需を拡大していく。地方に眠る可能性を更に開花させる。既存の規制・制度の改革を断行する。あらゆる政策を総動員していくことにより、「戦後最大の名目 GDP600 兆円」の実現を目指す。

②「夢をつむぐ子育て支援」:一人でも多くの若者たちの、結婚や出産の希望を叶える。これが「希望出生率 1.8」の目標であり、あくまで一人ひとりの希望であって、結婚したくない人、産みたくない人にまで、国が推奨しようというわけではない。安心して子供を産み育てることができる社会を創る。日本の未来、それは子供たちである。子供たちの誰もが、頑張れば大きな夢をつむいでいくことができる社会を創り上げる。

③「安心につながる社会保障」:介護離職者は年間10万人を超えている。離職を機に、高齢者と現役世代が共倒れする現実がある。東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される平成 32年(2020 年)には、いわゆる団塊の世代が 70 歳を超える。日本の大黒柱、団塊ジュニア世代が大量離職すれば、経済社会は成り立たない。介護をしながら仕事を続けることができる、「介護離職ゼロ」という明確な目標を掲げ、現役世代の「安心」を確保する社会保障制度へと改革を進めていく。
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そして、これらの三本の矢に加え、“これら三本の矢を貫く横断的課題である働き方改革と生産性向上という重要課題に取り組んでいくことが必要である。”としています。

これらの政策を定量的に示す為、5つの項目を定めています。
【評価の対象とした政策】
①子育て支援の充実
②介護支援の充実
③高齢者雇用の促進
④非正規雇用労働者の待遇改善
⑤最低賃金の引上げ

その⑤にあたる最低賃金の引上げとして、最低賃金の年率3%上昇による雇用者全体の賃金底上げが示されています。
それに対し、国が支援策の一つとしてあげているのが、この「業務改善助成金」です。

2. 支給定義は?

1.支給対象者

事業場内最低賃金が 1,000 円未満の中小企業・小規模事業者が対象となります。
業種に応じて、①「資本金の額又は出資の総額」、②「常時使用する企業全体の労働者数」のいずれかの要件を満たすことが必要です。

2.支給要件

①事業実施計画を策定すること
(1)賃金引上計画 事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる計画。(就業規則等に規定)
(2)業務改善計画 生産性向上のための設備投資などの計画。

②支払い
(1)引上げ後の賃金額を支払うこと
※引上げ後の賃金額が、事業場内最低賃金になることが条件。
(2)生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を行い、その費用を支払うこと
※ただし、下記の経費は除く。
ア 単なる経費削減のための経費
イ 職場環境を改善するための経費
ウ 通常の事業活動に伴う経費

③解雇、賃金引下げ等の不交付事由がないこと など

3.助成額

5つのコースから選ぶことが出来ます。
申請コースごとに定める引上げ額以上、事業場内最低賃金を引き上げた場合、生産性向上のための設備投資等にかかった費用に助成率を乗じて算出した額が助成されます(千円未満端数切り捨て)。
参考URL:http://www.mhlw.go.jp/gyomukaizen/#example

3. 申請から入金までの流れ

STEP1:助成金交付申請書を労働局に提出!
事業改善計画と賃金引上げ計画を記載した交付申請書(様式第1号)を都道府県労働局に提出。
内容が適正と認められれば助成金の交付決定通知が届きます。

STEP2:設備・機器の導入などで生産性を向上!
生産向上、労働能率の増進が図られる設備投資などを行い、業務の効率化を目指します。

STEP3:事業場内の最低賃金を引上げ!
事業場内の最低賃金を一定額以上引き上げます。

STEP4:事業実績報告書を提出!
業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した事業実績報告書(様式第9号)を提出。
内容が適正と認められれば助成金額の確定通知が届きます。

STEP5:入金!!!
確定通知を受けたら、支払請求書(様式第13号)を提出します。

※各様式は、こちらURLの「申請様式等 各種様式」からダウンロードが出来ます。
※申請先は、各都道府県労働局雇用環境・均等部室です。

4. 注意事項

交付申請書や交付決定通知書(STEP1に該当するもの)の提出前や通知前に実施したものに関しては、対象外になる為、注意してください!

注1:交付申請書を都道府県労働局に提出する前に設備投資等や事業場内最低賃金の引上げを実施した場合は、対象となりません。
注2:事業場内最低賃金の引上げは、交付申請書の提出後であれば、いつ実施しても構いません。
注3:設備投資等は、交付決定通知後に行う必要があります。

5. 導入事例

1. 機材の導入により業務の負担を軽減し、創出された時間や人員を、他の業務に再配分する。

【事業の種類】介護事業
【内容】
リフト付特殊車両送迎車を導入 ⇒ 半分の人数で送迎出来るように ⇒ 従業員教育や研修に力を入れ、サービス向上と離職率低下を図る ⇒ より付加価値の高い業務に人と時間をかけられる人員体制へと見直し ⇒ 生産性向上による最低賃金の引上げ&従業員の経験とスキルに応じて、他の従業員の賃金も引上げ
【助成金活用のポイント】
リフト付特殊車両の導入によって業務の負担を軽減するとともに、より付加価値の高い別の業務に人員を再配置する。

2. 業務をシステム化することで、手間のかかる手作業や単純なミスを減らす。

【事業の種類】ホテル・飲食業
【内容】
インターネットでの予約受付からフロント業務までを一貫して行えるシステムを導入 ⇒ フロント業務が2割減った ⇒ 従業員の制服を新しくすることで、従業員の意識向上と顧客からの好感度アップを図る ⇒ フロント作業が減るとともに予約・キャンセル業務の正確性が高まり、サービスの質が向上 ⇒ 生産性向上による最低賃金の引上げ&従業員の定着率が向上し、全体の賃金も引上げ
【助成金活用のポイント】
業務をシステム化することで、手間のかかる手作業や単純なミスを減らす。

3. データの収集・管理をより早く正確に行うシステムを導入し、開発、管理、営業などに活用する。

【事業の種類】食料品小売業
【内容】
販売実績から売れ筋商品の動向を分析するために、助成金を活用してPOSレジシステムを導入 ⇒ 早く正確な受注で売上げが5%アップ ⇒ POSレジデータやパートタイム労働者からのアイデアを活用し、今後の商品開発に活かす ⇒ 蓄積したデータや従業員からのアイデアなど、様々な情報を活用して商品の開発を検討する ⇒ 生産性向上による最低賃金の引上げ今後はデータに基づく提案型の商品開発を行うことで、売上げ増大を図る
【助成金活用のポイント】
POSレジシステム導入により、データの把握や管理をより早く正確に行い、商品開発という攻めの活動にシフトする。

※撮影用にデザインしたタブレットレジ画面を使用しています。本物ではありません。

4. 事業場で認証や資格等を取得して、事業基盤を強化する。

【事業の種類】事務機器卸小売業
【内容】
ISO27001の認証を取得 ⇒ 新規の案件を獲得した ⇒ 定期的に社外報を発行したり、地域の活動に積極的に参加したりして、地域における存在意義を高める ⇒ ISO27001認証を取得したことで新規案件を獲得し、既存顧客からの評価も上昇 ⇒ 生産性向上による最低賃金の引上げ&今後は企業価値を高めることでさらに案件を獲得し、全体の賃金引上げを目指す
【助成金活用のポイント】
認証取得という長期的・継続的な視点で、企業価値を高める取組を行う。

5. 機器導入により外注していた業務を内製化し、時間や費用の削減を図る。

【事業の種類】歯科診療所
【内容】
自分たちで義歯が作成できる義歯作製機器を導入 ⇒ 作製期間が1週間から1日に短縮 ⇒ 患者の状態や要望に対してきめ細やかに対応して顧客満足度を高める ⇒ 時間や費用の削減のみならず、患者への細やかな対応が可能になり満足度が上昇 ⇒ 生産性向上による最低賃金の引上げ&今後は作業時間の短縮と顧客満足度の上昇により、利益拡大を図る
【助成金活用のポイント】
外注していたものを内製化することで時間や費用を削減し、利益の拡大を図る。

6. 事業範囲の拡大をするためのツールとなるような機材を導入する。

【事業の種類】理美容業
【内容】
移動式の理美容車を導入 ⇒ 出張営業の準備と片付けが効率化 ⇒ 女性の多い職場のため、柔軟な働き方ができるようパートタイム労働者を積極的に受入れ ⇒ 出張営業にかかる準備や後片付けが効率的に行えるようになり、新たなターゲットを獲得 ⇒ 生産性向上による最低賃金の引上げ&今後は従業員のレベルアップを図り、安定的な収益確保を目指す
【助成金活用のポイント】
事業拡大をするためのツールとして、出張営業を可能にする移動式理美容車を導入する。

6. まとめ

業務改善助成金についての支給定義と入金までの流れを調べてきました。
生産性向上のための設備投資やサービスの利用などを行い、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものだと分かりました。
申請の前に設備投資をしてはいけない等の注意事項もありますが、上手く活用できれば最大で200万円の受給が受けられる助成金です。
この助成金についてもう少し詳しく知りたい、具体的に申請を目指してみたい等のリクエストがございましたら、お気軽にご相談ください。(コンシェルジュ窓口

一人ひとりの生産性向上が、企業の生産性向上に繋がり、その分を従業員に還元する事で、日本全体の成長に繋がってきます。
その足がけとして「業務改善助成金」を上手く活用し、企業にとってもハードル高くなく、業務改善に取り組んでみてくださいね!