【31年度概算要求】働き方改革へ厚生労働省が3800億円の枠を確保? 30年度の用途内訳も分析してみた。

31年度はどのような助成金が出るのか、気になりますよね。
来年度の予算は、8月末までに各省庁が財務省へ来年度の予算案として概算要求を提出し、それをもとに1月の国会で審議がなされ閣議決定がされます。
今回は、2018年8月29日に厚生労働省が提出した概算要求から、どのような内容の提出があったのか、昨年度と異なる点は何か、来年度はどのような助成金が出るのかについて、調べてみたいと思います。
各々の項目ごとに、代表的な助成金を併せてご紹介しますので、活用可能な助成金がないか是非ご確認下さい!

1. はじめに

そもそも厚生労働省の役割とは何か。
与えられた組織の役割があり、目標を掲げ、それを達成するために予算は投下されますね。
はじめに、厚生労働省のミッションをしらべてみたいと思います。

1.厚生労働省について

「国民生活の保障・向上」と「経済の発展」を目指すことを前提として、社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上・増進、働く環境の整備、職業の安定・人材の育成を総合的・一体的に推進する役割を担っています。
また、少子高齢化、男女共同参画、経済構造の変化などに対応し、社会保障政策と労働政策を一体的に推進する役割もあります。
参考:厚生労働省について

厚生労働省の発足は平成13年1月だそうで、元々「厚生省」と「労働省」で分かれて運営していたものが、平成11年の中央省庁等改革関連法の成立、厚生労働省設置法を経て、整理統合された経緯となります。
参考:厚生労働省のはじまり

まとめると、(人が生まれ)「健康に」「働き」「安心して生活を送る」に関わることをミッションにして運営されていることが分かりますね。

2. 31年度概算要求について

それでは、8月29日に厚生労働省の提出した概算要求は、どのような内容なのでしょうか。

一般会計要求総額は、31兆8956億円で、過去最大になります。
その中でも、社会保障費の額が29兆8241億円となり、年金・医療・介護関連が大半を占めます。

その他には、働き方改革関連法が来年4月から施行されることを控え、働き方改革に取り組む中小・小規模事業者への支援に約3800億円や、子育て支援に約3400億円盛り込むことが発表されました。

1.働き方改革への施策内容

①中小・小規模事業者支援
・働き方改革推進支援センターの機能強化
・働き方改革に取り組む事業者への助成金創設

②安全に働ける職場環境整備
・労働時間の短縮に取り組む事業者への助成
・インターバル制度の業種別導入マニュアルを作成

2.子育て支援

①保育の受け皿拡大
・待機児童解消に向け6.5万人分の受け皿を整備

②母子保健
・妊娠期から子育て期にわたる支援体制の充実
・不妊治療への助成拡充

3. 30年度の概算要求について

31年度の概算要求で、働き方改革への予算に対し、18年度予算比で600億円増の計3800億円を計上したとあります。
そこで、30年度の概算要求では、どのような予算要求がされていたのかを見てみたいと思います。

1. 同⼀労働同⼀賃⾦など非正規雇⽤の処遇改善

①同一労働同一賃⾦の取組の周知・相談支援 16億円

・「同⼀労働同⼀賃⾦導⼊マニュアル」の作成・周知啓発
・「働き⽅改⾰推進⽀援センター(仮称)」における個別相談⽀援

②非正規雇用労働者のキャリアアップの推進 773億円

・キャリアアップ助成⾦の新たな加算の仕組み創設 等

【活用可能な助成金例】
・キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換または直接雇用する事業者に助成(年度あたり最大1440万円)

・キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
すべてまたは(雇用形態別等)一部の有期契約労働者等(契約社員・パート・派遣社員など)の基本給の賃金規定等を改定し、2%以上増額させる事業者に助成(年度あたり最大3600万円)

2. ⻑時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備

①時間外労働の上限規制など⻑時間労働の是正 72億円

・労働時間の縮減等に積極的な企業等への助成⾦の拡充 等

②医療従事者等の業種ごとの勤務環境の改善 48億円

・医療従事者・トラック運転者・建設業従事者など、業種ごとの取組の⽀援

③柔軟な働き方がしやすい環境整備 7.5億円

・雇⽤型・⾃営型テレワークの就業環境の整備
・副業・兼業の普及促進

④産業医・産業保健機能の強化 45億円

・産業医・保健師などによる訪問指導の拡充
・産業保健関係者や事業者への研修の充実

【活用可能な助成金例】
・時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)
時間外労働の上限設定に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成(年度あたり最大200万円)

・障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)
障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫等の措置を講じる事業者に助成(一人当たり最大120万円)

3. 生産性向上、賃⾦引上げのための支援

①介護、生活衛生等の分野における生産性向上の推進 106億円

・介護や⽣活衛⽣の分野における⽣産性向上のためのガイドライン作成
・保育・介護事業所におけるICT化の推進や介護ロボットの活⽤促進 等

②最低賃⾦や賃⾦引上げに向けた生産性向上等のための支援 269億円

・企業への専⾨家の派遣による業務改善提案の実施
・⽣産性向上に資する設備投資への助成など雇⽤管理改善に対する⽀援 等

【活用可能な助成金例】
・業務改善助成金
中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引上げを図る事業者に助成(最大100万円)

・人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)
生産性向上に資する設備等を導入することにより、雇用管理改善(賃金アップ等)と生産性向上を図る事業者に助成(最大450万円)

4. ⼥性・若者の活躍の推進

①多様な⼥性活躍の推進 292億円

・⼦育て等により離職した正社員⼥性等の復職の⽀援
・男性の育児休業の取得促進 等

②若者に対する一貫した新たな能⼒開発 5.8億円

・基礎的能⼒の形成から公的資格取得までの⼀貫した⽀援

【活用可能な助成金例】
・両立支援等助成金(出生時両立支援コース)
男性の育児休業等取得推進に取り組む事業者に助成(最大720万円)

・両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
事業所内保育施設を設置・増設・運営する事業者に助成(最大120万円)

5. 人材投資の強化、人材確保対策の推進

①スキル習得機会の拡大 759億円

・社会⼈のリカレント教育講座の多様化
・ITリテラシートレーニングの推進 等

②人材確保対策の総合的な推進 268億円

・雇⽤吸収率の⾼い分野でのマッチング⽀援の強化
・雇⽤管理改善に対する助成 等

③保育・介護人材の確保 40億円

・保育補助者の雇上げ⽀援
・介護未経験者への⼊⾨的研修 等

【活用可能な助成金例】
・人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
評価・処遇制度や研修制度、健康づくり制度、メンター制度、短時間制社員制度を整備する事業者に助成(最大72万円)

6. 治療と仕事の両⽴、障害者・高齢者等の就労支援

①治療と仕事の両⽴支援 21億円

・両⽴⽀援コーディネーターの育成・配置の推進
・⻑期療養者に対する就職相談⽀援の強化 等

②障害者の就労促進 147億円

・障害者雇⽤ゼロ企業に対するチーム⽀援の実施
・ハローワークへの専⾨職員の配置などによる精神障害や発達障害など多様な障害特性に対応した⽀援

③高齢者の就労促進 262億円

・ハローワークの「⽣涯現役⽀援窓⼝」の増設
・継続雇⽤等を⾏う企業への助成の拡充 等

【活用可能な助成金例】
・人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)
介護労働者のために介護福祉機器の導入を行う事業者に助成(最大150万円)

・障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)
職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援を実施する事業者に助成(一人当たり最大月12万円)

・特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)
65歳以上の高年齢者を雇い入れる事業者に助成(一人当たり最大年70万円)

・特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
高年齢者・障害者・母子家庭の母などの就職困難者を雇い入れる事業者に助成(一人当たり最大年240万円)

参考:厚生労働省 平成30年度厚生労働省予算概算要求の主要事項

4. 31年度の助成金予想

31年度の概算要求の内訳はまだ公表されていませんが、働き方改革への予算に対し、18年度予算比で600億円増の計3800億円を計上という点から、30年度の内容をもとに31年度の助成金について予想してみたいと思います。

1.雇用・賃金・長時間労働の点から、キャリアアップ助成金について

1.キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者のキャリアアップなどを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。

30年度では、大きく3つのコースに分かれています。

・正社員化コース
・賃金規定等共通化コース
・諸手当制度共通化コース
※人材育成コースは、30年度より人材開発支援助成金へ整理統合となりました。

中でも正社員化コースは、非正規雇用を正規雇用等へ転換した際に、転換前の6か月と転換後の6か月の賃金総額を比較して5%以上UPしていれば、一人当たり57万円(有期→正規の場合)助成が受けられる制度です。※条件等により金額変動あり

2.市場背景

このキャリアアップ助成金は、かたちを変えながらも、長きにわたり続いている制度です。
雇用率の改善に一役買ったと言っても過言ではないかもしれません。

バブル崩壊やリーマンショックの影響により低迷していた有効求人倍率も、現在では売り手市場と呼ばれるほどに改善され、18新卒(2018年3月卒業)に関しては、98.0%の就職率であったことが文科省と厚労省の調査でわかったそうです。

雇用率も有効求人倍率も改善してるのであれば、来年度、キャリアアップ助成金はなくなってしまうのでは?と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、かたちを変えて来年も継続となるのではないかと個人的には考えています。
その理由として、キャリアアップ助成金は、大企業も使うことの出来る(使いやすい)助成金だからです。

先ほど就職率、有効求人倍率の話もあげましたが、実はまだ非正規雇用が増えている実態があります。

総務省の労働力調査によれば、2017年の正規雇用者は前年度と比較し56万人増加、非正規雇用者は13万人の増加となっています。
比率だと、被雇用者に占める非正規雇用の割合は37.3%で前年度比0.2ポイント低下、年齢階級別に見ても、15~64歳の非正規雇用者は前年度より3万人減っていますが、65歳以上で15万人ほど非正規雇用者が増加しています。
背景として、定年退職後も契約社員として働き続ける高齢者が増えていることや、売り手市場の中で雇用の確保を強化すべく、各企業が高齢者の雇用の促進に取り組んでいることがあげられます。

3.予想

それらの市場背景等から、昨年度から生産性要件が加わり、今年度から5%賃金UP要件が加わったように、来年度も追加の要件が加わり、予算が投下されるのではないかと思います。

インターバル制度(業務が終了してから次に開始するまでに一定の間隔「インターバル」を設ける仕組みのこと)は、今回の概算要求でもあがっていたため、追加要件として含まれる可能性も考えられますね。
今年度は、「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」として運営されています。
参考:時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)

「高齢者」に関しても、市場背景を踏まえると追加要件に含まれることも大いに考えられるかもしれません。
こちらも現在、「65歳超雇用推進助成金」として運営されています。
参考:65歳超雇用推進助成金

その他、「地方」への支援も増えていくのではないかと思います。
内閣府でも、東京圏から移住に最大300万円補助する旨の新制度を検討しているとの話がありました。
一極集中になってしまっている状況を見ると、雇用に関わる助成金にて地方創生に繋げるという意味では、キャリアアップ助成金は効果的なのではないかと思います。

4.ガイドライン

現在厚労省で出しているキャリアアップに関するガイドラインに、下記キャリアアップ助成金の趣旨の記載があったのでご紹介します。

(抜粋)
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非正規雇用については、正規雇用と比べ、雇用が不安定、賃金が低い、能力開発の機会が少ないといった課題がある。
少子高齢化の進行による生産年齢人口の減少が見込まれる中、日本経済の好循環の動きを更に進めていくためには、雇用情勢が着実に改善しているこのタイミングをとらえ、非正規雇用労働者の正社員転換・待遇改善を強力に押し進めていくことが重要である。
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参照:有期契約労働者等のキャリアアップに関するガイドライン

今のタイミングに正社員化を推し進めていきたい意向とのことです。

正社員化は雇用の安定の上でとても大切なことだと思います。
雇用が安定すれば、家庭を持つことや増やすこと、個人消費の増加などから、好循環に繋がる要因の一つだからですね。
そして正社員化と合わせて待遇改善をしていくことで、賃金面や労働時間なども良化していきます。

但し、少ない時間で高い生産性を保っていくことは、簡単なことではないかもしれません。
そのために、業務改善やスキルアップなども同時に推し進めていく必要がありますね。

また、経営者側もより一層の努力が求められます。
与えられたルールの中で、限られた資源を最大限活用していくこと、より一層のパフォーマンスを出せる仕組みを考えることなどは一朝一夕で出来るものではないかもしれません。
ただ、そうした雇用改善や環境改善に積極的に取り組もうとしている企業へ、国も助成金として支援をしているので、上手く活用していけると良いですね。

2.教育の観点から人材開発支援助成金に関して

人材開発支援助成金とは、研修を通して人材育成に励む事業主へ、研修に関わる費用の一部を助成するという制度です。
今年度よりキャリアアップ助成金や建設労働者確保育成助成金、障害者職業能力開発助成金などにわかれていた研修系の助成金が、この人材開発支援助成金へ整理統合されました。

国連でもSDGsとして、教育、人権やジェンダー、環境保全、まちづくり、などなど、17つの目標に対して動いています。
また、人づくり革命として日本投資戦略にもAI教育の強化があげられています。

そうした様々な課題に対して、教育はやはり切っても切れない存在なのではないでしょうか。
そのため、どういった研修を行うかのプログラムが大切であり、どういった成果が出るのか、そして研修内容の多様性が重要になってくるかと思います。

但し、研修の助成金に関しては、不正が多いことも事実。
審査も年々厳しくなっており、申請資料もとても多くなっています。

助成金の趣旨をしっかりと理解し、不正をしないことは大前提ですが、IT導入補助金のように、研修会社がベンダー事業者登録と研修プログラム登録を行い、認定を受けた研修会社が研修し、申請は全て電子申請で行う、不正に繋げないためのリスクヘッジとしては、これまで通り日報の提出は行うが電子申請で行い、この日報も全て国が推進しようとしているジョブカードのアプリと連動させる、それによってICTの加速に繋がる、というのを個人的には希望します。

参考:内閣府 未来投資戦略2018

3.健康寿命の観点から受動喫煙防⽌対策助成金

東京オリンピックがある2020年春には、東京都で受動喫煙防止条例が全面的に施行される予定とのことです。
今年度も受動喫煙防止対策助成金はあり、来年も引き続き実施がされるのではないかと思います。

参考:受動喫煙防止対策助成金

5. まとめ

2018年8月29日に厚生労働省が提出した概算要求から、どのような内容の提出があったのか、昨年度と異なる点は何か、来年度はどのような助成金が出るのかについて、厚労省の役割から、補助金予想まで踏まえながら見てきました。

厚労省の提出した一般会計要求総額は、31兆8956億円で過去最大。
社会保障費の額が29兆8241億円で、年金・医療・介護関連が大半を占めていますが、働き方改革関連法が来年4月から施行されることを控え、働き方改革に18年度予算比で600億円増の計3800億円を計上しています。

働き方改革への支援内容として、⻑時間労働の是正や柔軟な働き方がしやすい環境整備、生産性向上、賃⾦引上げのための支援、⼥性・若者の活躍の推進等に対して、予算が投下されています。

今年度は更に600億円増しの概算要求案が提出されているため、より一層働き方改革に力を入れていくことが予想されます。

キャリアアップ助成金や時間外労働等改善助成金、65歳超雇用推進助成金や人材開発支援助成金など、雇用に関わる助成金は数多くあります。
少子高齢化や労働力の減少などの問題は、国にとっても企業にとっても、避けては通れない問題です。

この概算要求を元に、1月の国会で閣議決定が行われます。
31年度の制度の施行は31年4月からですが、動向はチェックしておくことをおススメします。

少しでもお役に立てる情報となれるよう、補助金ポータルでも色んな情報をお届けします。
是非、情報収集の一つとして、この補助金ポータルも定期的にチェックしてみてくださいね。

その他不明点などあればお気軽にご連絡ください。
https://hojyokin-portal.jp/inquiry/