「2020年に訪日外国人旅行者数4000万人」という目標を掲げ、現在国や自治体ではさまざまなインバウンド対策支援が行われています。無料公衆無線LANの整備やキャッシュレス・免税対応などが対象となる補助金の存在をご存知の方も多いと思いますが、観光産業の経営力強化のために、「生産性向上、新サービス商品開発」や「外国人向け体験コンテンツ開発」といった事業を支援する補助金があるのをご存知でしょうか。東京都の補助金となりますが今年度より新たな募集区分が誕生した注目の補助金で、支援決定者はアドバイザーによる事業計画のブラッシュアップや実行支援が受けられます。今回はそんな「観光経営力強化事業」のご紹介です!
この記事の目次
1、「観光経営力強化事業」について
東京都および(公財)東京観光財団が平成29年度より実施する、観光関連事業を営む中小企業者に対して以下のいずれかの支援を行う事業です。
●生産性向上・新サービス商品開発等支援
●体験型観光支援
各支援の詳細を確認しましょう。
2、生産性向上・新サービス商品開発等支援とは
宿泊業、飲食業、小売業などの旅行者向けの事業を都内で営む中小企業者がアドバイザーの支援を受けてブラッシュアップした事業計画書に基づき実施する、観光経営力強化を目的とした取り組み※を支援します。「ICT化・設備導入による生産性向上」、「新サービス・商品開発」や「集客・販路開拓による消費拡大」などが支援対象事業となります。
※観光経営力強化を目的とした取り組みとは、「付加価値額の向上」または「生産性の向上」を目的とした取り組みのことを指します。
・付加価値額の向上=「営業利益」+「人件費」+「滅価償却費」
・生産性=「付加価値額」/「従業員数」
それぞれ以上の計算式で求めるものとし、取り組みの例として以下のような内容が上がっています。
【事業例】
・宿泊施設にサービスロボットを導入することで生産性の向上を図る取り組み
・AIを導入・活用して外国人旅行者に向けた独自の飲食メニューを開発、最適なPR広告を行い飲食店の集客拡大を図る取り組み
・在庫管理システムの開発 等
支援内容
支援内容は①経費の補助と②アドバイザーによる支援となり、補助対象期間は最長2年間です。
①経費の補助:補助率は対象経費の1/2以内、補助限度額は1500万円(下限額 100万円)
②アドバイザーによる事業計画のブラッシュアップ、実行支援
補助限度額について、「新サービス・商品開発」、「集客・販路開拓」のみを申請する場合は合わせて500万円が限度額となります。また、アドバイザー支援は必須となっています。
補助対経費
補助対象経費は事業を実施するための必要最小限の経費で、以下の通りです。
●機械設備導入費
●ICT化経費
●専門家指導費
●新サービス・商品開発費
●集客・販路開拓費
機械設備導入費は、必要な機械装置(製造機器やロボット、検査機器等)や備品の新たな購入、リース・レンタルにかかる経費を指します。またICT化経費には、システム構築費、ソフトウェア導入費、クラウド利用費などが含まれます。そのほか、展示会等出展経費・イベント開催費は、集客・販路開拓費の対象となります。
3、体験型観光支援とは
次に、今年度より開始された体験型観光支援についてみていきましょう。こちらは都内中小企業の観光関連事業者が行う、外国人旅行者が都内滞在時にさまざまな体験を楽しめる「体験型コンテンツ」の開発等の取り組みを支援します。「体験型コンテンツ」とは、旅行者が五感を通して東京や日本の魅力を体験できるプログラムのことで、着付け体験、町並み散策体験、人力車体験などが例として上げられます。
「外国人旅行者向けの新たな体験型コンテンツの開発(既存コンテンツの拡充・外国人向けカスタマイズ等含む)」に関係する取り組みが支援対象事業となります。
【事業例】
・新しい人力車体験ツアーのために外国人向けモニターツアーを実施、外国人旅行者のニーズ調査とツアールートの創出を行う
・宿泊施設利用者へ向け、新たに着付けや茶道の体験ができるように必要な施設改装や備品の購入を行う 等
なお、他社が提供する体験型コンテンツの販売だけを行う場合など体験コンテンツの提供を自ら実施しない事業は、支援対象外となります。
支援内容
支援内容は①経費の補助と②アドバイザーによる支援(任意)となり、補助対象期間は最長1年間です。
①経費の補助:補助率は対象経費の1/2以内、補助限度額は500万円(下限額 50万円)
②アドバイザーによる事業計画のブラッシュアップ、実行支援
アドバイザーによる支援は「体験型観光支援」の場合、任意となっています。
補助対経費
補助対象経費は事業を実施するための必要最小限の経費で、以下の通りです。
●体験型コンテンツ開発費
●集客・販路開拓費
必要な機械装置(農業体験で使用する農器具、プロジェクター、クレジットカード等の決済機器等)や備品の新たな購入、リース・レンタルなどの経費は「体験型コンテンツ開発費」に含まれます。そのほか、施設新築・改装工事費、コンテンツ実証費、補助員人件費なども「体験型コンテンツ開発費」の対象です。
4、対象事業者の主な要件
支援対象事業や支援の内容が理解できたところで、この補助金の対象事業者である、「都内中小企業の観光関連事業者」について詳細を確認しておきましょう。
都内の中小企業者(会社および個人事業者)で、旅行者向けの事業を営む(予定を含む)観光関連事者で、次のア~エのいずれかに該当する者
”ア 東京都内において、旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条第1項の許可を受けて、同法第2条第2項又は第3項の営業を行っている宿泊事業者
イ 東京都内において、食品衛生法(昭和22年法律第233号)で定める飲食店営業又は喫茶店営業の許可を受けて、営業を行っている飲食事業者
ウ 東京都内において販売場を設け、営業を行っている小売事業者
エ その他東京都内において、旅行者向けにサービス開発・提供や商品開発・製造・販売などを行っている者”
引用:募集要項 P.3
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/95b079cbddcec7c7f7001c6f1627f086.pdf
そのほか、令和元年6月1日現在で、東京都内に登記簿上の本店または支店があり(個人の場合は都内で開業届出をして事業を営んでいる者)、2年以上事業を継続している者、といった要件もあります。なお、同一テーマ・内容で、国や都道府県、区市町村等から補助を受けている者は対象外となります。
5、申請の流れ
では、申請をする際の流れについてみていきましょう。
①メールで申請希望日の予約をする 【2019年9月19日~11月29日】
②指定された日時と場所で申請書類提出(持参)【2019年12月3日~12月6日】
③一次審査(書類)二次審査(面接)【2019年12月中旬~2020年1月下旬】
④支援対象者の決定 【2020年1月下旬~2月下旬】
⑤「アドバイザー」・「補助金」支援開始 【2020年3月~】
出典:東京都 報道発表
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/09/19/23.html
申請希望日の予約メールには、企業名、代表者名、住所や連絡先のほか、申請書提出期間中の都合が悪い日などを書いて、東京都産業労働局観光部受入環境課に宛てに送ります。その後、提出日時と会場がメール等で指定されます。
なお、補助事業終了後は
⑥実績報告書と経費関係書類等をすみやかに提出
⑦完了検査の後、約1か月後に補助金交付
という流れになっています。
6、申請書類一覧
最後に、申請に必要な書類を確認しましょう。
①観光経営力強化事業 申請書
②申請に必要な書類の確認用紙(チェック欄確認済のもの)
③申請前確認書類
④事業計画書
⑤補足説明資料
⑥確定申告書の写し
⑦登記簿謄本(履歴事項全部証明書)(原本)
⑧印鑑証明書(原本)
⑨社歴(経歴)書
⑩直近の事業税等の納税証明書(原本)
⑪見積書の写し
⑫事業計画実行のために、法令上必要な事業認可、向上設置認可等がある場合は、当該事業認可賞の写し
①~④の書類は東京都産業労働局のウェブサイトの観光経営力強化事業のページからダウンロード※できます。「生産性向上・新サービス商品開発等支援」と「体験型観光支援」では書類が異なりますので、該当の区分の書類をダウンロードしてください。※書類ダウンロードは下記URL(観光経営力強化事業)から
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/kakusyu/management/
⑤の補足説明資料は、補足説明が必要な場合に提出するもので、仕様書、図面、企画書などを指します。
⑥確定申告の写しには、都内税務署の受付印または電子申告の受信通知が必要です。
⑦登記簿謄本、⑧印鑑証明書はどちらも発行後3か月以内のものとします。また⑩の直近の事業税等の納税証明書は、領収書ではなく都税事務所などで発行される納税証明書を必要とします。
なお①~④について、各書類の記入例(別紙の記入例も含む)がまとめて前述のサイトからダウンロードできるようになっています。間違いやすいところ等、赤字になっており、記入の参考にしていただけます。
【事業計画書の記入例】
【別紙の記入例】
出典:記入例(事業計画)P.7、記入例(別紙)P.18
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/d788202487020089e932f9b5bf018c65_1.pdf
7、まとめ
いかがでしたか。今回は観光関連事業者の経営力向上に使える補助金「観光経営力強化事業」をご紹介しました。ICT化・設備導入による生産性向上や新商品などの開発をお考えでしたら補助率1/2以内、上限1,500万円の「生産性向上・新サービス商品開発等支援」を活用して、アドバイザーによる支援も受けながら会社の成長につなげてみてはいかがでしょうか。もしくは、補助率1/2以内、上限500万円の「体験型観光支援」を活用して外国人旅行者が都内滞在時に楽しめる新しい体験型コンテンツを開発し、ブームをつくり出すことにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
申請日の予約受付は既に開始しています。補助金活用や補助金申請についてご不明な点などございましたら、補助金ポータルまでお気軽にお問い合わせください。
参考:観光経営力強化事業
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/kakusyu/management/
募集要領(生産性向上・新サービス商品開発等支援)
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/95b079cbddcec7c7f7001c6f1627f086.pdf
募集要領(体験型観光支援)
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/96cadcab35ebf91277c1bddbaae67cf6.pdf