今回は令和3年度の経済産業省関係の概算要求について紹介します。
経産省の令和3年度概算要求額は前年度の12719億円から12.7%増加の1兆4335億円で、このほか要求額を示していない事項要求について追加の予算が計上される見込みです。
一般会計、エネルギー対策特別会計ともに前年度の予算を上回っており、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小企業への支援や、地域経済の活性化等に向けた取り組みについて大幅な予算増加が見られます。
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この記事の目次
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令和3年経済産業省関係 概算要求のポイント
Ⅰ.「新たな⽇常」の先取りによる成⻑戦略
〜ウィズコロナ/ポストコロナ時代に求められる構造転換に向け、⻑期視点に⽴った⽇本企業の変⾰を後押し・加速〜
1.デジタル~仕組みと事業のアップデート~
- デジタル基盤・ルールの整備 【77億(43億)】
令和2年度に実装された「GビズID」等を活用し、行政手続きに必要な情報入力のワンスオンリー化など行政のデジタル化を加速する - デジタルを活用した産業の転換 【389億(204億)+IPA・産総研交付⾦699億(675億)の内数】
デジタル化を支える量子、AI、ロボット、自動走行等の研究開発の推進、AI人材と中小企業のマッチング・協働の促進等に取り組み、デジタル技術を活用して新たなイノベーションを生み出す企業の経営革新「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を加速化
2.グリーン~コロナを機に脱炭素化を深化~
- 脱炭素化に向けたエネルギー転換 【4,902億(4,257億)】
風力発電の導入拡大や国産木質バイオマスの低コスト化支援等によって国内供給電力の再エネ主力化を推進するとともに、最先端の高効率石炭火力(IGFC)の実働に向けた設備導入などを実施、需要側(モビリティ、工場等)における電化等のエネルギー転換・省エネ化支援等にも取り組む。そのほかCO2を吸収して創られるコンクリート、CO2から化学品を製造する人口光合成など、新たなカーボンリサイクル・CCUS(CO2分離・回収・有効利用・貯留)技術の研究開発に向けた支援等を実施。 - 循環経済への転換 【29億(17億)】
高度なプラスチックリサイクル技術などの開発を支援し、資源の有効活用を推進
3.健康・医療~健康な暮らしの確保~
- 国民の命を守る物資の確保 【235億(173億)】
高度医療機器や先進的な介護福祉用具を国内で開発できる体制の構築や、開発・事業化に取り組む中小企業への支援等を通し、医療機器産業の強靭化を推進、そのほか若手研究者の支援、新型コロナに対応した医薬品等の製造技術基盤の確立などにも取り組む - 予防・健康づくりの実現 【81億(51億)】
健康情報等に基づく医学的根拠・裏付けを活用した評価指標の確立と、優れた製品・サービスの創出を促進、そのほか企業における健康管理の見える化や、関連する投資の促進に取り組む
Ⅱ.分野横断的課題への対応
4.中小企業・地域
- 中小企業の新陳代謝 【517億(376億)】
中小企業が取り組む経営資源の引継ぎ(事業承継、M&A等)や、新たなサービスモデルの開発、生産性の向上等に対し支援を実施、また新型コロナウイルスの影響を受けた中小企業が早期に経営を安定化させ再起を図れるよう、よろず支援拠点や商工会等を通じた経営相談等も実施する。 - 地域経済の強化と一極集中是正 【132億(50億)】
デジタルを活⽤した地域企業・産業の競争⼒強化と、若者を中⼼とした⼈材の地⽅移動⽀援等による新たな⼈流の創出に取り組むとともに、観光・農業など成長が期待される地域資源を活用した地域経済の持続的発展の促進、大阪・関西万博開催に向けた準備の本格化等を進める
5.レジリエンス~安心して生活できる環境の構築~
- サプライチェーン強靭化・サプライネットの構築 【599億(440億)】
製造業における5G技術の活用推進、半導体などの重要産業分野に対する重点支援、そのほか経営者の意識喚起・人材育成等を通じたサプライチェーン全体としてのセキュリティの強化等に取り組みます。 - 経済・安全保障を一体としてとらえた政策の推進
国内外の重要技術の動向調査や中小企業・大学等の技術管理体制の構築、資源・エネルギー供給源の安定確保のためリスクマネー供給や鉱物資源探査などの推進、そのほかメタンハイドレート等の海洋資源やレアメタル・レアアース等の海外鉱床調査等を実施また、頻発する自然災害に備え、SS(ガソリンスタンド等)における地下タンクの大型化、避難所等の社会的重要インフラへの燃料タンク導入等の災害対策等の支援も行う
6.人材・イノベーション
- 変革を実現する人材の育成 【49億(13億)】
⼩中⾼・⾼専におけるGIGAスクール構想の下、1⼈1台端末と連動したEdTech
活用による学びの個別最適化、STEAM教育の推進、アート・デザイン思考等を⽤いて創造性を磨くリカレント教育を推進 - イノベーション・エコシステムの創出 【489億(308億) +産総研交付⾦638億(616億)の内数】
AI、素材(マテリアル)、センサー利活⽤(センシング)といった社会課題解決や新産業創出につながる分野への研究開発の推進、ITツールの改善によるサービス業等の中⼩企業の労働⽣産性向上、そのほか新型コロナウイルスへの対応も含め、分野横断的な課題等における機動的・戦略的な国際標準化の推進等に取り組む
Ⅲ.国内政策と⼀体となった対外経済政策
- 国際協調の維持 【24億(23億)】
国際機関を通じた協⼒強化等により、ポストコロナにおける新たな通商ルール形成を推進(データ移転、緊急時対応等) - 有志国との連携強化 【73億(70億)+JETRO交付⾦270億(254億)の内数】
事業化可能性調査や⼈材育成⽀援等の実施による、我が国の質の⾼いインフラの海外展開を促進、 海外進出先で産業を担う⼈材の育成や、海外学⽣等のインターンシップ受⼊れ等を通じた官⺠連携による技術協⼒の推進 など - 海外展開支援強化 【70億(49億)+JETRO交付⾦270億(254億)の内数】
新たなデジタルビジネスを牽引する現地企業と⽇本企業の連携・協業を促進し、新興国企業との連携による新事業創出(ADX)を推進、 急拡⼤する世界の電⼦商取引(EC)市場への参⼊⽀援やオンライン商談⽀援等による、海外市
場獲得の後押し、 中堅・中⼩企業に対する海外展開計画の策定から市場開拓までの⼀貫⽀援等を実施
Ⅳ.最重要課題︓廃炉・汚染⽔対策/福島の復興を着実に進める
- 廃炉・汚染水対策 【195億(新規)】
2021年に、福島第⼀原⼦⼒発電所の燃料デブリ取り出しに着⼿し、その後の取り出し規模拡⼤に向け、燃料デブリへの到達⼿段やロボットアーム等難易度の⾼い技術開発を実施 - 福島の復興 【1,412億(1,009億)】
なりわいの再建、魅⼒発信による⾵評被害の払拭、福島イノベーション・コースト構想を強⼒に推進、2020年3⽉に開所した世界最⼤級の再エネ由来⽔素製造施設「福島⽔素エネルギー研究フィールド(FH2R)」での実証の実施(⽔電解装置の耐久性の検証や制御システムの最適化等)や、製造した⽔素の先進導⼊を行う
まとめ
今回は経済産業省から発表された令和3年度の概算要求の内容について紹介しました。
上記で紹介した以外にコロナ不況への対応とて、サプライチェーン強靱化対策、需要喚起対策、5G等の基盤技術開発、新しい⽇常に向けた事業再構築・事業再編等が事項要求として提出されています。
ワクチンの開発が進み、いよいよ2月中旬には医療従事者を対象にワクチンの先行接種が行われることが決定しましたが、コロナ過の影響による失業者は8万人以上、倒産件数は既に1000件を超えており、疲弊した国内経済の回復には長い時間が必要です。
行政のデジタル化が進みこれまで敷居の高かった補助金や助成金等も活用しやすい体制が整備されつつありますので、事業者の方は各種支援策の活用を是非ご検討ください。
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