コロナ禍が落ち着きつつある昨今では、世界経済も活発化のきざしを見せ始めました。しかし、原油の需要が増えたことなどによって原油価格は高騰しています。農林水産省によると、国内の石油製品価格は13年ぶりの高値水準に達しました。
また、ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、世界的なエネルギー不足が深刻化しています。
原油価格の高騰は、あらゆる業種に影響を及ぼします。国や自治体では、業績が悪化した企業に対する助成金が設置されています。
東京都では、原油価格高騰等に伴う緊急販路開拓等支援事業の募集が始まっています。今回は原油価格高騰等に伴う緊急販路開拓等支援事業の内容や申し込みの手続きについてまとめました。
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この記事の目次
原油価格高騰等は、中小企業にとって大きな打撃に
財務省貿易統計をもとに東京都がまとめたデータでは、2022年9月に日本に輸入された原油の輸入価格は、前年同月に比べ、平均で1キロリットルあたり91%上昇しました。電気やガス、主要食品などの値上げも続き、国内の経済に大きな打撃を与えています。
出典:東京くらしWEB
世界的に不安定な社会状況が続く中、原油価格の高騰の影響は今後も長引くことが予想されています。それにともない、特に懸念されているのが中小企業の経営状況悪化です。日本国内では、全企業のうち99.7%が中小企業です。また、全従業員数の68.8%が中小企業に勤めています。
中小企業を支援することは日本経済のみならず、日本国民の生活そのものを支えることにもつながるのです。
原油価格高騰等に伴う緊急販路開拓等支援事業とは
原油価格高騰等に伴う緊急販路開拓等支援事業では、こうした深刻な状況にある中小企業を支援する緊急対策として、販路開拓に要する経費の一部が助成されます。まずはその概要や助成金額の詳細を見ていきましょう。
概要
原油価格高騰等の影響により経営不振に陥った中小企業を対象に、上限200万円の助成を行う事業です。都内中小企業者の着実な経営安定化に寄与することを目的としています。対象となるのは展示会参加費や自社webサイトの製作費などです。
事業内容
本事業では、原材料等の高騰に対応するために新たな販路開拓を図るために行う取り組みが助成の対象です。具体的には、「展示会参加費」、「EC サイト出店初期登録料」、「自社 web サイト制作費」、「販売促進費」および「委託費」の経費の一部が助成されます。
なお、販売促進費または委託費を申請するためには展示会参加費・EC サイト出店初期登録料・自社web サイト制作費のいずれかの経費の申請が必須です。単独での申請はできません。
要件
助成の対象となるのは、以下の①~④に該当する中小企業です。
①次のいずれかに該当するもの
■法人の場合、本店または支店が都内で事業を行っており、都税等を遅滞なく納めていること
■個人事業主の場合、主たる事業所等が都内に実在し、都税等を遅滞なく納めていること
②原油価格高騰等による影響を受け、対象月の売上高が、基準月の売上高と比較して30%以上減少していること
③2期以上の決算を経ており、税務署に確定申告済みで受付印のある直近期の確定申告書一式の写しが提出すること
④次のすべてに該当するもの
■助成対象として申請した内容に関して、他の補助金等を受けないこと
■公社の「展示会出展助成事業」に申請中でないこと
■以下の公社事業の利用者は、事業を完了し確定通知書を受領しているまたは事業中止の承認を受けていること
「販路拡大助成事業」「緊急販路開拓助成事業」「展示会出展助成事業」
「販路開拓チャレンジ助成事業」「販路開拓サポート助成事業」
■本事業の申請は、1事業者につき1回であること
■事業税等を滞納していないこと
■東京都および公社に対する賃料・使用料等の債務の支払いが滞っていないこと
■過去に、不正等の事故を起こしていないこと
■暴力団関係者、風俗営業者等でないこと
■助成対象となる取り組みの継続性について不確実な状況が存在しないこと
■必要な許認可を取得し、関係法令を遵守していること
■過去に公社から助成金の交付を受けている者は、「企業化状況報告書」「実施結果状況報告書」等を所定の期日までに提出していること
■申請に必要な書類をすべて提出できること
事業スケジュール
事業のスケジュールは以下のとおりです。
■事前エントリー
令和4年10月11日14時~令和4年12月2日17時
■申請前準備 (GビズID取得)
事前エントリー後、申請までに
■申請受付
令和4年11月4日10時~令和4年12月20日17時
■交付決定
令和5年2月1日より順次
■助成対象となる取り組みの実施
令和5年2月1日~令和6年2月29日(最長1年1か月)
■実績報告書の提出
助成対象となる取り組み実施後(最終提出期限令和6年3月14日)
■完了検査
実績報告書提出後
■助成金額の確定
完了検査から約2か月後
■助成金の請求
助成金額確定後
■助成金の受取
請求書到着から約1か月後
助成対象期間
助成対象期間は、以下のとおりです。
【助成対象期間】
令和5年2月1日~令和6年2月29日(最長1年1か月)
助成金額
助成金額の限度額や助成率は、以下の通りです。
【助成限度額】
200万円
【助成率】
4/5以内(千円未満切捨て)
助成対象経費
助成対象経費は、原則、次の条件を満たしたものです。
■必要最小限の経費
■助成対象期間内に発注、契約・実施・支払いが完了する経費
■使途、単価、仕様、数量等が報告書類により確認可能であり、他の事業と明確に区分できる経費
■生業かつ主要業務とする業者へ直接委託・契約するもの
■自社内で直接実施することが困難なものについて、外部に委託する場合の経費
■販売促進費の助成対象とする制作物や広告は、自社または自社で取り扱う製品等であることが確認できること
そのうち、経費として認められるものと各限度額は、以下のとおりです。
【展示会参加費】 | |
■小間スペース利用料 | ・リアル展示会のみまたはリアル展示会+オンライン出展 限度額なし |
■オンライン出展基本料 | ・オンライン出展のみ 限度額20万円 |
■小間装飾費 | ・小間に設置する什器・備品のリース代等の小間装飾委託費 限度額35万円 |
■輸送費 | ・展示物の輸送を外部委託する場合の輸送委託費 限度額なし |
【ECサイト出店初期登録料】 | |
■ECサイト出店初期登録料 | ・申請者名義で自ら運営者と契約し、出店する場合の初期登録料 限度額20万円 |
【自社webサイト制作費】 | |
■自社webサイト制作費 | ・自社webサイトを制作する場合の制作委託費 限度額20万円 |
【販売促進費】 | |
■チラシ・カタログ制作費 | ・自社または自社で取り扱う商品、サービスのチラシ等に係る紙媒体の印刷委託費 限度額50万円 |
■PR動画制作費 | ・自社PR動画又は自社で取り扱う商品、サービスのPR動画の制作委託費 限度額20万円 |
■PR広告掲載費 | ・自社又は自社で取り扱う商品、サービスをPRするための広告掲載費 限度額20万円 |
【委託費】 | |
■マーケティング調査費、デザイン、コンセプト設計等に要する経費 | ・マーケティング調査費 ・デザイン、コンセプト設計等に要する経費 限度額50万円 |
また、以下の経費は助成対象外です。
■手数料、交通費、レンタカー代等の間接経費
■自社や自社で取り扱う商品・サービスのPRに関わらない経費
■購入物、特注品、自社で制作する場合の経費
■他の用途にも使用できるものに関する経費
■消費税などの租税公課
■現金換算可能なポイント分
■取引を証明する証憑に記載の金額と実質的に支払われた金額が一致しないもの
■公的資金の使途として社会通念上、不適切と認められる経費
申請の流れ
申請には、事前エントリーが必要です。申請の流れは以下の通りです。
①事前エントリー
②申請受付
③書類の提出
④申請完了
募集期間
令和4年11月4日(金)10時~12月20日(火)17時
申請方法
申請は電子申請システムjGrantsにて行います。jGrantsの利用には「Gビズ ID」でアカウント(gBizIDプライム)を取得する必要があります。申請を検討している方は、余裕をもって手続きを進めましょう。
必要書類
申請に必要な書類は以下の①~⑦です。
①対象月の売上高が確認できる資料
②基準月の売上高が確認できる資料
③登記簿謄本等
④納税証明書
⑤日本語の出展要項 ※該当者のみ
⑥ECサイトの出店登録要項 ※該当者のみ
➆助成金資金計画
よくある質問
公益財団法人東京都中小企業振興公社のHPには、よくある質問とその答えがまとめられています。ここではそのなかから、いくつかを抜粋して紹介します。
Q. 事前エントリーとはどのようなものですか。
A. 本事業は先着順で受け付けられ、予算の範囲内で締め切られます。事前エントリーは申請可否をご案内する順番を決めるためのものです。
Q. 売上額の減少が原油高に起因することを説明する必要はありますか。
A. 必要ありません。
Q. 本社が東京です。都内事業所での売上は好調ですが、その他の地域の売上が減少している場合、対象となりますか。
A. 売上増減は事業所単位でなく、企業単位で判断してください。
まとめ
原油価格の高騰は、すぐに改善するものではありません。社会情勢が回復しても、その影響はしばらく続くと言われます。この状況を乗り切るには、長期的な計画が必要です。
現状を維持するだけではなく、新たな販路を切り開くことで将来的な業績回復と成長を目指す試みは、日本を支える中小企業にこそ必要となります。
原油価格高騰等に伴う緊急販路開拓等支援事業を活用し、予算的な支援を受けて、大きな変革の時期を乗り越えましょう。