都会と比べ、デジタル技術の活用に課題を抱える地域は少なくありません。一方で、働き方の多様化や生活様式の変化を受け、地方への移住も注目を集めています。
新潟県では、デジタル技術を活用してU・Iターンでの創業を支援する「U・Iターン創業応援事業」の二次募集が始まりました。これはU・Iターンでの起業家等を対象に、最大200万円を補助する制度です。
今回はU・Iターン創業応援事業の内容や申請方法について、お伝えします。
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この記事の目次
U・Iターン創業応援事業とは? 創業補助金×デジタルが目指すもの
政府は「新しい資本主義」の柱のひとつとして、「デジタル田園都市国家構想」を掲げています。これはデジタル技術の活用によって、地域の個性を活かした地方の社会課題の解決等を目指すものです。
にいがた産業創造機構 (NICO) は、新潟県の産業を活性化することをミッションとする公益財団法人です。同法人が実施するU・Iターン創業応援事業では、デジタル技術の活用によって課題解決に取り組む企業を支援することで、移住・定住による人口増加とともに、地域の課題解決を目指しています。
U・Iターン創業応援事業の流れ
申請には地域の商工会、商工会議所等に書類を提出し、「確認書」を受け取る必要があります。その後、(NICO)に審査を受ける流れです。
事業の全体像は、以下の図も参照してください。
出典:募集案内
U・Iターンとは
Uターンとは、地方から都市部へ移住した人が再び故郷に戻ることを指します。Iターンは出身地以外の土地へ移住することです。
U・Iターン創業応援事業では、新潟県外の居住者が新潟県内に転居することを指します。また、起業準備のためにすでに新潟県内に転居している方も対象です。
U・Iターン創業応援事業の内容
U・Iターン創業応援事業の対象者や事業について、みていきましょう。本事業ではU・Iターン以外に、じもと定着企業者も支援対象です。
対象者や対象事業の要件をまとめました。
対象者
補助の対象となるのは、令和6年2月29日までに起業する人が、以下の要件を満たす場合です。
対象者 |
①県内に事業所を設置し、地域課題や社会課題の解決に資する事業を行う |
②以下のいずれかに該当する 【U・I起業】 公募開始日時点で転居後1年以内の方も対象です。 【じもと定着起業】 ・進学を契機に県内に在住している県外出身の大学生等 (卒業後、1年以内の人を含む) が、県内で起業する ・有期雇用契約等により県内へ転居して就業している県外出身者 (有期雇用契約終了後、1年以内の人も含む) が、県内で起業する |
なお、以下の場合は補助の対象外です。
- 個人事業主の「法人成り」
- 公募開始日以前の営業実態が確認された場合
- 副業による起業
- 公募開始日以前に法人設立または個人事業を開業済みの者
- 地域課題や社会課題の解決を主目的としない、単なる飲食業や美容業等
対象事業
対象となる事業は、以下の①~④です。
対象事業 |
①事業実施期間に創業にいたる事業 |
②1年以上の事業継続が見込まれるもの |
➂3年以上の事業計画を策定するもの |
④デジタル技術を活用し、新潟県内での以下の地域課題や社会課題の解決等に資するもの ■地域活性化 ■まちづくり推進 ■過疎地域等活性化 ■買い物弱者支援 ■地域交通支援 ■社会教育 ■子育て支援 ■環境関連 ■社会福祉関連 ■「新潟県の地域産業資源」で指定された地域資源を、中核の商品・サービスとして提供するもの(どの地域資源を使用しているのかは事業計画書に記載してください) |
具体的には、以下のような事業が補助対象です。
・過疎地域等にて交通弱者に対し移動販売などの買い物サービスを提供する事業
・県内で独立して飲食店開業を目指す方へのクラウドキッチン開設
・県が指定した観光資源地域で、ペンションを開く(地域資源活用時)
以下のような事業は、補助の対象外となります。
■地域課題や社会課題の解決が主目的ではない飲食業や美容業
■ボランティア要素が大きいコミュニティ・ビジネス
■県で指定されている農林水産物をメニューの一部のみに使用する飲食業(地域資源活用時)
さらに、以下の事業は補助対象になりませんので、ご注意ください。
■農業、林業、漁業、狩猟業等
■風俗関連営業、競輪・競馬等の競争場・競技団
■パチンコホール、ビンゴゲーム場、スロットマシン場等
■集金業・取立業等
■興信所のうち身元調査等個人のプライバシーに係わる調査を主におこなうもの
■病院、一般診療所、歯科診療所、助産・看護業等
■学校法人が経営する学校
■法律事務所、特許事務所等
■通訳案内業
■宗教・政治・経済・文化団体等
■その他、公序良俗等の観点から対象とすることが適当でないと認められる事業
事業の実施期間
事業の実施期間は、交付決定日から令和6年2月29日までです。
補助金額と補助率
補助金額と補助率は、以下のとおりです。
【補助金額】
50万円~200万円
【補助率】
1/2
対象経費
補助の対象となるのは下記のうち、実施期間に契約・取得・支払が完了する経費です。
①事業拠点開設費 | ・設備 ・備品費 ・事業所の増改築費 ・法人登記費用 ・消耗品費 ・その他 |
②事業促進費 | ・人件費 ・賃借料 ・光熱水費 ・通信運搬費 ・広告宣伝費 ・その他 |
対象となるデジタル技術
U・Iターン創業応援事業では、創業予定者の生産性の向上・機会損失の解消および顧客の利便性の向上につながるデジタル技術を活用していることが要件のひとつです。
具体的には、以下の技術の導入等が必要となります。
・キャッシュレス決済の導入
・Web予約システム
・ECサイトによる販売
・SNSやWebサイトでの情報発信
など
審査
本補助金の採択までには、2回の審査が実施されます。二次審査は、一次審査通過者のみが対象です。まずは一次審査の提出書類である、事業計画をきちんと作成することが、採択のポイントです。
ここでは各審査の内容と、事業計画の評価基準について、見ていきましょう。
審査方法
審査の各内容は、以下の通りです。
①一次審査 (審査書面審査)
提出された書類をもとに、外部専門家が書面審査を行います。
②二次審査 (プレゼンテーション動画)
外部専門家がプレゼンテーション審査を行います。
申請者自身でプレゼン動画を撮影し、動画投稿サイトに限定公開してください。
採択結果は文書により通知します。採択された場合は申請者名、市区町村名、業種が公表されます。
事業計画の評価基準
公開されている事業計画評価基準は、以下の通りです。
①事業アイデアの新規性等 | ・該当の事業アイデアに新規性や、デジタル化含む先進性はあるか |
②マーケティング | ・市場、商圏等の分析、状況の把握がされ、顧客や販売方法が明確になっているか ・計画されている地域または分野等での需要創出に期待できるか |
➂創業事業計画の明確性 | ・創業の動機など、計画立案の背景が明確であるか ・事業内容と実施時期は明確で妥当か ・事業の目的が明確か ・事業に対して、志と熱意があるか |
④事業開始と事業計画の達成見込み | ・助成事業実施期間内の創業が見込まれるか ・売上、利益等の計画は妥当で達成は可能か ・許認可を伴う業種はその取得が可能か |
⑤事業実施体制 | ・代表者、役員、職歴・人脈等の従業員予定者等の経験、能力、資格は十分か ・事業実施に必要な人材の確保に目途が立っているか |
⑥資金調達の確実性 | ・事業実施にあたり、自己資金及び借入金その他による資金調達は確実か |
⑦地域経済への波及効果 | ・地域の企業や事業者等との連携・取引により、地域経済の活性化が期待できるか ・事業売上や給与等支払額が増加することが見込まれるか ・雇用の受け皿となることが期待できるか |
なお、過去の起業経験を活かした再チャレンジによる起業のうち、優れた事業計画と認められるものは加点要素となります。
申請方法、応募期間
申請には、まず申請書類を、創業を予定する地域の商工会・商工会議所または金融機関の窓口に提出してください。その後「U・Iターン創業応援事業確認書」の発行を受けて、改めて申請書類一式を起業・創業支援チームまで提出します。
書類は簡易書留での郵送、または窓口に持参してください。
募集期間は、以下のとおりです。
令和5年8月18日(金)~ 令和5年9月27日(水)
なお、商工会・商工会議所または金融機関の窓口には9月20日(水)までに書類の提出を行う必要があります。早めに準備を始めましょう。
まとめ
都会と比べて物価や土地が安く、初期費用を抑えられる点で、地方での創業は起業者にとってもメリットがあります。また、新しい地域での活動は新たな人材との出会いや、埋もれていたニーズの発見もあるかもしれません。
デジタル技術の活用で、地方でも都会と同等の活動ができるようになりつつあります。U・Iターン創業応援事業は、新潟から大きな成長を目指す起業家に活用してほしい制度です。