「東京の特産品」と聞いても、あまりピンとこない人も多いかもしれません。しかしその地域で昔から食べられている農産物やその土地ならではの商品は、東京にもたくさんあります。
東京都では、特産品の開発を製造販売する食品業者を支援する補助金事業を実施しています。最大150万円が助成されるこの事業は、すでに漬物、果実酢、麺類など、多彩な食品の開発に活用されてきました。
今回は東京都が支援する、特産品開発に対する補助金制度を紹介します。
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この記事の目次
実は多彩な東京都の特産品!知名度の低さが課題か
東京都には、伝統野菜の「江戸野菜」、東京うこっけい、東京湾で獲れる海産物などの食品や、日本酒、お茶、乳製品などの加工品とさまざまな特産品があります。にもかかわらず、東京都が実施した調査では、主な東京特産の農畜産物を「どれも知らない」と答えた人が1割近くに上りました。もっとも知名度の高い「江戸川のコマツナ」でも50.8%と、約半数の人しか知らないという結果です。
出典:東京産農畜産物の認知度
地域の特産品としての「東京ブランド」の知名度は、まだまだ向上の余地を残していると言えそうです。
東京は全国から技術や人が集まり、豊かな海に囲まれ、島や山林などの自然にも恵まれています。一方で事業者の高齢化や後継者不足は、東京都でも大きな課題となっています。
社会情勢の変化を敏感に取り込んだ新たな視点での商品開発は、東京都ブランドの継続的な発展のために必要不可欠な要素です。
新しい特産品の開発は、従来の資源や農畜水産物の活用方法の幅を広げることにもつながります。伝統を未来へと引き継いでいくために、東京都では平成29年から特産品の開発支援のための補助制度を実施しています。
東京の特産品の開発に対する補助とは
東京都では特産品の製造販売を行う事業者を対象に、その開発経費の一部を助成しています。まずは補助制度の概要な補助金額について、見ていきましょう。
本事業では、東京産の原材料や独自の技術、伝統的な製造技術などを活用した「特産品」の製造販売をする食品事業者を支援します。食品開発に要する経費の一部を補助することで、都内食品製造事業者の活性化を目指すことを目的にしています。
対象となる食品事業者
補助の対象となる事業者は、以下の①~③の要件を満たす必要があります。
①次のいずれかに該当するもの
■東京都内に事業所がある中小企業
■東京都内に事業所がある一般財団法人・一般社団法人・特定非営利活動法人
■東京都内に事業所がある中小企業団体のうち、構成員の半数以上が東京都内に事業所がある中小企業であるもの
■東京都内に事業所がある中小企業で構成されるグループ(共同申請)
■東京都内に事業所がある農業協同組合・漁業協同組合等
②都内所在等が確認できること
③次のすべてに該当するもの
■法人事業税、法人都民税等を滞納していないもの
■東京都の他の補助金の対象となっていないもの
■風俗関連業、ギャンブル業、暴力団関係者等でないこと
対象となる特産品
補助の対象となるのは、以下のいずれかに該当するものです。
①都内産の原材料を使用するもの
②独自の技術や東京の伝統的な製造技術を利用するもの
③(地独)東京都立産業技術研究センター食品技術センターの技術を活用するもの
対象経費
補助対象となる経費は、以下の①から⑩です。それぞれの項目で補助対象外になるものもあわせてまとめました。
対象経費 | 対象外経費 |
①賃金 新たに雇用した者に対して支払う対価 |
【対象外】 事業実施主体の構成員に対するもの |
②報償費 コンサルタント等の専門家から指導を受ける場合等の謝礼金 |
【対象外】 ・事業実施主体の構成員に対するもの ・物品や金品による謝礼 ・仲介業者が関与し、経費内訳が明確でないもの |
③消耗品費 研究資材・器具など、単価が10万円未満の物品の購入 |
【対象外】 ・単価が税込10万円以上の物品 ・事業実施主体が生産、製造した資材や原料 ・鍋やパソコンなど、汎用性の高いもの |
④印刷製本費 パンフレットやチラシ等の印刷で、単価が10万円未満のもの |
【対象外】 単価が税込10万円以上のもの |
⑤通信運搬費 特産品開発に係る資材・原料、試作品、サンプル等の運搬費等 |
【対象外】 サーバーの管理や運営費、インターネットの通信費等 |
⑥広告料 PRや販路開拓のために行う新聞、雑誌、WEB等への広告掲載費 |
ー |
⑦委託料 試験や分析委託料、デザイン委託料、WEBサイト作成の委託料等 |
【対象外】 ECサイトの作成経費 |
⑧使用料及賃借料 機械機材の借上料、産業財産権の出願や導入費用等 |
【対象外】 事業実施主体の事務所賃借料や会議室等の使用料 |
⑨旅費 専門家に来てもらうために要した交通費 |
【対象外】 事業実施主体の構成員に対するもの |
⑩その他、知事が認めたもの | 【対象外】 光熱水費、印紙税、振込手数料及び代引き手数料、キャンセル料等 |
補助事業の流れ
補助事業の流れとスケジュールは、以下のとおりです。
①審査会
4月下旬開催予定 (3月下旬に決定)
②審査結果通知・交付決定
令和5年5月上旬予定
③事業の実施
補助率、上限額
補助率と上限額は、以下のとおりです。
■上限額
150万円
■補助率
1/2以内
申請方法
それでは、実際の申請方法についてみてみましょう。なお、対象となる事業には、実施期間が定められています。公募の前に、事業計画を確認してください。
公募期間・事業実施期間
■公募期間
令和5年1月31日(火曜日)から3月22日(水曜日)まで
■事業実施期間
補助金の交付が決定された日(令和5年5月上旬を予定)から令和6年3月31日まで
期間内に商品化できない場合は、補助対象になりません。
申請方法
申請は郵送または電子申請システム「J-Grants」にて行います。ただし、応募する際は必ず、応募先まで事前相談をしてください。
必要書類
申請に必要な書類は、以下の①~⑩です。
①補助金交付申請書
②誓約書
③申請者の事業概要が確認できる社歴書
④履歴事項全部証明書
⑤直近2期分の確定申告書のすべての写し
⑥直近の法人事業税及び法人都民税の納税証明書(原本)
➆印鑑証明書
⑧開発内容が分かる資料
⑨経費の積算の根拠となる資料
⑩特許証の写し
活用事例
本事業においては、すでに東京都の農畜水産物や技術を利用した多くの食品が商品化されています。以下はこれまでの支援の対象となった製品の一部です。
■魚醤油・肉醤油 | ヤマメや雑魚を利用した魚醤油等。 |
■非加熱ソース | 酵素と醸造酢を利用し、非加熱で成分を抽出した風味豊かな「生」ソース。 |
■漬物 | 東京特産野菜と乳酸菌を利用した漬物。 |
■発酵ソーセージ | ブランド豚肉TOKYO Xを利用したサラミ。 |
■大豆発酵製品 | 大豆を利用した納豆・テンペ・江戸甘味噌など。 |
■果実酢 | 東京特産のパッションフルーツ・ナシ・キウイ・柿等を利用した果実酢およびその加工品。 |
■酒類 | 酒造メーカーと連携した清酒酵母の選抜、小仕込み試験等の実施。発泡日本酒。 |
■麺類(うどん・そば・中華めん) | ゆでのび抑制や新たな食感をもたらす製麺技術の開発、保存試験等。 |
■新素材開発 | 昆虫の粉末・ペースト |
個性豊かな土地の名産品を使用したものから「未来の食品」と言われる昆虫食まで、バラエティ豊かな製品が補助の対象になりました。
技術と資源に恵まれた東京だからこその特産品の開発は、まだまだ大きな可能性を秘めていそうです。
まとめ
ビル群の立ち並ぶ「都会」としてのイメージも強い反面、東京のコマツナやブルーベリーなどは国内収穫量の上位を占めます。ビルの屋上で飼育されるミツバチも話題になりました。
土地としては決して広大でない東京だからこそ、ほかにはない特産品が作られます。東京都の補助事業は、伝統をチャレンジに変える企業にこそ活用してほしい制度です。