外国への特許出願には、1カ国あたり数十〜200万円程度のコストがかかり、複数カ国に出願すれば数百万円規模になることも珍しくありません。INPIT外国出願補助金は、そのコストの最大半額を補助する制度で、中小企業・スタートアップ・大学等が対象です。
本記事では、INPIT外国出願補助金の概要をわかりやすく解説します。外国での知的財産権の取得を目指している企業や、国際的な競争優位性を構築したいと考えている企業はぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
INPIT外国出願補助金とは
INPIT外国出願補助金は、中小企業者等に対して、外国における発明(特許)や考案(実用新案)、意匠または商標の取得手続きに必要な費用の一部を補助する制度です。
具体的には、出願手続きにかかる費用や出願審査請求、拒絶理由通知に対する応答手続きに必要な費用が補助されます。
本補助金は、中小企業者等における外国での特許や商標登録等の権利取得を促進し、国際的な知的財産戦略の構築を支援する目的があります。2026年4月現在、令和8年度分として第1回・第2回の公募が実施され、今後も複数回の公募回が予定されています。
INPIT外国出願補助金の要件と対象経費
令和8年度第2回の公募要領に沿って、INPIT外国出願補助金の全体像を解説します。第3回以降の最新情報は、最新の公式ページをご確認ください。
補助対象者
本補助金の対象者は、日本国内に本社があり、以下のいずれかを満たす者としています。
・中小企業者
・創業特定法人
・試験研究機関等
・実施権者等
中小企業者の組合等として商工会・商工会議所も対象に含まれています。ただし、補助対象となる出願は地域団体商標に限ります。
一方、本補助金では、以下に該当する者は補助対象外としています。
・みなし大企業
・経済産業省から補助金停止措置や指名停止措置を受けている者
・暴力団や暴力団関係者
中小企業であっても、発行済株式総数や出資価格総額でみなし大企業と判断される場合は対象外です。
ただし、中小企業投資育成株式会社やVC(投資事業有限責任組合)が保有する株式は、みなし大企業の判定の計算から除外されます。大企業からの出資比率が高い場合は別途確認が必要です。
補助対象となる出願
本補助金において補助対象となる出願は、パリ条約の優先権を主張する出願(①+②)か、優先権なしの一部出願(③)が対象です。
| ① | 補助事業者が、日本特許庁で行っている出願について、パリ条約第4条の規定による優先権を主張して行う外国特許庁等への出願 |
| ② | 外国特許庁への出願方法が、以下に該当するもの (ア) 当該国・地域の法令に基づき外国特許庁への出願を行う方法 (イ) 特許協力条約に基づき、外国特許庁への出願を行う方法 (ウ) 意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づき、外国特許庁への意匠登録出願を行う方法。 (エ) 標章の国際登録に関するマドリッド協定の議定書に基づき、外国特許庁への商標登録出願を行う方法 |
| ③ | 優先権を主張しないものであって、外国特許庁への出願方法が、以下に該当するもの (ア)特許協力条約に基づき、外国特許庁への出願を行う方法 ※(ア)の場合は、日本国特許庁に対し、特許法に規定された手続が必要 (イ)ハーグ協定に基づき、指定締約国に日本国を含め、外国特許庁への意匠登録出願を行う方法 (ウ)当該国・地域の法令又はマドリッド協定議定書に基づき、外国特許庁への商標登録出願を行う方法 |
日本国特許庁に行っている出願と外国特許庁への出願における「出願人」の名義が同一でない場合は、補助対象とならないためご注意ください。
補助対象経費
本補助金では、対象経費として明確に区分できるものであり、その経費の必要性および金額の妥当性を証拠書類によって明確に確認できるものでなければなりません。そのうえで、以下の区分にわけられます。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 外国特許庁等への納付手数料 | ・出願手数料 ・各指定国への国内移行手続の手数料 ・出願審査請求料 ・手続補正書の提出に係る手数料 ・外国特許庁等に出願手数料又は国内移行手続の手数料を支払った後日、補助事業実施期間内に支払う費用であって、当該出願手続又は国内移行手続に関する費用 ・外国特許庁等に出願を審査中とするために必要な手数料 |
| 代理人費用等 | ・弁護士等の国内代理人費用 ・現地代理人費用 ・出願手続の一環として必要であることが認められる経費 ・銀行振込手数料及び送金手数料 |
| 翻訳費用 | 明細書等の翻訳にかかる費用 ※単価×単語数やページ数などの内訳について明細書に明記 |
補助対象経費は、交付決定を受けた日付以降に契約(発注)し、補助事業実施期間内に検収および支払いが完了したものに限ります。
また、経費にかかる消費税等は補助対象外として算定してください。
補助対象外となる経費の例
本事業において補助対象外となる経費の例は以下をご確認ください。
・消費税、海外での付加価値税(VAT)やサービス税等
・日本国特許庁に納付する手数料
・先行技術/登録調査に係る費用
・国際出願の国際段階の手数料(国際出願手数料、予備審査手数料等)
・翻訳文提出及び出願審査請求等の期間徒過の救済に要する手数料
・特許料、登録料
・上記を含め、補助対象外経費に対応する代理人費用
なお、補助対象経費の精査は、応募申請後の審査で実施されます。そのため、応募申請時に計上した経費がすべて補助対象になるわけではありません。また経費の支払いすべて銀行振込の実績で確認されます。現金や手形払い等は対象外とみなされますのでご注意ください。
補助金額
本補助金における補助金額と補助率は以下のとおりです。
| 区分 | 補助金額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 中小企業者・創業特定法人・試験研究機関等 (※一部を除く) | 1事業者あたり300万円以内 【1出願に対する上限額】 • 特許出願:150万円 • 実用新案出願、意匠登録出願、商標登録出願:60万円 • 商標の抜け駆け対策の出願:30万円 | 2分の1 |
| 試験研究機関等 (※一部) | 上限なし | 2分の1 |
また、令和8年度の本補助金交付決定額の合計額は、試験研究機関等における一部を除き、1事業者あたりの上限額を超えられません。
※試験研究機関等における「一部」とは、
・学校教育法第1条に規定する大学の学長等や高等専門学校の校長や研究に従事する職員等
・大学若しくは高等専門学校を設置する者又は大学共同利用機関法人
・大学等における技術に関する研究成果の民間事業者への移転の促進に関する法律に規定する承認事業者
を指します。
申請から事業完了までの流れ
本補助金における全体の流れは以下のとおりです。
| フェーズ | ステップ |
|---|---|
| 申請前 | ①公募開始 → ②応募申請受付 |
| 審査・交付決定 | ③応募審査 → ④交付候補者の決定 → ⑤交付決定 |
| 補助事業の実施 | ⑥補助事業実施期間 → ⑦実績報告 → ⑧実績審査 |
| 補助金の受取 | ⑨補助金額の決定 → ⑩請求 → ⑪支払 |
| 事後報告 | ⑫権利化状況の報告 |
本補助金の応募申請では、デジタル庁が運営する電子申請システムの「Jグランツ」を利用します。JグランツではGビズIDプライムアカウントが必要となりますが、アカウントの発行には1週間程度を要するため、余裕をもって取得しましょう。
なお、本補助金では、国費又は国費を財源とする資金による支援および本補助金の補助対象出願として両方への申請は認められていません。重複申請が発覚した場合は、本補助金の応募申請を不採択とします。交付決定がなされている場合でも、一部または全部を取り消すことになるためご注意ください。
今後の公募スケジュール
本補助金の令和8年度分の公募は、第1回・第2回の受付を終了しています。第3回以降に関しては、以下のスケジュールで実施される予定です。
| 公募回 | 日程 |
|---|---|
| 第3回 | 令和8年6月8日~6月29日 |
| 第4回 | 令和8年9月7日~9月28日 |
応募締切の直前は、申請が混みあうため、早めに応募申請を済ませることが大切です。なお、応募申請後に提出書類等の不備が確認された場合は、追加提出や修正が求められることがあります。応募申請の締切直前になると、不備の対応に十分な時間が設けられない可能性もあるため、この点も併せて注意し、早めの申請を意識しましょう。
中間手続補助について
本補助金では、中小企業等による外国特許庁へ行った出願を対象に、特許出願にかかわる中間手続きの費用も補助しています。具体的には、外国特許庁に行った出願手続において、拒絶理由通知に対する中間応答、若しくは外国特許庁へ行った特許出願に対する出願審査請求に要する経費の一部の補助を行います。
中間手続の補助に関する概要は以下のとおりです。
| 補助対象経費 |
|---|
| ①外国特許庁等への納付手数料 <出願審査請求> ・出願審査請求料 ・出願審査請求と同時に行う手続にかかる手数料 <中間応答手続> ・意見書、補正書、その他各国が求める資料の提出手続及び審査官面 接に係る手数料 ・中間応答手続の延長手続に係る手数料 ②代理人費用 ・弁護士等の国内代理人費用 ・現地代理人費用 ・出願手続の一環として必要であることが認められる経費 ・銀行振込手数料及び送金手数料 ③翻訳費用 手続書類作成に係る、翻訳に要する費用 |
| 補助金額や補助率 |
| 1事業者あたりの上限額:上限なし 各国別手続に対する補助上限額:50万円以内 補助率:2分の1 申請可能な手続数:上限なし ※1手続ごとに申請が必要 |
中間手続に関する補助の申請期間は、2026年4月から12月までと、長期間で設定されています。中間手続のタイミングに合わせて、申請できる点が特徴です。
詳細は、中間手続の公募要領をご確認ください。
よくある質問
INPIT外国出願補助金に関するよくある質問とその回答を紹介します。応募申請回数の制限はある?
申請する公募回が異なれば、制限はありません。ただし、過去の公募回で採択された外国出願について、当該外国出願と同一の出願では補助を受けられません。また、同一年度内の交付決定額は、1事業者あたりの上限額を超えられない点にご注意ください。
個人事業主でも応募申請できる?
はい、できます。申請者が個人事業主の場合、応募申請時に確定申告書の写しが必要です。開業1年未満の個人事業主は、代わりに事業計画書と収支計画書を提出します。
過去に中間手続きに関する補助を受けたが、本補助金も申請できるか?
過去に以下の特許庁事業において、これまで同一案件で中間応答手続にかかる補助を受けたばあいは申請できません。
・中小企業等海外展開支援事業(海外権利化支援事業)、(海外出願支援事業)
・中小企 業知的財産活動支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)
・中小企業等海 外出願・侵害対策支援事業費補助金(中小企業等外国出願支援事業)
・中小企業等 知的財産活動支援事業費補助金(日本出願を基礎としたスタートアップ設立に向けた国際的な 権利化支援事業)
同一請求書内の費用を複数回の分割で支払った場合、送金手数料等は補助対象になる?
複数回に分ける合理的な理由がなければ、初回分のみを補助対象とします。
GビズIDプライムを過去に取得したが、改めて新たなアカウントが必要か?
いいえ。再発行等は不要のため過去に取得したものを使用します。GビズIDプライムは、同一法人かつ同一利用者の名義により複数のアカウントを発行することはできません。
補助金はいつ振り込まれる?
補助金は精算払いです。補助事業における実績報告の後、補助金額が確定した後に精算払請求をしてから振り込まれます。
参照:『[INPIT]よくある質問』独立行政法人 工業所有権情報・研修館
まとめ
INPIT外国出願補助金は、企業等が外国における特許等の権利化を促進するための補助制度です。企業等が外国での研究開発や商標等の権利化を進めることで、海外での模倣品対策や自社技術やブランドの独自性を守れます。また、権利化されることで信頼性が増し、外国での事業拡大や国際的な競争優位の確立にもつながるでしょう。
外国での独自開発や海外事業を展開している企業は、本補助金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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