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事業承継税制【2026年・令和8年度】特例承継計画・個人事業承継計画の提出期限を解説

公開日:2026/7/7 更新日:2026/7/7
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事業承継税制は、後継者が引き継ぐ自社株式や事業用資産にかかる相続税・贈与税の納税を猶予・免除できる制度です。うまく活用すれば、後継者が承継時に納めるべき税額を全額猶予し、一定の要件を満たし続けることで最終的に免除まで受けられます。

そんな事業承継税制ですが、令和8年度(2026年度)税制改正で、特例承継計画等の提出期限が延長されることが決まりました。法人版は1年6か月、個人版は2年6か月の延長です。

ただし、注意したいのは「制度そのものの適用期限」は延長されていない点です。計画の提出期限は延びても、実際に贈与・相続を行える期間には限りがあります。本記事では、令和8年度税制改正のポイントと、事業承継税制の基本から申請の流れ、検討時の注意点までをわかりやすく解説します。

※本記事は令和8年度税制改正大綱(令和7年12月公表)および経済産業省・中小企業庁の公表資料をもとに作成しています。実際の適用にあたっては、法案の成立状況および税理士等の専門家にご確認ください。

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この記事の目次

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事業承継税制とは

事業承継税制とは、後継者が先代経営者から非上場株式や事業用資産を引き継ぐ際にかかる相続税・贈与税の納税を猶予し、一定要件を満たし続ければ最終的に免除する制度です。

中小企業では、株式や事業用資産の評価額が大きくなり、承継の際の税負担が後継者にとって重い壁となってしまうケースが少なくありません。この負担が原因で承継を諦め、廃業を選ぶ経営者もいます。事業承継税制は、そうした「税負担による廃業」を防ぎ、優良な中小企業の事業や雇用、地域経済を守ることを目的として整備されてきました。

事業承継税制には、大きく分けて次の2種類があります。

制度の種類対象
法人版事業承継税制非上場株式
個人版事業承継税制個人事業主の事業用資産

法人版にはさらに「一般措置」と「特例措置」があり、現在多くの中小企業が活用を検討しているのは、猶予割合100%の「特例措置」です。

令和8年度税制改正での事業承継税制の主な変更点

令和8年度税制改正では、事業承継税制について4つの見直しが行われました。

①法人版(特例措置)の特例承継計画の提出期限を延長

区分現行の期限改正後の期限延長幅
法人版(特例措置)の
特例承継計画
2026年3月31日2027年9月30日1年6か月

②個人版の個人事業承継計画の提出期限を延長

区分現行の期限改正後の期限延長幅
個人版の
個人事業承継計画
2026年3月31日2028年9月30日2年6か月

法人版と個人版で延長幅が異なるのは、それぞれの制度の適用期限(実際に贈与・相続を行える最終日)に差があるためです。どちらも「適用期限のおよそ3か月前まで」に計画を提出できる形に整えられています。

③制度そのものの適用期限は延長されない

計画提出の期限は延長されましたが、特例措置や個人版事業承継税制そのものの適用期限は延長されていません。

制度適用期限
(贈与・相続の実行期限)
法人版事業承継税制(特例措置)2027年12月31日
個人版事業承継税制2028年12月31日

計画の提出期限を目一杯使った場合、贈与・相続の実行期限までの猶予は約3か月しか残らない設計です。「期限が延びたから安心」ではなく、「駆け込みではなく計画的に準備してほしい」という政府からのメッセージと受け止めるべきでしょう。

④適用期限到来後のあり方は令和9年度改正で結論

与党税制改正大綱側では、適用期限が到来したあとの制度の扱いについて、「世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念に加えて、本措置の適用状況や課税の公平性等の観点も踏まえて多角的な検討を行い、令和9年度税制改正において結論を得る」と明記されました。

制度の恒久化・見直し・縮小のいずれになるかは現時点で未定です。動向を注視する必要があります。

事業承継税制の種類

事業承継税制には、法人と個人事業主それぞれを対象とした2つの制度があります。まずはこの2つの違いを押さえて、自社がどの区分に該当するかご確認ください。

①法人版事業承継税制(特例措置)

非上場の中小企業の株式を後継者に承継する場合に利用できる制度です。現在活用が進んでいる「特例措置」の概要は次のとおりです。

項目内容
対象資産非上場株式等
猶予割合贈与税・相続税ともに100%
対象者特例承継計画を提出した中小企業の後継者
承継の相手最大3名まで(複数人承継が可能)
特例承継計画の提出期限2027年9月30日(改正後)
贈与・相続の実行期限2027年12月31日

②個人版事業承継税制

個人事業主が事業用資産を後継者に承継する場合の制度です。

項目内容
対象資産事業用の宅地
(400㎡まで)、
建物(800㎡まで)、
一定の減価償却資産など
猶予割合贈与税・相続税ともに100%
対象者個人事業承継計画を提出した個人事業主の後継者
その他小規模宅地等の特例との選択適用
個人事業承継計画の提出期限2028年9月30日(改正後)
贈与・相続の実行期限2028年12月31日

法人版「一般措置」との違いは?

法人版には特例措置のほかに恒久制度の「一般措置」もありますが、猶予割合や対象株式数などに差があります。

項目特例措置一般措置
対象株式全株式発行済議決権
株式総数の2/3まで
猶予割合
(相続税)
100%80%
猶予割合
(贈与税)
100%100%
承継の相手最大3名1名
事前の計画提出必要
(特例承継計画)
不要
適用期限あり
(2027年12月末)
なし

多くの経営者にとって、負担軽減効果が大きいのは特例措置です。ただし利用には期限内の計画提出が必須となります。

猶予・免除される税額の目安

法人版特例措置の効果を、シンプルな例で見てみましょう。ここでは、相続人が子1人(配偶者はすでに他界)で、相続財産は自社株式のみと仮定します。

例)自社株式評価額 3億円、先代経営者から後継者への相続の場合

項目事業承継税制を
使わない場合
特例措置を
使った場合
課税価格3億円3億円
基礎控除後の
課税遺産総額
約2億6,400万円約2億6,400万円
相続税額
(概算)
約9,200万円約9,200万円
納税猶予額なし約9,200万円
承継時の納付額約9,200万円0円

※基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算しています。実際の税額は、相続人の人数、他の相続財産の有無、各種控除の適用状況などによって変動します。

ここで注意したいのは、特例措置を使っても相続税額そのものが0円になるわけではないという点です。相続税額として約9,200万円は算定されますが、その全額の納付が「猶予」される仕組みです。承継後も一定の要件を満たし続けることで、猶予されていた税額は最終的に「免除」されます。

一方で、途中で継続要件を外してしまった場合には、猶予されていた税額に加えて利子税を一括で納付する必要があります。制度を利用するかどうかは、承継後の事業継続の見通しも含めて慎重に検討することが大切です。

猶予された税額が免除されるケース

猶予された税額が実際に免除されるのは、以下のようなケースです。

免除される主なケース内容
先代経営者
(贈与者)の死亡
猶予されていた贈与税は免除されます。ただし、株式等は相続税の対象となり、要件を満たせば相続税の納税猶予に移行できます。
後継者の死亡猶予されていた贈与税・相続税が免除されます。
次の後継者への承継後継者から次の後継者へ贈与し、その贈与が「免除対象贈与」に該当する場合、前の後継者に猶予されていた税額の全部または一部が免除されます。
会社の倒産等会社の破産や再生計画の認可決定など、一定の事由に該当した場合には、要件のもとで猶予税額の全部または一部が免除されることがあります。

いずれのケースでも、実際の適用にあたっては細かな条件や手続きが定められています。制度利用の判断や具体的な手続きについては、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。

一方で、途中で継続要件を外してしまった場合には、猶予されていた税額の全部または一部について、利子税とあわせて納付が必要になることがあります。制度を利用するかどうかは、承継後の事業継続の見通しも含めて慎重に検討することが大切です。

事業承継税制の対象者・主な要件

事業承継税制を利用するには、会社・先代・後継者それぞれに要件があります。ここでは、それぞれの主な要件を抜粋して紹介します。

会社の要件(法人版)
・中小企業経営承継円滑化法に基づく認定を受けられる中小企業者等であること
・上場企業や風俗営業会社などでないこと
・資産管理会社に該当しないこと
先代経営者の要件
・会社の代表者であった、または現在代表者であること
・一定割合以上の株式を保有していたこと
後継者の要件
・承継時に会社の代表者であること
・一定割合以上の議決権を保有すること
・贈与の直前に役員であること(贈与の場合。従来は3年以上の役員経験が必要でしたが、令和7年度税制改正で緩和されました)
継続要件(承継後)
・事業を継続していること
・承継した株式・資産を保有し続けていること
・一定の雇用維持要件(特例措置では実質的に緩和)

なお、承継後に一定の要件を満たさなくなった場合、猶予されていた税額に加えて利子税を一括で納めなければならないことがあります。長期にわたって要件を維持できるかを、事前にしっかり検討することが重要です。

事業承継税制のスケジュール

改正後の新しいスケジュールを表にまとめました。

制度計画の提出期限贈与・相続の
実行期限
法人版(特例措置)2027年9月30日2027年12月31日
個人版2028年9月30日2028年12月31日

計画は現時点でも提出可能ですが、提出期限ギリギリまで待つと、贈与・相続の実行期限までの猶予は約3か月しか残りません。準備には数か月〜1年程度を要するのが一般的なので、計画提出のギリギリを狙うのではなく、余裕を持って動くことが大切です。

参考|特例承継計画の申請件数の推移

制度が実際にどれくらい活用されているのか、法人版事業承継税制(特例措置)の特例承継計画の申請件数の推移を見てみましょう。

年度申請件数
平成30年度2,936件
令和元年度3,451件
令和2年度2,808件
令和3年度2,661件
令和4年度2,690件
令和5年度5,531件
(駆け込み)
令和6年度1,671件

出典:中小企業庁「令和8年度税制改正要望事項」

制度創設以降、令和2〜4年度はコロナ禍の影響で申請件数が落ち込んでいましたが、当初の期限を意識した令和5年度は例年の約2倍に急増しました。その反動で令和6年度は大きく落ち込んでいます。

今回の延長後も、期限直前に駆け込み申請が集中する可能性が高いため、専門家への相談が集中する時期を避けるためにも、早めの着手をおすすめします。

事業承継税制の申請の流れ

事業承継税制の活用は、大まかに次のステップで進みます。

・後継者と承継方法の決定
・特例承継計画または個人事業承継計画の作成
・認定経営革新等支援機関の指導・助言を受ける
・都道府県知事へ計画を提出(提出期限までに)
・贈与または相続の実行
・都道府県知事へ認定申請
・税務署へ贈与税・相続税の申告と納税猶予の手続き
・継続届出(一定期間ごとに提出)

計画作成には、認定経営革新等支援機関(税理士・金融機関・商工会議所など)のサポートが必要です。まずは顧問税理士や身近な支援機関に相談するところから始めましょう。

事業承継税制を検討する際の注意点

事業承継税制を検討する際は、あらかじめ以下の注意点をご確認ください。

「延長」は「先送り」ではない

今回の期限延長は、制度そのものの継続を約束するものではありません。大綱では「適用期限は延長しない」姿勢が維持されており、令和9年度税制改正で今後の方向性が決まる予定です。今回が実質的に最後のチャンスになる可能性もあります。

準備には半年〜1年が必要

後継者の選定、株価対策、計画書の作成、認定支援機関との調整など、実務にはまとまった時間がかかります。特に決算期をまたぐ場合、株価評価のタイミングも重要です。

継続要件の確認は慎重に

猶予された税額は「制度を使い続ければ最終的に免除される」ものです。途中で要件を外すと利子税を含めた一括納付が必要になります。長期的な事業計画と合わせて検討しましょう。

認定支援機関・税理士への早めの相談を

事業承継税制は要件が細かく、株価対策や組織再編との組み合わせで効果が大きく変わります。専門家への相談は早ければ早いほど選択肢が広がります。

よくある質問

個人事業主でも使える?

はい、個人版事業承継税制があります。事業用の宅地や建物、減価償却資産などが対象です。ただし、小規模宅地等の特例との選択適用となる点に注意が必要です。

家族への承継でしか使えない?

いいえ、家族への承継が中心の想定ですが、従業員や役員への承継でも使えます。ただし、M&Aによる第三者への株式売却は対象外です。M&Aでは贈与税・相続税ではなく譲渡所得税が発生するため、事業承継税制の枠組みでは支援されず、事業承継・M&A補助金や経営資源集約化税制など、別の制度が用意されています。

承継計画の提出は必要?

事業承継税制の特例を利用するには、期限内の計画提出が前提です。法人版の特例措置では「特例承継計画」、個人版では「個人事業承継計画」を提出する必要があります。期限までに提出していない場合、法人版の特例措置や個人版事業承継税制の対象にはなりません。

期限延長で駆け込みは避けられる?

過去の傾向からは、延長後の期限直前に再び申請が集中する可能性があります。専門家への相談枠にも限りがあるため、早めの動き出しがおすすめです。

猶予された税金はいつ免除される?

一定の継続要件を満たしながら、先代経営者が死亡した場合や、後継者から次の後継者へ贈与された場合などに、猶予税額が免除されます。

途中で廃業したらどうなる?

期限確定事由に該当すると、猶予されていた税額と利子税を一括で納付する必要があります。事業継続の見通しは慎重に確認しましょう。

特例措置と一般措置、どちらを選ぶべき?

猶予割合・対象株式数・承継の相手方の面で、多くのケースで特例措置が有利です。ただし特例措置は計画提出と期限が要件になるため、状況に応じた検討が必要です。

制度は今後どうなる?

令和9年度税制改正で、適用期限後のあり方について結論が示される予定です。恒久化・見直し・縮小のいずれになるかは現時点で未定のため、動向の注視が必要です。


まとめ

事業承継税制は、後継者への承継にかかる相続税・贈与税を最大100%まで納税猶予でき、一定要件を満たし続けることで最終的に免除される制度です。令和8年度税制改正では、特例承継計画等の提出期限が法人版で1年6か月、個人版で2年6か月延長されました。

一方で、制度そのものの適用期限は延長されておらず、法人版は2027年12月末、個人版は2028年12月末までに贈与・相続を実行する必要があります。計画提出の期限を目一杯使うと、実行期限までの猶予は約3か月しか残らないため、早めに計画を提出しておくのが安心です。

また、適用期限後の制度の扱いは令和9年度税制改正で結論が示される見通しで、現在の特例措置を最大限に活用できるのは、今回の延長期間が最後のチャンスになる可能性もあります。「延長されたから」と安心せず、後継者の育成や株価対策を含めた準備を、早めにスタートさせておくと安心です。

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参考資料:
令和8年度税制改正の大綱(本文)|財務省(令和7年12月26日 閣議決定)
令和8年度税制改正の大綱の概要|財務省
令和8年度税制改正要望事項|経済産業省中小企業庁
令和8年度税制改正について|経済産業省
事業承継税制特集|国税庁

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