2026年度税制改正で創設された「大胆な投資促進税制」は、企業の国内設備投資を後押しする新たな税制措置です。
国際的な投資競争が激化する中、国内投資額200兆円の実現を目指し、企業の「稼ぐ力」を向上させて賃上げにつなげる好循環の形成が期待されています。今回は税制改正のポイントと、大胆な投資促進税制の内容を解説します。
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この記事の目次
2026年度の税制改正のポイント
2026年度の税制改正では、主に次の5点がポイントとなっています。
②我が国の科学技術の発展に資する研究開発・イノベーション投資の促進
③中小・小規模事業者の事業承継・成長促進、地域経済の活性化
④GXの実現・エネルギーの安定供給に向けた基盤強化
⑤移り変わる国際課税への対応
トランプ関税で国際的な不確実性が高まる中、各国で税制インセンティブの強化が打ち出され、投資の囲い込み競争が激化しています。こうしたなかでも2026年度の税制改正では、2040年度国内投資額200兆円の実現に向け、国内投資を後押しして、企業の賃上げにつなげる方針が示されました。
また自動車取得時の課税(環境性能割)が廃止され、国内自動車市場の活性化などを通じた国内産業基盤の維持・強化が図られます。
税制においては複数年にわたる投資の予見可能性を一層高めるとともに、税制改正による投資・企業収益の拡大等を通じ、将来的な税収増を目指す方針です。
それぞれのポイントを、簡単にまとめました。
①熾烈化する国際環境における国内投資促進及び産業基盤整備
■研究開発税制の拡充・延長等
■車体課税の抜本的見直し
■賃上げ促進税制の見直し
■産業用地整備促進税制の創設
■カーボンニュートラル投資促進税制の拡充・延長等
■パーシャルスピンオフ税制の見直し
企業の国内投資を後押しする税制措置を創設して日本企業の「稼ぐ力」を向上させ、賃上げを含む経済の好循環形成を目指します。
②我が国の科学技術の発展に資する研究開発・イノベーション投資の促進
■中小企業技術基盤強化税制の拡充・延長等
■オープンイノベーション促進税制の拡充・延長等
■外国組合員に対する課税の特例の見直し
戦略的な技術領域への投資を税制面から強力に支援し、国際的に競争力のあるイノベーション環境を整備することで、日本の科学技術力の底上げと産業競争力の強化を図ります。
③中小・小規模事業者の事業承継・成長促進、地域経済の活性化
■事業承継税制に係る特例承継計画の期限延長等
■中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の拡充・延長等
■食事支給に係る所得税非課税限度額の見直し
■インボイス制度の円滑な定着に向けた所要の措置
■地域における生活環境の維持に必要なサービスを確保するための特例措置の検討
経営者の高齢化が進む中小企業の事業承継を支援し、地域経済の担い手である中小企業の持続的な成長と事業継続を税制面から後押しします。
④GXの実現・エネルギーの安定供給に向けた基盤強化
■再生可能エネルギー発電設備に係る固定資産税の特例措置の拡充・延長
■海外投資等損失準備金制度の延長
■電気・ガス供給業の収入金課税の見直し
脱炭素社会の実現と資源安全保障の両立を図るため、再生可能エネルギーの普及拡大と重要鉱物の確保が支援されます。持続可能なエネルギー基盤の構築を目指します。
⑤移り変わる国際課税への対応
■国境を越えたEC取引に係る消費税制度の見直し
日本企業の国際競争力を維持しつつ、国内外の事業者間における課税の公平性と中立性を確保する制度整備が進められます。
大胆な投資促進税制とは
法人税・所得税・法人住民税・事業税においては、高付加価値化のための大胆な設備投資を促進する税制が創設されます。これは国内投資の拡大を通じて日本企業の「稼ぐ力」を向上させ、賃上げを含めた好循環を形成するための措置です。大胆な投資促進税制の概要や対象業種・要件等をまとめました。
大胆な投資促進税制の概要
大胆な設備投資の促進に向けた税制措置では、基準に適合し、経済産業大臣の確認を受けた設備を「特定生産性向上設備等(仮称)」とし、指定の期間「即時償却」または「税額控除」を選択できるようになります。
ただし税額控除における控除税額は当期の法人税額の20%を上限とし、国際経済事情の急激な変化に対応するための計画について認定を受けた場合は、控除限度超過額は3年間の繰越しが可能です。
対象となる業種
原則として、すべての業種が対象となります。
対象となる資産要件
対象となる資産は、以下のものです。
・機械装置
・器具備品
・工具
・建物
・構築物
・建物附属設備
・ソフトウェア
■投資下限額が35億円以上のもの
■ROI水準が15%以上のもの
投資下限額は、投資計画期間中の総額です。なお中小企業者等は5億円以上となります。
措置内容と措置期間
措置の内容と期間は、以下のとおりです。

出典:令和8年度 経済産業関係 税制改正について
措置内容
| 項目 | 内容 |
| 措置内容 | 即時償却 または 税額控除7%のいずれかを選択 |
| 控除上限 | 法人税額の20% |
なお建物、建物附属設備および構築物は税額控除4%です
また予見し難い国際経済事情の急激な変化に対応するための計画については、3年間の繰越税額控除が可能です。
措置期間
以下の両方の、期間の要件を満たした場合が対象となります。
| 要件 | 期間 |
| 設備投資計画に法律に基づく確認 | 令和11年3月31日まで |
| 設備取得 | 確認を受けた日から5年を経過する日までの間 |
なお事業の用に供した設備等のみが対象です。
即時償却とは
即時償却とは、設備投資にかかる費用の全額を、投資の初年度に減価償却費として一括計上できる仕組みです。
通常、業務のために用いられる建物や建物附属設備、機械装置などの資産は、時の経過等によって価値が減っていきます。こうした資産が「減価償却資産」です。
減価償却資産の取得に要した金額は、使用可能期間の全期間にわたって分割して経費に計上します。減価償却資産の取得に要した金額を、各年分の必要経費として配分していく手続きを「減価償却」と呼びます。
一方「即時償却」では、減価償却資産を取得した年に、費用の全額を経費として申請することができます。設備投資をした年度の税負担が抑えられ、手元に資金を多く残すことが可能になります。
これまでも「中小企業経営強化税制」では、対象設備の取得や製作等の費用に対して即時償却(税額控除)が認められていました。こうした取組は経営力向上を図る企業の設備投資を後押しするものです。
今回の大胆な投資促進税制では、即時償却や大きな税控除を導入することで、企業の国内投資の拡大が目指されます。企業全体の「稼ぐ力」を向上することで賃上げにつながる好循環の形成が狙いです。
まとめ
2026年度税制改正では国内投資促進を目指し、大胆な投資促進税制が新設されました。要件を満たす設備投資について、即時償却または税額控除7%(建物等は4%)のいずれかを選択できます。
令和11年3月31日までに確認を受け、その日から5年以内に設備を取得する必要があります。
国内企業が「稼ぐ力」を向上させ、賃上げへの循環につなげることは、社会全体の活性化のためにも不可欠です。大胆な投資促進税制をはじめとした支援を活用し、企業と社会がともに成長できる環境整備を目指しましょう。
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