文部科学省は、令和9年度(2027年度)予算の概算要求を公表しました。一般会計の要求・要望額は8兆7,750億円で、令和8年度予算額5兆8,809億円から2兆8,941億円増加しています。
このうち『「強く豊かな日本」投資枠』は2兆1,830億円で、高校・大学を通じた成長分野の人材育成、学校現場でのAI活用、科学技術・研究開発、学校施設の国土強靱化などに重点的な要求が行われています。
また、「高等学校教育改革交付金(仮称)」等の創設や、老朽化した大学病院施設・設備の緊急的な改善については、具体的な金額を要求段階で定めない「事項要求」とされています。
この記事では、令和9年度文部科学省概算要求の総額と主な内訳、学校AI、高校改革、大学・高専支援、科学技術、学校施設整備、教育費負担軽減など、注目したい施策を解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
文部科学省の令和9年度概算要求はいくら?一般会計は8兆7,750億円

出典:文部科学省「令和9年度文部科学省 概算要求等の発表資料一覧」
令和9年度の文部科学省概算要求では、一般会計に8兆7,750億円、エネルギー対策特別会計に1,618億円が要求されています。
一般会計は令和8年度予算の5兆8,809億円から2兆8,941億円増加しました。単純比較では約49%の増加となります。
| 令和9年度 文部科学省概算要求額 | |||
|---|---|---|---|
| 区分 | 令和9年度要求・要望額 | 令和8年度予算額 | 増減額 |
| 一般会計 | 8兆7,750億円 | 5兆8,809億円 | +2兆8,941億円 |
| エネルギー対策特別会計 | 1,618億円 | 1,087億円 | +530億円 |
一般会計のうち、『「強く豊かな日本」投資枠』として2兆1,830億円、エネルギー対策特別会計では211億円が計上されています。
なお、令和7年度補正予算については一般会計1兆6,091億円、エネルギー対策特別会計236億円が併記されています。概算要求額と前年度予算額を比較する際は、補正予算が別に措置されている点にも注意が必要です。
「強く豊かな日本」投資枠は2兆1,830億円|人材育成・研究開発・国土強靱化を重点支援
文部科学省では、一般会計8兆7,750億円のうち2兆1,830億円を『「強く豊かな日本」投資枠』として要求しています。
主な重点分野は、人材育成、戦略分野の研究開発、国土強靱化です。
文部科学省の資料では、人材育成について「8つの分野横断課題」の一つとして1兆673億円+事項要求を計上しました。高校から大学・大学院、リスキリングまで一貫した人材育成を進める方針が示されています。
また、17の戦略分野を牽引する研究開発・人材育成には8,645億円、国土強靱化には2,512億円が示されています。学校・大学施設の耐災害性向上や、地震・津波・火山観測なども対象です。
文教関係予算は5兆7,360億円+事項要求|学校改革・教育DX・大学支援を拡充
教育関係では、文教関係予算として5兆7,360億円+事項要求が示されています。令和8年度予算は4兆5,981億円、令和7年度補正予算は8,887億円です。
主な柱は次のとおりです。
| 文教関係の主な重点施策 | |
|---|---|
| 分野 | 主な内容 |
| 教師・学校運営 | 教職員定数改善、教師の処遇改善、働き方改革、人材確保 |
| 高校改革 | 高等学校教育改革交付金(仮称)等の創設、DXハイスクールなど |
| 学校DX・AX | AI活用環境、次世代校務DX、セキュリティ、教育データ活用 |
| 学習指導要領 | デジタル学習指導要領、英語・理数・道徳教育など |
| 学校施設 | 老朽化対策、防災、空調、脱炭素化、大学・高専施設整備 |
| 高等教育 | 国立大学、私立大学、高専、成長分野への学部転換等 |
| 学びの保障 | 不登校・いじめ対策、修学支援、就学支援金、学校給食費負担軽減 |
学校でのAI活用に884億円|研修・AIアプリ・データ・クラウドを一体整備
令和9年度概算要求で特に伸びが大きいのが、学校現場におけるAI活用です。
「学校現場における安全かつ主体的なAI活用環境整備」には884億円を要求しています。令和8年度予算は4億円、令和7年度補正予算は41億円で、令和9年度は事業規模が大幅に拡大しています。884億円は全額が『「強く豊かな日本」投資枠』です。
支援内容は4つに分かれています。
| 学校現場のAI活用に関する主な事業 | |
|---|---|
| 事業 | 要求額 |
| 全国的な教職員向け研修・AIリスク調査 | 5億円 |
| 教育分野に特化したAIアプリケーションの実証 | 9億円 |
| 教育分野に必要な基盤的データ整備 | 92億円 |
| AI利活用に向けたクラウド環境整備 | 778億円 |
特に大きいのがクラウド環境整備です。アクセス制御やデータ保護などのセキュリティ対策を講じ、教職員がAIを校務にも活用できる環境を整備します。
GIGAスクール・教育DXも継続
AIだけでなく、GIGAスクール構想を支える教育DX基盤も拡充します。
「教育DX環境を支える基盤ツールの整備・調査研究」には26億円を要求しました。MEXCBTの改善・活用に14.5億円、教育データ利活用の実証等に3.2億円、校務DX等加速化事業に2.4億円などが計上されています。
また、次期学習指導要領を見据え、情報活用能力を高めるための教材開発や、教員の指導体制強化も進められます。
高校改革は「高等学校教育改革交付金(仮称)」を新設へ|金額は事項要求
高校教育では、新たに「高等学校教育改革交付金(仮称)」等を創設する方針が示されています。
2040年を見据え、地域社会や産業構造の変化に対応する高校教育へ転換するため、都道府県等が実行計画を策定し、その計画に位置づけられた高校改革を国が支援します。
支援の基本となるのは次の3分野です。
- 専門高校の機能強化・高度化
- 普通科改革を通じた高校の特色化・魅力化
- 地理的アクセス・多様な学びの確保
施設整備、設備・備品、人件費、委託費なども支援対象として想定されています。
ただし、令和9年度の要求額は事項要求です。具体的な予算規模は今後の予算編成過程で検討されます。
大学・高専支援を拡充|国立大学1兆2,512億円、成長分野転換基金1,100億円
高等教育では、国立大学の基盤強化や、理工・デジタル分野などへの学部転換が重点となっています。
国立大学法人運営費交付金は1兆2,512億円が示され、令和8年度の1兆971億円から増額されています。成長分野や地域産業を支える人材育成、基礎研究、教育研究設備などを支援します。
また、「大学・高専機能強化支援事業(成長分野転換基金)」では、現在の基金残高では不足する額を積み増すため、1,100億円を要求しています。
この事業では、
- 大都市圏の大学を中心とした大規模な理系転換
- 高専の新設・機能強化
- 戦略17分野に関係する大学・大学院の人材育成
などを支援し、最長10年間の支援を想定しています。
AIを使える人材育成に「AX実装人材育成拠点形成事業」35億円
新規事業として、「AX実装人材育成拠点形成事業」に35億円が要求されています。
企業や自治体の課題をAIで解決するPBL型学習や、質の確保されたAI講座の受講・単位認定などを通じ、AIを実務で利用できる人材の育成を支援します。
対象は大学や高等専門学校などで、AI研究者だけではなく、営業、経理、製造など幅広い職種でAIを活用できる人材の育成を想定しています。
大学病院の教育・研究機能強化に633億円|老朽施設は事項要求
大学病院についても新しい支援策が打ち出されました。
「大学病院機能のリバランス促進事業」には633億円を要求しています。
大学病院では診療業務への負担が大きく、教育・研究に充てる時間や人員の確保が課題となっています。このため、研究に専任できる教員やURAなどの配置、教育・研究に必要な医療機器の整備などを支援し、診療と教育・研究のバランス改善を図ります。
一方、老朽化した大学病院施設・設備の緊急的な改善については事項要求です。概算要求段階では金額が確定していません。
公立学校施設の整備に4,308億円|空調・耐震・老朽化対策を推進
学校施設関係では、公立学校施設の整備に4,308億円が示されています。
重点となるのは、新しい学習環境の整備と老朽化対策、防災・減災です。
主な内容には、
- 学校施設の長寿命化
- バリアフリー化
- 他施設との複合化・集約化
- 校内ネットワーク環境
- ZEB化
- 体育館等への空調設置
- 避難所としての防災機能強化
などがあります。
国立大学・高専等施設の整備には1,828億円、私立学校施設・設備の整備には472億円が示されています。
科学技術関係は2兆4,453億円+事項要求|AI for Scienceなどを重点化
科学技術関係の要求額は2兆4,453億円+事項要求です。令和8年度予算9,863億円、令和7年度補正予算5,801億円が併記されています。
主な分野には、
- 科研費
- 国際研究交流
- 科学技術人材育成
- AI for Science
- 量子
- マテリアル
- 健康・医療・バイオ
- フュージョンエネルギー
- 宇宙・航空
- 原子力
- 防災・減災
- 海洋・極域
などがあります。
AI for Scienceは3,789億円
科学研究そのものにAIを活用する「AI for Scienceによる科学研究の革新」には、総額3,789億円を要求しています。このうち2,984億円が『「強く豊かな日本」投資枠』です。
研究データ基盤の整備、AIエージェントを使った研究パイプライン、学術情報ネットワークなどを強化し、AIを活用した科学研究の高度化を目指します。
学校給食費の負担軽減に1,656億円|小学校給食を支援
家計負担に関係する施策では、「学校給食費の抜本的な負担軽減」に1,656億円を要求しています。令和8年度予算は1,649億円です。
対象は公立小学校段階の学校給食で、国が給食費負担軽減交付金を都道府県へ交付し、自治体を通じて保護者負担を軽減する仕組みです。
令和9年度の月額基準額案は、完全給食の場合、
- 小学校・義務教育学校前期課程:5,400円
- 特別支援学校小学部:6,400円
となり、前年度の基準額から引き上げる案が示されています。
なお、これは個人が文部科学省へ申請して受け取る給付金ではなく、自治体を通じた支援制度です。
不登校・いじめ対策や学びのセーフティネットも拡充
文部科学省は、誰一人取り残されない学びの保障も重点項目としています。
校内外の教育支援センターの機能強化、学びの多様化学校の設置促進、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの配置などを通じ、不登校・いじめ・暴力行為・自殺対策を進めます。
また、
- 高等教育の修学支援
- 高等学校等就学支援金
- 高校生等奨学給付金
- 学校給食費の負担軽減
など、教育費負担を軽減する施策も継続・拡充する方針です。
スポーツ・文化芸術にも重点配分
スポーツ関係では1,350億円+事項要求、文化芸術関係では2,335億円+事項要求が示されています。
スポーツ分野では学校体育館などの地域利用、スポーツ施設の防災機能・空調整備、部活動の地域展開、スポーツツーリズムなどを進めます。
文化芸術分野では、「文化財の匠プロジェクト」、文化財の保存・活用、クリエイター等の人材育成、コンテンツ産業の国際展開などが重点となっています。
事項要求となっている主な施策は?予算額は今後決定
令和9年度文部科学省概算要求では、すべての事業について金額が確定しているわけではありません。公式資料では、少なくとも次の施策が事項要求として明記されています。
- 「高等学校教育改革交付金(仮称)」等の創設
- 老朽化した大学病院施設・設備の緊急的な改善等
これらは予算編成過程で必要な経費が検討されるため、現時点では最終的な金額は決まっていません。
令和9年度予算はいつ決まる?概算要求から実施までの流れ
概算要求は各省庁が財務省へ提出する予算の要求段階であり、そのまま令和9年度予算として確定するわけではありません。
| 令和9年度予算の一般的な流れ | |
|---|---|
| 2026年夏 | 各省庁が令和9年度概算要求を提出 |
| 2026年秋~年末 | 財務省による査定・予算編成 |
| 2026年末頃 | 政府予算案を決定 |
| 2027年1月~3月頃 | 通常国会で予算案を審議 |
| 2027年4月以降 | 成立した予算に基づき各事業を実施 |
特に事項要求となっている事業や新規制度については、今後、名称・金額・対象・要件などが変わる可能性があります。
文部科学省の令和9年度概算要求に関するよくある質問
文部科学省の令和9年度概算要求はいくらですか?
一般会計の要求・要望額は8兆7,750億円です。令和8年度予算額5兆8,809億円から2兆8,941億円増加しています。このほか、エネルギー対策特別会計として1,618億円が要求されています。
「強く豊かな日本」投資枠はいくらですか?
一般会計では2兆1,830億円が『「強く豊かな日本」投資枠』として要求されています。高校・大学等での人材育成、AIや科学技術の研究開発、学校・大学施設の国土強靱化などに活用する方針です。
学校でのAI活用にはいくら要求されていますか?
「学校現場における安全かつ主体的なAI活用環境整備」に884億円が要求されています。教職員向け研修、教育用AIの実証、学習指導要領等のデータ整備、AIを安全に利用するためのクラウド環境整備などが対象です。
高等学校教育改革交付金(仮称)はいくらですか?
令和9年度概算要求では事項要求とされており、現時点で具体的な金額は決まっていません。専門高校の機能強化、普通科改革、高校へのアクセスや多様な学びの確保などを支援する制度として検討されています。
大学や高専向けにはどのような支援がありますか?
国立大学の基盤強化、大学・高専機能強化支援事業、理工・デジタル分野への学部転換、高専の新設・機能強化、AX実装人材育成などが盛り込まれています。大学・高専機能強化支援事業では、成長分野転換基金への積み増しとして1,100億円、AX実装人材育成拠点形成事業には35億円が要求されています。
学校給食費の負担軽減は続きますか?
令和9年度概算要求では、学校給食費の抜本的な負担軽減に1,656億円が要求されています。公立小学校段階の給食費について、自治体を通じて保護者負担を軽減する仕組みです。
概算要求額はそのまま令和9年度予算になりますか?
そのまま確定するわけではありません。概算要求は予算編成の要求段階であり、今後の査定や政府予算案、国会審議を経て最終的な予算額が決まります。事項要求となっている制度については、必要な経費も予算編成過程で検討されます。
まとめ|令和9年度は学校AI・高校改革・科学技術への投資を大幅拡充
文部科学省の令和9年度概算要求は、一般会計8兆7,750億円となりました。このうち『「強く豊かな日本」投資枠』は2兆1,830億円で、高校・大学等の人材育成、AI、科学技術、学校施設の強靱化などに重点的な要求が行われています。
教育分野では、学校現場のAI活用に884億円、公立学校施設整備に4,308億円、成長分野転換基金への積み増しとして1,100億円などが要求されています。一方、「高等学校教育改革交付金(仮称)」や大学病院の老朽施設・設備の緊急改善は事項要求であり、今後の予算編成で規模が決まります。
令和9年度は、従来の教育環境整備に加え、AI・DX、人材育成、科学技術、老朽化・防災対策までを一体的に強化する内容となっています。ただし、概算要求段階のため、最終的な予算額や制度内容は政府予算案や各事業の実施要領で確認する必要があります。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する


