
働く女性が、手取りが減らないように就労時間を調整する、いわゆる「年収の壁」問題を解決するため、国や自治体では企業の環境整備を支援しています。
令和6年(2024年)度まで設定されていた「年収の壁対策支援奨励金」は、令和7年度、「年収の壁突破」総合対策促進奨励金となりました。今回は東京都「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の概要や昨年度からの変更点、申請方法をまとめました。
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この記事の目次
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金とは?
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金は、働く意欲のある女性が就業調整を行うことなく、能力を十分に発揮できる環境を整備するための制度です。配偶者手当の見直しや、社会保険に加入した非正規雇用者向けの手当等の新設を行った都内中小事業主に、奨励金を交付します。
本事業では、以下の2つのコースが設定されています。
(1) 社会保険加入促進コース 社会保険料に関する手当等を新設する企業に奨励金を交付 (2) 配偶者手当見直しコース 配偶者の収入要件のある配偶者手当を見直した企業に奨励金を交付 |
まずは昨年度からの変更点や、制度の概要をみていきましょう。
「年収の壁対策支援奨励金」からの変更点
前年度まで設置されていた「年収の壁対策支援奨励金」は、以下の取組が対象でした。
(1) 「配偶者の収入要件がある家族手当」の規定に、以下のいずれかの見直しを行うこと ■配偶者手当(家族手当)の収入要件を撤廃する ■配偶者手当(家族手当)を廃止し、他の手当に振り替える ■配偶者手当(家族手当)を廃止し、基本給に繰り入れる |
(2) 見直しの内容について労使協定を締結した上で、就業規則の改正・社内周知・就業規則の届出を行うこと |
(3) 取組期間内(交付決定日から3か月以内)に行い、実績報告を行うこと |
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金では、同内容の「配偶者手当見直しコース」に加え、「社会保険加入促進コース」が新設されています。
また交付金額も、10万円から各コース30万円(2コースの併用で50万円)と増額されました。
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の対象事業者
各コースの対象事業者は、以下のとおりです。
(1) 社会保険加入促進コース |
・就業規則に「新たに社会保険の対象とする非正規雇用者が負担する社会保険料に関する手当等」の規定がないこと ・新たに社会保険の加入対象となる非正規雇用者がいること |
(2) 配偶者手当見直しコース |
・就業規則に「配偶者の収入要件がある配偶者手当」の規定があること ・過去5年以内に「配偶者の収入要件がある配偶者手当」の支給実績があること。また、支給実績のある日付以降に就業規則の当該手当の記載を削除したことがないこと |
いずれも都内で事業を営んでいる事業者であることが、要件のひとつです。
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の主な要件
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の主な要件は、以下のとおりです。
- 都内で事業を営んでいる事業者であること
- 都内に勤務する常時雇用労働者を1名以上、6か月以上継続して雇用していること
- 就業規則を労働基準監督署に届出ていること
- 東京都政策連携団体、事業協力団体または東京都が設立した法人でないこと
- 過去5年間に重大な法令違反等がないこと
- 過去5年間に、不正受給による不支給決定または支給決定の取り消しを受けたことがないこと
- 労働関係法令を遵守していること
- 法人都民税および法人事業税等の未納がないこと
- 暴力団関係者または風俗営業者等でないこと
また申請では、受付期間中に事前エントリーを行い、当選の連絡を受け取っていることが条件となります。
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の対象取組
対象となる取組は、以下のとおりです。
(1) 社会保険加入促進コース |
①取組期間内に、非正規雇用者が負担する社会保険料に関する手当を新設すること |
②非正規雇用者1名以上が、新たに社会保険に加入し、該当手当の受給対象となる計画を作成すること |
③労使協定を締結後に就業規則を改正し、所轄の労働基準監督署に届け出ること |
④社内周知および、該当手当に関連する社内研修を行うこと |
(2) 配偶者手当見直しコース |
①「配偶者の収入要件がある配偶者手当」について、取組期間内に、以下のいずれかの見直しを行うこと ・配偶者手当の収入要件を撤廃する ・配偶者手当を廃止し、他の手当に振り替える ・配偶者手当を廃止し、基本給に繰り入れる |
②見直しの内容について、労使協定を締結すること |
③労使協定を締結後に就業規則を改正し、所轄の労働基準監督署に届け出ること |
④社内周知および該当手当に関連する社内研修を行うこと |
なお就業規則の改正と届け出は、労働者数が10人未満の事業者でも必要です。
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の金額
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の金額は、それぞれ30万円です。なお2つのコースを実施した場合は、奨励金額は50万円となります。
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の申請について
「年収の壁突破」総合対策促進奨励金の申請では、事前エントリーが必要です。事前エントリー期間は全10回、設定されています。事業の流れや、申請スケジュールをまとめました。
事業の流れ
事業全体の流れは、以下のとおりです。
(1) 事前エントリー (2) 交付申請 (3) 審査 (4) 交付決定通知 (5) 取組実施 個別相談を2回実施してください。 ・1回目:交付決定日から1か月以内 ・2回目:交付決定日から3か月以内 (6) 実績報告 (7) 奨励金請求書兼口座振替依頼書提出 (8) 奨励金振込 |
なお個別相談の予約は、本奨励金専用の予約フォームより行います。
出典:「年収の壁突破」総合対策促進奨励金募集要項(申請の手引き)
事前エントリースケジュール
事前エントリーのスケジュールは、以下のとおりです。
募集回 | 予定社数 | 事前エントリー受付期間 |
第1回 | 130社 | 令和7年5月15日(木)午後2時~令和7年5月30日(金)午後5時 |
第2回 | 130社 | 令和7年6月2日(月)午前9時~令和7年6月30日(月)午後5時 |
第3回 | 130社 | 令和7年7月1日(火)午前9時~令和7年7月31日(木)午後5時 |
第4回 | 130社 | 令和7年8月1日(金)午前9時~令和7年8月29日(金)午後5時 |
第5回 | 130社 | 令和7年9月1日(月)午前9時~令和7年9月30日(火)午後5時 |
第6回 | 130社 | 令和7年10月1日(水)午前9時~令和7年10月31日(金)午後5時 |
第7回 | 130社 | 令和7年11月4日(火)午前9時~令和7年11月28日(金)午後5時 |
第8回 | 130社 | 令和7年12月1日(月)午前9時~令和7年12月26日(金)午後5時 |
第9回 | 130社 | 令和8年1月5日(月)午前9時~令和8年1月30日(金)午後5時 |
第10回 | 130社 | 令和8年2月2日(月)午前9時~令和8年2月27日(金)午後5時 |
各回の受付期間終了後に抽選が行われ、当選した事業主が申請できる仕組みです。当選メールの送信日から、1か月以内に交付申請を行ってください。
なお事前エントリーは、1事業主につき1回限りとなります。
まとめ
東京都の「年収の壁突破」総合対策促進奨励金は、女性の就業調整を防ぎ、働きやすい環境整備を支援する制度です。従来の「配偶者手当見直しコース」と、新設された「社会保険加入促進コース」との2つがあり、各コース30万円、両方実施すれば50万円の奨励金が受けられます。
申請には、事前エントリーが必要です。令和7年5月から令和8年2月まで全10回の募集が予定されています。
働く意欲があるのに働けずにいる人材を活用することは、人材不足に悩む企業にとってもメリットの大きい取組です。支援策を活用しつつ制度を見直して、持続可能な企業成長につなげましょう。
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