いま、小学校休業等対応助成金が再び注目されています。背景には、新型コロナの感染拡大による保育所等の休園が急激に増加していることがあげられます。
小学校休業等対応助成金とは、コロナによる休校・休園などで子どもの世話を行うことが必要となった労働者に対し、賃金が全額支給される有給の休暇を取得させた事業主を支援する制度です。
本助成金の申請は事業主が行いますが、会社にこの助成金を活用してもらえない場合は、労働者が特別相談窓口に問い合わせて、労働局から会社に対して制度活用を働きかけてもらうことができます。事業主がそれに応じない時は、労働者が自ら休業支援金・給付金の支給申請を行うといった方法もあります。
今回は、コロナ禍の仕事と育児の両立を補償する制度である「小学校休業等対応助成金」について、事業主の皆さま、労働者の皆さまが制度を利用するためのポイントをご紹介します。
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この記事の目次
保育所等の休園が急増
令和4年になり1月半ばを過ぎたころから、保育所等の休園が急増しています。
出典:保育所等における新型コロナウイルスによる休園等の状況
厚生労働省が公表した1月27日時点の保育所等における新型コロナによる休園等の状況によると
「全面休園している保育所等がある都道府県の数:37」
「全面休園している保育所等の数:644」
となっており、休園施設数は前の週(327施設)のおよそ2倍になっています。これにより、子どもを預けることができずに就業に影響が及ぶ保護者が増加していることが推測されます。
小学校休業等対応助成金とは
小学校休業等対応助成金とは、子どもたちの健康、安全を確保することを目的として、新型コロナにかかる休校や休園等により仕事を休まざるを得なくなった保護者を支援するために、有給の休暇を取得をさせた事業主に対して助成金を支給する制度です。
制度の内容はこちらの記事にてまとめておりますのでご確認ください。
【助成内容】
有給の特別休暇を取得した対象労働者に支払った賃金相当額の10/10が事業主に支給されます。以下のとおり、日額上限額は休暇の取得時期によって異なりますが、申請の対象期間中に緊急事態宣言、まん延防止等重点措置の対象地域に事業所がある企業は、日額15,000円が上限となります。
(令和4年10月以降は、特例的な措置の上限額を12,000円に減額)
・令和4年7月~9月30日の間に取得した休暇:日額上限9,000円
・令和4年10月以降は、原則的な措置の上限額が8,355円に減額されます。
対象労働者1人につき、対象労働者の日額換算賃金額×有給休暇の日数で算出した合計額が支給されます。
【支給要件】
次の(1)~(4)の要件に該当する事業主が対象となります。
(1)雇用する労働者の申出により、令和3年8月1日から令和4年11月30日までの間に、以下のいずれかに該当する有給休暇を取得させたこと。
- 新型コロナウイルス感染症に関する対応として臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇
- 新型コロナウイルス感染症に感染したまたは風邪症状など感染したおそれのある、小学校等に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇
(2)(1)の有給休暇は、労働基準法上の年次有給休暇とは別のものであること。
(3)(1)の有給休暇は、年次有給休暇の場合と同等の賃金が支払われるものであること。
(4)(1)の有給休暇を取得した労働者が、申請日時点において1日以上は勤務したことのある労働者であること。
ポイントは、有給の休暇が「年次有給休暇」とは別のものであるという点でしょう。労働基準法の年次有給休暇を取得させても、助成金の対象になりません。事業主の皆さまには、この助成金を活用して有給の休暇制度を設けて、保護者が希望に応じて休暇を取得できる環境の整備が求められているところが、本助成金のハードルが上がってしまっている理由のひとつとして考えられます。
しかし、必ずしも、一からコロナのための特別休暇を設ける必要はありません。たとえば、既存の特別休暇制度の対象にすることで有給の休暇を付与した場合は、助成金の対象になります。また、看護休暇(対象年齢・日数は法定相当)を有給で取得させた場合も対象になります。
参考:小学校休業等対応助成金Q&A 対象となる有給の休暇
<参考>
※令和4年9月時点で、令和3年8月1日~令和4年6月30日までの休暇に係る申請受付は原則として終了しています。ただし、やむを得ない理由があると認められる場合に限り、申請期限経過後に申請することが可能(令和4年12月28日まで)です。
事業者の皆さまへ 小学校休業等対応助成金について
令和3年7月までは、子どもの面倒を見る労働者に対し特別な有給休暇を取得させた場合は、両立支援等助成金の育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)で対応していました。
小学校休業等対応助成金は、令和3年8月1日以降の休暇が対象となっており、両立支援等助成金の育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)よりも、使いやすい制度となっています。
小学校休業等対応助成金について、両立支援等助成金の育児休業等支援コースとの違いは以下のとおりです。
・特別有給休暇制度の就業規則等への規定化は必須ではありません
・1事業主あたりの支給上限人数はありません
・個々の労働者の賃金相当額の10/10が事業主に支給されます(日額上限額あり)
・テレワーク等の両立支援の仕組みの社内周知は不要です
両立支援等助成金では、労働者1人あたり5万円、1事業主につき10人まで(上限50万円)という助成内容でしたが、小学校休業等対応助成金では、1事業主あたりの支給上限人数はなく、要件に該当する有給の休暇であれば、休暇日数の制限もありません。日額上限額はありますが、個々の労働者の賃金相当額の10/10が支給されるという手厚い助成内容になっています。
新型コロナの感染拡大で休まざるを得ない人が増えているなかで、こういった助成制度の対象にならない方もいらっしゃいますので、不公平感がある、といった現場の混乱や戸惑いも当然あると思います。ただ、国が抱える諸課題には、子育て支援や女性の活躍支援などがあがっていて、政府の目標に沿った事業が実施されるという側面もあります。
現在は、感染急拡大による臨時休園等により仕事を休まなくてはならない保護者が多く出ている状況ですので、事業者の皆さまは、コロナ禍の仕事と育児の両立を図るために再開された小学校休業等対応助成金の活用をご検討ください。
▼申請に必要な書類や様式の記載例はこちらからどうぞ!
支給申請の手引き(新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金のご案内)
労働者の皆さまへ 小学校休業等対応助成金について
本助成金の申請者は事業主ですので、まず労働者の方は、総務や人事に小学校休業等対応助成金の制度を導入しているか確認することから始めましょう。
小学校休業等対応助成金の特徴として、会社にこの助成金を活用してもらえない場合は、特別相談窓口に問い合わせて、労働局から会社に対して制度活用を働きかけてもらうことができます。
◆会社が今回の助成金の対象になるような特別休暇を設けてくれません。どうすればよいですか。(小学校休業等対応助成金Q&Aより)
事業主が労働者に助成金の対象となるような有給の特別休暇を設けることは義務ではありませんが、政府としては、子どもの世話をする労働者の方々が希望に応じて有給の休暇を取得できるよう、本助成金制度の周知、活用促進に努めております。御質問のような場合には、本助成金のリーフレット等をご活用いただきながら、再度、労使で十分話し合いをしていただくことが考えられます。
また、「小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口」を全国の都道府県労働局に設置し、労働者からの「(企業に)この助成金を利用してもらいたい」等のご相談内容に応じて、事業主への特別休暇制度導入・助成金の活用の働きかけを行います。都道府県労働局では「企業が有給の特別休暇制度を導入してくれない」等の相談に応じていますので、お勤めの事業場を管轄する都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に御相談ください。(抜粋:小学校休業等対応助成金Q&A その他)
こちらが小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口の都道府県別 電話番号の一覧です。
出典:小学校休業等対応助成金に関する特別相談窓口のご案内
助成金を利用してもらいたい場合、まずは、上記特別相談窓口に相談して、労働局から事業主に、小学校休業等対応助成金の活用の働きかけを行います。それでも事業主が助成金の活用に応じない場合には、労働者が休業支援金・給付金の支給申請ができるよう、労働局から事業主に必要な協力の働きかけを行うという流れになります。
労働者による直接申請(休業支援金・給付金の仕組みを使った申請)には、当該労働者を休業させたとする扱いに事業主が同意することが必要で、事業主記載欄の記入や当該労働者への証明書類の提供についても事業主の協力が必要になります。申請にあたって事業主の協力は不可欠ですので、制度の導入、活用を求める際は、事前に必要な手続きの内容を伝えておくなど、労使関係の悪化に気を付けながらの働きかけが重要になります。
<参考>新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金とは?
新型コロナおよびそのまん延防止の措置の影響により休業させられた労働者のうち、休業手当の支払いを受けることができなかった方に対し、当該労働者の申請により、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金を支給する制度です。
参考:新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
まとめ
今回は、小学校休業等対応助成金について、事業主の皆さま、労働者の皆さまが制度を利用するためのポイントをご紹介しました。
小学校休業等対応助成金は、休校や休園に伴い、子どもの世話を行うため仕事を休まざるを得ない保護者等を支援し、子どもたちの健康、安全を確保するための制度です。
現在、新型コロナの感染拡大で子どもの通う保育園などが閉まり、仕事を休まなければならない保護者が多く出ている状況ですので、助成制度の内容をご確認いただき、ぜひ制度の活用をご検討ください。
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