「電動トラックに切り替えたいが、ディーゼル車との価格差が大きすぎる」「荷主から脱炭素対応を求められているものの、車両の入れ替えコストまでは捻出できない」
そんな悩みを抱える運送事業者や、自家用トラックで配送を行う事業者は少なくないのではないでしょうか。燃料価格の高止まりや取引先からのCO2削減要請など、車両の電動化を検討せざるを得ない状況は年々強まっています。とはいえ、電動トラックの初期費用は依然として大きなハードルです。
この価格差を埋めるために国が用意しているのが、令和7年度補正予算「商用車等の電動化促進事業(トラック)」です。予算は約175億円。2026年9月25日時点の申請額は約50億円で、まだ約125億円(約7割)の予算が残っています。車両はディーゼル車との価格差をもとにした基準額まで補助され、充電設備も車両とセットで導入すれば補助の対象になります。
本記事では、補助額の考え方、自社が対象になるかどうかの判断ポイント、申請の流れと注意点、予算の残り状況までを分かりやすく解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
商用車等の電動化促進事業(トラック)とは?
商用車等の電動化促進事業(トラック)は、電動トラックと充電設備の導入費用を国が補助する制度です。環境省を中心に国土交通省・経済産業省が連携して実施しており、トラック分の執行団体は一般財団法人環境優良車普及機構(LEVO)が務めています。
令和7年度補正予算では「脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金」として、トラック・タクシー・バス・建設機械の電動化に補助が行われます。本記事では、このうちトラックの補助金を紹介します。
- 予算額:約175億円(国庫債務負担行為 約20億円を含む)
- 交付申請の受付:令和8年4月24日(金)〜令和9年1月15日(金)
- 対象車両:事前登録されたBEV・PHEV・FCV・水素内燃機関型のトラック(バンを含む)
- 車両の補助額:車種ごとに公表される「基準額」が上限
- 充電設備:車両と一体的に導入する場合に限り、機器費と工事費を補助
- 執行団体:一般財団法人環境優良車普及機構(LEVO)
補助対象になる車両の種類
補助対象は、電動化されたトラック車両(バンを含む)と、電気自動車の充電に必要な充電設備等です。車両の種類は次の4つです。
- BEV(電気自動車。バッテリー交換式を含む)
- PHEV(プラグインハイブリッド自動車)
- FCV(燃料電池自動車)
- 水素内燃機関型自動車(令和7年度補正から追加)
車両総重量(GVW)2.5トン超の車両は事業用・自家用ともに補助対象です。一方、2.5トン以下の車両は事業用(緑ナンバー)のみが対象で、自家用は対象外となります。
令和8年度に使える商用車の電動化補助金はこれ?
2026年度(令和8年度)に受付が行われている電動トラック向けの国の補助金は、この「令和7年度補正 商用車等の電動化促進事業(トラック)」です。補正予算で措置された事業のため名称は「令和7年度」ですが、公募は2026年4月24日に始まり、受付は2027年1月15日まで続きます。
なお、LEVOは令和8年度当初予算で「低炭素型ディーゼルトラック普及加速化事業」も実施しています。こちらは燃費性能の高いディーゼルトラックが対象で、電動トラックの補助金とは別の制度です。運送業で使える補助金の全体像は、次の記事で整理しています。
補助額はいくら?車両と充電設備の補助率
本補助金は、トラック車両と充電設備等でそれぞれ補助の仕組みが異なります。車両は車種ごとの「基準額」が上限、充電設備は機器費と工事費に補助率と上限額が設けられています。
トラック車両の補助額は「基準額」が上限
車両の補助額は、LEVOホームページで公表される車種ごとの「基準額」が上限です。基準額は、導入車両と同規模・同等仕様のガソリン車・ディーゼル車(標準車両)との価格差をもとに設定されています。
交付対象となるのは、事前登録を受けたトラックだけです。この事前登録は自動車メーカー等が車種・型式単位で行うもので、購入する事業者側の手続きは必要ありません。ただし、メーカーが登録していない車種は補助対象外です。契約前に、LEVOホームページの「事前登録された補助対象車両情報(補助対象車両一覧)」で導入予定の車種が掲載されているか必ず確認しましょう。
車両を値引きして買うと補助額はどうなる?
車両を値引きして購入した場合は、基準額から「値引額×係数」が差し引かれ、補助額が減ることがあります。係数は車両区分ごとに次のとおりです。
| 車両区分 | 基準額から差し引かれる額 |
|---|---|
| BEV(電気自動車) | 値引額×2/3 |
| PHEV(プラグインハイブリッド自動車) | 値引額×1/2 |
| FCV(燃料電池自動車)・水素内燃機関型自動車 | 値引額×3/4 |
たとえばBEVを90万円値引きして購入した場合、基準額から60万円(90万円×2/3)が差し引かれます。見積りを取る段階で、値引き額と補助額の関係を販売店に確認しておくと安心です。
購入・リース・ローン、どれが対象?
購入とリースはいずれも補助対象です。一方、割賦・ローンで購入した車両は対象外となります。完了実績報告の申請日までに決済されない手形での支払いも対象になりません。申請台数の上限は定められておらず、複数台を1つの申請にまとめることもできます。
充電設備等の補助率
充電設備等は、機器の購入費と設置工事費が補助対象です。区分ごとの補助率は次のとおりです。
| 区分 | 機器補助率 | 工事費補助率 |
|---|---|---|
| 急速充電器(150kW以上) | 10/10 | 10/10 |
| 急速充電器(150kW未満) | 1/2 | 10/10 |
| 普通充電器 | 1/2 | 10/10 |
| バッテリー交換式充電設備 | 1/2 | 10/10 |
| V2H充放電設備 | 1/2 | 10/10 |
| 外部給電器 | 1/3 | - |
| 高圧受電設備 | 10/10 | 10/10 |
ただし、機器の機種や工事内容ごとに補助金の交付上限額が設けられており、補助率どおりの金額が出るとは限りません。たとえばLEVOの「補助対象充電設備型式一覧表(急速充電設備)」では、出力180kW・2口の機種の上限額が700万円、出力400kW・4口の機種の上限額が1,400万円と掲載されています(2026年6月30日版)。導入予定の機器の上限額は、必ず一覧表で確認しましょう。
なお、高圧受電設備・設置工事費は、2030年度までの導入計画台数に合わせた規模で申請できます。
充電設備だけの申請はできる?
充電設備だけの申請はできません。充電設備等は、原則としてトラック車両と一体的に導入する場合に限り申請できます。主な条件は次のとおりです。
- 導入車両台数が充電設備の設置口数以上であること(導入車両台数≧設置口数)
- 設置場所が申請事業者の敷地(事業所、営業拠点)等であること
- 充電設備の課金装置を使用できない状態にしてあること
充電設備のみを導入したい場合は、経済産業省系の「充電インフラ補助金」など別の制度が候補になります。乗用車のEV購入補助(CEV補助金)は次の記事で解説しています。
誰が申請できる?対象者と対象要件
交付申請を行えるのは、補助対象車両の自動車検査証(車検証)上の「所有者」です。「使用者」ではない点に注意してください。リースの場合は、所有者であるリース会社が申請者となります。事業規模の制限はなく、大企業も中小企業も申請できます。
申請者は、国の目標等に準じる非化石エネルギー自動車の導入計画を設定したうえで、次のいずれかに該当する必要があります。
| 補助対象事業者 | |
|---|---|
| ア | 貨物自動車運送事業者 |
| イ | 自家用商用車(トラック等)を業務に使用する者(車両総重量2.5トン超の車両に限る) |
| ウ | 商用車(トラック等)の貸渡し(リース・レンタル)を行う者(ア、イ、エ又はキに貸し渡す者に限る) |
| エ | 地方公共団体 |
| オ | 貨物自動車運送事業の分社等により、自らが50%を超えて出資した子会社にトラック車両を貸与する者 |
| カ | トラックと一体的に導入される充電設備等を所有する者(リースの貸渡し先を含む) |
| キ | 上記の複数の者で構成されるコンソーシアム(共同事業体) |
| ク | その他環境大臣の承認を得て、機構が適当と認める者 |
個人事業主や運送業以外の会社でも申請できる?
運送業者(緑ナンバー)でなくても申請できます。自社の商品配送などで自家用トラックを業務に使っている事業者は、車両総重量2.5トン超の車両であれば対象です。
個人事業主の場合も、上の表のいずれかの区分に当てはまるかで判断します。業務に使うトラックが対象であり、私的に使う乗用車は対象外です。自社が区分に当てはまるか迷う場合は、契約前にLEVOへ問い合わせておくと確実です。
大企業(CO2多排出者)に追加される要件
地球温暖化対策推進法の算定・報告・公表制度で公表された令和4年度のCO2排出量が20万トン以上の事業者(地方公共団体を除く)は、交付申請日までに次の取り組みの実施を表明する必要があります。
- 令和8年度及び令和12年度の国内におけるScope1(事業者自ら排出)・Scope2(他社から供給された電気・熱・蒸気の使用)のCO2排出削減目標を設定し、公表する。令和8年度以降は毎年度の排出実績と進捗状況を、第三者の検証を経て公表する。
- 目標を達成できない場合は、Jクレジット・JCMなど国内のCO2排出削減に貢献する適格カーボン・クレジットを調達するか、未達理由を公表する。
GXリーグの参加者は、これらの取り組みを実施しているものとみなされます。
車両総重量8トン以下のトラックは導入計画5%以上が条件
車両総重量8トン以下のトラックを申請する場合は、2030年度における非化石エネルギー自動車の使用割合が5%以上となる導入計画であることが審査で確認されます。たとえば8トン以下のトラックを40台保有する事業者なら、2030年度に2台以上を電動車などにする計画が目安です。
申請はいつまで?受付期間と予算の残り
令和7年度補正予算分の交付申請の受付期間は、令和8年4月24日(金)から令和9年1月15日(金)までです。対象となる車両は、原則として令和8年2月2日(月)から令和9年1月15日(金)までに新車新規登録(軽自動車は新車新規検査)を受けた車両です。
| 申請スケジュール(令和7年度補正) | |
|---|---|
| 交付申請の受付期間 | 令和8年4月24日(金)〜令和9年1月15日(金) |
| 対象車両の新車新規登録期間 | 令和8年2月2日(月)〜令和9年1月15日(金) |
| 複数年度申請の新車新規登録期間 | 令和8年2月2日(月)〜令和9年12月17日(金) |
| 完了実績報告の期限 | 事業完了日から30日を経過した日、または完了した年度の2月12日のいずれか早い日 |
予算額は?残りはいくら?
予算額は約175億円(国庫債務負担行為 約20億円を含む)です。LEVOが公表している予算執行状況によると、2026年9月25日時点で申請車両969台・申請額50.02億円、残額は124.98億円です。
グラフのとおり、2026年9月下旬時点では予算の約7割が残っています。ただし、申請額が予算の8割程度に達すると先着順が終わり、まとめて審査する方式に切り替わります。最新の執行状況はLEVOのホームページで随時更新されるため、申請前に確認しましょう。
予算が残り少なくなるとどうなる?
審査は原則として申し込み順に行われます。しかし、予算の残額が2割程度に達した場合は、LEVOがホームページで公表した日から30日後までに届いたすべての交付申請をまとめて審査する方式に切り替わります。
この一括審査で予算残額を超える申請があった場合は、次のような申請者を優先して総合的に採択が決まります。
- 初めて申請を行う者
- 脱炭素先行地域に選定された地域内の事業所等に導入する者
2回目以降の申請となる事業者や、脱炭素先行地域外の事業者は、一括審査になると採択されない可能性があります。導入が決まっている場合は、早めの申請が安全です。
申請方法と申請の流れ
申請方法は、原則として電子申請(jGrantsまたは電子メール)です。電子申請が行えない場合は、郵便(当日消印有効)、信書便(当日受付印有効)、持参(土日・祝祭日を除く午後4時まで)でも申請できます。令和7年度補正からは識別番号発行依頼書が廃止され、すべての申請で押印を省略できます。
jGrantsで申請するには、gビズIDプライムの取得が必要です。ID取得には2〜3週間かかるため、早めに手続きしておきましょう。
車両だけなら購入後でも申請できる?
車両のみであれば、購入後に申請する「単年度申請(購入後)」が可能です。対象は令和8年2月2日以降に新車新規登録を受けた車両です。
一方、充電設備等は購入後の申請が認められず、交付決定前に発注・契約した経費は補助対象外です。車両と充電設備をセットで導入する場合は、必ず発注前に申請してください。
図のとおり、車両のみなら購入後の申請でも間に合いますが、充電設備を含む場合は「申請→交付決定→発注」の順番を守る必要があります。なお、車両本体の購入は交付決定の前後を問いませんが、交付決定を受けなければ補助金は交付されません。
2年度にまたがって導入する場合は?
車両を別々の年度に分けて導入する場合は「複数年度申請」が利用でき、新車新規登録の期限は令和9年12月17日(金)までとなります。ただし、各年度ごとに交付決定が必要で、2年目は予算が措置された場合に限り実施されます。
このほか、地方公共団体が使用する車両などに限り、事業が翌年度に終わる場合でも申請できる「国庫債務負担行為」の枠(約20億円)が設けられています。
申請前に確認したい注意点
申請の際は、対象経費の範囲だけでなく、補助金を受け取った後の義務まで確認しておくことが大切です。主な注意点は次のとおりです。
- 充電設備等と、第三者による改造を行う改造車は、交付決定通知を受ける前に発注・契約した経費は補助対象外です。
- 割賦・ローンでの購入や、完了実績報告の申請日までに決済されない手形は補助対象になりません。
- 国の他の補助金と重複して本補助金を受けることはできません。
- 導入した車両・充電設備にはLEVOが配付するステッカーの貼付が必要です。
補助金を受け取った後の義務は?
補助金の受領後も、報告義務と保有義務が続きます。
まず、走行データの報告が必要です。新車新規登録日以降、その年度の3月末までは四半期ごと、翌年度は半期(6か月)ごとに、月別の走行距離・稼働日数を事業報告書として提出します。提出は各年度の終了後30日以内です。
また、導入した車両・充電設備には処分制限期間が定められており、期間内に売却・譲渡・廃棄する場合はLEVOの承認が必要です。承認を受けて処分した場合でも、補助金の返還を求められることがあります。
| 対象 | 処分制限期間 |
|---|---|
| 運送事業用トラック(積載量2トン超) | 4年 |
| 運送事業用トラック(積載量2トン以下) | 3年 |
| 一般用(自家用)トラック | 5年 |
| 充電設備等 | 6年 |
商用車等の電動化促進事業(トラック)に関するよくある質問
商用車等の電動化促進事業(トラック)の予算額はいくら?
令和7年度補正予算のトラック分は約175億円(国庫債務負担行為 約20億円を含む)です。2026年9月25日時点の申請額は50.02億円、残額は124.98億円です。
申請はいつまでできる?
交付申請の受付期間は令和8年4月24日(金)から令和9年1月15日(金)までです。ただし、予算の残額が2割程度になると一括審査方式に切り替わり、予算超過時は採択されない場合があります。
令和8年度の商用車電動化の補助金はどれ?
2026年度(令和8年度)に受付中の電動トラック向けの国の補助金は、「令和7年度補正 商用車等の電動化促進事業(トラック)」です。補正予算の事業のため名称は令和7年度ですが、受付は令和8年4月24日から令和9年1月15日までです。
運送業者じゃなくても申請できる?
はい、申請できます。自家用トラック(車両総重量2.5トン超)を業務に使用する事業者や、地方公共団体、リース会社なども対象です。
個人でも申請できる?
補助対象は業務に使うトラックで、申請者は貨物自動車運送事業者や自家用商用車を業務に使用する者などの区分に当てはまる必要があります。私的に使う車両は対象外です。個人事業主の方は、区分に当てはまるかを契約前にLEVOへ確認すると確実です。
補助対象車両の一覧はどこで見られる?
LEVOホームページの「事前登録された補助対象車両情報(補助対象車両一覧)」に、車種ごとの基準額とあわせて掲載されています。一覧にない車種は補助対象外です。
補助対象車両の事前登録は自分でするの?
いいえ、事前登録は自動車メーカー等が行うため、購入者側の手続きは不要です。ただし登録されていない車種は補助対象外のため、契約前に補助対象車両一覧の確認が必要です。
車両を先に購入しても補助金はもらえる?
車両のみであれば購入後の申請も可能です(令和8年2月2日以降の新車新規登録が対象)。ただし充電設備等は交付決定前に発注すると補助対象外になるため注意してください。
ローンで買ったトラックは対象になる?
割賦・ローンで購入した車両は補助対象外です。購入(一括払い)またはリースが対象で、リースの場合は車検証上の所有者であるリース会社が申請します。
充電設備だけでも補助を受けられる?
受けられません。充電設備等は原則としてトラック車両と一体的に導入する場合に限り申請でき、導入車両台数が充電設備の設置口数以上である必要があります。
値引きして購入すると補助額は減る?
減る場合があります。基準額から、BEVは値引額の2/3、PHEVは1/2、FCV・水素内燃機関型は3/4が差し引かれます。
他の補助金と併用できる?
国の他の補助金と重複して受けることはできません。自治体の補助金との併用可否は、各自治体の要件をあわせて確認してください。
補助を受けたトラックはすぐに売却できる?
処分制限期間内(運送事業用で積載量2トン超は4年、2トン以下は3年、自家用は5年、充電設備は6年)に売却などをする場合はLEVOの承認が必要で、補助金の返還を求められることがあります。
まとめ
令和7年度補正「商用車等の電動化促進事業(トラック)」は、電動トラックとディーゼル車の価格差を埋めるための国の補助金です。車両は車種ごとの基準額まで補助され、充電設備も車両とセットで導入すれば機器費・工事費が補助の対象になります。
受付は令和9年1月15日(金)まで。2026年9月25日時点で予算約175億円のうち約125億円が残っていますが、残額が2割程度になると一括審査に切り替わり、初めての申請者などが優先されます。充電設備を含む場合は交付決定前に発注できないため、導入を検討している方は対象車両一覧と執行状況を確認したうえで、早めに準備を進めましょう。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する

