飲食店や宿泊施設にとって、受動喫煙対策は、経営基盤強化に関わる課題のひとつです。一方で、喫煙室の設置や分煙設備の撤去といった工事は、特に中小企業者にとっては予算的な負担も大きくなります。
こうした事業者をサポートするために、東京都の「経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業」では、喫煙専用室・指定たばこ専用喫煙室の設置、分煙環境設備の撤去の経費の一部を助成する「飲食事業者向け経営基盤強化支援(受動喫煙防止対策支援コース)」が設けられています。
令和8年度の申請受理期限は、令和8年9月11日(金)16時45分までです。本事業は毎年度継続して募集が行われており、来年度も同様の支援が続く見込みです。
今回は、受動喫煙防止対策支援コースの概要や申請方法をまとめました。
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この記事の目次
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(受動喫煙防止対策支援コース)とは
受動喫煙防止対策支援コースは、都内中小飲食事業者等が安定的な集客につなげていくために、受動喫煙防止対策に係る取組を支援するものです。実施主体は、公益財団法人東京都中小企業振興公社です。
具体的には、以下の2つの支援が受けられます。
| ①受動喫煙防止対策に必要な経費の一部を助成(助成金支援) ②飲食店等の経営に精通した専門家によるコンサルティングが無料(専門家派遣支援) |
また、東京都の「外国人旅行者の受入れに向けた宿泊・飲食施設の分煙環境整備補助金」で設置した分煙設備を撤去し、店内を全面禁煙化する場合には、その撤去費用等も助成対象となります。
なお本事業は、前年度まで「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(受動喫煙防止対策支援コース)」の名称で実施されていたものです。支援内容の枠組みは引き継がれており、令和8年度から事業名が変更されています。
厚労省の受動喫煙防止対策助成金との違い
受動喫煙対策に活用できる支援には、ほかに厚生労働省の受動喫煙防止対策助成金があります。東京都の受動喫煙防止対策支援コースとの主な違いは、以下のとおりです。
| 厚労省 受動喫煙防止対策助成金 | 東京都 受動喫煙防止対策支援コース | |
|---|---|---|
| 地域 | 全国の事業者 | 東京都内の事業者のみ |
| 助成率 | 主たる産業分類が飲食店の事業者は2/3(それ以外は1/2) | 2/3(中小飲食店で客席面積100㎡以下の場合は9/10) |
| 上限額 | 100万円 | 400万円(分煙設備撤去等は150万円) |
| 対象者 | 健康増進法で定める既存特定飲食提供施設 | 東京都内の宿泊施設または飲食施設を営む中小企業者 |
東京都の受動喫煙防止対策支援コースは都内の事業者のみが対象ですが、宿泊施設も対象となり、上限額も高く設定されています。なお、同一の設備について両方の助成金を重複して受けることはできません。
対象者
助成金の交付対象者となるのは、以下のいずれかに該当する事業者です。
・東京都内において宿泊施設を営む者
・東京都内において飲食施設を営む者で、中小企業基本法に定める中小企業者(資本金5,000万円以下または常時使用する従業員50人以下)に該当し、かつ大企業が実質的に経営に参加していない者
ただし、以下のいずれかに該当する場合は、対象外となります。
・事業税その他租税の未申告・滞納がある
・営業に関して必要な許認可等を取得していない
・東京都および公益財団法人東京都中小企業振興公社に対する賃料・使用料等の債務の支払いが滞っている
・申請日までの過去5年間に、公社・国・都道府県・区市町村等の助成事業に関して不正等の事故を起こした
・過去に公社から助成金の交付を受けており、申請日までの過去5年間に「企業化状況報告書」等を期日までに提出していない
・民事再生・会社更生・破産等の手続中など、事業の継続性について不確実な状況が存在している
・休眠会社として解散したものとみなされている
・連鎖販売取引など、公的資金の助成先として適切でないと判断される業態を営んでいる
・申請に必要な書類を全て提出できない
・その他、公社が公的資金の助成先として適切でないと判断する
また、風俗営業施設等や健康増進法上の喫煙目的施設は対象外です。過去に「飲食事業者向け経営基盤強化支援事業(受動喫煙防止対策支援)」「新たな事業環境に即応した経営展開サポート事業(飲食事業者向け経営基盤強化支援(受動喫煙防止対策支援コース))」「事業環境変化に対応した経営基盤強化事業(受動喫煙防止対策支援コース)」で助成金の交付を受けた施設も対象外となります。助成金の交付は1施設につき1回までです。
対象費用
主な助成対象経費は、以下のとおりです。
・機器等購入費および直接必要となる付帯設備費
・材料費
・労務費
・直接仮設費
・運搬費
・産業廃棄物処分費
・設計費
・立会検査費
・清掃費(当該工事に係るものに限る)および助成対象事業の実施に直接必要となる工事費
具体的には、間仕切り壁や扉の設置、給排気設備(換気扇・ダクト等)の設置、スプリンクラー・火災報知機の移設・増設、これらに伴う電気設備工事、喫煙専用室内の照明機器や空気清浄機・灰皿などが対象です。なお、導入設備は新品のみが対象となります。
一方、消費税等の間接経費、設置後の維持費、リース・レンタルによる設置、交付決定前に発注・施工した設備、中古品、現金やクレジットカードで支払った経費などは、助成対象外です。
助成要件
喫煙専用室・指定たばこ専用喫煙室を設置する場合の主な助成要件は、以下のとおりです。
| 助成要件 |
|---|
| 出入口において、室外から室内に流入する空気の気流が、0.2メートル毎秒以上である |
| たばこの煙が室内から室外に流出しないよう、壁、天井等によって区画されている |
| たばこの煙が屋外に排気されている |
| 『喫煙専用室』等が施設・店の適切な場所に配置され、事業計画が受動喫煙防止対策の進展に寄与している |
| 計画が消防・建築関係法令などに照らして問題ないことを、消防署等の所轄庁に確認している |
| 本助成事業の結果、当該施設または店の屋内における喫煙室以外の場所が禁煙となる |
| その他、健康増進法・東京都受動喫煙防止条例等の法令諸規則の定めに常に適合している |
分煙設備の撤去等の場合は、撤去後に施設または店の屋内が全面禁煙となることが要件です。
助成限度額・助成率
受動喫煙防止対策のうち、対象となる取組と助成額は以下のとおりです。
| 取組内容 | 助成限度額 | 助成率 |
|---|---|---|
| ①喫煙専用室の設置 | 400万円 | 2/3以内(一定条件を満たした場合9/10以内) |
| ②指定たばこ専用喫煙室の設置 | ||
| ③東京都「外国人旅行者の受入れに向けた宿泊・飲食施設の分煙環境整備補助」事業を通じて取得した分煙設備の撤去等 | 150万円 | 2/3以内 |
なお①②では、中小飲食店で客席面積が100㎡以下の場合、助成率が9/10になります。また、③の撤去に係る助成金(150万円)と①②の設置に係る助成金(400万円)を、同一施設で併給することはできません。
助成対象期間
助成対象工事等は、交付決定日以降に着手(契約・発注等)する必要があります。交付決定前に契約・発注したものは助成対象外です。
交付決定後のスケジュールの目安は、以下のとおりです。
・公社による測定・検査:遅くとも令和8年12月下旬までに適合
・実績報告書の受理:令和9年1月中旬まで
・助成金請求書の提出:令和9年2月19日(金)締切予定
【専門家の派遣について】
受動喫煙防止対策に係る経営上の相談やアドバイスを希望する場合には、無料で専門家の派遣が行われます。店舗を全面禁煙にするか、喫煙専用室を設置するかといった判断や、事業計画・資金計画の策定、マーケティングなどの相談が可能です。派遣回数は1企業あたり8回までで、派遣期間は令和9年3月31日までです。
ただし、喫煙室の設計や法令基準等、技術的な事項に関する相談やアドバイスは行われません。なお相談の活用は任意です。活用しなくとも、助成金の審査には影響がありません。
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業(受動喫煙防止対策支援コース)の申請について
事業全体の主な流れは、以下のとおりです。| ①交付申請書提出・受理 ②現地調査・書類審査 ③交付決定 ④契約・発注・施工 ⑤公社による測定・検査 ⑥実績報告書提出・受理 ⑦助成金額確定 ⑧助成金請求書提出 ⑨助成金交付 |

出典:経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業<飲食事業者向け経営基盤強化支援(受動喫煙防止対策支援コース)>
申請から交付決定までは約5週間、実績報告書の受理から助成金額確定までは約4週間、請求書の受理から交付までは30日以内が目安です。
申請方法と申請期間
受動喫煙防止対策支援コースは、デジタル庁が提供する「jGrants」による電子申請を行います。
jGrantsを利用するには「GビズID」でアカウント(GビズIDプライム)を取得する必要があります。GビズIDエントリーやGビズIDメンバーでは申請できません。アカウントの作成には審査で原則2週間程度かかるとされていますので、未取得の場合は、余裕をもって準備を始めてください。
【申請受付期間】
令和8年4月13日(月)10時~令和8年9月11日(金)16時45分まで
※予算に達し次第、申込受付は終了となります。
注意したいのは、期限は「提出」ではなく「受理」の期限である点です。受理とは、不備や不足のない申請書類が揃った状態を公社が確認できたことをいいます。書類に不備があると、修正や追加資料の提出が完了するまで受理とはならないため、締切間際の提出では受理に至らない場合もあります。申請を検討している場合は、事前に公社へ相談しながら進めるのが確実です。
【申請に必要な書類】
喫煙専用室・指定たばこ専用喫煙室の設置に係る申請に必要な主な書類は、以下のとおりです。
・提出書類チェックリスト
・見積書チェックリスト
・見積書(総括表)
・助成金交付申請書
・事業計画書
・誓約書
・事前確認事項(事前確認書)
・喫煙専用室等の排気設計に係る計算書
・施設全体の見取り図(整備前・整備後)
・客席面積図
・整備予定の設備等の設計図・立面図
・屋外排気の経路図
・工程表(施工スケジュール)
・カタログ類(換気扇等の仕様・性能がわかる資料)
・消防関係法令等の確認に係る議事録
・建築関係法令等の確認に係る議事録
・見積書(採用・不採用)
・履歴事項全部証明書(法人)または開業届の控え(個人)
・法人税および地方法人税申告における管轄税務署の受付記録または確定申告書類の写し
・営業許可書(取得済みの場合)
・賃貸人承諾書(賃貸物件の場合)
・その他、公社から個別に指示のあった書類
公社の指定様式は公式サイトからダウンロードでき、いずれもjGrantsにて提出します。電子申請のため、押印は不要です。
【代理申請について】
本事業では、jGrantsの代理申請機能を使って、行政書士等の第三者が申請手続きを代行することができます。ただし、申請の確認・提出は申請者自身が行う必要があり、工事を請け負う施工業者やその従業員などは代理申請を行うことができません。代理申請を行う場合は、公社所定の「同意書(代理申請用)」の提出が必要です。
まとめ
経営力強化に向けた創意工夫チャレンジ促進事業の受動喫煙防止対策支援コースは、都内中小飲食事業者等の経営基盤強化を目的とした助成制度です。喫煙専用室等の設置には最大400万円が助成され、「外国人旅行者の受入れに向けた宿泊・飲食施設の分煙環境整備補助」事業を通じて取得した分煙設備の撤去等には最大150万円の助成が受けられます。また希望者は、専門家による無料コンサルティングも受けられます。
令和8年度の申請受理期限は令和8年9月11日(金)16時45分までです。本事業は毎年度継続して募集されており、来年度も同様の支援が続く見込みです。今年度の申請に間に合わない場合も、GビズIDプライムの取得や所轄庁への確認、見積の取得など、時間のかかる準備を先に進めておくと、次回の募集にスムーズに対応できます。
受動喫煙対策は、すべての人が過ごしやすい社会の構築に大きく貢献します。企業にとっては、経営力の強化にもつながる取組です。支援策を上手に活用しながら、自店に合った受動喫煙対策を進めていきましょう。
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