不正受給したらどうなる?助成金・補助金申請前に確認すべき項目とは?

助成金は、会社が儲けるための制度ではありません。
従業員の処遇改善や社員教育、その費用を補助するための報奨金として使われています。助成金の財源は、会社が国に支払う「雇用保険料」から出ていて、要件を満たせば基本的に受給可能です。

助成金制度は、現在の社会情勢に反映して支給要件の緩和や、助成率の引き上げなどを行うことで制度拡充が進められてきています。要件が緩和され、受給し易くなるのはとても良いことですが、それと同時に虚偽の申請を行うなど、残念ながら不正受給問題が出てきてしまっているのも現状です。今回は、不正受給がどのようなものかを見ていきたいと思います。

1.不正受給とは?

「不正受給」とは、もともと存在しなかった書類や、実態と異なる書類を作成して提出を行い、助成金を受けようした場合のことを言います。つまり、「故意に偽って助成金を受給すること」を不正受給と言います。

ここで注意して頂きたいのは、助成金が実際に支給されたかどうかは問われないという点です。
申請をするだけでも不正受給」になるので、安易な気持ちで助成金の手続きを行わないようにして下さい。

2.不正受給をしたらどうなるの?

(1)事業所名の公表

都道府県労働局では、次の①~③を公表しています。
①事業主の名称、代表者氏名
②事業所の名称、所在地、概要
③不正受給の金額、内容

(2)全額返還

不正受給であることが判明した場合は、不支給または支給が取り消しされます。
すでに助成金支払い済の場合には、全額返還が必要です。

(3)刑事告発

詐欺、脅迫、収賄罪法など、特に悪質な場合には刑事告発が行われます。

(4)支給停止

不正受給してから、3年間は、雇用保険料を財源とした全ての助成金を受けられません。

(5)会計検査院の検査を受ける

助成金を受給すると、会計検査院の実地検査を受ける可能性があります。

会計監査院とは?
会計検査院は、国の収入支出の決算、政府関係機関・独立行政法人等の会計、国が補助金等の財政援助を与えているものの会計などの検査を行う、憲法上の独立した機関のことです。
参考:会計検査院HP

3.助成金申請の審査が厳しくなってきています!

近年では、助成金申請とは直接関係ない部分でも、ハローワークや労働局の調査が厳しくなってきています。審査時にはチェックされることがなかったとしても、後から調査が入ることもあるため、前提として正しい労務管理、帳簿の運用を行ってください。

以下(1)~(6)については、申請前に一度確認しておきましょう。
(1)雇用保険加入の事業主であるか
(2)社会保険・労働保険への加入をしているか
(3)賃金が最低賃金を下回っていないか
(4)時間外手当が支払われているか
(5)休業手当の支払い状況に矛盾がないか など
(6)出勤簿・賃金台帳等の裏付けとなる関係書類があるか

参照:会計検査院 雇用保険の雇用調整助成金に係る事業所訪問調査の実施について
参照:厚生労働省 雇用関係助成金支給要件

4.「より多くの助成金を貰える」など、甘い言葉にご用心!


最近では、「助成金の受給手続きに詳しい、より高額な助成金を受けられる方法を知っている」と主張する一部の経営コンサルタント等が、両立支援助成金の申請に関して、事業主に対して不正受給にあたる助言をする例が発生しています。
外部の者の助言に従って手続きを行った場合でも、助成金の不支給や返還、雇用関係助成金の3年間の支給停止措置や、場合によっては刑事告発等の対象となるのは、申請事業主自身です。

(1)事例1 領収書水増し発行


事業主Aは、助成金申請にあたり、「事業所内保育施設建設にかかった費用の領収書コピー」が必要でした。
助成金申請手続きに詳しいという外部の者から「他の事業主は、みんなこのように賢くやっている」との助言を受けて、建設会社へ依頼し、実際に支払った金額よりも高額な額面の領収書を発行してもらい、本来受給できる金額より多額の助成金の支給を受けてしまう。

【結果】

後日、会計検査院の調査において事実が判明。
事業主Aは、助成金を全額返還、雇用関係助成金の3年間の支給停止決定を受ける。
さらに、労働局より詐欺罪(刑法第246条、10年以下の懲役)で刑事告発され、警察の捜査を受けて書類送検。

(2)事例2 架空書類作成


事業主Bは、助成金申請にあたり、「対象労働者の出勤簿の写し」の提出が必要でした。
しかし、もともと出勤簿を作成していなかったため、助成金申請手続きに詳しいという外部の者が出勤簿を作成し、そのコピーを添付書類として支給申請をしてしまう。

【結果】

後日、記載内容が実際の出勤状況と相違していることが判明。
事業主Bは、助成金不支給になり、雇用関係助成金の3年間の支給停止決定を受ける。

参考:厚生労働省 実態と異なる書類等を作成して助成金を受給しようとすることは犯罪です

5.手続きでわからないことは、まず労働局へ相談しよう!


上記の他にも、
・実際には実施しなかった社員研修を実施したかのように装う
・休業日に業務を行っていたにもかかわらず休業を実施したと偽る
・実際には雇用していないにもかかわらず雇用していたことにする
・無期雇用の契約書を有期雇用に勝手に書き換える
などの事例もあります。

「申請に必要な書類を作っていない」「紛失してしまった」など、支給申請で不明な点がある場合は、支給申請先の都道府県労働局雇用均等室へ相談ができます。
相談については、専門相談員が無料で丁寧な説明をしてくれるため、ちょっとした疑問でも問い合せをしてみるのもいいかもしれません。

参考:厚生労働省 実態と異なる書類等を作成して助成金を受給しようとすることは犯罪です

6.まとめ

いかがでしたか?
「少しくらい、書類を書きかえても大丈夫だろう」「このくらいの辻褄合わせなら、気付かないだろう」と言った、ほんの軽い気持ちが、取り返しのつかない事態になってしまう可能性があります。特に、不正受給により事業所名が公表されてしまうと、取引先や金融機関などへの社会的信用にも影響が出てきてしまいます。

また、助成金の支給にあたっては半年から1年と取り組みから受け取るまでに比較的長い期間がかかります。これは、支給された申請を順番に処理しているからだけではなく、厳正な審査を行い、細かいチェックを行っているためです。助成金申請において、ゲームで言うところの「裏技」は存在しません。不明な点がある場合には、管轄の労働局への問い合わせてみるなど多少の時間はかかりますが、一つ一つ丁寧に進め、理解した上で申請を行うことが大切です。
助成金ありきで申請するのではなく、どのような会社にしていきたいのかという方向性を決めた上で、活用できそうな助成金を見つけてみてください。

参考:厚生労働省東京労働局 不正受給防止対策を強化しております