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助成金・補助金 不正受給の判例まとめ11選【2026年版】実刑・バレる理由・返還額も解説

公開日:2017/11/18 更新日:2026/6/22
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助成金や補助金の不正受給は、返還命令・社名公表・刑事告発という3つのペナルティが同時に下される重大な違法行為です。

コロナ禍以降、雇用調整助成金や持続化給付金をめぐる不正受給事案が全国で相次ぎ、認定された不正受給額は、雇用調整助成金で約1,097億円(厚生労働省集計、2025年9月末時点)、持続化給付金で約26億円(中小企業庁公表認定)にのぼります。結婚式場の経営者、大手百貨店の社長、弁護士、元国税職員まで、社会的地位を問わず実刑判決が下される事案が続いています。

さらに近年は、「実質無料」「キャッシュバック」を謳う悪質コンサルやIT支援事業者に勧められて申請し、本人に不正の自覚がないまま立件されるケースも急増しています。芋づる式の摘発・内部告発・会計検査院の検査により、申請から数年経ってから発覚することも珍しくありません。

本記事では、不正受給をした場合に進む3つのルート(自主返還・行政処分・刑事処分)の違いや、過去から2026年までの主要判例12選、関与してしまった場合の対応方法までまとめました。

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この記事の目次

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助成金・補助金の不正受給とは

助成金や補助金は、国や地方自治体が政策目的を達成するため、要件を満たす事業者に対して支給する公的資金です。本来受給できる立場でないにもかかわらず、虚偽の申請や書類の偽造によって受給することは「不正受給」として厳しく処罰されます。

不正受給の定義

厚生労働省や経済産業省の各制度では、不正受給を次のように定義しています。

「偽りその他不正の行為により、本来受けることのできない助成金等の支給を受け、または受けようとすること」

ポイントは以下のとおりです。

・故意による虚偽申請が対象(過失や誤記とは区別される)
・実際に受給していなくても、申請しただけで不正受給に該当する
・代表者だけでなく、役員・従業員・代理人・申請書類作成に関わった者が不正行為をした場合も、事業主が不正を行ったとみなされる

不正受給に該当する典型的なケース

実際に処分・摘発されている不正受給には、次のようなパターンがあります。

【雇用関係助成金(雇用調整助成金・キャリアアップ助成金・人材開発支援助成金など)の場合】
・実際には休業していない従業員を休業させたと偽る
・実在しない従業員を雇用しているように装う(架空雇用)
・出勤簿・賃金台帳・タイムカードを改ざんする
・訓練実施日誌を実態と異なる内容で作成する
・休業手当を支払っていないのに支払ったように装う
【補助金(ものづくり補助金・IT導入補助金・事業再構築補助金など)の場合】
・経費の水増し(実際の支出より高額な領収書・請求書を作成)
・同じ経費を複数の補助金に申請する(二重申請)
・売上や従業員数を偽って受給要件を満たすように装う
・補助金交付後にキックバックを受け取り、実質負担をゼロまたは減額する
・補助金を申請内容と異なる用途に使用する(目的外使用)
【コロナ給付金(持続化給付金・家賃支援給付金など)の場合】
・事業実態がないのに個人事業主であると偽る
・売上減少の理由を新型コロナの影響であると偽る
・売上を意図的に減少させたかのような虚偽の売上台帳を作成する
・確定申告書を偽造または改ざんする

不正受給をしたらどうなるの?

不正受給に気づいたあと、あるいは不正が発覚したあと、進む道は大きく3つに分かれます。どのルートを通るかによって、ペナルティの重さが大きく変わります。

ルート発生する条件内容
①自主返還ルート不正に気づいた段階で
自ら申告した場合
労働局や事務局に申告して返還する
②行政処分ルート行政の調査で発覚した場合返還命令・社名公表・支給停止などの
行政上のペナルティが課される
③刑事処分ルート悪質と判断された場合詐欺罪などで刑事告発され、
逮捕・起訴・判決へ進む

これら3つのルートとは別に、いずれのルートを通っても発生しうる「社会的制裁」があります。実名報道、取引停止、社会的信用の喪失といった副次的な影響です。

それぞれのルートで何が起こるか、順番に見ていきます。

自主返還ルート【調査前に自ら申告した場合】

行政の調査が始まる前に、自ら不正の事実を申告し、受給した助成金等を返還する道です。最近の補助金事務局は、自主返還を強く誘導する方針に転じています。

【自主返還の手続き】
・雇用関係助成金 → 申請した都道府県労働局へ連絡
・持続化給付金 → 中小企業庁の専用窓口へ連絡(給付金事務局)
・IT導入補助金 → 「自己申告書」を事務局に提出(後年手続き)
・補助金 → 各補助金事務局・所管省庁へ連絡

自主変換の場合、加算金(20%相当額)が原則として免除されることが多いです。厚生労働省の方針として、自主申告を行い迅速に全額返還した場合は事業主名の公表も原則行われないため、社名公表によるダメージを回避できる可能性が高くなります。さらに、自主返還を行った事業者については刑事告発のリスクも大幅に下がるため、最悪の事態である逮捕・起訴を避けられる可能性が高まります。

ただし、自主返還しても返還義務そのものは消えず、元本に加えて延滞金(年3%)は原則として課されます。また「特に重大または悪質」と判断された場合は、自主申告でも社名公表の対象となります。

行政処分ルート【行政の調査で発覚した場合】

労働局や会計検査院、補助金事務局の調査によって不正が発覚した場合、行政上のペナルティ(行政処分)が課されます。具体的には、①返還命令、②社名公表、③5年間の支給停止という3つの処分が同時に下されます。

①返還命令
不正受給した金額の返還が命じられ、返還額は元本(不正に受給した助成金・補助金の全額)、加算金(不正受給額の20%に相当する額)、延滞金(不正受給の日の翌日から納付の日まで年3%の割合)の合計となります。たとえば100万円の不正受給を2年間放置した場合、返還額は元本100万円+加算金20万円+延滞金約6万円=約126万円となります。
②社名公表
労働局や所管省庁のホームページで、事業主名称・代表者氏名・事業所名・事業所所在地・事業所概要・不正受給の概要と金額が公表されます。社名公表されると、取引先や金融機関の信用を一気に失い、企業活動への影響は計り知れません。
③支給停止5年
不正受給の処分決定日から起算して5年間、雇用関係助成金をはじめとする各種助成金・補助金の申請ができなくなります。さらに、不正受給に関与した役員等が他の企業でも役員等になっている場合、その企業も同期間支給停止の対象となります。なお、補助金等適正化法に基づく補助金の場合、補助事業者として不適切とみなされ、入札参加資格の停止などの措置も併せて課されることがあります。

刑事処分ルート【悪質と判断された場合】

不正の態様が特に悪質と判断された場合、行政処分に加えて刑事告発が行われ、警察の捜査・検察の起訴・裁判所の判決へと進みます。

適用される主な罪は、以下の表をご覧ください。

罪名根拠条文罰則・適用条件
詐欺罪刑法246条10年以下の懲役
罰金刑がないため、
有罪となれば必ず懲役刑
補助金等適正化法違反
(補助金不正受交付罪)
同法29条5年以下の懲役、
または100万円以下の罰金
(併科あり)
私文書偽造罪・
偽造私文書行使罪
刑法159条・
同161条
書類偽造を伴う場合に適用

最高裁の判断では、両方の罪が成立する場合、罰則がより重い詐欺罪を適用することが認められています。

逮捕から判決までの流れは、以下のとおりです。

逮捕(最大72時間身柄拘束)→ 送検(警察から検察へ)→ 勾留(最大20日間)→ 起訴または不起訴 → 裁判(公判)→ 判決(実刑、執行猶予付き有罪、または無罪)

実刑と執行猶予の違い

判決には「実刑」と「執行猶予付き判決」があります。

判決の種類内容
実刑判決の刑期どおりに刑務所に収監される
執行猶予付き判決「懲役○年、執行猶予△年」と言い渡された場合、
猶予期間中に再犯がなければ
刑務所への収監は免除される

たとえば「懲役3年、執行猶予5年」の判決を受けた場合、5年間問題を起こさなければ収監はされません。一方、再犯すれば3年の懲役がそのまま執行されます。

不正受給における実刑・執行猶予の分岐点は、主に以下の要素で決まります。

・被害額の大きさ(数千万円から数億円規模だと実刑になりやすい)
・首謀者か末端の申請名義人か(首謀者・指南役は実刑になりやすい)
・組織性(多人数の役割分担による組織的犯行は実刑になりやすい)
・被害弁償の有無(全額返還していると執行猶予になりやすい)
・前科前歴の有無(初犯は執行猶予になりやすい)

社会的制裁【3ルート共通で発生】

行政処分・刑事処分のいずれのルートを通っても、ニュース報道や社内外への波及によって発生するのが「社会的制裁」です。法律上のペナルティとは別に、企業活動・個人生活に深刻な影響を及ぼします。

【主な社会的制裁】

制裁の種類内容
実名報道新聞・テレビ・ネットニュースで
実名・社名が報道される
デジタルタトゥーGoogle検索で何年経っても
逮捕・処分記事が表示される
取引停止取引先からの契約解除、
新規取引の拒否
金融機関の信用喪失融資の引き揚げ、
新規融資の拒否
資格剥奪弁護士・社労士・税理士など
資格職の業務停止・登録抹消
家族・人間関係への波及同姓家族の社会的孤立

特に、企業の役員クラスが逮捕された場合、本人が有罪になるかどうか以前に、会社そのものが信用失墜により事業継続困難に陥るケースが少なくありません。コロナ禍の雇用調整助成金不正受給事案では、公表企業のうち5%超が実際に倒産しています。

不正受給はなぜバレるのか

「不正に申請しても、多くの申請の中から見つけ出せるわけがない」と考える人は少なくありません。しかし、不正受給は高い確率で発覚します。なぜなら、複数の発覚経路が存在し、行政が組織的に調査を行っているからです。

労働局・会計検査院による調査・抜き打ち訪問など

雇用関係助成金の場合、都道府県労働局は雇用保険法第79条に基づき、支給決定から5年間は事業所への現地調査を実施できます。

【主な調査手法】

調査手法内容
抜き打ち訪問事前予告なしの事業所訪問・立入検査
書類確認出勤簿・賃金台帳・タイムカード・
給与明細の原本確認
従業員ヒアリング従業員に対する直接の聞き取り調査
書類の整合性チェック訓練日誌と出勤簿、
就業規則と給与規定の矛盾点照合

補助金の場合は、所管省庁・補助金事務局による検査に加え、会計検査院の検査が入ります。会計検査院は国の予算執行の適正性を監査する独立機関で、毎年「決算検査報告」を公表し、不正受給を明らかにします。

実際、IT導入補助金については2024年10月、会計検査院の検査によって2020~2022年度の3年間で約1億4,755万円の不正受給が認定されました。会計検査院の指摘を受け、所管省庁が後追いで全数調査に乗り出すケースも増えています。

元従業員・取引先・同業他社からの内部告発と匿名通報

近年、不正受給発覚の経路として急増しているのが内部告発です。労働局のホームページには、不正受給を告発するための専用投稿フォームが用意されており、匿名での通報も可能です。

【告発者の典型例】
・不正に巻き込まれた従業員・元従業員
・不審な経理処理に気づいた社員
・取引先や同業他社からの情報提供
・解雇・退職に伴う「腹いせ」での通報

コンプライアンス意識の高まりとともに、内部告発による発覚は年々増加しており、雇用調整助成金の不正受給事案の多くは、内部告発を端緒に調査が開始されているとされています。

通報者保護制度(公益通報者保護法)も整備されており、通報を理由に解雇・不利益取扱いを受けることはありません。

指南役・社労士・IT事業者の摘発から芋づる式に発覚するパターン

最も恐ろしい発覚経路が、「芋づる式」の摘発です。

不正受給を組織的に指南していた者(指南役・コンサルタント・社労士・IT支援事業者など)が摘発されると、その業者が関与したすべての顧客企業のリストが当局の手に渡り、一斉調査の対象となります。

【典型的な芋づる式発覚パターン】
・持続化給付金詐欺の指南役が逮捕 → 申請名義人として関与した数十から数百人が次々と立件
・不適正なIT導入支援事業者が登録取消 → その事業者が支援したユーザー企業が一斉に調査対象に
・社労士が不正受給に関与していたことが発覚 → その社労士が関与した複数社が同時に摘発

自社に悪意がなく「業者に勧められて従っただけ」というケースでも、芋づる式調査の対象になれば、申請者本人の責任は免れません。「実質無料」「キャッシュバック」といった甘言に乗ってしまったかもしれないと心当たりがある場合は、調査の手が伸びる前に自主返還を検討するべきです。

5. 不正受給と認定されると社名が公表される

労働局や所管省庁が不正受給を認定した場合、行政処分の一環として、事業主名や所在地などがホームページで公表されます。刑事判決の有無に関わらず、認定された段階で公表となります。

雇用関係助成金では原則として不正受給額100万円以上のケースが公表対象となり、社労士・代理人が不正に関与した場合は金額にかかわらず公表されます。一方、労働局の調査が始まる前に自主申告して全額返還した場合は、重大・悪質と判断されない限り公表を回避できます。持続化給付金については、督促を受けるまでに加算金・延滞金を含めて全額納付しなかった者のみが公表対象となります。

公表される項目は以下のとおりです。

・事業主名称
・代表者氏名
・事業所名
・事業所所在地
・事業所概要
・不正受給の概要と金額

公表される概要文の典型例は次のようなものです。

「中小企業緊急雇用安定助成金について、通常どおりの勤務に従事させたにもかかわらず教育訓練を実施したとして、事実と異なる支給申請を行い不正に助成金を受給した。」

参考:厚生労働省「雇用調整助成金 不正受給」

主な判例【判決確定事案・一覧表】

ここでは、判決まで確認できた助成金・補助金の不正受給判例を紹介します。コロナ禍以前の判例と、コロナ給付金関連の判例の両方を含みます。

判例一覧

制度不正額量刑
2011中小企業緊急
雇用安定助成金
約1,000万円元社長ら5人逮捕
2003合併浄化槽
設置事業補助金
約87万円懲役2年6月
執行猶予5年 ほか
2013中小企業緊急
雇用安定助成金
(震災特例)
約5億9,000万円懲役6年(実刑)
2014新興国市場開拓等
事業費補助金
約210万円補助金返還
契約停止9か月
2014茨城県の助成金約1,000万円男性2名逮捕
2017NEDO戦略的省
エネルギー技術
革新プログラム
約4億3,100万円懲役5年(実刑)
2020年3月確定
2021持続化給付金約1,200万円懲役4年6月・4年
(実刑)
2021持続化給付金
(指南役)
8件懲役2年(実刑)
2022持続化給付金
(元国税職員)
約700万円懲役3年
執行猶予5年
2023持続化給付金
家賃支援給付金
(弁護士)
約1,989万円懲役3年6月
(実刑)
2024持続化給付金
(谷口光弘事件)
約4,900万円懲役7年(実刑)
2026雇用調整助成金
(水戸京成百貨店)
約6億7,000万円懲役4年(実刑)

各判例の詳細

1. 中小企業緊急雇用安定助成金、不正受給

2011年11月7日、厚生労働省の中小企業緊急雇用安定助成金制度を使った約1千万円の不正受給について、詐欺の容疑で元社長ら5人を逮捕。

中小企業緊急雇用安定助成金は、社員を休業させたときに休業手当相当額の一部などを助成する制度です。

容疑者らは平成21年12月から昨年4月までの間、経営する風俗店の従業員延べ約110人について、勤務実体がないにも関わらず計約1400日間休業させるという虚偽の申請書を京都労働局助成金センターに提出し、計約1千万円を不正に受給していました。

2. 補助金、不正受給

2003年7月、福岡県の合併浄化槽設置事業をめぐる補助金不正受給事件で、背任などの罪に問われたH被告に懲役2年6月、執行猶予5年(求刑懲役2年6月)、T被告には懲役2年、執行猶予4年(求刑懲役2年)を言い渡しました。

判決によると、2人は当時の同町建設課下水道係長らと共謀し、H被告の支援者男性が営業予定だった飲食店の浄化槽設置工事について、町事業の対象外なのに虚偽の申請書を作成。国と県の補助金計約87万円を騙し取ったほか、補助金を含む約244万円を町に不正に支出させていました。

3. 震災復興助成金、不正受給

大阪市中央区の人材育成会社が、東日本大震災による特例を悪用し、雇用助成金5億9千万円を不正受給した問題。

仙台支店での売り上げを水増しした虚偽の書類を大阪労働局に提出することで、被災地での関連事業の売り上げが全体の3分の1以上を占める企業の受給条件が緩和される「中小企業緊急雇用安定助成金」(現・雇用調整助成金)を悪用したものです。

大阪労働局は1日午後、B社と関連会社「B社東日本」の2社が不正受給をしたと公表。大阪地裁は18日、懲役6年(求刑・懲役7年)の実刑判決を言い渡しました。

4. 新興国市場開拓等事業費補助金、不正受給

平成26年度新興国市場開拓等事業費補助金を不正に受給。

当該事業主に対して、既に給付済みの補助金(2,108,436円)の交付決定の取消を通知し、補助金の全額返還及び加算金の支払を求めるとともに、入札参加を含む当機構との契約関係の停止(9か月)を実行。

事業主名と、代表者氏名、所在地、事業の概要が日本貿易開発機構のHPに公開されていました。また、不正受給した企業の親会社は、自社のHPにて子会社の不正受給の顛末を開示しています。

5. スーパーコンピューター開発における不正受給

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)で行っている、戦略的省エネルギー技術革新プログラム実用化開発対象の助成金を水増し請求し計約4億3100万円をだまし取ったとして、スーパーコンピューターの開発を手掛けるP社が、2017年12月に起訴された問題です。

その他同社においては、別の助成金も搾取していた疑いが判明しており、東京地検特捜部の方で全容解明を急いでいるとのことです。

6. 持続化給付金、不正受給(名古屋地裁・首謀者に実刑)

2021年9月16日、新型コロナ対策の持続化給付金を不正受給したとして詐欺罪に問われた愛知県の会社役員2名に対し、名古屋地裁は実刑判決を言い渡しました。2名は他の共犯者と共謀し、令和2年5~6月に12回にわたる虚偽申請を行い、給付金計1,200万円を不正に受給。山田耕司裁判官は両被告を首謀者と認定し、勧誘役に懲役4年6月、申請手続役に懲役4年(いずれも求刑懲役7年)を言い渡しました。

出典:中日新聞Web「コロナ持続化給付金不正受給で愛知の2被告実刑 名古屋地裁判決」(2021年9月17日)

7. 持続化給付金、指南役による不正受給(静岡地裁浜松支部)

2021年12月9日、持続化給付金詐欺事件で不正受給の手口を教える「指南役」とされた静岡県掛川市の自称建設作業員(当時24歳)に対し、静岡地裁浜松支部は懲役2年(求刑懲役4年)の実刑判決を言い渡しました。被告は計8件の詐欺・詐欺ほう助・詐欺教唆の罪に問われ、申請マニュアルを作成するなど犯行の中心的役割を果たしたと認定されました。申請名義人だけでなく、勧誘役・指南役も詐欺罪の共犯として処罰されることを示した事案です。

出典:あなたの静岡新聞「持続化給付金詐欺 指南役に実刑判決 静岡地裁浜松支部」(2021年12月11日)

8. 持続化給付金、元国税職員による不正受給(東京地裁)

2022年10月18日、新型コロナ対策の持続化給付金を詐取したとして詐欺罪に問われた元国税局職員らに対し、東京地裁はいずれも懲役3年・執行猶予5年(求刑懲役4年)の判決を言い渡しました。被告らは2020年7~8月、共犯者と共謀して虚偽申請を行い、給付金計700万円を詐取。グループ内で従属的な立場にあったことが酌量され、執行猶予付き有罪となりました。給付金詐欺が幅広い職業・属性に及んでいたことを示すケースとして注目された事案です。

出典:日本経済新聞「コロナ給付金詐欺、元国税職員らに有罪判決 東京地裁」(2022年10月18日)/nippon.com「国税局元職員に猶予付き有罪判決 持続化給付金詐欺」(2022年11月29日)

9. 持続化給付金・家賃支援給付金、弁護士による不正受給(広島地裁)

2023年6月27日、新型コロナ対策の持続化給付金および家賃支援給付金を不正受給したとして詐欺罪に問われた広島県の弁護士・会社役員(当時48歳)に対し、広島地裁は懲役3年6月(求刑懲役6年)の実刑判決を言い渡しました。共犯の会社役員には懲役3年・執行猶予5年。両被告は2020年10月から2021年1月、運営するキャバレー運営会社などの収入を偽り、計約1,989万円を計7回にわたり詐取しました。控訴審でも量刑が是認され、最高裁の判例検索データベースにも掲載されています。

出典:中国新聞デジタル「コロナ給付金不正受給事件、弁護士に懲役3年6月 広島地裁判決」(2023年6月27日)/最高裁判所判例検索データベース

10. 持続化給付金、組織的詐欺グループ首謀者に懲役7年(東京地裁)

2024年3月19日、新型コロナ対策の持続化給付金を組織的に詐取したとして詐欺罪に問われた会社役員・谷口光弘被告(当時49歳)に対し、東京地裁は懲役7年(求刑懲役9年)の実刑判決を言い渡しました。被告は2020年6~9月、元妻や長男ら(いずれも実刑確定)と共謀し、給付金計4,900万円を詐取。河村宜信裁判官は組織的かつ大規模な詐欺事案と認定しました。被告は逃亡先のインドネシアで2022年6月に身柄を確保され強制送還された経緯があり、警視庁はグループ全体の被害を約10億円とみています。

出典:日本経済新聞「コロナ対策の持続化給付金詐欺、懲役7年 東京地裁判決『組織的で大規模』」(2024年3月19日)/時事通信「指示役の男に懲役7年 持続化給付金詐欺―東京地裁」(2024年3月19日)

11. 雇用調整助成金、約6.7億円の不正受給(水戸地裁)

2026年3月10日、新型コロナ対策の雇用調整助成金計約6億7千万円を詐取したとして詐欺罪に問われた水戸京成百貨店(水戸市)の元社長・斎藤貢被告(当時68歳)に対し、水戸地裁は懲役4年(求刑懲役6年6月)の実刑判決を言い渡しました。被告は社員らと共謀し、百貨店従業員の休業日数を水増しした虚偽申請書を茨城労働局に提出。家入美香裁判長は審査手続きが簡素化された雇調金制度を悪用した点を悪質と指摘しました。コロナ禍の雇調金不正受給事案として現時点で最大規模の実刑判決のひとつです。

出典:日本経済新聞「水戸京成百貨店・元社長に懲役4年、コロナ雇調金詐欺罪 地裁判決」(2026年3月10日)/同「水戸京成百貨店、雇用調整助成金3億円を不正受給」(2023年1月31日)

主な不正受給事件・事案【判決未確定/行政処分中心】

判決が確定していないものの、規模や社会的影響が大きい不正受給事件・事案を紹介します。これらは「判例」ではありませんが、現在進行形の不正受給対応の動向を知るうえで重要な事案です。

アルカディア(結婚式場運営)約10億円の雇用調整助成金詐取

2025年2月、福岡・佐賀両県警の合同捜査本部は、結婚式場運営会社「アルカディア」(福岡県久留米市)の前社長・大串淳容疑者ら5人を詐欺容疑で逮捕しました。逮捕容疑は従業員97人の休業日数を水増し申請し、福岡労働局から雇用調整助成金2,202万円を詐取した疑い。同社は2020~2022年に約10億円の雇用調整助成金を受給しており、コロナ禍以降の不正受給事案として歴代3位の規模です。

福岡労働局は約12億円の返還を命令し、同社は2025年2月25日に事業を停止して破産準備に入りました。挙式予定の130人以上のカップルにキャンセル被害が広がり、社会問題化しました。

出典:NetIB-News「結婚式場『アルカディア』前社長ら逮捕、助成金詐欺の疑い」(2025年2月)/福岡TNCニュース/RKB毎日放送

IT導入補助金の組織的不正受給(会計検査院指摘)

2024年10月21日、会計検査院は「IT導入補助金」について2020~2022年度の3年間で約1億4,755万円の不正受給を認定したと公表しました。検査対象376社のうち30社・41案件で不正が認定され、不正受給率は約8%に達しました。主な手口はIT支援事業者からの「キャッシュバック」「実質無料」などのキックバックです。

会計検査院は不適正ベンダー15者が支援した約58億円分について全件調査を求めており、刑事告発も視野に入れているとされます。適用される罪は補助金等適正化法の不正受交付罪または刑法の詐欺罪です。

出典:日経クロステック「IT導入補助金の不正受給1.5億円は氷山の一角」(2024年11月)/会計検査院「令和5年度決算検査報告」

大北森林組合 造林事業補助金(長野県)約16億円

長野県の大北森林組合が、2007~2014年度にかけて造林事業等の補助金を不適正に受給していた事案です。不適正受給額は県の指導監督費を含めて約16億1,000万円にのぼり、自治体・組合ぐるみの大規模不正の代表例とされています。県は元専務を主導者として刑事告発するとともに、関係した県職員も処分しました。

法的に最大限可能な約9億6,500万円について組合等に返還請求が行われ、現在も返還計画に沿って履行が進められています。県職員の検査の不備も明らかになり、行政側の責任にも踏み込んだ事案として注目されました。

出典:長野県HP「大北森林組合等の補助金不適正受給への対応状況」

スマート農業補助金 大柳ファーム事件(旭川地裁)

2026年2月、農林水産省のスマート農業機械導入補助金を不正受給したとして、北海道旭川市の「大柳ファーム」の実質的経営者・岡田栄悟被告(47歳)と代表・大柳彰久被告(42歳)らが詐欺罪に問われた事件です。被告らは稲の刈り取り代行事業に同意した農家がいないうえ、対象期限内にドローンも納品されていなかったにもかかわらず、要件を満たしているように装って申請し、農水省のスマート農業補助金約880万円を詐取したとされます。

検察側は「犯行を主導する立場で責任は重い」として懲役4年を求刑。新しい補助金スキームへの不正の最新事案として、判決の行方が注目されています。

出典:HTB北海道ニュース「農水省補助金詐欺 実質的経営者の初公判 検察『犯行を主導する立場で責任は重い』として懲役4年求刑」(2026年2月)

不正受給に関与してしまったらどうしたらいい?

「気がついたら不正受給に加担してしまっていた」という事業者が、近年急増しています。コンサルタントに勧められるまま申請したり、社労士やIT支援事業者の指示に従っただけで、不正受給だと気づかずに受給していた、というケースです。

不正受給に気づいたら、行政の調査が来る前に自主返還の手続きに進むことが最善です。自主返還には次のメリットがあります。

・加算金(20%)が原則として免除されることが多い
・事業主名の公表を回避できる可能性が高い
・刑事告発のリスクが大幅に下がる

主な補助金や助成金・給付金の、自主返還の窓口は以下のとおりです。

制度自主返還の窓口
雇用関係助成金申請した都道府県労働局の
助成金センター
持続化給付金中小企業庁の
各種給付金コールセンター
IT導入補助金補助金事務局
(「自己申告書」の提出)
その他の補助金所管省庁または補助金事務局

なお、自主返還しても返還義務はなくなりません。元本にくわえ、延滞金の支払いが必要です。また、「特に重大または悪質」と判断された場合は、自主申告でも公表対象になります。

組織的犯行や高額な不正受給に関与してしまった可能性がある場合は、自主返還の前に弁護士への相談をご検討ください。

悪質なコンサル・業者に注意

近年、不正受給の温床となっているのが、悪質なコンサルタント・業者による「実質無料」「キャッシュバック」スキームです。「自分は不正だと知らなかった」という事業者が次々と立件されており、注意が必要です。

典型的な悪質スキームは次のような流れで進みます。

・IT支援事業者・コンサルタントが「補助金を使えば実質無料でITツールが導入できる」と勧誘
・補助事業者が高額な金額でITツールを購入(例:本来1万円相当のものを100万円で)
・補助事業者は補助金(例:50万円)を受給
・その後、業者が「紹介料」「コンサル料返金」「キャッシュバック」などの名目で差額の一部を補助事業者に還流
・結果、補助事業者は実質的にほぼ自己負担なし、または利益を得る

この手口は、補助金等適正化法および各補助金の交付規程で明確に禁止されている「実質的還元」に該当します。「業者が問題ないと言っていた」「契約書には書いていないからセーフ」といった弁解は通用しません。

2024年に大阪府警は、本来1万円程度のホームページ作成費を100万円超と偽った業者を詐欺容疑で逮捕しています。今後、刑事立件される事案が増加すると予想されます。

「助成金制度推進センター」など公的機関を装う悪質な業者も

中小企業の経営者を狙う悪質業者の中には、公的機関を装う名称を用いるケースもあります。

典型的な業者名や手口としては、以下のようなことが挙げられます。

・「助成金制度推進センター」「補助金支援機構」など、いかにも公的機関のような名称
・「厚生労働省から委託を受けた」「経済産業省の認定機関」などと虚偽の説明
・無料セミナー・無料オンライン説明会への勧誘から接触
・高額な着手金や成功報酬を請求
・受給後、不正発覚時には連絡が取れなくなる

これらの業者は実在の公的機関とは無関係であり、虚偽の権威付けで信用させる手口です。怪しい業者を見分ける方法としては、以下を参考にしてください。

「どんな会社でも受給できます」と断言する
・「他社はみんなやっている」と不正を正当化する
「絶対にバレません」と断言する
・報酬体系が明示されない、または前金制のみ
・社会保険労務士・認定経営革新等支援機関などの公的資格がない
・助成金申請の代行を社労士以外が行う(社会保険労務士法違反)

なお、助成金の申請に関しては、代行は社会保険労務士の独占業務です。社労士資格を持たない業者が助成金申請を代行することは社会保険労務士法違反であり、不正受給に発展するリスクが極めて高いです。

まとめ

助成金・補助金の不正受給は、行政・民事・刑事の3つのペナルティが同時に下される重大な違法行為です。

近年は、悪質なコンサルタント・IT支援事業者・社労士による「実質無料」「キャッシュバック」スキームで、本人に不正の自覚がないまま申請してしまうケースも急増しています。「業者に勧められた」「知らなかった」では通用しません。申請の責任は申請者自身にあります。

本来意義のある助成金・補助金を、しっかりと条件を確認した上で、適正に活用するようにしましょう。

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