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新たなアプローチによる在留資格の取得~「特別高度人材」と「未来創造人材」~

目 次

第1章 「特別高度人材制度」とは
第一 はじめに
第二 在留資格「高度専門職」とは
第三 「高度専門職」と優遇措置
第四 「高度専門職2号」の優遇措置
第五 「特別高度人材制度」の追加優遇措置
第六 特別高度人材制度を利用した「高度専門職」の取得要件

第2章 在留資格「未来創造人材」とは
第一 はじめに
第二 「未来創造人材」の取得要件
第三 「未来創造人材」を取得した配偶者・子について

第1章 「特別高度人材制度」とは

第一 はじめに

1、2023年4月21日から「特別高度人材制度(J-Skip)」が導入されました。
  これまで、在留資格「高度専門職」を取得するには、「高度人材ポイント制」に基づき、「学歴」,「職歴」,及び「年収」などの項目ごとにポイントが設けられ,ポイントの合計が一定の点数(70点)に達する必要がありました。
  今回紹介する「特別高度人材制度」は、これまでの「ポイント制」とは別に、学歴、職歴、及び年収が一定の水準以上であれば、「高度専門職」の在留資格を付与し、“特別高度人材”として現行よりも拡充した優遇措置が認められることとなりました。
2、つまり、在留資格「高度専門職」を取得する方法が、これまでの、①「高度人材ポイント制」に加えて、②「特別高度人材制度」という、2つのルートから取得が可能になったと言えます。

第二 在留資格「高度専門職」とは

1、「特別高度人材制度」を知るには、その前提として、在留資格「高度専門職」の対象者や、日本でどのような活動を行うことができるのかを知る必要があります。
2、「高度専門職」には、外国人本人が日本で行う活動に応じて、以下の3つの類型があります。
(イ)「高度学術研究活動」
   日本の公私の機関との契約に基づいて行う研究,研究の指導又は教育をする活動(例 : 大学の教授や研究者等)
(ロ)「高度専門・技術活動」
   日本の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識、又は技術を要する業務に従事する活動(例 : 企業で新製品の開発等を行う者、国際弁護士等)
(ハ)「高度経営・管理活動」
   日本の公私の機関において事業の経営を行い、又は管理に従事する活動(例 : グローバルな事業展開を行う企業等の経営者等)

第三 「高度専門職」と優遇措置

 高度外国人材として「高度専門職」に認定された場合、出入国在留管理上、以下の優遇措置が認められます。
1、複合的な在留活動の許容
  通常、許可された1つの在留資格で認められている活動しかできません。
  これに対して、高度外国人材は、例えば、大学での研究活動と併せて関連する事業を経営する活動を行うなど、複数の在留資格にまたがるような活動を行うことができます。
2、在留期間「5年」の付与
  高度外国人材に対しては、法律上、最長の在留期間である「5年」が一律に付与されます。
3、永住許可要件の緩和
  永住許可を受けるためには、原則として引き続き10年以上日本に在留していることが必要です。
  これに対して、高度外国人材としての活動を引き続き3年間行っている場合や、高度外国人材の中でも特に高度と認められた者(80点以上)については、高度外国人材としての活動を引き続き1年間行っている場合に永住許可の対象となります。
  つまり、「高度専門職1号」としての活動を3年以上行えば、① 「高度専門職2号」への変更、又は②在留資格「永住者」への変更が可能となります(「高度専門職2号」については、後述。)。
  更に、ポイントが「80点」以上であれば、1年間で② 「永住者」への変更対象となります。
4、配偶者の就労要件の緩和
  配偶者としての在留資格をもって在留する外国人が、在留資格「技術・人文知識・国際業務」などに該当する活動を行おうとする場合には、学歴・職歴などの一定の要件を満たし、これらの在留資格を取得する必要があります。
  これに対して、高度外国人材の配偶者の場合は、学歴・職歴などの要件を満たさない場合でも、これらの在留資格に該当する活動を行うことができます。
5、親の帯同の許容
  現行の入管制度では、原則として、在留する外国人の親の受入れは認められていません。
  これに対して、
   ① 高度外国人材、又はその配偶者の7歳未満の子(養子を含む。)を養育する場合
   ② 高度外国人材の妊娠中の配偶者又は妊娠中の高度外国人材本人の介助等
  を行う場合については、一定の要件の下で、高度外国人材又はその配偶者の親(養親を含む。)の入国・在留が認められます。
6、家事使用人の帯同の許容
  外国人の家事使用人の雇用は、在留資格「経営・管理」、及び「法律・会計業務」等で在留する一部の外国人に対してのみ認められています。
  高度外国人材についても、一定の要件の下、外国人の家事使用人を帯同することが認められます。
7、入国・在留手続の優先処理
  高度外国人材に対する入国・在留審査は、優先的に早期処理が行われます(審査に日数を要すると判断した場合はこの限りではありません。)。
   ① 入国事前審査に係る申請については申請受理から10日以内を目途
   ② 在留審査に係る申請については申請受理から5日以内を目途

第四 「高度専門職2号」の優遇措置

1、「高度専門職1号」で認められる活動のほか、その活動と併せて就労に関する在留資格で認められるほぼ全ての活動を行うことができます。
2、在留期間が「無期限」になります。

第五 「特別高度人材制度」の追加優遇措置

 上記「第三」、及び「第四」の優遇措置に加え、以下の拡充した優遇措置を受けられます。
1、「高度専門職1号」の活動を1年間行うことにより、「高度専門職2号」の取得要件を得ます。
  つまり、「高度人材ポイント制」による「高度専門職1号」には、ポイント(80点を超えているか否か)により「高度専門職2号」に変更できる年数に差異(1年または3年)がありますが、「特別高度人材制度」により在留資格を取得した場合、一律に、1年間の活動で「高度専門職2号」の取得要件を得ることが可能となります。
 更に、「特別高度人材制度」により「高度専門職2号」の在留資格で活動する場合、「ポイント制」に基づく「2号」優遇措置に加えて、以下の拡充した優遇措置が受けられます、
2、世帯年収が3,000万円以上の場合、外国人家事使用人2人まで雇用可能となります(家庭事情要件等は課されません。)。
3、配偶者は、在留資格「研究」、「教育」、「技術・人文知識・国際業務」及び「興行」に該当する活動に加え、「教授」、「芸術」、「宗教」、「報道」及び「技能」に該当する活動についても、経歴等の要件を満たさなくても、週28時間を超えた就労が認められます。
4、出入国時に大規模空港等に設置されているプライオリティーレーンの使用が可能となり、スムーズに保安検査場を通過することができます。
第六 特別高度人材制度を利用した「高度専門職」の取得要件
 「特別高度人材」の要件は、上記「第二」の(イ)ないし(ハ)の活動類型ごとに以下のとおりです。
1、(イ)・(ロ)の活動類型
  以下のいずれかを満たすこと。
   ① 修士号以上取得かつ年収2,000万円以上
   ② 従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上
2、(ハ)の活動類型
     事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ、年収4,000万円以上

第2章 在留資格「未来創造人材」とは

第一 はじめに

 2023年4月から未来創造人材制度(J-Find)が導入され、優秀な海外大学等を卒業等した外国人が、日本において「就職活動」、又は「起業準備活動」を行う場合、在留資格「特定活動」(未来創造人材)が付与され、最長2年間の在留が可能となりました。

第二 「未来創造人材」の取得要件

 対象となる外国人は、次の1ないし3の要件、“全て”に該当する必要があります。
1、対象大学
  3つの世界大学ランキング(※)中、2つ以上で100位以内にランクインしている大学を卒業、又はその大学の大学院の課程を修了して学位又は専門職学位を授与されていること。
  ※① クアクアレリ・シモンズ社公表『QS・ワールド・ユニバーシティ・ランキングス』
   ② タイムズ社公表『THE ワールド・ユニバーシティ・ランキングス』
   ③ シャンハイ・ランキング・コンサルタンシー公表『アカデミック・ランキング・オブ・ワールド・ユニバーシティズ』
2、卒業等後の年数
  上記の対象大学を卒業し、又は対象大学の大学院の課程を修了して、学位又は専門職学位を授与された日から5年以内の外国人。
3、生計維持費
  滞在当初の生計維持費として、申請の時点において、申請人の預貯金の額が日本円に換算して20万円以上あること。

第三 「未来創造人材」を取得した配偶者・子について

 扶養する配偶者・子は、在留資格「特定活動」(未来創造人材の配偶者等)が付与され、帯同することが可能です。
 なお、配偶者・子の就労には、資格外活動許可が必要となります。  以上

  【参考資料】
・『高度人材ポイント制による出入国在留管理上の優遇制度』(「出入国在留管理庁」ホームページ)
・『 高度外国人材の受入れに係る「新たな制度」の創設について 特別高度人材(JーSkip)の概要』(「出入国在留管理庁」作成)
・『高度外国人材の受入れに係る「新たな制度」の創設について 未来創造人材制度(J-Find)の概要』(「出入国在留管理庁」作成)

☑お問い合わせ先(松田史男行政書士事務所)

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