業種や事業規模を問わず、サイバー攻撃による被害は年々増加しています。「何から対策すればよいかわからない」「セキュリティにコストをかけられない」と悩む中小企業の方も多いのではないでしょうか。
そうした企業を支えるためにIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が用意したのが「サイバーセキュリティお助け隊サービス」です。月額数千円〜1万円程度で監視・相談・駆け付け・保険がひとまとめになったサービスで、さらにデジタル化・AI導入補助金(セキュリティ対策推進枠)を使えば、利用料の最大2/3、上限150万円まで補助を受けられます。
本記事では、制度の内容から費用の目安、サービスリストの見方、補助金を使って導入する手順、そして実証が始まった「新類型」までをわかりやすく解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
IPAのサイバーセキュリティお助け隊サービスとは
サイバーセキュリティお助け隊サービスは、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が2021年(令和3年)春に開始した制度です。経済産業省も普及を後押ししています。
特徴は、IPAが直接サービスを販売するのではなく、一定の基準を満たした民間事業者のサービスに「お助け隊マーク」を付与して公表する「認定制度」である点です。中小企業に必要なサイバー攻撃対策を、専門知識がなくても使えるよう一つのパッケージにまとめ、安価に提供することが求められています。基準をクリアしたサービスだけが「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されるため、中小企業は数あるサービスを一から調べなくても、リストの中から自社に合うものを選べる仕組みになっています。
累計の導入企業数は約10,900社(2026年3月末時点)にのぼり、これからセキュリティ対策を始める企業にとって、現実的な「最初の一歩」として位置づけられています。
なぜ中小企業にサイバーセキュリティ対策が必要なのか
「うちのような小さな会社が狙われるはずがない」という考えは、最も危険な誤解です。サイバー攻撃は企業規模に関わらず仕掛けられ、不正アクセスやウイルス感染といった脅威は、規模の大小を問わずすべての企業におよびます。
近年とくに問題になっているのが、サプライチェーンを狙った攻撃です。IPAが公表した「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向け脅威の1位が「ランサム攻撃による被害」、2位が「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」となっています。攻撃者は、セキュリティの手薄な中小企業を踏み台にして、その先にある取引先や大企業を狙います。自社が被害に遭うだけでなく、取引先に迷惑をかけ信用を失うリスクもあるということです。
被害額も決して小さくありません。IPAの資料によると、対処を怠った場合の想定被害金額が5,000万円を超える事案も報告されています(出典:令和2年度版 中小企業サイバーセキュリティ対策支援体制構築事業 成果報告書)。
一度の被害が事業の継続を揺るがしかねないからこそ、攻撃を完全に防ぐことよりも、異常に素早く気づいて被害を最小限に抑える仕組みが重要になります。
サイバーセキュリティお助け隊サービスの内容
お助け隊サービスは、中小企業に不可欠な機能をワンパッケージにまとめて提供しています。柱となるのは、見守り・相談窓口・駆け付け・簡易サイバー保険の4つです。
見守り(24時間365日の異常監視)
監視装置やソフトが常時ネットワークや端末を見張り、不審な挙動やサイバー攻撃を検知します。「何も起きていないことがわかる」安心感に加え、侵入などの異常があれば素早く気づける体制が手に入ります。
相談窓口
セキュリティに関する疑問やトラブルを、電話やメールで相談できる窓口です。社内に専門家がいなくても、困ったときに頼れる相手がいる状態をつくれます。
駆け付け支援(事案発生時の初動対応)
異常が発生したときに、地域のIT事業者などが現場に駆け付けて初動対応を行います(リモート支援の場合もあります)。たとえば、ダウンロードしたフリーソフトが不審な動きをしていたため駆除した、ウイルス感染の疑いがある端末をネットワークから切り離して調査し複数のマルウェアを検出・駆除した、といった対応が実際に行われています。
簡易サイバー保険
万一の際の対応費用や損害をカバーする保険が付帯します。補償内容や限度額はサービスによって異なるため、契約前に提供事業者へ確認しましょう。
監視タイプは3種類から選べる
見守りの監視方式は、自社の働き方に合わせて3つのタイプから選べます。
| 監視タイプ | 仕組み | 向いているケース |
|---|---|---|
| ①ネットワーク監視 | UTMなどの監視装置をインターネットとの出入口に設置し、社内ネットワークをまとめて監視します。パソコン側の設定作業は不要です。 | 拠点内のパソコンを まとめて守りたい場合 |
| ②端末監視 | 各パソコンにEDRなどの監視ソフトを導入し、端末ごとの不審な挙動を検知・対処します。 | テレワークや社外への 持ち出し利用が多い場合 |
| ③併用 | ①と②の両方を導入し、多層防御で守ります。 | 拠点も社外利用も、 より強固に守りたい場合 |
なお、お助け隊サービスには「1類」と、後から追加された「2類」があります。2類は、中規模以上の中小企業のニーズにも応えられるよう、監視機能の強化や定期的なコンサルティングなどを要件とし、価格要件を緩和した類型です。まずは多くの企業に当てはまる1類から検討し、必要に応じて2類も視野に入れるとよいでしょう。
サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト(登録一覧)の見方
お助け隊サービスとして認定されたサービスは、IPAのユーザー向けサイトで「監視種別サービス一覧」として公開されています。ネットワーク監視・端末監視・併用・2類のタブに分かれており、1類だけで60以上、2類で約20のサービスが登録されています。IPAでは半年に1回程度の審査で新しいサービスを追加しており、2026年3月にも10サービスが加わりました。
一覧では、サービスごとに次の項目を横並びで比較できます。
・提供事業者(実施主体)
・監視製品の製造会社
・初期費用・月額・初年度費用(いずれも税抜き)
・監視可能端末数
・付帯するサイバー保険の保険会社
・対象地域
参考として、初期費用が安く全国で利用できる代表的なサービスを監視タイプ別に紹介します。
| 監視タイプ | サービス名(提供事業者) | 初期費用 | 月額 | 監視可能端末数 |
|---|---|---|---|---|
| ネットワーク監視 | 商工会議所サイバーセキュリティお助け隊サービス (大阪商工会議所) | 0円 | 会員6,000円 非会員7,500円 | 100台 |
| ネットワーク監視 | CSPサイバーガード (セントラル警備保障) | 0円 | 9,800円 | 100台 |
| ネットワーク監視 | おまかせサイバーみまもり Lightプラン (NTT東日本) | 0円 | 7,000円 | 10台 |
| 端末監視 | SOMPO SHERIFF (SOMPOリスクマネジメント) | 0円 | 500円/台 | - |
| 端末監視 | PCセキュリティみまもりパック (PFU) | 0円 | 750円/台 | - |
| 併用 | セキュリティ見守りサービス「&セキュリティ+」 (BCC) | 25,000円 | 7,400円(1台)〜 | 100台 |
※金額はすべて税抜き。IPA「監視種別サービス一覧」(2026年9月15日更新)をもとに作成。最新の価格や条件は必ず各提供事業者にご確認ください。
対象地域が「東北」「近畿」など特定の地域に限られるサービスも多いため、まず自社の所在地で使えるサービスを絞り込み、そのうえで監視タイプと費用を比べるのが効率的です。
サイバーセキュリティお助け隊サービスの費用の目安
費用はサービスや監視タイプ、契約規模によって幅があります。お助け隊サービスは、中小企業でも導入・維持しやすいよう、制度の基準(1類)で価格の上限が定められているのが特徴です。
具体的には、ネットワーク一括監視型は月額1万円以下に相当する価格、端末監視型は端末1台あたり月額2,000円以下に相当する価格とされており、いずれも端末1台から契約できます。2類ではこの価格要件が緩和されています。
実際にIPAのサービス一覧に掲載されている価格帯をまとめると、次のようになります。
| 監視タイプ | 初期費用の幅 | 月額の幅 | 費用の考え方 |
|---|---|---|---|
| ネットワーク監視 | 0円〜50万円程度 | 1,300円〜10,000円 | 初期費用にUTM本体の代金が含まれるかどうかで大きく変わる |
| 端末監視 | 0円のサービスが多い | 1台あたり500円〜2,000円 | 監視するパソコンの台数に応じて月額が増える |
| 併用 | 0円〜60万円程度 | ネットワーク監視の月額+端末1台あたり450円〜2,000円 | ネットワーク監視と端末監視の合計で考える |
たとえば、初期費用0円・月額7,000円のネットワーク監視サービスなら初年度費用は84,000円、初期費用0円・月額750円の端末監視サービスをパソコン5台に入れる場合は初年度45,000円です。一方で、初期費用が数十万円かかるサービスもあるため、月額だけでなく「初期費用+月額×12か月」の初年度費用で比較することをおすすめします。
デジタル化・AI導入補助金で費用を最大2/3抑えられる
お助け隊サービスは、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の「セキュリティ対策推進枠」の補助対象です。IPAのサービスリストに掲載されているサービスのうち、IT導入支援事業者が提供し、事務局に登録されたものが対象になります。
【セキュリティ対策推進枠の詳細】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額 | 5万円〜150万円 |
| 補助率 | 小規模事業者:2/3以内 中小企業:1/2以内 |
| 対象経費 | ITツールの導入費用およびサービス利用料(最大2年分) |
| 機能要件 | IPAが公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたいずれかのサービス |
| 交付申請期間 | 2026年3月30日〜(複数回の締切あり。5次締切は2026年9月29日) |
たとえば月額10,000円のネットワーク監視サービスを2年分(240,000円)契約した場合、小規模事業者なら最大160,000円の補助を受けられ、自己負担は80,000円で済みます。中小企業の場合は最大120,000円の補助で、自己負担は120,000円です。
注意したいのは、補助金を申請するには事前に「SECURITY ACTION」の自己宣言を済ませておく必要がある点です。SECURITY ACTIONはIPAが運営する無料の自己宣言制度で、数分で完了します。
先にSECURITY ACTIONを宣言し、その後に補助金を申請してお助け隊サービスを導入する、という順序になります。補助率や上限額、要件、締切は年度や公募回によって変わることがあるため、申請前に必ず最新情報を確認してください。
詳しくはこちら:デジタル化・AI導入補助金とは?【2026年・令和8年度】補助率や申請枠・変更点についても解説
サイバーセキュリティお助け隊サービス導入までの流れ
実際に導入するまでの流れは、おおむね次の4ステップです。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ステップ① | 補助金を使う場合は、まずSECURITY ACTIONを宣言します(無料)。IPAのサイトで「情報セキュリティ5か条」などへの取り組みを宣言します。 |
| ステップ② | IPAのユーザー向けサイトの「監視種別サービス一覧」で、対象地域・監視タイプ・価格・内容を確認し、自社に合うサービスを絞り込みます。 |
| ステップ③ | 選んだサービスの提供事業者のサイトから、問い合わせや申し込みを行います。補助金を使う場合は、その事業者がIT導入支援事業者として登録されているかも確認しましょう。 |
| ステップ④ | 補助金を使う場合は、IT導入支援事業者と一緒に交付申請の手続きを進め、交付決定後に契約・導入します。 |
サイバーセキュリティお助け隊サービスを導入するメリット
お助け隊サービスを利用する利点は、大きく次の3つに整理できます。
監視・相談・駆け付け・保険を個別にそろえる手間がなく、何を選べばよいか迷わずに済みます。
【社内に専門家がいなくても運用できる】
日常の監視や緊急時の対応は提供事業者が担うため、専任のIT担当者を置けない企業でも無理なく続けられます。
【費用が安価で、補助金も使える】
月額数千円から始められるうえ、デジタル化・AI導入補助金を使えば自己負担をさらに抑えられます。
実際の利用者からは、アラート通知で防御できていると実感でき安心という声や、セキュリティレポートをためておけば報告資料としても使えるといった声が挙がっています。
【最新】新類型の実証事業が始まった
2026年9月、経済産業省とIPAは「サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)」の実証事業を開始しました。これは、2026年度末頃に運用開始が予定されている「サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」に対応するための新しいサービス類型です。
SCS評価制度は、企業のセキュリティ対策状況を★の数で可視化する仕組みで、今後は取引先から★3などの取得を求められる場面が増えると見込まれています。ただ、★3の要求事項にはセキュリティポリシーの策定といった組織的な対策が多く含まれており、現行のお助け隊サービスを導入しているだけでは一部しか満たせません。
そこで新類型では、次の3ステップをワンパッケージで提供し、中小企業の★3・★4取得を伴走支援します。
・STEP2:推奨されるITツールの導入に加え、ポリシー策定・手順書整備・教育などITツール以外の支援を受ける
・STEP3:要求事項の充足確認と申請書作成の支援を受け、★取得を申請する
実証事業には、NTTデータ、大阪商工会議所、三井物産セキュアディレクション、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン、リコージャパン、SOMPOリスクマネジメントなど15事業者が参加しています。実証への参加は無償で、実証期間は2026年10月〜2027年9月までの1年間を予定しており、参加を希望する中小企業は各事業者へ直接連絡する形になります。
IPAは実証結果をもとに2027年度末までの制度化を目指しています。取引先からセキュリティ対策の証明を求められている企業や、SCS評価制度の★取得を検討している企業は、現行のお助け隊サービスとあわせて新類型の動向もチェックしておきましょう。
参考:サイバーセキュリティお助け隊サービス(新類型)実証事業
よくある質問
お助け隊サービスの費用はいくらかかる?
1類の基準では、ネットワーク監視が月額1万円以下、端末監視が1台あたり月額2,000円以下とされています。初期費用は0円のサービスから数十万円かかるサービスまで幅があるので、初年度費用で比較しましょう。
サービスリストはどこで見られる?
IPAのサイバーセキュリティお助け隊サービス ユーザー向けサイトにある「監視種別サービス一覧」で確認できます。監視タイプごとに価格・端末数・対象地域を横並びで比較できます。
IPAが直接サービスを提供しているの?
いいえ。IPAは基準を満たした民間事業者のサービスを認定・公表する立場で、契約や申し込みは各提供事業者に対して行います。
専任のIT担当者がいない会社でも利用できる?
利用できます。専門の担当者がいない中小企業でも導入・運用できるよう工夫されており、日常の監視や緊急時の対応はサービス提供事業者が担います。
UTMやEDRは別途用意する必要がある?
多くのサービスでUTMやEDRなどの監視の仕組みが含まれているため、別途用意する必要がない場合がほとんどです。ただし含まれる機能はサービスによって異なるため、契約前に内容をご確認ください。
導入すればサイバー攻撃を完全に防げる?
いいえ。お助け隊サービスは被害の低減と早期対応を目的としたもので、攻撃や被害を完全に防ぐことを保証するものではありません。異常に素早く気づき、被害を最小限に抑えることに価値があります。
まとめ
サイバー攻撃のリスクが高まる今、セキュリティ対策はすべての企業にとって避けて通れない課題です。IPAのサイバーセキュリティお助け隊サービスを活用すれば、必要な対策をワンパッケージで、しかも専門家がいなくても月額数千円から進めることができます。
デジタル化・AI導入補助金(セキュリティ対策推進枠)もあわせて活用し、自社の負担を抑えながら情報セキュリティの向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。取引先からの要請が強まるSCS評価制度への対応を見据えるなら、新類型の動向にも注目しておきましょう。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する


