
フロンティア補助金とは、酒類事業者が国内需要低下や事業者の高齢化などに対応するため、「国内外の新市場開拓」「構造転換」などの施策を実施するにあたって、必要な資金をサポートする制度です。新型コロナの影響などもあり、売上低下に喘ぐ事業者を資金面で支援してくれます。
今回の記事では、フロンティア補助金の概要や流れ、具体的な補助対象事業者、申請要件などを解説します。
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この記事の目次
フロンティア補助金の概要と流れ
今回紹介する新市場開拓支援事業(フロンティア補助金)とは、酒類事業者が直面する「国内需要の減少」「酒類事業従事者の高齢化」などの課題や、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題の解決に向けて、「国内外の新市場開拓」などに意欲的に取り組む企業を支援する制度です。資金面でサポートすることにより、ポストコロナに向けた酒類業の経営改革や構造転換を促すことを目的としています。
令和5年度のフロンティア補助金を申請する大まかな流れは以下の通りです。
補助金の大まかな流れ |
1.国税庁が公募を開始する |
2.補助事業者が国税庁に公募申請書を提出する |
3.国税庁から採択通知が送付される |
4.補助事業者から国税庁へ交付申請を行う |
5.国税庁から補助事業者へ交付決定通知が送られる |
6.補助事業者が国税庁へ補助金の状況報告を提出する |
7.国税庁が中間検査を行う |
8.補助事業者が実績報告を行う |
9.国税庁が確定検査を行い交付額が決定される |
10.補助事業者が補助金を請求する |
11.補助事業者に補助金が支払われる |
フロンティア補助金 補助対象者とその要件
以下の1および2の要件すべてに該当し、かつ日本国内に所在する事業者が対象になります。フロンティア補助金の補助対象者 |
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1:補助対象者が公募申請時において、酒税法の規定により、酒類の製造免許、あるいは酒類の販売業免許を受けている者、または酒類事業者を少なくとも1者以上含むグループである。複数の酒類事業者等が連携して申請する場合は、グループ代表者を決めて、代表申請者名にて申請する。グループ申請の場合は、代表申請者が行う事業だけでなく参画事業者の事業も、代表申請者の事業として補助対象になる 2:「新市場開拓支援事業費補助金の交付を受ける者として不適当な者」として、補助対象者、およびグループ申請における参画事業者が、以下①〜⑨のいずれにも該当しない者である ①法人等が暴力団である。あるいは法人等の役員等が、暴力団員である ②役員等が、自己や自社、あるいは第三者の不正な利益を図る目的、または第三者に損害を加える目的で、暴力団あるいは暴力団員を利用するなどしている ③役員等が暴力団、あるいは暴力団員に対して資金等を供給し、または便宜を供与するなど直接的、あるいは積極的に暴力団の維持や運営に協力し、関与している ④役員等が暴力団、あるいは暴力団員であることを知りながら、社会的に非難されるべき関係を有している ⑤法人等が刑事告訴され、あるいは民事法上の不法行為を行った結果、係争中である ⑥公募締切の時点で、当事業にて市場獲得を目指す対象国の中に、国際連合安全保障理事会決議によって経済制裁が行われている国が含まれている ⑦法人等が、公募締切日までに納付期限が到来している国税を滞納している ⑧法人等が、公募締切日の前日から起算して3年前の日から公募締切日の前日までの間に、酒税関係法令に違反して罰金以上の刑に処せられている ⑨法人等が、公募締切の時点で「酒類の公正な取引に関する基準」に違反し、指示を受けた事項を改善していない |
具体的な申請要件
(1)共通の要件
3~5年の事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる事業計画を策定している
(2)補助上限400万円の場合の追加要件 *コロナ回復枠
以下の①あるいは②を満たし、かつ補助上限400万円を希望する場合
①直近2期の決算期において連続して売上が減少している
②2020年4月以降の連続する6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月の合計売上高、あるいは合計課税移出数量が、コロナ以前(2019年または2020年1月から3月)の同3ヶ月の合計売上高、あるいは合計課税移出数量と比較して減少している
(3)補助上限500万円の場合の追加要件
3~5年の事業計画期間において、売上額あるいは付加価値額を年率平均3%以上増加させる事業計画を策定している
補助金額
補助金額には以下の2パターンがあります。
(1) 1件当たり400万円上限、50万円下限
(2) 1件当たり500万円上限、50万円下限
※給与支給の増加計画を達成できない等の場合には、補助金額の一部を返還が求められます。
補助率
補助率は、小規模事業者2/3、その他の事業者は1/2です。
小規模事業者とは、常勤従業員数が20人以下(卸売業・小売業では5人以下)の法人または個人をいいます。
フロンティア補助金の対象事業
フロンティア補助金の対象事業は以下の通りです。具体的な取り組み事例と合わせて確認しましょう。
(1)商品の差別化による新たなニーズ獲得事業 |
マーケットインの考えを踏まえ、消費者のニーズを掘り起こすとともに、既存商品と差別化した酒類の開発を目的とした事業 【対象となる取り組みの例】 ・食品とのペアリングに特化した商品や、地方産品の特性を生かした商品 ・地元で活用した休耕田の収穫物を原材料とした商品 ・個人に対するオーダーメイド商品の開発体制の構築 ・新たな原材料等を使用し、これまでにない特性を持たせた高付加価値商品の開発 ・「伝統的酒造り」を差別化のポイントとした高付加価値商品の開発 |
(2)販売手法の多様化による新たなニーズ獲得事業 |
販売の場面における新たな訴求力の創出を通じ、消費者の多様なニーズに応えるサービスの提供を目的とした事業 【対象となる取り組みの例】 ・商品情報の充実による販売促進(QRコード等を活用した取り扱い商品のブランドストーリー提供や消費者が求める情報を記載した裏ラベルの活用等) ・テイスティング等の顧客体験を重視した販売形態の確立 ・データ分析等を用いた、顧客の嗜好に合致した商品の販売手法の導入 |
(3)ICT技術の活用による製造や流通の高度化、効率化事業 |
これまで専門家の経験等に頼っていた作業にICT技術を活用することで、専門家の技能とICT技術の相乗効果を創出する等、製造や流通の高度化、効率化を図る事業 【対象となる取り組みの例】 ・製造→AI技術等を活用した品質管理システムの導入 ・流通→RFIDやAIカメラ等を活用した管理システムの導入 |
(4)新型コロナウイルス感染症拡大の影響により顕在化した課題に対応するための事業 |
【対象となる取り組みの例】 ・特定の飲食店に取り引きが限定されている事業者が新たな販路を開拓するための取り組み ・家飲み需要の高まりへの対応 ・共同配送等による物流効率化等を通じた経費削減 |
なお、上記の【対象となる取り組みの例】以外であっても、上記(1)〜(4)の事業目的に合致する取り組みについては、採択対象となる可能性があります。
ただし、以下に該当する事業は不採択、あるいは交付決定の取り消しとなります。
①事業の主たる部分を他社へ外注、あるいは委託する事業
②「老朽化に伴う既存設備の単なる買換え」などと判断される事業
③公的資金の使途として、社会通念上、不適切であると判断される事業
フロンティア補助金の対象経費
補助対象経費は、事業の対象として明確に区分できるものであり、かつ、経費の必要性および妥当性を証拠書類で明確に確認できる以下の経費です。また、補助対象経費は、交付決定を受けた日以降に発注を行い、補助事業期間内に支払いを完了したものに限ります。
- 機械装置・システム構築費
- 施設整備費
- 借損料
- 設計・デザイン費
- 原材料等費
- マーケティング調査費
- 通信運搬費
- 会議費
- 産業財産権等取得等費
- 雑役務費
- 謝金
- 旅費
- 広報費
- 委託費
フロンティア補助金の申請スケジュール
【申請スケジュールおよび提出期限】
・受付開始:令和5年8月2日(水)
・第一次締切:令和5年9月1日(金)
・最終締切:令和5年10月13日(金)
郵送の場合、締切日の17時必着です。電子メールの場合、締切日の17時までに受信を確認できたものが有効です。
【補助事業期間】
交付決定日〜令和6年2月29日(木)まで
同日までに支払いが完了していることが必要です。正当な理由により期間内に事業を終了できない場合、本予算の繰越手続により認められた範囲で事業実施期間を延長できます。また、補助事業完了後、30日以内に補助事業の実績報告書を提出する必要があります。
【申請方法】
必要な申請書類を郵送あるいは電子メールで提出しましょう。必要に応じて追加資料の提出および説明を求めることがあります。
公募申請書の提出先および問い合わせ先は、国内の主たる事業実施場所を所轄する国税局です。
電子メールで提出する場合、以下の宛先に申請書類の電子データを添付しましょう。メール到着後、担当者より受信確認のメールを送付します。
締切日時までに受信が確認できない場合、事前連絡を行っていたとしても申請を受け付けません。また、メールサイズは添付ファイルを含めて10MBを超えないようにしてください。
・宛先:所轄の国税局のメールアドレス(公募要領のP.19〜に記載されています)
・件名:【申請書類】フロンティア補助金
まとめ
フロンティア補助金は、酒類の国内需要低下や新型コロナの影響によって売上低迷に陥っている事業者をサポートする制度です。
厳しい状況下で売上を改善させるには、国内外の新市場開拓など、大胆な施策の実施が必要です。今回のフロンティア補助金を活用しながら、生き残りを図るための施策を実行しましょう。