「経営者の高齢化と後継者不在で会社をたたむしかない」「M&Aで他社を買収したいが、仲介手数料が高くて踏み切れない」――こうした悩みを抱える中小企業経営者に注目されているのが、事業承継・M&A補助金です。
事業承継・M&A補助金は、中小企業の事業承継・M&A・PMI(経営統合)・廃業を国がトータルで支援する補助金制度です。設備投資から専門家活用、統合費用、廃業費用まで4つの枠でカバーし、最大2,000万円まで補助を受けられます。
2026年9月4日には16次公募の公募要領が開示されました。公募申請の受付期間は2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00。GビズIDプライムの取得に最大3週間かかることを踏まえると、いま準備を始めないと間に合わないタイミングです。
この記事では、事業承継・M&A補助金の制度概要から16次公募の最新情報、4つの支援枠の違い、補助額、対象者、申請方法、採択率を上げるコツまで、補助金ポータルが網羅的に解説します。
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この記事の目次
事業承継・M&A補助金とは何ですか?制度の全体像と16次公募までの変遷
事業承継・M&A補助金を一言で説明すると?
事業承継・M&A補助金は、中小企業・小規模事業者等が事業承継やM&Aに際して行う設備投資等や、経営資源の引継ぎ・引継ぎ後の経営統合に係る経費の一部を補助する制度です。正式には「中小企業生産性革命推進事業 事業承継・M&A補助金」という名称で、事業承継・事業再編・事業統合を促進し、我が国経済の活性化を図ることを目的としています。
補助上限は最大2,000万円(専門家活用枠 買い手支援類型 100億企業特例)で、中小企業者・小規模事業者・個人事業主まで幅広く対象となります。事業承継のフェーズに応じて4つの支援枠が用意されており、自社の状況に合った枠を選んで申請できます。
なぜこの補助金が用意されたのか
中小企業の後継者不在問題は依然として深刻です。中小企業庁が公表する事業承継促進枠のチラシによると、事業承継の形態は親族承継・従業員承継が約7割を占める一方、60代で後継者が決まっていない企業は約4割にのぼります。
さらに、後継者を決めてから事業承継が完了するまでには3年以上かかるケースが多く、早期の準備が欠かせません。選択肢が残っているうちに動き出せるよう、国が承継の準備・実行・統合・廃業まで一気通貫で費用を支援するのが、この補助金の役割です。
所管・運営体制はどうなっていますか?
事業承継・M&A補助金の所管は経済産業省中小企業庁です。事業実施は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)と、委託事業者である事業承継・M&A補助金事務局が担っています。
申請窓口は、デジタル庁が運営する電子申請システムjGrants(Jグランツ)に一本化されており、紙申請はできません。問い合わせ窓口は支援枠ごとに分かれています。
| 支援枠 | 問い合わせ電話番号 |
|---|---|
| 専門家活用枠/廃業・再チャレンジ枠 | 050-3145-3812 |
| 事業承継促進枠 | 050-3192-6274 |
| PMI推進枠 | 050-3192-6228 |
受付時間は平日09:30〜12:00、13:00〜17:00(土日祝を除く)です。
11次〜16次までの公募経緯
事業承継・M&A補助金は、もともと「事業承継・引継ぎ補助金」という名称で運用されていました。1次〜10次までは「事業承継・引継ぎ補助金」として実施され、制度改称を経て、11次以降は「事業承継・M&A補助金」として運用されています。
公募回ごとの主な変化は以下のとおりです。
- 11次公募:専門家活用枠のみ実施(買い手支援類型・売り手支援類型)
- 12次公募:4枠すべてに拡大(事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠・廃業再チャレンジ枠)
- 13次公募:制度の本格運用フェーズへ移行
- 14次公募:令和7年度補正予算での実施。2026年5月15日に採択者を決定
- 15次公募:専門家活用枠に「小規模売り手支援類型」を新設
- 16次公募:2026年9月4日に公募要領を開示。4枠すべてで公募
公募回ごとに専用WEBサイトが立ち上がる仕組みで、14次以降は shoukei-mahojokin.go.jp/r7h、11〜13次は shoukei-mahojokin.go.jp/r6h で運用されています。
事業承継・M&A補助金の16次公募はいつ始まりますか?スケジュールと変更点
16次公募の全体スケジュール
16次公募のスケジュールは以下のとおりです。締切日時を過ぎた申請は一切受け付けられません。
| 項目 | 時期 |
|---|---|
| 公募要領の開示 | 2026年9月4日(金)(開示済) |
| 公募申請受付期間 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00 |
| 採択日 | 2026年12月下旬以降 順次(予定) |
| 交付申請受付期間 | 2027年1月上旬〜2027年11月中旬(予定) |
| 交付決定日 | 2027年1月下旬以降 順次(予定) |
| 事業実施期間 | 交付決定日〜2028年3月中旬(予定) |
| 実績報告期間 | 2027年6月上旬〜2028年3月下旬(予定) |
| 補助金交付手続き | 2027年10月上旬以降 順次(予定) |
補助事業期間は2027年1月下旬(予定)から14か月以内を想定しています。申請から実際に補助金が振り込まれるまでおよそ1年かかるため、つなぎ資金の確保もあわせて検討しておきましょう。
16次公募の説明会はいつ開催されますか?
事務局は16次公募「専門家活用枠、PMI推進枠、事業承継促進枠、廃業・再チャレンジ枠」の説明会を開催予定です。申込受付は2026年9月9日(水)〜10月7日(水)17:00まで、説明会本番は2026年10月9日(金)14:00〜、Microsoft Teamsタウンホール形式のオンライン開催です。
各事業枠の説明は15分〜55分程度が予定されています。初めて申請する事業者は、公募要領を読み込んだうえで説明会に参加すると理解が一気に進みます。
15次から16次への主な変更点
16次公募は、15次公募の制度設計を基本的に引き継いでいます。押さえておくべきポイントは次のとおりです。
- 4枠すべてで公募:事業承継促進枠・専門家活用枠・廃業再チャレンジ枠・PMI推進枠のすべてが対象です
- 小規模売り手支援類型の継続:15次で新設された「専門家活用枠 小規模売り手支援類型」(補助上限450万円)が16次でも継続されています
- 事前着手は不可:補助対象経費の契約・発注は交付決定日以降である必要があります
- 賃上げ加点の要件:従業員1人当たり給与支給総額の上昇率2%以上を公募申請時に表明することが要件です
- 米国の追加関税措置:追加関税措置により大きな影響を受ける事業者が加点事由に含まれています
14次公募の採択結果はどうなりましたか?
2026年5月15日に公表された14次公募の採択結果は、申請件数512件に対し採択件数311件、採択率は約60.7%でした。枠別の内訳は以下のとおりです。
| 支援枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 169件 | 103件 | 約60.9% |
| 専門家活用枠 | 299件 | 180件 | 約60.2% |
| PMI推進枠 | 43件 | 27件 | 約62.8% |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 1件 | 1件 | 100% |
| 合計 | 512件 | 311件 | 約60.7% |
申請件数の約6割を専門家活用枠が占めており、M&Aの仲介手数料・FA費用を補助対象とするニーズが最も大きいことがわかります。廃業・再チャレンジ枠の単独申請は1件と極めて少なく、実務上は他枠との併用申請が主流です。
事業承継・M&A補助金はどの支援枠を選べばよいですか?4つの枠とその違い
4つの支援枠の全体マップ(事業承継・M&Aのフェーズで見る)
事業承継・M&A補助金の4つの支援枠は、事業承継・M&Aの時系列フェーズで整理すると理解しやすくなります。
- 承継の準備・実行フェーズ:事業承継促進枠(5年以内の親族内承継・従業員承継等に伴う設備投資を支援)
- M&A実行フェーズ:専門家活用枠(仲介手数料・FA費用・DD費用を支援)
- 統合後の経営フェーズ:PMI推進枠(経営統合の専門家費用・設備投資を支援)
- 廃業フェーズ:廃業・再チャレンジ枠(廃業に伴う費用を支援、他枠との併用可)
自社が事業承継・M&Aのどのフェーズにいるかを把握し、該当する枠を選ぶことが採択への近道です。
事業承継促進枠とは:承継を機とした設備投資・販路開拓を支援
事業承継促進枠は、「5年以内」に親族内承継・従業員承継等を予定している事業者を対象に、承継をキッカケとした生産性向上に資する設備投資等の費用を支援する枠です。M&Aによる第三者承継はこの枠ではなく専門家活用枠の対象となる点に注意してください。
補助上限額は800万円(賃上げ要件を満たす場合は1,000万円)、補助率は補助対象経費の1/2以内(小規模事業者等は2/3以内)。主な補助対象経費は設備費・産業財産権等関連経費・謝金・旅費・外注費・委託費等です。事業承継・引継ぎ支援センター、または中小機構地域本部から事業承継計画の策定支援を受けた場合には、審査で加点措置があります。
専門家活用枠とは:M&Aの専門家費用を支援(3つの類型+特例)
専門家活用枠は、M&Aの実行段階で発生する仲介手数料・FA費用・DD費用などを支援する枠で、16次公募では3つの類型と1つの特例に分かれています。
- 買い手支援類型(Ⅰ型):株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業等を支援。補助率2/3以内、補助上限600万円(DD費用を申請する場合は+200万円で800万円)
- 売り手支援類型(Ⅱ型):株式・経営資源を譲り渡す予定の中小企業等を支援。補助率は1/2または2/3以内、補助上限600万円(DD費用を申請する場合は+200万円で800万円)
- 小規模売り手支援類型:小規模事業者等の売却を支援。補助率2/3以内、補助上限450万円(売り手支援類型との同一公募回での申請は不可)
- 買い手支援類型 100億企業特例:補助上限を2,000万円とする特例。別途、専用の公募要領が公開されています
買い手支援類型では、補助対象経費への計上有無を問わずデュー・ディリジェンス(DD)の実施が必須となっている点に注意してください。M&A成立後のトラブル防止とPMIの成否を左右する重要な要件です。
PMI推進枠とは:M&A後の経営統合を支援(2つの類型)
PMI推進枠は、M&A成約後に必要な経営統合(PMI:Post Merger Integration)の費用を支援する枠で、2つの類型に分かれています。補助対象となるのは、公募申請受付終了時点でM&Aのクロージング日から3年を超えていない取組です。親族内の事業承継やグループ内の事業再編は対象外となります。
- PMI専門家活用類型:PMI計画の策定やPMI実行などに係る専門家活用費用を補助。補助率1/2以内、補助上限150万円(下限50万円)。単独申請なら廃業費併用で+300万円
- 事業統合投資類型:製造ラインやIT会計システムの統合等、経営統合の効果を高める設備投資を補助。補助率1/2以内(小規模事業者等は2/3以内)、補助上限800万円(賃上げ3%以上で1,000万円、下限100万円)
中小企業庁の調査によれば、PMIを実施した企業は実施していない企業よりもM&Aの成果を実感する割合が高く、統合フェーズへの投資が成果を左右することが示されています。DDを実施した場合には加点があります。
廃業・再チャレンジ枠とは:廃業費用を支援、他枠と併用可
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継・M&Aに伴って既存事業を廃業する際の費用を支援する枠です。補助対象経費は、廃業支援費(司法書士への登記申請資料作成費用等)・在庫廃棄費・解体費・原状回復費・土壌汚染調査費・リース解約費・移転移設費用などとなっています。
16次公募の補助上限は300万円、単独申請の補助率は2/3です。特徴は他の3枠との併用申請が可能な点で、併用時の補助率は各枠の事業費の補助率に従い、各枠の補助上限に加算される仕組みです。併用時の廃業費の上限は、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠との併用で300万円、専門家活用枠の小規模売り手支援類型との併用のみ150万円となります。
なお、単独申請(再チャレンジ申請)には2020年以降にM&A(事業の譲り渡し)に着手したものの成約に至らなかったことが要件で、認定経営革新等支援機関の確認書と再チャレンジ計画書の提出も必要です。再チャレンジの主体は、法人の場合は株主、個人事業主の場合は個人事業主本人となります。14次公募の採択実績を見ても単独申請は1件のみで、実務上は他枠と組み合わせた併用申請が中心です。
4枠を比較する
各枠の特徴を一覧で比較すると以下のようになります。
| 支援枠/類型 | 対象フェーズ | 主な対象者 | 主な経費 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 5年以内の承継予定 | 親族内・従業員承継を予定する事業者 | 設備費・産業財産権等関連経費・外注費等 |
| 専門家活用枠 買い手支援類型 | M&A実行 | 買い手企業 | 仲介手数料・FA・DD費用 |
| 専門家活用枠 売り手支援類型 | M&A実行 | 売り手企業 | 仲介手数料・FA費用・廃業費 |
| 専門家活用枠 小規模売り手支援類型 | M&A実行 | 小規模事業者の売り手 | 仲介手数料・システム利用料等 |
| PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | 統合後の経営 | M&A成約済みの買い手 | PMIコンサル費用 |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 統合後の経営 | M&A成約済みの買い手 | 設備費・システム導入費 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 廃業 | 承継・M&Aに伴う廃業者 | 廃業支援費・解体費等 |
自社に合う枠はどれ?シーン別ナビゲーション
「結局、自分はどの枠を使えばいいの?」と迷う方のために、シーン別の選び方を整理しました。
- シーン①「5年以内に息子へ会社を引き継ぐ。設備も入れ替えたい」→ 事業承継促進枠
- シーン②「他社を買収したい。M&A仲介の手数料が高い」→ 専門家活用枠 買い手支援類型
- シーン③「従業員5人の店を譲渡したい。費用を抑えたい」→ 専門家活用枠 小規模売り手支援類型
- シーン④「M&Aは成約済み。まず統合の進め方を専門家に設計してもらいたい」→ PMI推進枠 PMI専門家活用類型
- シーン⑤「統合のために製造ラインや基幹システムを入れ替えたい」→ PMI推進枠 事業統合投資類型
- シーン⑥「事業承継・M&Aに合わせて不採算事業を畳む」→ 廃業・再チャレンジ枠(他枠併用)
- シーン⑦「M&Aで買い手が見つからず、廃業して次の挑戦に移りたい」→ 廃業・再チャレンジ枠(単独申請)
事業承継・M&A補助金は最大いくらまで受け取れますか?補助額・補助率の早見表
補助上限・補助率の全体マップ
16次公募の補助上限と補助率は、支援枠・類型ごとに以下のように設定されています。
| 支援枠/類型 | 補助率 | 補助上限額 | 上乗せ |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 1/2以内(小規模事業者等は2/3以内) | 800万円(下限100万円) | 賃上げ3%以上で1,000万円/廃業費併用で+300万円 |
| 専門家活用枠 買い手支援類型 | 2/3以内 | 600万円(下限50万円) | DD実施で+200万円/廃業費併用で+300万円 |
| 専門家活用枠 売り手支援類型 | 1/2または2/3以内 | 600万円(下限50万円) | DD費用申請で+200万円/廃業費併用で+300万円 |
| 専門家活用枠 小規模売り手支援類型 | 2/3以内 | 450万円(下限なし) | 廃業費併用で+150万円 |
| 専門家活用枠 買い手支援類型 100億企業特例 | 1,000万円以下の部分は1/2、超過分は1/3 | 2,000万円(下限50万円) | 廃業費併用で+300万円 |
| PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | 1/2以内 | 150万円(下限50万円) | 単独申請なら廃業費併用で+300万円 |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 1/2以内(小規模事業者等は2/3以内) | 800万円(下限100万円) | 賃上げ3%以上で1,000万円/廃業費併用で+300万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 単独申請は2/3(併用時は各枠の事業費の補助率に従う) | 300万円 | 小規模売り手支援類型との併用時は150万円 |
売り手支援類型の補助率は、次の①②のいずれかに該当する場合に2/3以内、該当しない場合は1/2以内となります。
- ① 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者
- ② 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者
補助額の計算式を理解する
補助金の計算は次の基本式で行われます。
たとえば補助対象経費が1,000万円・補助率2/3の場合、計算上の補助額は約666万円ですが、補助上限が600万円であれば実際に受け取れるのは600万円となります。上限を超える分は自己負担です。なお、補助対象経費からは消費税額および地方消費税額を減額する必要があります。
また、事業承継・M&A補助金は精算払い(後払い)を採用しています。採択されてもすぐに振り込まれるわけではなく、事業を実施して実績報告を提出し、事務局の確定検査を経てから交付されます。「採択=入金」ではない点に注意してください。
賃上げ要件を満たすと補助上限はどこまで伸びるか
賃上げの基準は、補助事業が完了した日を含む事業年度(基準年度)の「従業員1人当たりの給与支給総額」と比較した、基準年度の翌年度の同額の上昇率です。ここで押さえておきたいのが、「加点」と「補助上限の引き上げ」で必要な水準が異なる点です。
| 目的 | 必要な上昇率 | 対象 |
|---|---|---|
| 審査上の加点 | 2%以上 | 全枠共通 |
| 補助上限の引き上げ(800万円→1,000万円) | 3%以上 | 事業承継促進枠、PMI推進枠 事業統合投資類型 |
専門家活用枠では賃上げによる補助上限の引き上げはなく、2%以上で加点のみとなります。いずれも公募申請時に、全従業員または従業員代表者・役員へ表明することが要件です。提出書類は「賃金引上げ計画の誓約書」「従業員への賃金引上げ計画の表明書」で、売り手支援類型の場合はさらに「M&A以降も賃上げを実施する誓約書」が必要です。
また、事業承継促進枠で補助上限の引き上げ(3%以上)を選択して未達だった場合は、上乗せ分(最大200万円)の返還を求められます。賃上げは事業計画期間中の各事業年度末で維持が確認され、3年目以降も確認の対象です。確実に達成できる範囲で計画してください。
100億企業特例を活用した最大2,000万円
専門家活用枠の買い手支援類型では、補助上限額を2,000万円とする「100億企業特例」が用意されています。16次公募では通常の買い手支援類型・売り手支援類型とは別に、100億企業特例専用の公募要領が公開されています。
補助率は段階制で、補助額1,000万円以下の部分が1/2、1,000万円を超えて2,000万円までの部分が1/3となります。「100億宣言」とは、売上高100億円を目指す中小企業が、その目標と実現に向けた取組の実施を宣言するもので、中小機構が運営する「100億企業成長ポータル」で公表します。
中堅・大型のM&Aを検討している買い手企業にとって有力な選択肢ですが、通常の買い手支援類型とは異なる制約があります。最低譲渡価額5億円以上、公募申請時点での100億宣言の公表、被承継者の従業員の雇用を3年間維持といった要件が加わり、雇用維持が果たされない場合は減少率に応じた補助金の返還を求められます。また、通常の買い手支援類型との同一公募回での併願はできず、特例で不採択となっても通常類型へ自動的に移行することはありません。適用要件の詳細は、必ず100億企業特例の公募要領で確認してください。
ケース別「いくらもらえるか」シミュレーション
実際の事業者像に当てはめた補助額のイメージを示します。あくまで概算で、正確な金額は公募要領と個別案件の経費構成で決まります。
- ケース①:小規模事業者が5年以内の親族内承継を予定し、新たな設備に600万円投資 → 事業承継促進枠(補助率2/3)で最大400万円程度
- ケース②:中小企業が同業他社をM&A、仲介手数料900万円+DD費用300万円 → 買い手支援類型で上限600万円+DD上乗せ200万円=最大800万円
- ケース③:従業員5人の小売事業者がM&Aで譲渡、仲介手数料500万円 → 小規模売り手支援類型(補助率2/3)で最大333万円
- ケース④:M&A売却+一部廃業の併用、仲介手数料900万円+売り手DD費用300万円+廃業費用400万円 → 売り手支援類型(上限600万円)+DD上乗せ200万円+廃業費300万円で最大1,100万円
自社の状況に近いケースで補助額を試算し、申請メリットを判断してください。
補助金が振り込まれるタイミング
16次公募における入金時期は、申請から約1年後となります。
- 公募申請(2026年10月2日〜11月6日17:00)
- 採択通知(2026年12月下旬以降 順次予定)
- 交付申請(2027年1月上旬〜)
- 交付決定(2027年1月下旬以降 順次予定)
- 事業実施(交付決定日〜2028年3月中旬予定)
- 実績報告(2027年6月上旬〜2028年3月下旬予定)
- 補助金交付=入金(2027年10月上旬以降 順次予定)
事業実施期間中は自己資金で立て替える必要があるため、資金繰りには注意が必要です。公募要領でも、つなぎ融資を検討する場合は早めに金融機関へ相談するよう案内されています。
自社や自分は事業承継・M&A補助金の対象になりますか?
補助対象事業者の基本要件
事業承継・M&A補助金の対象事業者は、中小企業基本法第2条に準じた中小企業者等です。業種別の規模要件は以下のとおりで、資本金・従業員数のいずれかを満たせば該当します。
| 業種分類 | 資本金・出資総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下または従業員900人以下、ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下、旅館業は資本金5,000万円以下または従業員200人以下という業種特例もあります。
小規模売り手支援類型で使われる小規模事業者等の定義は、製造業その他が従業員20人以下、商業・サービス業が従業員5人以下、サービス業のうち宿泊業・娯楽業が従業員20人以下です。
対象外となる事業者(みなし大企業など)
以下に該当する場合は、規模要件を満たしていても対象外となります。
- 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接・間接に100%の株式を保有される法人
- 確定している直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者
- みなし大企業(発行済株式の1/2以上を同一の大企業が所有する等)
- みなし同一法人(親会社が議決権50%超を有する子会社等は、いずれか1社のみ申請可)
- 社会福祉法人、医療法人、一般社団・財団法人、公益社団・財団法人、学校法人、農事組合法人、組合、法人格のない任意団体
自治体等の公的機関も「大企業」とみなされる点、資本構成によっては対象外となる点に注意が必要です。
すべての枠に共通する必須要件チェックリスト
支援枠を問わず、共通して満たすべき主な要件は次のとおりです。
- 日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営んでいること
- 地域の雇用維持・創出など、地域経済に貢献している(またはその予定である)こと
- 暴力団等の反社会的勢力でなく、関係も有しないこと
- 法令遵守上の問題を抱えていないこと
- 補助事業完了後の事業化状況報告等を期限までに提出すること
- 経済産業省・中小機構から補助金交付等停止措置または指名停止措置を受けていないこと
これらは形式要件ですが、書類不備や記載漏れがあると資格要件審査の段階で落とされるため、丁寧に確認してください。
サイバーセキュリティお助け隊サービスは必須ですか?
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用は、事業承継・M&A補助金では必須要件ではなく加点事由です。公募申請時点で同サービスを利用している中小企業等は、審査で加点されます。
サイバーセキュリティお助け隊サービスは、中小企業のサイバー攻撃対策を一括で提供するサービスで、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が登録・公表した事業者から選んで加入します。加点を狙う場合は、申込書・請求書等の利用が確認できる書類を提出します。契約から書類がそろうまで時間がかかるため、加点を取りにいくなら早めに動きましょう。
16次公募の加点事由10項目
専門家活用枠(買い手・売り手)の16次公募要領では、以下のいずれかに該当する場合に審査で加点されます。それぞれ、該当することを証する書類の提出が必要です。
- ①「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けていること
- ②「経営力向上計画」の認定、「経営革新計画」の承認または「先端設備等導入計画」の認定を受けていること
- ③「地域未来牽引企業」であること
- ④ 小規模事業者等の定義に該当すること
- ⑤「(連携)事業継続力強化計画」の認定を受けていること
- ⑥ ワーク・ライフ・バランス等の推進(えるぼし認定・くるみん認定等)
- ⑦「健康経営優良法人」であること
- ⑧「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を利用していること
- ⑨ 従業員1人当たり給与支給総額の上昇率2%以上の賃上げを表明していること
- ⑩ 米国の追加関税措置により大きな影響を受けること
小規模売り手支援類型では④が加点項目から外れ、9項目となります。事業承継促進枠では、事業承継・引継ぎ支援センターまたは中小機構地域本部から事業承継計画の策定支援を受けた場合に加点措置があります。
申請できないケース(NG例)
以下のケースは事業承継・M&A補助金を申請できません。
- 交付決定前に契約・発注に着手済みの事業
- グループ内の事業再編、親族間の事業承継に相当するM&A(専門家活用枠)
- 物品・不動産等のみの売買、空き家や賃貸物件のみの売買
- 常時使用する従業員1名以上の引継ぎを伴わない事業譲渡
- 休眠会社や事業の実態がない会社におけるM&A
- 国(独立行政法人等を含む)の他の補助金・助成金を活用する事業(重複受給禁止)
- 過去の「経営資源引継ぎ補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」で事業化状況報告を提出しなかった者
特に「事前着手の禁止」は見落としが多いポイントです。M&A仲介契約や設備発注のタイミングには細心の注意を払ってください。
事業承継・M&A補助金はどの費用が補助対象になりますか?
専門家活用に係る経費(仲介・FA・DD等)
専門家活用枠の中核となる補助対象経費は、M&Aプロセスで専門家に支払う各種費用です。委託費として認められる主な費用形態は以下のとおりです。
| 費用形態 | 支払相手 |
|---|---|
| 着手金・マーケティング費用・リテーナー費用 | FA・仲介業者 |
| 基本合意時報酬・成功報酬 | FA・仲介業者 |
| 価値算定費用 | FA・仲介業者・各専門家 |
| デュー・ディリジェンス費用 | 各専門家 |
| 契約書等の作成・レビュー、クロージング手続き費用 | 弁護士 |
| 不動産売買・定款変更等の登記費用 | 司法書士 |
| 許認可等申請費用 | 行政書士 |
| 労務関連手続き費用 | 社会保険労務士 |
| セカンドオピニオン費用 | M&A支援機関 |
DD費用は、補助額ベースで200万円を超えない金額で申請します。ただし、有資格者が実施する財務DD・税務DD・法務DD等を複数行う場合は、DD1種につき補助額ベースで200万円までの費用が認められることがあります。
設備投資・廃業に係る経費
事業承継促進枠では設備費・産業財産権等関連経費・謝金・旅費・外注費・委託費等が、PMI推進枠 事業統合投資類型ではPMIに係る専門家活用費用・設備費・システム導入費・外注費・委託費等が対象となります。
廃業費として対象になるのは次の経費です。
- 廃業支援費(解散登記・清算結了登記等の申請資料作成を司法書士に依頼した費用)
- 在庫廃棄費(自己所有物。売却して対価を得る場合の処分費は対象外)
- 解体費・原状回復費
- リースの解約費(ファイナンスリース取引の解約金・違約金は対象外)
- 土壌汚染調査費(土壌汚染対策工事の費用は対象外)
- 移転・移設費用
補助対象外となる経費(NGリスト)
以下の経費は補助対象外となります。
- 消費税額および地方消費税額
- 金融機関に対する振込手数料、為替差損
- 補助金実績報告書の作成費用、確定検査を受けるための費用
- 本補助金の申請書類作成代行費用(行政書士への委任費用を含む)
- FA・仲介契約締結前のコンサルティング費用、バリューアップのためのコンサル費用
- M&A成立後の経営改善等のコンサルティング費用、クロージング後に発生するPMI費用(専門家活用枠の場合)
- 日当・食卓料、タクシー代・ガソリン代・高速道路通行料金、グリーン車等の特別料金
支払方法にも制限があり、補助対象となるのは補助事業者名義の口座からの銀行振込またはクレジットカード1回払いのみです。現金支払い、手形・小切手、仮想通貨、PayPay・Suica等のキャッシュレスサービスでの支払いは対象になりません。
M&A支援機関登録制度の要件
専門家活用枠でM&A仲介手数料・FA費用を補助対象とするには、M&A支援機関登録制度に登録された業者の利用が必須です。登録の有無は交付決定時に確認されます。
経費計上のルール(相見積もり・契約・支払い)
補助対象経費を計上する際は、次の実務ルールを守る必要があります。
- 相見積もりの取得:1件50万円以上(税抜)の支払いは原則2者以上からの見積が必須。外注費・委託費・システム利用料・保険料は50万円未満でも原則相見積が必要です
- 最低価格の選定:相見積の中で最低価格を提示した者を選定します
- 交付決定後の契約・発注:交付決定通知を受けてから契約・発注を行うのが原則です
- 事業期間内の支払い完了:見積・発注・納品・検収・請求・支払のすべてを補助事業期間内に完了させる必要があります
FA・仲介費用については、レーマン表により算出される報酬総額以下であれば相見積が不要となる例外もあります。その場合も「関与専門家選定理由書」の整備と、選定先1社からの見積取得は必須です。
事業承継・M&A補助金はどうやって申請すればよいですか?
申請から入金までの全体フロー
事業承継・M&A補助金の申請から入金までは、以下のステップで進みます。
- Step1 公募申請:jGrantsで電子申請(2026年10月2日〜11月6日17:00)
- Step2 審査・採択結果通知:2026年12月下旬以降 順次(予定)
- Step3 交付申請:採択後に必要書類を提出(2027年1月上旬〜)
- Step4 交付決定:交付決定通知を受領(2027年1月下旬以降 順次予定)
- Step5 事業実施:交付決定日〜2028年3月中旬(予定)
- Step6 実績報告・確定検査:2027年6月上旬〜2028年3月下旬(予定)
- Step7 補助金交付(入金):2027年10月上旬以降 順次(予定)
補助事業に着手できるのは交付決定通知書を受理した後です。この順序を守らないと、経費が補助対象外になります。
公募開始前にやっておくべき準備(4つ)
公募申請を円滑に進めるために、公募開始前から取り組むべき準備は次の4つです。
- ① GビズIDプライムの取得:jGrantsの利用に必須のID。発行に1〜2週間、混雑時は3週間程度かかるため最優先で手続きを進める。印鑑証明書(発行から3か月以内)と代表者印を押印した申請書が必要
- ② M&A支援機関登録制度の確認:専門家活用枠でM&A仲介・FAを利用する場合、登録業者かどうかを確認
- ③ 決算書等の必要書類の準備:履歴事項全部証明書、直近3期分の決算書、代表者の住民票などを申請日以前3か月以内の発行分でそろえる
- ④ 加点書類の準備:経営力向上計画の認定書、健康経営優良法人の認定証、賃上げ計画の誓約書など、該当する加点事由の証憑を集める
「公募開始後に準備を始めるのでは遅い」のが事業承継・M&A補助金の特徴です。公募要領が開示されている今から動き出すのが理想的です。
jGrants(Jグランツ)で電子申請する手順
事業承継・M&A補助金の申請は、jGrantsで行います。手順の概要は次のとおりです。
- GビズIDプライムでjGrantsにログイン
- 「事業承継・M&A補助金」の申請フォームを選択(公募回・支援枠を間違えないよう注意)
- 申請フォームの各項目を入力(事業者情報・事業計画・経費明細など)
- 必要書類をPDFでアップロード(パスワードは設定しない)
- 提出前にセルフチェック(記載漏れ・添付漏れがないか)
- 提出処理を行い、提出完了を確認する
提出後、事務局から差し戻し・再提出依頼が来た場合は速やかに対応してください。
主要な必要書類リスト
専門家活用枠で法人が申請する場合の主な必要書類は次のとおりです。枠・類型によって追加書類が必要となります。
- 申請者(法人):履歴事項全部証明書(申請日以前3か月以内)、直近3期分の決算書
- 代表者:住民票(申請日以前3か月以内。マイナンバー部分は墨消し)
- 個人事業主:住民票、直近3期分の確定申告書B・所得税青色申告決算書、開業届および青色申告承認申請書の写し
- 売り手支援類型:常時使用する従業員1名の労働条件通知書
- 共同申請時:支配株主・株主代表の住民票または履歴事項全部証明書、株主代表に係る確認書
- 加点用書類:賃金引上げ計画の誓約書、従業員への表明書、各種認定書・選定証 など
書類不備は不採択の主要因です。公募要領のチェックリストで漏れがないか確認してください。
採択につながる事業計画書の書き方(5つのコツ)
16次公募要領では、書面審査の着眼点が明示されています。買い手支援類型では「買収の目的・必要性」「買収による効果・地域経済への影響」「買収実現による成長の見込み」「財務内容の健全性」、売り手支援類型では「譲渡の目的・必要性」「譲渡による効果・地域経済への影響」が評価されます。ここから逆算した書き方のコツは次の5つです。
- ① M&A・承継の必要性を経営課題に紐づける:単に「補助金が欲しい」ではなく、自社の経営課題を解決する手段として位置づける
- ② 地域経済への貢献を具体的に書く:域内仕入・域外販売・地域の雇用維持など、公募要領が例示する観点に沿って記述する
- ③ 数値計画は売上高・付加価値額・労働生産性で具体化:3〜5年スパンの数値目標と、その根拠を提示する
- ④ シナジーを定量化する:買い手支援類型では「シナジーを活かした生産性向上」が要件そのものです
- ⑤ 加点事由の取り組みを漏れなく明記:該当する加点項目はすべて証憑とセットで提出する
「売上を倍増させます」だけでは不採択リスクが高まります。「現状の年商3億円が、M&A後の取引拡大により1年目4.2億円、3年目6億円となる根拠は◯◯」というレベルで根拠を示しましょう。
申請代行に関するルール
事業承継・M&A補助金では、申請書類の作成代行に厳格なルールが設けられています。
コンサルティング会社等による相談・助言は可能ですが、申請内容は事業者自身が理解し、責任を持って提出する必要があります。
事業承継・M&A補助金の採択率を上げるにはどうすればよいですか?
直近の採択率はどのくらいですか?
事業承継・M&A補助金の直近採択率は、以下のとおりです。
| 公募回 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 11次 | 590件 | 359件 | 約60.8% |
| 12次 | 742件 | 453件 | 約61.1% |
| 13次 | 481件 | 293件 | 約60.9% |
| 14次 | 512件 | 311件 | 約60.7% |
採択率はおおむね60%前後で安定しています。一見高く見えますが、資格要件審査で落とされる申請を除いた実質的な難易度はこれより高いと考えるべきです。
① 加点事由をフル活用する
16次公募には10項目の加点事由があり、該当するものをできる限り多く満たすことが採択への近道です。特に「経営力向上計画の認定」「事業継続力強化計画の認定」「健康経営優良法人」「サイバーセキュリティお助け隊サービス」は、申請前から準備すれば取得できる可能性のある項目です。
一方、賃上げ加点は未達時のペナルティが重いため、確実に達成できる場合のみ選択してください。
② 地域経済への貢献を具体的に示す
16次公募要領は、補助対象者の要件として「地域経済に貢献している中小企業者等であること」を明記しています。具体例として、地域の雇用の維持・創出、域内仕入の多さ、地域の強み(技術・特産品・観光・スポーツ等)の活用、域外販売の多さ、地域経済に貢献するプロジェクトでの中心的役割が挙げられています。
これらは審査の着眼点でもあるため、自社の事業がどの観点に当てはまるかを数値とともに記述しましょう。
③ 不採択・減額になりやすいパターンを避ける
不採択や交付額減額につながりやすいパターンは次のとおりです。
- 経営課題と補助事業の関連性が薄い
- 数値計画が根拠なし・希望的観測のみ
- 事前着手疑義のある契約タイミング
- 相見積の未取得、または取得上の不備
- 支払方法の不備(現金払い・第三者名義口座からの支払い等)
- 記載漏れ・添付書類の不足
公募要領には「交付決定された場合においても、契約上の不備、相見積の未取得、支払方法の不備等により交付額が減額される場合がある」と明記されています。採択後の実務も含めて設計してください。
④ 事業承継・引継ぎ支援センター等の身近な相談先を使う
事業承継促進枠のチラシでは、まず身近な相談先に話を聞くことが推奨されています。具体的には、事業承継・引継ぎ支援センター(国の専門窓口)、中小機構地域本部、商工会・商工会議所、取引のある銀行・信用金庫、中小企業診断士や税理士などの専門家です。
事業承継促進枠では、事業承継・引継ぎ支援センターまたは中小機構地域本部から事業承継計画の策定支援を受けた場合に加点措置があります。相談は無料で受けられるため、活用しない手はありません。
⑤ 一度不採択になってもあきらめない
事務局は審査結果(採択されなかった理由等)に関する問い合わせには一切応じません。しかし、公募要領に示された審査の着眼点をもとに計画書を再構築し、次回公募に挑戦することは可能です。
再申請の際は、前回計画の弱点と思われる箇所を洗い出し、特に数値根拠・加点事由・地域経済への貢献の記述を強化してください。
事業承継・M&A補助金についてよくある質問にQ&A形式でお答えします
個人事業主でも事業承継・M&A補助金は申請できますか?
はい、個人事業主も対象です。ただし専門家活用枠では、「個人事業の開業届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日付から5年が経過していることが要件となります。申請時には直近3期分の確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写し、開業届および青色申告承認申請書の写しが必要です。従業員5人以下の商業・サービス業などであれば、補助上限450万円の「小規模売り手支援類型」も選択できます。
16次公募の申請締切はいつですか?
16次公募の公募申請受付期間は2026年10月2日(金)から2026年11月6日(金)17:00までです。締切日時を過ぎてからの公募申請は一切受け付けられません。申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で、発行には1〜2週間、混雑時は3週間程度かかります。未取得の場合は今すぐ手続きを始めてください。
M&Aの相手が決まっていなくても申請できますか?
専門家活用枠は、補助事業期間内に相手方との基本合意書または最終契約書が締結される見込みであれば申請可能です。一方、PMI推進枠は公募申請受付終了時点でM&Aのクロージング日から3年を超えていない取組が対象のため、成約済みであることが前提となります。なお補助事業期間内に経営資源引継ぎが実現しなかった場合、買い手支援類型では原則DD費用のみが補助対象となり、補助上限も300万円に変更されます。
親族内での事業承継にM&A補助金は使えますか?
専門家活用枠では、親族間の事業承継に相当する取引は「実質的な事業再編・事業統合が行われたとみなされない」として原則補助対象外です。グループ内の事業再編も同様に対象外となります。ただし、親族内承継や従業員承継を予定している事業者は「事業承継促進枠」の対象となり、承継を機とした設備投資等に最大800万円(賃上げ要件充足で1,000万円)の補助を受けられます。承継の形態によって使える枠が異なる点に注意してください。
他の補助金(ものづくり補助金など)と併用できますか?
同一または類似内容の事業で、国(独立行政法人等を含む)が助成する他の制度と重複する事業は補助対象になりません。ただし、事業承継・M&A補助金で補助対象とする経費と、他の補助金の対象経費が明確に異なれば、それぞれ別の事業として申請することは可能です。たとえば、M&Aの仲介手数料は事業承継・M&A補助金、新事業の設備投資はものづくり補助金、というように使い分けることが考えられます。
申請から入金までどれくらいの期間がかかりますか?
16次公募の場合、2026年10月2日に申請受付が始まり、補助金の交付手続きは2027年10月上旬以降が予定されています。申請から入金までおよそ1年です。事業承継・M&A補助金は精算払い(後払い)のため、事業実施期間中は自己資金で立て替える必要があります。資金繰りに不安がある場合は、公募要領でも案内されているとおり、早めに金融機関へつなぎ融資の相談をしてください。
補助金は確定申告で課税対象になりますか?
はい、公募要領には「補助金は経理上、交付を受けた事業年度における収益として計上するものであり、法人税等の課税対象となる」と明記されています。ただし、固定資産の取得に充当した補助金は「圧縮記帳」の特例を活用することで課税繰延が可能なケースがあります。具体的な税務処理は税理士に相談することをおすすめします。
海外企業の買収にも使えますか?
補助対象者は日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営む中小企業者等に限られます。また海外企業についても、資本金と従業員数がともに中小企業者の定義を超えている場合は「大企業」に該当します。制度の目的が国内の地域経済の活性化にあるため、詳細な対象範囲は必ず公募要領で確認してください。
M&A支援機関登録制度に登録されていない仲介業者を使うとどうなりますか?
M&A支援機関登録制度に登録されていない仲介業者・FAに支払った手数料は、補助対象外となります。M&Aの取引自体に問題はありませんが、その費用を補助金で賄うことはできません。登録の有無は交付決定時に確認されるため、専門家活用枠を活用する場合は、必ずM&A支援機関登録制度のサイトで登録業者かどうかを確認してください。なお、FA業務・仲介業務を行わずDD業務のみを行う士業等専門家は、登録制度の対象外です。
複数の枠を同時に申請することはできますか?
枠・類型の組み合わせによって可否が異なります。買い手支援類型はPMI推進枠(PMI専門家活用類型)との同一公募回での同時申請が可能です。廃業・再チャレンジ枠は他の3枠と併用申請でき、併用時は各枠の補助上限に加算されます。一方、申請できない組み合わせもあります。小規模売り手支援類型と売り手支援類型、100億企業特例と通常の買い手支援類型、PMI推進枠の事業統合投資類型と買い手支援類型/PMI専門家活用類型(単独申請)は、いずれも同一公募回での申請ができません。また同一の補助対象事業では、買い手支援類型・売り手支援類型それぞれ1申請までとなります。
まとめ|事業承継・M&A補助金16次公募で次に何をすべきですか?
事業承継・M&A補助金16次公募は、2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00に申請を受け付けます。4つの支援枠と3つの類型、そして100億企業特例を組み合わせれば最大2,000万円の補助が可能で、中小企業の事業承継・M&A戦略を強力に後押しします。
採択率は約60%と、適切な準備さえすれば十分に通る制度です。ただし加点事由の取りこぼし、地域経済への貢献の記述不足、相見積や支払方法の不備は、不採択や交付額減額に直結します。事前着手は不可のため、契約・発注のタイミングにも細心の注意を払ってください。
準備は今日から始めるのがベストです。GビズIDプライムの取得、M&A支援機関登録制度の確認、事業承継・引継ぎ支援センターへの相談、加点書類の収集など、できることから着手しましょう。
① 公募申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00/補助上限は最大2,000万円
② 4つの支援枠+小規模売り手支援類型(450万円)で、あらゆる事業承継・M&Aフェーズに対応
③ 14次採択率は約60.7%、加点事由の活用と事業計画書の質が採択を左右する
事業承継では、補助金だけでなく税制も重要な選択肢になります。あわせて確認しておきましょう。
申請を検討される方は、まず補助金ポータルの無料相談で、自社に最適な支援枠の選定や事業計画書作成のアドバイスを受けることをおすすめします。
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