2025年も「事業承継・M&A補助金」の実施が予定され、中小企業庁が概要を発表しました。補助上限は前年より引き上げられ、最大2000万円まで支援が受けられるようになります。また、新設された「PMI推進枠」により、M&A後の経営統合に必要な専門家費用や設備投資が支援対象となり、事業承継後の円滑な運営が一層サポートされます。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
事業承継・M&A補助金とは
事業承継や事業引継ぎを進める上で、経営資源の引継ぎにかかる高い費用が課題となっており、積極的な投資ができないことで生産性向上の機会を逃している現状があります。
これを解決するため、「事業承継・M&A補助金」では、事業再編、事業統合を含む事業承継を契機とした設備投資や経営資源の引継ぎにかかる費用の一部を補助し、事業者の負担軽減を図ります。
【補助対象の具体例】
親族内承継や従業員承継、M&Aによる経営資源の引継ぎに伴う設備投資や専門家費用などが補助対象となります。また、M&A後の経営統合(PMI)や、事業承継に伴う廃業支援、新たな挑戦に向けた取り組みなど、幅広い事業フェーズをカバーしています。
支援枠は以下の4つです。
事業承継促進枠
「事業承継促進枠」は、親族内承継や従業員承継を予定している中小企業が、事業承継を円滑に進めるために必要な設備投資費用などを支援する枠組みです。対象となるのは、5年以内に事業承継を予定している事業者です。
補助金額は800万円が基本上限ですが、一定の賃上げを実施する場合には1000万円まで引き上げられます。補助率は中小企業で1/2、小規模事業者の場合は2/3と優遇されており、設備費や産業財産権関連経費、外注費や委託費など幅広い経費が補助対象です。
専門家活用枠
「専門家活用枠」は、M&Aを進める際に必要な専門家の活用費用を補助する制度です。フィナンシャル・アドバイザー(FA)や仲介にかかる費用、表明保証保険料などが補助対象となります。ただし、FAや仲介業者については「M&A支援機関登録制度」に登録された専門家の支援を受けることが条件です。
この枠では、M&Aにおける「買い手支援類型」と「売り手支援類型」の2つが設定されており、それぞれ補助上限額と補助率に違いがあります。
買い手支援類型
【補助上限額】
- 基本となる上限額は600万~800万円
※800万円を上限に、デューデリジェンス(DD)費用の申請をする場合200万円を加算 - 「100億円企業要件」を満たす場合、上限額を2000万円まで引き上げ
【補助率】
一般的な場合補助率は2/3ですが、「100億円企業要件」を満たす場合は、1000万円以下の部分が1/2、1000万円超の部分が1/3となります。
売り手支援類型
【補助上限額】
- 600万~800万円
※800万円を上限に、デューデリジェンス(DD)費用の申請をする場合200万円を加算
【補助率】
補助率は1/2です。特定条件(赤字や営業利益率の低下)を満たす場合は、補助率が2/3に引き上げられます。
PMI推進枠
「PMI推進枠」は、M&A後の経営統合(PMI: Post-Merger Integration)に必要な費用を支援する補助金です。M&Aを成功させた後、経営資源の統合や設備投資を円滑に進めるための取り組みを支援します。
補助の対象となるのは、補助事業期間中に経営資源を譲り渡す、または譲り受ける事業者で、設備費、外注費、委託費等が対象経費です。
「PMI専門家活用類型」と「事業統合投資類型」があります。
PMI専門家活用類型
【補助上限額】
150万円
【補助率】
1/2
事業統合投資類型
【補助上限額】
- 800万~1000万円
※一定の賃上げを実施する場合、補助上限を1000万円に引き上げ
【補助率】
補助率は1/2で、小規模事業者に該当する場合は2/3になります。
廃業・再チャレンジ枠
「廃業・再チャレンジ枠」は、事業承継やM&Aを進める際に発生する廃業費用を補助する制度です。事業承継やM&Aをきっかけに廃業を行う場合や、新たな挑戦に向けた廃業時の経費を対象としています。また、この枠は他の支援枠(事業承継促進枠、専門家活用枠、事業統合投資類型)と併用することが可能です。
補助対象経費は、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、移転・移設費用(併用申請の場合のみ)です。
上限額は150万円で、他の補助枠と併用申請する場合には、それぞれの補助枠の上限額に追加される形で支援を受けられます。
補助率は1/2または2/3で、併用申請時には各事業の補助率が適用されます。
事業承継・M&A補助金 2025年度の特徴
2025年の「事業承継・M&A補助金」は、前年からの進化として、補助内容の充実と新たな支援枠の追加が大きな特徴です。特に、補助上限額の引き上げや、新設された「PMI推進枠」による経営統合支援が注目されます。
まず、補助金の上限額は多くの枠で引き上げられ、例えば「事業承継促進枠」では一定の賃上げを実施した場合に上限が1000万円まで拡大されます。また、「専門家活用枠」では、M&Aに必要な専門家活用費用に対し、条件に応じて最大2000万円の補助が受けられるなど、事業承継やM&Aに伴う負担軽減が一層進められています。
さらに、M&A後の経営統合(PMI)に特化した「PMI推進枠」が新設され、統合プロセスを円滑に進めるための専門家活用費用や設備投資費用が補助対象となりました。この枠は、M&Aの成功だけでなく、統合後の安定した事業運営を支援するための重要な取り組みとして位置付けられます。
加えて、「廃業・再チャレンジ枠」では、廃業に伴う費用を補助しつつ、新たな挑戦へのステップを後押しする仕組みを継続します。これにより、事業承継やM&Aを進める事業者が柔軟に制度を活用できるよう設計されています。
申請スケジュール
中小機構の「調達・公募情報」によると、令和7(2025)年1月21日まで事業承継・M&A補助金事務局の公募をおこなっています。
事務局の公募要領には、できるだけ早期に公募を行うものとし、令和8年度末までに3回程度の公募を予定しているとあります。具体的なスケジュールは今後発表されるため、中小企業庁や公募サイトでの最新情報を随時確認しましょう。
まとめ
2025年の「事業承継・M&A補助金」は、補助上限額の引き上げや「PMI推進枠」の新設などにより、事業承継やM&Aを進める事業者への支援がさらに充実しています。経営資源の引継ぎからM&A後の経営統合、廃業に伴う費用支援まで、事業の各段階で活用できる制度となっています。
一方で、補助金活用後も一定期間の事業化状況報告や、賃上げ要件等の維持が求められる点に注意が必要です。補助金を効果的に活用するには、事前準備と計画的な対応が不可欠です。補助金を上手に活用して、事業承継やM&Aを円滑に進めましょう。