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重点支援地方交付金を拡充!推奨事業メニュー「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」とは

公開日:2025/12/8 更新日:2026/4/22
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中東情勢の緊迫化が続いている。2026年2月末以降、イスラエルと米国によるイランへの攻撃をきっかけに、ホルムズ海峡の通航が激減。日本は原油輸入の約94%を中東に依存しており、エネルギー・輸送コストの急騰が中小企業の経営を直撃している。帝国データバンクが2026年4月に実施したアンケート調査によれば、原油価格高騰や供給不安により「マイナス影響がある」と回答した企業は96.6%に上り、燃料費・原材料費・物流費の上昇が経営の重石となっている。

こうしたコスト高騰が続く中、価格転嫁もままならない中小企業にとって、「賃上げ」は切実かつ難しい課題だ。2025年度の最低賃金は全国加重平均で1,121円(引上げ率6.3%)と過去最高水準に達したが、エネルギーコストの急騰が利益を圧迫する環境では、賃上げ原資を確保するどころか、事業継続そのものが問われかねない局面を迎えている。
こうした状況を踏まえ、国は令和7年度補正予算(2025年12月16日成立)において、重点支援地方交付金を2兆円規模で追加。新たな推奨事業メニューに「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」を加え、自治体が地域の実情に合わせた賃上げ支援を組み立てられる枠組みを整備した。

本記事では、この賃上げ環境整備メニューの位置づけや制度の狙い、全国の自治体における活用事例を整理する。

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この記事の目次

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中東発のコスト高騰が中小企業の賃上げを直撃している

「燃料費が上がり、材料も値上がりしている。取引先への価格転嫁も簡単にはできない。そんな状況で賃上げと言われても……」という声は、今や多くの中小企業経営者に共通する本音ではないでしょうか。
中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の急騰は、コスト上昇の波紋を広げている。燃料費の上昇にとどまらず、ナフサなど原油由来の原材料価格の高騰、物流費の増加、取引先からの値上げ要請と、企業が直面するコスト圧力は多重化している。こうした「コスト二重苦・三重苦」の構造の中で、賃上げ原資を確保することは、特に体力の限られた中小企業・小規模事業者にとって容易ではない。

中小企業が賃上げに踏み切れない要因は、賃金原資の不足だけではない。地域ごとの産業構造、人手不足、価格転嫁の難しさなど、問題は多方面に及ぶ。2025年度の最低賃金は全国加重平均1,121円(引上げ率6.3%)と過去最高水準に達したが、この水準に対応するためのコスト増を、価格転嫁や生産性向上で吸収できている企業ばかりではない。

今回の重点支援地方交付金で「賃上げ環境整備」が推奨メニューに加えられたのは、こうした構造的な課題に自治体が直接向き合い、地域に合った支援策を組み立てられるようにするためだ。地方交付金で期待されるのは、企業が賃上げを実行しやすい条件を整える取り組みを、自治体が主体となって進められるようになることである。たとえば、次のようなアプローチが考えられる。

  • 経営相談や専門家派遣による企業支援体制の強化
  • 生産性向上や事業再構築を進めるための費用負担の軽減
  • 適正な価格転嫁が進むよう、公共調達の見直しや取引環境の改善を促す取り組み
  • 最低賃金の引上げに対応するための補助・助成制度の設計

これらはいずれも、賃上げそのものを補助するのではなく、企業が賃上げに踏み出すための環境を整える施策だ。地域の課題を把握している自治体だからこそ、業種や規模の違いを踏まえた具体的な支援が可能になる。今回の地方交付金の拡充は、こうした各地域の工夫を後押しし、賃上げを持続的に実現する土台づくりを進めるための枠組みとして位置づけられている。

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重点支援地方交付金の追加・拡充とは?

重点支援地方交付金の追加は、エネルギーや食料品価格の高騰が続き、生活者・事業者が受ける影響が地域によって異なる状況を踏まえて行われた。物価高への対応には地域差が大きく、全国一律の支援だけでは十分に対応できないケースも見られるため、自治体が自らの判断で必要な施策を組み立てられるよう、追加の財源が措置された。
令和7年度補正予算は2025年12月16日に国会で成立し、重点支援地方交付金として2兆円が追加措置された。このうち4,000億円は食料品物価高騰への特別加算として市町村向けに配分されるほか、残りは自治体が地域の課題に応じて活用できる財源として措置されている。

どのような分野に使えるのか?

重点支援地方交付金では、国が効果的と考える取り組みを推奨メニューとして提示している。大きく生活者支援と事業者支援に分かれている。

重点支援地方交付金 推奨事業メニュー一覧
区分メニュー名内容(概要)
生活者支援① 食料品の物価高騰に対する特別加算おこめ券・地域ポイント・現物給付・商品券など、食料品価格高騰による負担を軽減する支援
② 低所得者世帯・高齢者世帯支援電気・ガス・灯油・水道料金などの生活コスト上昇を軽減
③ 子育て世帯支援学校給食費の負担軽減、ひとり親世帯支援、こども食堂など地域支援にも活用可能
④ 消費下支え・地域活性化プレミアム商品券、地域ポイント、灯油・LPガス世帯への給付、水道料金減免など
⑤ 省エネ家電等の買い替え促進高効率エアコン・給湯器などへの買い替えを支援し、エネルギー負担を軽減
事業者支援⑥ 中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備伴走支援、生産性向上支援、賃上げ実施企業への補助、最低賃金引上げ対応、価格転嫁促進など
⑦ 医療・介護・保育・学校等の物価高騰対策食料品・エネルギー価格高騰分の負担軽減、特別高圧受電施設の電力負担軽減など
⑧ 農林水産業支援飼料・肥料・燃料高騰への支援、施設の電気料金支援、地域資源活用への転換支援など
⑨ 中小企業等のエネルギー価格高騰対策特別高圧受電事業者、LPガス使用事業者、商店街・自治会などのコスト負担軽減、省エネ取組支援
⑩ 地域公共交通・物流・観光業支援交通・物流事業者のコスト高騰緩和、地域交通の維持、生産性向上策などを支援

参考:重点支援地方交付金の追加・拡充について(中小企業庁)
推奨メニューは国が示す例であり、自治体はこれを参考にしつつ、地域の課題に合った独自の施策を計画できる。「上記メニューより効果があると考える施策は、自治体判断で実施可能」とも明記されており、自治体の裁量が広く認められている点が特徴だ。

つまり重点支援地方交付金は、国の方針と地域の判断を組み合わせて、生活者・事業者の負担を軽減するための仕組みと言える。

生活者向け支援としての重点支援地方交付金

重点支援地方交付金における生活者向け支援では、生活に直結する分野を中心に、家計負担の軽減を目的とした取り組みが続いている。

おこめ券や商品券・地域ポイントの配布、光熱費・水道料金の負担軽減、子育て世帯や高齢者世帯を対象とした給付など、自治体ごとにさまざまな施策が実施されている。2025年12月の補正予算成立後、2026年に入ってからも全国各地で順次支給・実施が進んでおり、物価高の影響を受けやすい生活分野に焦点を当てた取り組みが広がっている。

重点支援地方交付金の活用事例

重点支援地方交付金はこれまでも、自治体が地域の課題に応じて多様な形で活用してきた。中小企業庁が公表している「重点支援地方交付金を活用した賃上げ支援事例」では、以下のような具体的な活用例が示されている。

賃上げ環境整備の主な活用事例
自治体支援内容の類型具体的な取組例
新潟県新潟市価格転嫁の促進2025年度途中に清掃事業者・学校給食の調達などで価格転嫁を実施。労務費を含めた契約単価の見直しにより、物価高騰の影響を受ける委託事業者の負担を軽減し、賃上げにつながる収益改善を支援。
北海道清里町価格転嫁の促進公共施設運営に係る契約について、年度途中で価格転嫁を実施。物価上昇を適切に反映し、事業者の経営維持を支える仕組みを整備。
大分県生産性向上(DX・省力化)IT導入補助金や省力化投資補助金に取り組む企業に対し、追加補助を実施。設備投資や業務効率化を進め、生産性向上を通じた賃上げ余地を確保。
埼玉県草加市伴走支援の強化商工会議所の相談員増員や専門家派遣を行い、創業・再展開・事業承継などの局面で企業の経営基盤を強化。
神奈川県川崎市金融支援市の融資制度における「伴走支援型資金」の信用保証料を補助し、企業の資金繰りと経営改善をサポート。
長野県設備投資の後押しものづくり補助金・IT導入補助金などへの上乗せ補助を設け、競争力の強化と賃上げにつながる投資を支援。
佐賀県最低賃金引上げ対応最低賃金5%以上の引上げなど一定要件を満たす企業に、設備投資費の3分の2を補助。賃上げと生産性向上の両立を支援。
群馬県賃上げ実施企業への支援「ぐんま賃上げ促進支援金」として、一定額以上の賃上げを実施した企業に1人あたり3〜5万円を支給。2025年4月の開始から同年12月末時点で申請受付額は6億円を超え、多くの中小企業に活用されている。

各自治体の事例を見ると、価格転嫁を進める仕組みづくり、生産性向上や設備投資への支援、伴走支援や金融支援による経営の安定化など、施策内容は異なっていても、いずれも企業の収益力や働く人の処遇改善につながる基盤づくりを目指している点が共通している。

一部では賃上げ実績に応じた支援も行われており、地域の状況に応じた多様なアプローチで賃上げを後押しする動きが広がっている。

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重点支援地方交付金(賃上げ環境整備)に関するよくある質問


重点支援地方交付金の賃上げ環境整備メニューは、どの自治体でも使えますか?


基本的には全国すべての都道府県・市区町村が対象です。ただし、各自治体が実施計画を策定・申請する必要があり、自治体ごとに実施する施策の内容や時期は異なります。お住まいや事業所がある自治体の産業振興・商工担当窓口にご確認ください。


企業が直接申請する補助金ですか?


重点支援地方交付金は、国から自治体に交付される財源です。企業が直接国に申請するものではなく、各自治体が独自の支援制度を設計・実施する形になります。賃上げ実施企業への支援金や設備投資補助など、企業が申請できる制度は各自治体が個別に公募・案内します。


賃上げ環境整備メニューの対象となる事業者の規模は?

制度上は「中小企業・小規模事業者」が対象として想定されていますが、具体的な要件は各自治体が設計する支援制度によって異なります。従業員数・資本金・業種などの要件は、各自治体の公募要領をご確認ください。


賃上げをしていない企業でも支援を受けられますか?

はい、メニューによります。賃上げ実施企業への直接支援金は、賃上げの実績が要件となりますが、伴走支援・専門家派遣・設備投資補助・価格転嫁促進支援などは、賃上げ実績を問わず「賃上げに向けた環境整備」として活用できる施策も多くあります。


国の補助金(ものづくり補助金等)と併用できますか?

大分県・長野県などの事例のように、国の補助金に対して自治体が上乗せ補助を行う形での併用が可能なケースがあります。ただし、補助対象経費の重複など、各制度の要件をよく確認する必要があります。詳細は各自治体の担当窓口または補助金事務局にご相談ください。


令和7年度補正予算はいつ成立しましたか?


令和7年度補正予算は2025年12月16日に国会で成立しました。これを受け、重点支援地方交付金について2兆円が措置され、各自治体による実施計画の策定・事業化が順次進んでいます。


中東情勢によるコスト高騰への対応支援はありますか?

重点支援地方交付金の推奨メニューには、「中小企業等のエネルギー価格高騰対策」(メニュー⑨)も含まれており、燃料費や電力コストの上昇に対応した支援が可能です。中東情勢の緊迫化を背景とした原油価格高騰については、国の緊急的な激変緩和措置も並行して実施されています。自治体の施策と国の施策を組み合わせた活用をご検討ください。


自治体の支援情報はどこで確認できますか?


各都道府県・市区町村の公式ウェブサイトや、商工会・商工会議所の窓口でご確認ください。また、中小企業庁のウェブサイトでも活用事例や推奨メニューの詳細が公開されています。補助金ポータルでも随時情報を更新していますので、ご活用ください。


令和8年度(2026年度)も交付金は継続されますか?

内閣府地方創生推進事務局より、令和8年4月1日付で「令和8年度における重点支援地方交付金の取扱い等について」の事務連絡が発出されており、令和8年度も引き続き交付金の運用が継続される見通しです。物価高対策を必要とする状況が続く中、制度の継続活用が期待されます。


価格転嫁促進の支援とはどのような内容ですか?


地方自治体が民間企業から物品やサービスを調達する「公共調達」において、労務費を含めたコスト上昇分を契約単価に反映させる取り組みが代表例です。新潟市や北海道清里町の事例のように、委託事業者の収益改善を通じて実質的な賃上げにつなげる効果が期待されています。民間企業間の価格転嫁を後押しする普及啓発活動を自治体が実施するケースもあります。


まとめ

中東情勢の緊迫化に伴う原油・エネルギーコストの高騰が企業経営に重くのしかかる中、重点支援地方交付金の拡充は、中小企業の賃上げ環境を整える重要な後押しとなっている。
令和7年度補正予算(2025年12月16日成立)により2兆円が追加措置され、推奨事業メニューには「中小企業・小規模事業者の賃上げ環境整備」が加わった。生産性向上の補助、価格転嫁の後押し、伴走支援の拡充、賃上げ実施企業への支援金など、多様なアプローチが各地で実施されており、令和8年度も引き続き交付金の運用が継続される見通しだ。

コスト高が続く局面だからこそ、国の補助金(ものづくり補助金・AI導入補助金・省力化投資補助金など)に自治体の上乗せ支援を組み合わせることで、賃上げに向けた取り組みを進めやすくなる場面が増えている。まずは地域の商工会・商工会議所や自治体窓口に相談し、活用できる制度を確認してほしい。
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