
今回ご紹介する介護職員処遇改善支援補助金とは、ウィズコロナ時代の経済対策の観点から閣議決定され、支給されるものです。介護職員の賃上げ効果が継続される取り組みを行うことを前提として、厚生労働省から令和4年2月から9月の間に各都道府県に交付され、介護職員を雇用する事業所を介して、職員の方々の賃金アップを目的とした補助金です。
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この記事の目次
介護職員処遇改善支援補助金の目的
日本の介護従事者の賃金は他の職種と比べてまだまだ低いのが現状です。
介護労働安定センターが毎年行っている「介護労働実態調査」の2019年度調査の結果によると、正規職員の平均月額賃金は23万4,439円で他業種の同年代に比べて少し見劣りするような額になっています。
出典:介護求人ナビ 【2020年最新データ】介護士の平均賃金「月21万2,455円」男女差なくても低平等?!
今回の補助金はこういった課題を解決し、介護の現場で働く方々への収入の引き上げを行い、人材の確保・育成の支援を狙っています。
補助金の決定方法について
以下の計算方法にて、各事業所が受け取る補助金の額を毎月算定・支給します。
出典:厚生労働省「介護職員処遇改善支援補助金のご案内」
これにより、介護職員1人当たり月額9,000円相当の補助金が交付されます。また、事業所の判断にて介護職員以外の職員の処遇改善にも補助金を充てることができ、その範囲も、事業所の判断で柔軟に設定可能です。
ただし一点注意事項として、今回の補助金は必ずしも職員の方々に、一律で月額9,000円の引き上げを行うものではありません。
処遇改善に関する加算の全体イメージ
職員のキャリアアップ・賃金向上(キャリアパス要件)・職場環境の整備(職場環境等要件)を前提に、下記2つの要件で金額が加算されます。
(1)介護職員処遇改善加算
介護職員のみが対象。
加算(Ⅰ)~(Ⅲ)の算定要件は、以下のキャリアパス要件及び職場環境等要件を満たすこと。
◆キャリアパス要件
職員のキャリアアップ・賃金向上を目的として下記3点が定められています。
①職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備すること
②研修の実施又は研修の機会を確保すること
③昇給の仕組みの整備がされていること
◆職場環境等要件
・賃金改善を除く、職場環境等の改善
・就業規則等の明確な書面での整備・職員への周知
(2)介護職員等特定処遇改善加算
事業所が設定した範囲で「経験・技能がある職員」、「その他の職種の職員」に支給されます。
◆介護職員等特定処遇改善加算の算定要件
・ 処遇改善加算(Ⅰ)~(Ⅲ)を取得していること
・ 処遇改善加算の職場環境等要件に関し、複数の取組を行っていること
・ 取組について、ホームページへの掲載等を行っていること
この加算の全体イメージを表したものが下図になります。
出典:厚生労働省「介護職員処遇改善加算・介護職員等特定処遇改善加算の概要」
<参考>介護職員等特定処遇改善加算の仕組みについて
日本国内の介護職員は技術・経験のある職員でも賃金は他職種と比べてまだまだ低く、離職率も高い業界です。介護士として勤続20年を超えて、賃金水準が約30万円近くなるような上昇幅となっています。
出典:介護求人ナビ 【2020年最新データ】介護士の平均賃金「月21万2,455円」男女差なくても低平等?!
転職理由としても、給与面での問題は上位に入っており、キャリアアップする事へのメリットが感じにくいような点が見受けられます。
この具体的な解決策として、介護職員等特定処遇改善加算の仕組みを設けることで、リーダー級の介護職員について他産業と遜色ない賃金水準の実現を目指しています。
交付率について
現行の介護職員処遇改善加算等と同様、介護サービス種類ごとに、介護職員数に応じて設定された一律の交付率を介護報酬に乗じる形で各事業者に交付されます。
出典:厚生労働省「【概要】介護職員処遇改善支援補助金」
対象要件
以下の①〜③の要件を満たすと、補助金を受け取ることができます。
①次の介護職員処遇改善加算Ⅰ、Ⅱ、Ⅲのいずれかを取得
Ⅰ:キャリアパス要件①+②+③+職場環境等要件
Ⅱ:キャリアパス要件①+②+職場環境等要件
Ⅲ:キャリアパス要件①or②+職場環境等要件
②令和4年3月分とまとめて2月分の賃金改善
- 令和4年2・3月分は一時金等による賃金改善も認めます。
- 令和4年2・3月分から賃金改善を実施した旨を記載した用紙を都道府県に提出する必要があります。
- 令和4年2・3月分として見込まれる補助金額のすべてを、 令和4年2・3月分の賃金改善に充てる必要はありません。※ただし、賃金改善実施期間全体で、補助金の合計額を上回る賃金改善を行うことが必要です。
③補助金の全額を賃金改善に充てること
- 賃上げ効果を継続させるため、助成金は賃金改善の合計額の3分の2以上を基本給に充てる必要があります。またこちらは「特定処遇改善」においても同様です。
- 基本給等に充てた額以外の分は、賞与・一時金等による賃金改善に充てることで、 全体として、補助金の額を上回る賃金改善を行うことが必要です。
- 補助金給付の前後に必要な処遇改善計画書と実績報告書に、「月額の賃金改善額の総額」の記載が必要です。
補助金の配分方法とは?
事業所で、介護職員だけでなくその他の職員の賃金改善にも充てる場合は、1人当たり9,000円相当の補助金額を割ることがあるので、介護職員の処遇改善を目的とした補助金であることを十分に踏まえた配分にするに注意しましょう。
令和4年2月分から9月分の補助金の合計額を上回る賃金改善を行うことが必要です。ただし、月ごとの賃金改善額がその月の補助金額を上回る必要はありません。
補助金の申請手続きとスケジュール
補助金申請フローは以下の通りとなります。
出典:厚生労働省「介護職員処遇改善支援補助金のご案内」
①都道府県に計画書を提出してください。
②申請が認可されると、国保連が補助金を事業者に支払います。 (補助率10/10)
②補助期間終了後、事業所は都道府県に実績報告書を提出する必要があります。(要件を満たさない場合は、補助金の返還が必要となることがあります。)
※介護報酬関係で市町村に届け出を行うサービス事業者も、この補助金の届出先は都道府県です。
※計画書・実績報告書は月額の賃金改善額の総額(対象とする職員全体の額)の記載を求めます。(職員個々人の賃金改善額の記載は求めません)
申請スケジュール
まず賃上げ開始月(2・3月)に、賃上げを実施した旨を記載した用紙を都道府県に提出します。補助金の申請は、都道府県における準備等を勘案し、令和4年4月から受付、6月から補助金が毎月分交付され、11月まで毎月支払われます。※2〜4月分はまとめて6月に支払われます。
賃金改善期間後、処遇改善実績報告書を提出。 提出開始時期は各都道府県によって異なりますのでご注意ください。
まとめ
以上が介護職員処遇改善支援補助金についての内容になります。
この補助金は介護職員を雇用する事業所に対して出され、職員の方々の賃金アップを目的とした補助金です。今回1人当たり9,000円程度の補助金が交付されるような試算になっていますが、その他職種に配っていくとなるとその金額を割る可能性も出てくるので注意しましょう。
また、補助金交付までは期間があるので、その間は自己資金で賄うといった点も注意が必要です。そういった点を踏まえて補助金を活用する場合は、職員の方々にしっかりと周知して理解をしてもらうようにしましょう。