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【令和4年度概算要求】厚生労働省の令和4年度概算要求の重点要求とは

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「ひと、くらし、みらいのために」をキャッチフレーズとする厚生労働省の令和4年度の概算要求が公表されました。

保健、医療だけでなく、労働や雇用、安心して暮らせる社会づくりを担う厚生労働省は、コロナが終息しないなか、来年度の予算にどのような項目を要求したのでしょうか。

前年度比で増えた予算、新規予算のほか、減ってしまった予算にも注目して概算要求をみていきたいと思います。厚生労働省の概算要求は情報量が多いのですが、ぜひ最後までお付き合いください。

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この記事の目次

令和4年度の要求額

令和4年度概算要求の一般会計における総額は33兆9,450億円で、前年度より8,070億円の増加となりました。要求額のうち大半は、医療や年金などの社会保障費で、31兆7,791億円を計上しています。

出典:令和4年度予算概算要求の概要

コロナ対策のうち、金額を示さない「事項要求」のものについては、感染状況を踏まえながら予算編成過程で検討するとしています。たとえば雇用調整助成金による支援などがそれにあたります。

ほかに予算編成過程で検討するとされたのは
・診療報酬・薬価改定への対応
・雇用保険の国庫負担
・建設アスベスト給付金への対応
・児童虐待防止対策・社会的養育の迅速かつ強力な推進
・不妊治療の保険適用への対応
などです。

概算要求における重点要求

令和4年度の重点要求は次の4グループに分けられます。

1.新型コロナの経験を踏まえた柔軟で強靱な保健・医療・介護の構築
2.ポストコロナに向けた「成長と雇用の好循環」の実現
3.子どもを産み育てやすい社会の実現
4.安心して暮らせる社会の構築

まずは、コロナから国民の命・雇用・暮らしを守る対応を引き続き行うということ。そして、感染症を克服し、ポストコロナの新たな仕組みの構築、少子化対策などを推進していくという方針がうかがえます。

1.新型コロナの経験を踏まえた柔軟で強靱な保健・医療・介護の構築

ここからは、各グループにおける主要事項をご紹介します。主要事項すべてご紹介すると膨大な量になるので、保健・医療等の対策と雇用関連を中心に予算の大きい箇所や新規予算など、抜粋して記載します。
(以下、参考・出典:令和4年度予算概算要求の 主要事項
※計数は令和4年度概算要求額、*は事項要求、( )内は令和3年度予算額を示しています。

新型コロナを克服する保健・医療等提供体制の確保や研究開発の推進

■新型コロナから国民を守る医療等提供体制の確保:56億円*(28億円)
■検査体制の確保、保健所・検疫所等の機能強化、ワクチン接種体制の構築:29億円*(18億円)
■ワクチン・治療薬等の研究開発の推進:19億円*(12億円)
■研究開発体制の強化等:737億円(592億円)
■医薬品・医療機器等の開発促進等:113億円(109億円)

令和3年度はコロナから国民の命を守るために必要な体制確保に重きが置かれましたが、来年度はそういった対応を続けながら、コロナの克服と、将来、新興感染症等が発生した時のための体制を強化するといった、コロナの経験を踏まえた保健・医療・介護の構築に予算を要求しています。

たとえば、医薬品の安定確保のための原薬等設備整備および備蓄の支援や、PCR検査等の検査体制の拡充新興感染症等の感染拡大時に対応可能な医療支援チームの創設などに取り組むとしています。

ワクチンに関しては、ワクチン接種体制の構築のほか、国が指定する重点感染症に対するワクチンの新規開発支援に予算が計上されています。

目新しいところでは、自然災害やコロナなどの感染症、テロといった事案への危機管理体制を強化するため、危機管理オペレーションセンターの設置があげられています。

地域包括ケアシステムの構築等に向けた安心で質の高い医療・介護サービスの提供

■質が高く効率的な医療提供体制の確保:1,964億円(1,862億円)
■安心で質の高い介護サービスの確保:3兆5,316億円(3兆4,325億円)
■医療等分野におけるデータ利活用の推進等:509億円(415億円)
■安定的で持続可能な医療保険制度の運営確保:10兆5,718億円*(10兆2,458億円)

2025年は、団塊の世代が75歳以上となり、医療・介護等の需要の急増が予想される年です。間もなく訪れる2025年、さらにその先を見据えた課題解決のため、地域医療構想の実現に向けた取り組み医師偏在対策医療従事者働き方改革、認知症施策等による医療・介護サービス提供体制の構築を進めていくとしています。

同時に、医療等分野におけるデータ利活用等にも予算を計上しています。たとえば、医療等分野におけるICTの利活用の促進電子処方箋の運用に向けた環境整備があります。前年度から要求額が大幅に拡大しているものとしては、がん・難病患者の全ゲノム解析等の結果と付随する臨床情報等の収集などを行う、全ゲノム解析等実行計画の推進があげられます。

健康で安全な生活の確保

■健康増進対策や予防・健康管理の推進:1,631億円(1,619億円)
■感染症対策:518億円(397億円)
■がん対策、循環器病対策、肝炎対策、難病・小児慢性特定疾病対策等:3,423億円(3,167億円)
■健康危機管理・災害対策:16億円(9.9億円)

この分野では、健康寿命の延伸に向けた、予防や健康づくりのための取り組みや、風しん・新型インフルエンザ等の感染症対策、がん・肝炎・難病などの各種疾病対策などに予算を求めました。大規模災害やテロ発生などの非常時に、健康危機管理体制を機能させるための健康危機管理体制の整備には前年度比1.6倍の予算を計上しています。

■ハンセン病対策【一部新規】:376億円(363億円)
■原爆被爆者の援護:1,176億円(1,183億円)

■医薬品等に関する安全・信頼性の確保等:19億円(15億円)
■食の安全・安心の確保など:252億円(242億円)
■水道の基盤強化【一部推進枠】:633億円(395億円)※他府省分を含む
■生活衛生関係営業の活性化や振興など【一部新規】【一部推進枠】 :50億円(49億円)

そのほか、医薬品・食品等の安全の確保のための取り組みにも予算を計上しています。たとえば、医薬品・再生医療等製品を安心して使用するための安全対策の強化輸⼊食品の監視体制の強化残留農薬・食品⽤容器包装等の規格基準策定などを進めるとしています。

2.ポストコロナに向けた「成長と雇用の好循環」の実現

ここからは、重点的な要求の2つめである、ポストコロナに向けた雇用に関する要求をみていきます。

近年、厚生労働省では、高齢化の進展と、現役世代の急減に対応するため、より多くの人が意欲や能力に応じて長く活躍できるよう、高齢者をはじめとした多様な就労・社会参加を促す取り組みに力を入れていました。

今回の概算要求では、高齢者の就労、障害者の就労促進のほか、男性の育児休業取得等の促進、テレワークの導入・定着促進などの要求額で前年度より減少したところがあります。関連する助成金への影響を考えると、推測の域をでませんが、拡充などの可能性はあまりないといえるのではないでしょうか。

雇用の確保や労働移動の推進、女性や就職氷河期世代、高齢者等の多様な人材の活躍促進

■雇用の維持・在籍型出向の取組への支援 :*(6,809億円)

雇用の維持・在籍型出向の支援は事項要求で、金額は示されていません。今後の感染状況を踏まえて、予算編成の過程で検討されます。

■女性・非正規雇用労働者へのマッチングやステップアップ支援、新規学卒者等への就職支援:372億円(363億円)
■デジタル化の推進、人手不足分野への円滑な労働移動の推進:128億円(113億円)
■キャリア形成支援の推進:21億円(21億円)
■女性活躍・男性の育児休業取得等の促進:178億円(193億円)
■就職氷河期世代の活躍支援:796億円(679億円)
■高齢者の就労・社会参加の促進:283億円(303億円)
■障害者の就労促進:177億円(181億円)
■外国人に対する支援:107億円(115億円)
■労働者協同組合の設立の支援【新規】【推進枠】:1.0億円

新規の要求としては、第2の就職氷河期世代をつくらないよう、特に新型コロナウイルス感染症の影響を強く受けた分野の専門学校生・未就職卒業者への支援を強化する、新規学卒者等(専門学校生等)への就職支援や、デジタル化推進のためのデジタル分野等の新たなスキルの習得に向けた職業訓練の強化があります。前年度より要求額が拡大しているものとしては、就職氷河期世代の失業者等を正社員で雇い入れる企業への助成金等の活用があげられます。

労働環境の整備、生産性向上の推進

■柔軟な働き方がしやすい環境整備:24億円(33億円)
■安全で健康に働くことができる職場づくり:288億円(290億円)
■最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進、同一労働同一賃金など雇用形態に関わらない公正な待遇の確保:296億円(285億円)
■治療と仕事の両立支援:33億円(33億円)

この分野では自動車運送業、建設業、情報サービス業における勤務環境の改善勤務間インターバル制度の導入促進最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等に取り組む企業への支援などで前年度より要求額が増えています。働き方改革推進支援助成金や業務改善助成金の内容に変化はあるのか、注目したいところです。

また、非正規雇用労働者のキャリアアップの推進等では、要求額が前年度から減少しており、キャリアアップ助成金の助成対象を「正社員待遇を受ける労働者に転換した場合に絞り込む」などの見直しを行って、非正規雇用労働者の正社員転換や処遇改善を推進する、としています。

3.子どもを産み育てやすい社会の実現

重点的な要求の3つめ、子どもを産み育てやすい社会の実現に関する要求からは、主要な予算項目のみ確認していきます。

子どもを産み育てやすい環境整備のため、児童虐待防止対策および社会的養育の迅速かつ強力な推進、母子保健医療対策、子どもの貧困とひとり親家庭対策などに予算を計上しています。また、「新子育て安心プラン」をはじめとした総合的な子育て支援を行いながら、保育人材の確保・処遇改善を図ることで「希望出生率1.8」の実現を目指すとしています。

子どもを産み育てやすい社会の実現

■子育て家庭や女性を包括的に支援する体制の構築:405億円(239億円)
■児童虐待防止対策・社会的養育の迅速かつ強力な推進:1,801億円(1,639億円)
■不妊症・不育症に対する総合的支援の推進:43億円(37億円)
■成育基本法を踏まえた母子保健医療対策の推進:173億円(159億円)
■「新子育て安心プラン」をはじめとした総合的な子育て支援:1,066億円(969億円)
■ひとり親家庭等の自立支援の推進:1,790億円(1,756億円)

4.安心して暮らせる社会の構築

すべての人々が安心して暮らせるように、属性を問わない相談支援や、生活困窮者自立支援、ひきこもり支援、自殺総合対策、孤独・孤立対策などに予算を計上しています。障害児・障害者支援としては、障害福祉サービス事業所等の整備、地域生活支援の拡充などがあげられています。

ほかに、持続可能で安心できる年金制度の運営、施策横断的な課題への対応などに予算を要求しています。

地域共生社会の実現に向けた地域づくりと暮らしの安心確保

■相談支援、参加支援、地域づくりの一体的実施による重層的支援体制の整備促進:148億円(116億円)
■生活困窮者自立支援、ひきこもり支援、自殺総合対策、孤独・孤立対策:796億円*(675億円)
■生活保護制度の適正実施:2兆8,989億円(2兆8,699億円)
■成年後見制度の利用促進:9.5億円(5.9億円)
■福祉・介護人材確保対策等の推進:1,095億円(1,070億円)
■戦傷病者・戦没者遺族、中国残留邦人等の援護など:207億円(204億円)

障害児・者支援の総合的な推進

■障害福祉サービスの確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進:2兆3,278億円(2兆2,148億円)
■地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策、依存症対策の推進:226億円(221億円)
■発達障害児・発達障害者の支援施策の推進:8.3億円(7.0億円)
■障害者への就労支援の推進:190億円(192億円)

安心できる年金制度の確立

■持続可能で安心できる年金制度の運営:12兆7,286億円(12兆6,213億円)
■日本年金機構による公的年金業務等の着実な実施:3,236億円(3,270億円)
■正確な年金記録の管理と年金記録の訂正手続の着実な実施:18億円(18億円)

施策横断的な課題への対応

■統計改革の推進【一部新規】:6.8億円(3.2億円)
■厚生労働省改革の推進【一部新規】【一部推進枠】:2.4億円(1.3億円)
■国際問題への対応:58億円(50億円)
■データヘルス改革の推進【一部新規】【一部推進枠】:559億円(499億円)
■社会保障に係る国民の理解の促進、国民の利便性向上等の取組等:4.1億円(4.5億円)

まとめ

今回は、厚生労働省の令和4年度の概算要求についてご紹介しました。

来年度もコロナから国民の命や雇用、暮らしを守るための対応を続けていくとともに、感染症を克服して、ポストコロナの保健・医療等体制の構築、デジタル化、少子化対策などに力を注いでいく方針が読みとれました。

高齢者の就労促進、男性の育児休業取得等の促進、テレワークの導入・定着促進などの要求額が前年度より減少しており、関連する助成金への影響があるかもしれません。また、キャリアアップ助成金については、助成対象の絞り込み(見直し)が述べられていました。

最低賃金・賃金の引上げに向けた生産性向上等の推進と、勤務間インターバル制度の導入促進、就職氷河期世代の活躍支援に関しては、要求額が増えているので、1月にどのような閣議決定がなされるのか、注目しておきたいところです。

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