冬眠から覚めたクマのニュースが連日のように流れており、「うちの庭のカキの木、大丈夫かな」「畑に電気柵を張りたいけど、結構お金がかかるな…」と感じている人も多いのではないでしょうか。
実は、クマ対策には補助金が使えます。
電気柵の購入、庭のカキ・クリの木の伐採、防護柵や追い払い用具まで、多くの市町村が住民向けの補助制度を用意しています。令和8年は、国の支援メニューの新設・拡充が相次いだ直後の『使いどき』といえるタイミングです。
この記事では、いま使える補助金の具体例と、お住まいの地域での探し方、申請のコツまで含めてわかりやすく紹介します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
国のクマ対策が今、手厚くなっています
クマによる被害が深刻化したことを受けて、政府は令和7年11月に「クマ被害対策パッケージ」を決定しました。捕獲を担うハンターへの手当はもちろん、電気柵・箱わな・クマスプレーといった資機材の購入費まで、交付金で速やかに支援する内容です。
令和6年4月にはクマ類が国の交付金で対策を後押しする「指定管理鳥獣」に追加されており、ここ2年でクマ対策の財源は段階的に厚くなってきました。
つまり今は、国がお金を出し、自治体が制度を作るという流れが、かつてなく整っている時期なのです。
関連記事:クマ被害【2025】死者数が過去最多に 政府が緊急対策パッケージを決定
クマ対策の補助金は2層構造
クマ対策の補助金は種類が多く見えますが、仕組みはシンプルな2層構造です。
国のお金は、まず都道府県や市町村に渡ります。市町村はそのお金に自分たちの予算も足して、「電気柵の購入に〇万円」「カキの木の伐採に〇万円」といった住民向けの制度をつくります。
私たちはその制度を、役所の窓口で申請して使う、という流れです。
国の二大交付金(環境省の「指定管理鳥獣対策事業交付金」と農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」)は、都道府県や市町村に交付されるお金です。個人が国に直接申請するものではありません。その代わり、市町村がこの財源や独自予算を使って、住民向けの補助制度を用意しています。
そのため、クマ対策の補助金を知りたいときは、お住まいの市町村の農政課や鳥獣被害対策課です。これだけ押さえておけば迷いません。
住民が使える自治体の補助制度5選
各自治体では、実際にどんな制度があるのでしょうか。全国の市町村から、主な補助金の例を紹介します。
北海道札幌市|家庭菜園用電気柵の購入補助・無償貸出
北海道札幌市では、ヒグマを家庭菜園や市街地に寄せ付けない対策として、家庭菜園用電気柵の購入補助・貸出しを行っています。
| 申請期間 | 貸出し:令和8年6月1日から令和8年11月2日の期間 補助金:令和8年5月15日~令和8年9月15日 |
|---|---|
| 補助率 | 購入金額(税込)の2分の1(※最大4万円) |
| 貸し出しの要件 | ・市内で家庭菜園を行っており、ヒグマ対策を目的としていること。 ・過去に本事業の貸出を受けていないこと。 |
| 補助金の要件 | ・札幌市内に住み、市内で家庭菜園を行う市民で、ヒグマの出没抑制策として電気柵を購入する方(法人を除く。) ・電気柵の設置指導を受けることに了承いただける方 ・令和6年度以降に、同一世帯で本補助金の交付を受けていない方 ・暴力団員又は暴力団関係事業者でない方 ・本補助金を受けることが公益上不適当と認められる法令違反等がない方 |
補助金は先着60名(予定)まで、予算上限に達した場合終了となります。
詳しくはこちら:家庭菜園用電気柵の購入補助・貸出しについて
秋田県秋田市|住宅地周辺のクリ・カキの木の伐採補助
秋田県秋田市では、市街地におけるツキノワグマによる人身被害を未然に防ぐため、誘引の原因となる樹木を伐採する町内会等の自治組織に対して補助金を交付しています。
| 対象者 | 市内に住所を有する個人、または町内会等の自治組織 (条件:市税の未納がないこと) |
|---|---|
| 対象樹木 | クリ・カキ(クマを誘引する実のなる樹木) |
| 対象事業 | 都市計画区域内にある対象樹木を、事業者へ委託し根元から伐採するもの (注意:農地の保全や営利目的の伐採、自身で作業するものは対象外) |
| 補助率 | 伐採作業委託料の1/2以内(上限:1本あたり2万5,000円) |
事前申請が必要です。申請期間は記載されていませんが、予算の範囲内で実施されるため、予算に達し次第終了となる可能性があります。
詳しくはこちら:住宅地周辺にあるクマのエサとなるクリ・カキの伐採事業に係る経費に対しての補助金について
秋田県横手市|実のなる果樹(カキ・クリ)の伐採補助・電気柵補助
秋田県横手市では、令和8年度から10年度までの市の重点事業として「獣害防止対策事業費補助金」を実施しています。クマを誘引する放任果樹の伐採と、電気柵の購入の2本立てで、伐採は補助率3分の2と手厚いのが特徴です。
| 申請期間 | 誘引樹木伐採:遅くとも令和8年10月中旬ごろまでに申込み・伐採完了 電気柵:一次募集は令和8年7月10日まで (いずれも予算上限に達した場合は受付終了) |
|---|---|
| 対象者 | 誘引樹木伐採:対象樹木の所有者(個人)、自治会などの団体 電気柵:農業者(個人)、農業法人、果樹共同防除組合など |
| 対象 | 誘引樹木伐採:放置された柿や栗などの果樹(放任果樹)の伐採費用 (注意:営利目的で栽培していた果樹、自ら伐採する場合の人件費・運搬費・産廃処理費は対象外) 電気柵:電気柵および関連する資材費 |
| 補助率 | 誘引樹木伐採:対象事業費(税抜)の2/3以内(上限:個人5万円、団体10万円) 電気柵:対象事業費(税抜)の1/2以内(上限:個人15万円、団体など30万円) |
| 主な要件 | ・市税などに滞納がないこと ・伐採は対象樹木が市内にあること ・電気柵は市内に住所を有し、対象品目を出荷販売していること |
伐採は申込み後に担当者が現地確認を行うため、現地確認の前に伐採した場合は対象外となります。緊急に伐採が必要な場合は事前に電話で相談しましょう。
詳しくはこちら:令和8年度獣害防止対策事業費補助金(令和8~10年度重点事業)
兵庫県豊岡市|獣害対策緩衝帯森林整備事業
兵庫県豊岡市では、農作物や森林植生などへの獣害を軽減するため、行政区などが実施する集落周辺の森林への緩衝帯(バッファーゾーン)整備を支援しています。集落の裏山の藪を刈り払い、クマと人の生活圏の間に「見通しのよい空間」をつくる、地域ぐるみで取り組むタイプの補助です。
| 事前相談 | 当年度に実施する場合:9月末までに農林水産課窓口へ 次年度以降に実施する場合:随時受付 |
|---|---|
| 対象者 | 行政区など (申請は区長、または区長が委任した方) |
| 対象森林 | ・野生動物による被害が発生している地域の農地・住宅などに隣接する森林 ・林縁から山頂方向に概ね30メートル以内の森林 (注意:果樹畑、公園・公共施設の敷地、住宅地、墓地などは対象外) |
| 補助額 | 整備面積0.3~1ヘクタールで上限100万円 (1ヘクタールを超える分は0.01ヘクタールあたり1万円を加算) |
同一年度内に重ねて交付申請することはできません。また、国や県の他の森林整備事業を利用できる場合はそちらが優先されます。
詳しくはこちら:獣害対策緩衝帯森林整備事業
山口県岩国市|鳥獣害防止対策事業補助金(防護柵・追い払い用具)
山口県岩国市では、野生鳥獣による農作物や生活環境への被害を軽減するため、防護柵の資材購入費などを補助しています。柵だけでなく追い払い用具まで対象にしているのが特徴で、捕獲よりも「寄せ付けない・追い払う」が基本となるツキノワグマ(西中国地域個体群)生息域の実情に合った制度です。
| 対象者 | ・岩国市内で農林作物を生産する人 ・岩国市内に居住している人 |
|---|---|
| 補助対象 | ・侵入防止柵の資材(電気柵、ワイヤーメッシュ柵、防獣ネット等) ・鳥獣の追い払い用具(爆竹、花火、忌避剤、威嚇用電動ガン等) ※修理費も補助対象 |
| 補助率 | 購入費の1/2 (上限:個人7万5,000円、共同75万円) |
| 申請先 | 岩国市農林振興課、または各総合支所の農林担当課 |
岩国市には、クマやサルのエサ場となる放置された果樹の伐採費用を補助する「放任果樹伐採事業補助金」もあります。受益3戸以上の地域で取り組む場合は、国庫交付金を使ったより大規模な柵の整備事業も利用できます。
詳しくはこちら:鳥獣被害対策に防護柵を設置しましょう
自分の街の制度を探すコツ
いまお住まいの地域の制度は、「市町村名+電気柵 補助」「市町村名+有害鳥獣 補助金」で検索すると見つかることが多いです。見つからなければ、市町村の農政課・鳥獣被害対策課に問い合わせてみてください。
西日本の場合「クマ専用」としての制度は少なめですが、イノシシ・シカ向けの鳥獣害補助が、電気柵や果樹管理などクマ対策にもそのまま使えるケースがたくさんあります。
【農業者・農業法人向け】捕獲・防護に使える支援メニュー
農業者や兼業農家の方は、農林水産省の「鳥獣被害防止総合対策交付金」を活用する方法もあります。
市町村の協議会経由で申請が必要ですが、実際の捕獲活動や柵の整備を担うのは地域の農業者・猟友会であり、最も身近な国の支援といえます。
クマ特別対策(捕獲支援は1頭あたり最大5万円規模)
出没が多発する地域で、わなの増設や銃による捕獲を強化する「クマ特別対策」では、捕獲活動経費を地域ごとに設定した単価で支援します。頭数払いの設定単価は国の交付金で平均約2万円。
これに市町村が独自財源で上乗せ(平均約3万円)するケースがあり、国と市町村を合算すると1頭あたり5万円規模になる地域もあります。日当払い(わなの見回り1時間2千円、集中捕獲1日3万円など)での支援も可能です。
また、クマ用の大型箱わなは上限単価なし・定額で導入を支援。通常メニュー(補助率1/2以内・上限11万9千円/基)と比べ、大幅に手厚い内容です。
クマ特別対策は令和8年1月時点で、北海道の15市町村(札幌市、紋別市、伊達市ほか)を中心に、岩手県一関市、秋田県鹿角市、秋田県北秋田市、兵庫県(淡路島地域を除く38市町・県が実施主体)の計19自治体で実施されています。制度自体は全国の市町村が活用可能です。
侵入防止柵・緩衝帯の整備
クマにも有効な電気柵の整備を支援。農作物への執着が強い個体が柵の下を掘り起こして侵入する事例に対しては、電気柵の外側にもう1本線を張る「トリップライン」による二重化で防護を強化する手法が推奨されています。
あわせて、人里との境の藪の刈り払いや放任果樹の撤去による緩衝帯整備と、柵の一体的な整備も支援対象です。
ICT機器・クマスプレー
人口減少が進む中山間地域では、わなや電気柵の見回り自体に危険と労力が伴います。センサーカメラによるわなの遠隔監視、電気柵の通電状況の遠隔把握、ドローンによる生息調査・追い払いといったICT機器の導入が交付金で支援されます。
さらに、農作業者・捕獲者の安全確保のため、クマ撃退スプレーの購入も交付金の支援対象となっています。捕獲従事者の保険料への支援(補助率1/2以内、実施隊等は定額)もあります。
市町村の住民向け補助の申請の流れ
「補助金って手続きが大変そう…」と思うかもしれませんが、市町村の住民向け補助は流れがシンプルです。
申請の基本的な流れ
1.事前相談:市町村の農政課・鳥獣被害対策課へ相談します。電話一本でOKの自治体も多くあります
2.交付申請:申請書に見積書・設置場所の図面などを添えて提出します
3.交付決定:自治体からの決定通知を待ちます
4.購入・設置:決定が出てから資材を購入・設置します(写真撮影を求められることもあります)
5.実績報告・受領:領収書と完成写真を提出して、補助金を受け取ります
つまずかないための注意点3つ
クマ対策をスムーズに進めるために、次の3点だけ気をつけてください。
【買うのは「交付決定の後」】
先に買ってしまうと補助対象外になるのが原則です。まず地域の窓口に相談してみましょう。
【先着順となる事が多い】
多くの制度は予算の範囲内での交付です。クマの出没が増えてからでは受付終了ということもあるため、春のうちの申請がおすすめです。
【情報は毎年変わる】
補助率や上限額は年度ごとに見直されます。去年の情報を鵜呑みにせず、必ず最新の要綱を確認しましょう。
よくある質問
補助金は個人でも申請できる?
できます。ただし申請先は国ではなく、お住まいの市町村です。国の交付金(指定管理鳥獣対策事業交付金・鳥獣被害防止総合対策交付金)は自治体向けの制度のため、個人の方は市町村が設けている住民向け補助を利用します。窓口は農政課や鳥獣被害対策課で、まずは電話で「クマ対策に使える補助はありますか?」と聞いてみるのが確実です。
電気柵の補助金はいくらもらえる?
自治体によって異なります。たとえば新潟県長岡市は個人最大5万円・団体最大20万円、山口県岩国市は購入費の1/2(個人上限7万5千円)です。農地をお持ちの方が地域ぐるみの取り組みとして交付金を活用する場合には、実質負担がほぼゼロになるケースもあります。金額や条件は年度ごとに変わるため、最新の要綱でご確認ください。
申請前に買った電気柵も対象になる?
原則として対象外です。多くの制度では「交付決定後に購入したもの」だけが補助対象となります。ただし、自治体によっては交付決定前の着工を届出により認める例外的な仕組みを設けている場合もあるため、あきらめる前に一度窓口へ相談してみてください。これから購入する方は、必ず「相談→申請→交付決定→購入」の順番を守りましょう。
庭のカキの木の伐採に補助は出る?
自治体によってはあります。秋田県秋田市や横手市では、クマのエサとなる住宅地周辺のクリ・カキの伐採費用を補助しています。放置された果樹はクマを人里に呼び寄せる大きな原因とされており、誘引物の除去を補助対象とする自治体は増えています。「市町村名+果樹 伐採 補助」などで検索するか、窓口にお問い合わせください。
西日本にクマ専用の補助はある?
クマ専用でなくても使える制度があります。西日本ではイノシシ・シカ向けの鳥獣害補助が中心ですが、電気柵の設置や果樹の管理など、その多くはクマ対策にもそのまま役立ちます。山口県岩国市のように、花火や忌避剤といった追い払い用具まで対象にしている例もあります。「クマ」の名前にこだわらず、「有害鳥獣 補助金」で探してみてください。
補助金の受け取りまでどれくらいかかる?
制度や自治体によりますが、「事前相談→申請→交付決定→購入・設置→実績報告→受領」という流れのため、受け取りは設置完了後になります。多くの制度は年度内の完了が条件で、予算がなくなり次第受付終了となる場合もあります。クマの出没が本格化する前、春のうちに動き始めるのがおすすめです。
クマを捕獲したら報奨金はもらえる?
一般の方は対象になりません。クマの捕獲には狩猟免許と自治体の許可が必要で、無資格でわなを仕掛けることは法律で禁止されています。捕獲従事者に対しては、国の「クマ特別対策」により1頭あたり5万円規模(国の交付金+市町村の上乗せの合算)の支援が行われている地域もあります。クマを見かけた場合は、ご自身で対処せず、市町村か警察へ通報してください。
まとめ|「怖いから我慢」より「制度を使って備える」へ
クマ対策の支援は、令和8年度に入ってかつてないほど充実しています。最後に、この記事のポイントをまとめます。
・電気柵・果樹の伐採・追い払い用具など、身近な対策ほど補助が見つかりやすくなっています
・農地があるなら、交付金の活用で実質負担ほぼゼロになる道もあります
・申請のコツは「買う前に相談、春のうちに申請」です
クマ対策の支援メニューは、令和8年度に入って種類・金額ともに過去にない水準まで拡充されています。一方で、制度の多くは「市町村経由」であり、地域によって使える内容が大きく異なるのも事実です。
まずは全体像をつかんだうえで、自分の立場で使えるメニューを市町村窓口に確認することから始めてみてください。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する


