物価高騰や最低賃金の上昇が続くなか、中小企業にとって賃上げの原資をどう確保するかは大きな経営課題となっています。こうした状況を受け、大阪府は令和8年度に「利益率向上・賃上げ支援事業」を新設しました。
生産性向上や売上拡大による利益率改善の取組みを支援する補助金で、上限500万円・補助率2/3・採択予定600者と、府内中小企業向けの補助金として規模の大きい制度です。申請期間が2026年5月25日から2026年6月26日までと短いため、早めの準備が求められます。
本記事では、利益率向上・賃上げ支援事業の全体像と申請のポイントを解説します。
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この記事の目次
利益率向上・賃上げ支援事業とは
利益率向上・賃上げ支援事業は、国の物価高騰対応重点支援地方創生臨時交付金を活用し、大阪府が緊急的かつ集中的に実施する補助事業です。物価高騰下にある府内中小企業等を対象に、令和8年度に募集されます。
持続的な賃上げを実現するには、企業自身が「稼ぐ力」を高めることが重要です。本事業では、業務プロセスの効率化や省力化、新規事業の推進など、生産性向上や売上拡大によって利益率(売上高営業利益率)を高める取組みを支援します。
補助金の概要|金額・補助率・採択予定者数
利益率向上・賃上げ支援事業の基本情報は以下のとおりです。| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額 | 500万円 |
| 補助率 | 補助対象経費総額の2/3以内 |
| 採択予定者数 | 約600者 |
| 補助対象期間 | 交付決定日(令和8年8月上旬予定) ~令和9年1月31日(日) |
| 申請期間 | 令和8年5月25日(月) ~6月26日(金)17:00 |
| 申請方法 | 電子申請のみ |
補助率2/3は、府独自補助金として手厚い水準です。採択枠も約600者と多めに設定されており、府内中小企業にとって検討する価値のある制度といえます。
対象となる事業者|自社が該当するかチェック
大阪府内に本店または主たる事業所があること
法人の場合は大阪府内に本店または主たる事業所、個人事業主の場合は府内に住所または主たる事業所があることが要件です。
中小企業者の規模要件(業種別)
業種ごとに、資本金または従業員数のいずれかを満たすことが必要です。
| 業種 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 等 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| ソフトウェア業・ 情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
個人事業主・組合・社団法人も対象
対象となる事業形態は幅広く、以下が含まれます。
・株式会社・合同会社などの会社法人
・個人事業主
・弁護士法人・税理士法人・社会保険労務士法人などの士業法人
・企業組合・協業組合
・一般社団法人(直接または間接の構成員の2/3以上が中小企業者であるもの)
従業員1人以上が必須
申請時の直近期末決算において、常時使用する従業員が1人以上いることが条件です。役員・専従者・日雇労働者・2か月以内の期間労働者・試用期間中の者は含まれません。
対象外となるケース
以下に該当する場合は申請できません。
・発行済株式の1/2以上を同一の大企業が所有している
・発行済株式の2/3以上を大企業が所有している
・大企業の役員等が役員総数の1/2以上を占めている
・直近3事業年度の法人税・消費税等に未納がある
・暴力団員等に該当する
【重要】賃上げ宣言書とは|「2.0%以上」のルールと追跡調査
本事業の最大の特徴は、申請にあたって賃上げ宣言書の提出が必須である点です。
代表者は、従業員(役員・専従者を除く)の給与支給総額を、基準年度から目標達成年度までに2.0%以上引き上げる目標を設定し、その達成に向けた取組みを推進することを従業員に宣言します。
・目標達成年度とは:申請日の属する事業年度の翌事業年度の決算期末
給与支給総額に含まれるもの・含まれないもの
| 含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|
| 給料・賃金・賞与 等 | 役員報酬・福利厚生費・ 法定福利費・退職金 |
一人ひとりの賃金引き上げにつながることが本制度の趣旨です。賃上げ方法に疑義がある場合は、個別に関連資料の提出を求められることがあります。
追跡調査は3回実施
事業完了後の賃上げ実施状況を確認するため、以下のタイミングで追跡調査が実施されます。
・実績報告時
・令和9年度末
・令和10年度末
申請時に追跡調査への回答に同意することが要件となっており、長期にわたり賃上げの取組みを確認される点を理解しておく必要があります。
目標を達成できなかった場合どうなる?
目標未達であっても、ただちに補助金返還を求められる制度設計にはなっていません。目標未達の場合、補助事業実施期間終了後も大阪府が支援機関の情報提供などのサポートを実施する予定とされています。
事業計画と一体で賃上げの道筋を考えることが現実的な対応です。
補助対象となる事業
公式募集要項では、以下のような取組みが生産性向上・売上拡大の取組み具体例として示されています。

・在庫管理システム導入による業務効率化と生産性向上
・AI搭載システム導入による業務プロセスの最適化
・新型設備導入による生産能力拡大と新商品開発への展開
・市場調査から試作、展示会出展までを通じた高付加価値化と新規顧客獲得
業種を問わず、生産性向上または売上拡大を通じて利益率改善に取り組む幅広い事業が対象になります。
補助対象外となる事業
以下に該当する事業は審査から除外されます。
・従業員の解雇を通じて利益率向上を図る事業
・固定費の削減のみを通じて利益率向上を図る事業
・発注側の優越的地位を利用した不当な取引条件変更によりコスト削減を図る事業
・単なる価格優位性のみを理由とする取引先変更によりコスト削減を図る事業
・公序良俗に反する事業
補助対象経費の7区分|何に使えるか
補助対象経費は7区分に整理されています。
| 経費区分 | 主な対象 | 上限・注意点 |
|---|---|---|
| 機械装置・ システム構築費 | 単価5万円(税抜)以上の機械・工具・専用ソフト・クラウドサーバー領域賃借料 等 | 汎用品(PC・タブレット等)は対象外 |
| 開発費 | 試作開発の原材料費・設計費・製造費・市場調査費 等 | 量産品は対象外 |
| 専門家経費 | 助言・コンサルティングの謝金、旅費 | 謝金は1日5万円が上限 宿泊費は対象外 |
| 外注費 | 設計・検査等の委託費 | 補助対象経費総額の50%まで |
| 知的財産権等 関連経費 | 特許ライセンス料、弁理士手続代行費 等 | 特許庁納付手数料は対象外 |
| 広告宣伝・ 販売促進費 | 広告掲載、展示会出展、マーケティングツール導入費 等 | 自社制作の人件費は対象外 |
| 研修費 | 新規導入設備の操作研修 等 | 補助対象経費総額の1/3まで 一般スキルアップ研修は対象外 |
業種別の経費活用イメージ
複数の経費区分を組み合わせることで、幅広い取組みに活用できます。
・飲食業・小売業:POSシステムや受発注システムの導入+販促物制作+展示会出展
・サービス業:マーケティングツール導入+専門家コンサルティング+広告掲載
補助対象外となる経費・事業
以下の経費は補助対象になりません。申請前に必ず確認してください。
・自社の人件費・旅費・交通費
・販売商品の原材料費(試作開発分を除く)・消耗品費・光熱水費
・通信費(クラウドサービス利用に付帯する分を除く)
・汎用品(PC・タブレット・スマートフォン・生成AI・カメラ・家具家電等)の購入費・レンタル費
・不動産購入費・家賃・保証金・敷金・仲介手数料
・建物の建設・工事・撤去費用
・税理士・公認会計士等への税務申告・決算書作成費用
・補助金交付申請のための事業計画作成費用
・関連会社(資本関係がある事業者)への支払い
また、消費税及び地方消費税も対象外です。申請書や報告書には税抜金額を記入します。
補助金交付決定日(令和8年8月上旬予定)までに発注・契約等が終わっているものについても対象外です。早く動きたい場合でも、交付決定を待ってから発注する必要があります。
採択者だけが受けられる「伴走支援」(100者限定)
採択された約600者のうち、約100者に対し専門家による無料の伴走支援が提供されます。定期的な個別面談や講座、事業計画に対する客観的なアドバイスなどを行い、利益率向上に向けた取組みを支援します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 採択事業者のうち約100者 |
| 支援期間 | 令和8年9月上旬~令和9年2月末(予定) |
| 費用 | 無料(謝金は事務局が負担) |
| 支援形式 | 個別面談・講座 等 |
主な支援テーマとして、以下のものが予定されています。
・認知と信頼につなげるプレスリリース実践
・自社主導で顧客をつかむECサイト立ち上げと運営
・組織戦略(採用・評価)の再設計
・生産性向上や価格転嫁などその他事業全般
採択事業者向けの希望調査をもとに、支援の必要性や事業計画との親和性を踏まえて事務局が決定します。希望すれば必ず受けられるわけではありません。なお、旅費等の実費は採択事業者の負担となります。
申請から交付までのスケジュール
申請から補助金支払いまでの主なスケジュールは以下のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年5月25日 ~6月26日 | 申請受付(6月26日17:00まで) |
| 令和8年8月上旬 | 交付決定(採択発表) |
| 令和8年8月 ~令和9年1月31日 | 補助事業実施期間 |
| 令和9年2月12日まで | 実績報告書の提出 (事業完了翌日から14日以内のいずれか早い日) |
| 令和9年3月上旬 | 補助金額の確定 |
| 令和9年3月12日まで | 補助金交付請求書の提出 |
| 令和9年3月下旬 | 補助金の支払い |
補助金は補助事業完了後の精算払いです。事業実施期間中は全額を自己負担で支出し、実績報告と検査を経た後に補助金が支払われます。資金繰りを見据えた計画が必要です。
採択率を上げる加点ポイント
審査では、賃金引き上げの実現可能性や事業計画の効果予測等の観点に加え、以下の2点が加点項目として設定されています。
事業継続計画(BCP)の策定
中小企業の事業継続計画(BCP)の策定事業者(策定予定者を含む)は、より継続的に賃上げの取組みを実現できる可能性が高いと評価され、加点されます。詳細は大阪府の中小企業BCPページを参照してください。
パートナーシップ構築宣言への登録
サプライチェーン全体の付加価値向上と大企業・中小企業の共存共栄を目指すパートナーシップ構築宣言ポータルサイトに登録している事業者も加点対象です。申請日までに宣言を登録し、原則として令和8年7月8日(水)までに公表されている必要があります。
加点項目は事前準備で対応できる項目です。申請を検討する事業者は早めの着手をおすすめします。
申請方法と必要書類
申請は専用の電子申請フォーム(https://osaka-profit.com/application/)から行います。郵送・持参による申請は受け付けられません。
必要書類10点
申請には以下の書類が必要です。
・①補助金交付申請書(様式第1号)
・②事業計画書(様式第1号別紙1)
・③補助対象経費の支出計画書(様式第1号別紙2)
・④賃金引き上げに向けた宣言書(様式第1号別紙3)
・⑤要件確認申立書(様式第1-2号)
・⑥暴力団等審査情報(様式第1-3号)
・⑦登記事項証明書の写し(法人)または住民票の写し(個人)
・⑧直近の確定申告書の写し
・⑨納税証明書(府税・国税の2種)
・⑩決算書類(直近事業年度分)
申請書類の提出者および連絡担当者は、申請者の役員・従業員に限られます。検討やブラッシュアップのために認定経営革新等支援機関などの助言を受けることは問題ありませんが、作成自体を外部機関に委ねることは認められていません。
持続化補助金・ものづくり補助金との違い
利益率向上・賃上げ支援事業を、全国規模の主な補助金と比較すると以下のようになります。
| 項目 | 利益率向上・ 賃上げ支援事業 | 小規模事業者 持続化補助金 | ものづくり 補助金 |
|---|---|---|---|
| 対象地域 | 大阪府限定 | 全国 | 全国 |
| 補助上限額 | 500万円 | 50~250万円 | 750万円~ |
| 補助率 | 2/3 | 2/3~3/4 | 1/2~2/3 |
| 主な目的 | 利益率向上・ 賃上げ | 販路開拓 | 革新的 設備投資 |
| 賃上げ要件 | 必須 (2.0%) | 任意特例 | 加点項目 |
| 公募回数 | 令和8年度のみ | 年複数回 | 年複数回 |
大阪府内の事業者であれば、国の補助金と比較したうえで自社の取組み内容に合った制度を選択することが重要です。なお、同一の経費について複数の補助金を重複して受給することはできません。
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よくある質問
創業して間もないですが申請できますか?
申請時の直近期末決算において常時使用する従業員が1人以上いることが要件です。創業後の決算を1度でも終えていれば申請可能です。ただし、創業から交付申請日までに終了した事業年度について、法人税・消費税・地方消費税を完納している必要があります。
賃上げ目標2.0%を達成できなかった場合、補助金は返還が必要ですか?
目標未達であっても、ただちに補助金返還を求められる制度設計にはなっていません。目標未達の場合、大阪府が支援機関の情報提供などのサポートを実施する予定とされています。ただし、申請内容に虚偽があった場合や補助金を他の用途に使用した場合などは、交付決定が取り消され返還を求められることがあります。
採択されたら必ず伴走支援を受けられますか?
伴走支援は採択事業者約600者のうち約100者が対象です。採択後に実施される希望調査をもとに、支援の必要性や事業計画との親和性を踏まえて事務局が決定するため、希望しても必ず受けられるとは限りません。
他の補助金と併用できますか?
同一の商品・サービス等の経費について、国または地方公共団体等からの他の補助金との重複受給は認められません。重複支給が判明した場合には、不交付や返還を求められることがあります。経費を区別して、別々の取組みに別の補助金を活用することは可能です。
申請書類の作成を外部の専門家に依頼できますか?
申請書類は申請者自身が作成する必要があります。認定経営革新等支援機関などの外部機関から検討やブラッシュアップのための助言を受けることは差し支えありませんが、作成自体を外部機関が行うことは認められていません。申請書類の提出者および連絡担当者は、申請者の役員・従業員に限られます。
まとめ
利益率向上・賃上げ支援事業は、大阪府が令和8年度に新設した補助金です。要点を整理すると以下のとおりです。
・採択予定者数は約600者と幅広く設定されている
・業種を問わず、生産性向上・売上拡大の取組みが対象
・補助対象経費は7区分にわたり、設備投資から販促・研修まで使い道が広い
・申請には給与支給総額2.0%以上引き上げの宣言と3回の追跡調査への同意が必要
・申請期間は令和8年5月25日~6月26日17:00の約1か月のみ
申請期間が短く、賃上げ計画を含む事業計画の組み立てには時間がかかります。申請を検討する場合は、加点項目(BCP・パートナーシップ構築宣言)への対応も含め、早めに準備を進めることをおすすめします。補助金の活用方針や事業計画の組み立てに不安がある場合は、専門家への相談を検討してみてください。
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