制度変更等に対応する中小企業等を支えるものづくり補助金は、2025年度も継続される見込みです。2025年度の制度では収益納付義務が撤廃され、より柔軟な事業成果の活用が可能になりました。一方支援枠の縮小や最低賃金引上げ特例の設置など、制度全体ではより支援の必要な事業に絞った改変が行われています。
今回は2025年度のものづくり補助金の概要や、主な変更点をまとめました。
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この記事の目次
ものづくり補助金とは?
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等の生産性向上や、持続的な賃上げに向けた新製品・新サービスの開発のための設備投資等を支援する制度です。2025年度は、以下の2つの支援枠が設定されます。
①製品・サービス高付加価値化枠 |
製品・サービス開発の取組を支援 |
【活用例】 最新複合加工機の導入によって精密加工を可能とし、より付加価値の高い新製品を開発する など |
②グローバル枠 |
海外需要開拓等の取組を支援 |
【活用例】 海外市場獲得のために製造機械を導入して新製品の開発を行い、海外展示会に出展する など |
2024年度には設置されていた省力化(オーダーメイド)枠は、廃止となりました。今後、中小企業省力化投資補助事業にて、オーダーメイド形式も対象となる支援型が新設されることから、そちらへシフトしたものと考えられます。
ものづくり補助金の目的
ものづくり補助金は制度変更等に対応する中小企業・小規模事業者等を対象に、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化を通じて生産性を向上させる設備投資等を支援する制度として実施されています。
2025年度も継続実施される意義とは
令和6年度補正予算では、2025年度ものづくり補助金に「中小企業生産性革命推進事業」予算の3400億円の内数で、予算が割り振られました。ものづくり補助金はより時代にあった形に変更され、来年度も継続実施される見込みです。
注目されるのは、最低賃金引上げ特例の導入です。賃上げに積極的に取り組む企業は補助率が2/3に引き上げられ、より手厚い支援を受けることが可能になりました。また従来の収益納付義務が撤廃されたことで、補助金を活用した事業成果を企業全体の成長に自由に活用できるようになります。
こうした見直しは、中小企業の競争力強化と従業員の待遇改善の実現を目指すものです。ものづくり補助金は時代のニーズに応える支援策として、2025年度も中小企業の大きな支えとなりそうです。
ものづくり補助金 2025年度の変更点
令和6年度補正予算案では「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」の概要として、以下の点が示されました。
■賃上げ状況等を踏まえ、基本要件を見直す |
■投資ニーズに対応するため、補助金額に係る従業員規模区分を見直し、補助金上限額を一部拡充 |
■賃上げに対応する中小企業等の取り組みを支援するため、最低賃金引上げ特例を創設 |
これを踏まえたものづくり補助金の主な変更点は、以下のとおりです。
1.支援枠・類型
【2024年度】 |
■省力化(オーダーメイド)枠 |
■製品・サービス高付加価値化枠 ・通常類型 ・成長分野進出類型(DX・GX) |
■グローバル枠 |
【2025年度】 |
■製品・サービス高付加価値化枠 |
■グローバル枠 |
支援枠は3つから2つに削減されています。
2.要件
基本要件のうち、給与支給総額に関する項目が変更となりました。
【2024年度<抜粋>】 |
給与支給総額が年平均成長率1.5%増加 |
【2025年度<抜粋>】 |
1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、最低賃金の年平均成長率以上または給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加 |
さらに、従業員21名以上の場合では「一般事業主行動計画の公表等」が追加となりました。
3.その他
■収益納付は求めない、と明記
2025年度の最も大きな変化は、収益の納付義務が削除されたことです。これはのちほど、詳しく見ていきましょう。
また、2024年度の補助上限額は最大8000万円(オーダーメイド枠)でしたが、この支援枠の廃止により、2025年度の補助上限額は4000万円となりました。支援枠の削減に伴って対象となる事業は収縮された一方で、賃上げに関わる支援が強化されています。各種制度移行の進行に伴い、より支援が必要な事業に集中した制度に改編されたと言えそうです。
ものづくり補助金の基本要件
2025年度のものづくり補助金の基本要件は、以下のとおりです。
中小企業・小規模事業者等が、革新的な製品・サービス開発を行い、以下のすべてを満たす3~5年の事業計画に取り組むこと
①付加価値額の年平均成長率が+3.0%以上増加 |
②1人あたり給与支給総額の年平均成長率が、最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上または給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加 |
③最低賃金が、都道府県における最低賃金+30円以上の水準 |
④次世代育成支援対策推進法に基づく、一般事業主行動計画を公表等(従業員21名以上の場合) |
なお最低賃金引上げ特例適用事業者の場合、基本要件は①、②、④のみとなります。最低賃金引上げ特例の要件は、以下のとおりです。
- 指定する一定期間において、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の30%以上いること
最低賃金引上げ特例では補助率が2/3に引上げられます(小規模・再生事業者は除く)。
補助率・補助上限
各支援枠の補助率と上限額は、以下のとおりです。
■製品・サービス高付加価値化枠 | |
補助上限 | 750万円~2500万円 |
補助率 | 中小企業1/2、小規模・再生2/3 |
■グローバル枠 | |
補助上限 | 3000万円 |
補助率 | 中小企業1/2、小規模2/3 |
なお大幅な賃上げに取り組む場合、補助上限額に100~1000万円の上乗せがあります。大幅な賃上げとは、以下のものです。
■給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加
ただし最低賃金引き上げ特例事業者と、各申請枠の上限額に達していない場合は除きます。
補助対象経費
補助の対象となる経費は、以下のとおりです。
■補助対象経費 |
■機械装置・システム構築費 |
■技術導入費 |
■専門家経費 |
■運搬費 |
■クラウドサービス利用費 |
■原材料費 |
■外注費 |
■海外旅費 |
■通訳・翻訳費 |
■広告宣伝・販売促進費 |
なお「機械装置・システム構築費」は、必須項目です。またグローバル枠では「知的財産権等関連経費」も対象となります。
収益納付不要!事業者に有利な仕組みへ
2025年のものづくり補助金では、収益納付をしなくてよいことになりました。収益納付とは、「本事業の成果の事業化」や「知的財産権の譲渡」等、当該事業の実施結果の他への供与によって得られた収益を納付しなくてはならない制度です。
これまでものづくり補助金では受領した補助金の額を上限として、原則、収益納付が求められていました。
2025年からはこの規制がなくなったことで、該当事業によって得た成果をより広く、より効率的に事業全体へ反映させることができるようになりました。
申請の流れとスケジュール
申請の流れは、以下のとおりです。
①公募開始・公募締切
②交付候補決定
➂交付申請・交付決定
④補助事業開始
⑤実績報告・確定検査
⑥補助金額確定
⑦事業化状況報告
出典:中小企業庁 ものづくり補助金より抜粋
そのほかのスケジュール等は、補助金事務局の決定後に公表されます。
まとめ
2025年度のものづくり補助金は、中小企業の生産性向上と賃上げの両立を支援する制度として大きく変革されました。
補助上限額は4000万円となり、支援枠は2つに整理されています。また最低賃金引上げ特例の導入により、賃上げに積極的な企業への支援が強化されました。特に収益納付義務の撤廃は、企業の自由度を高め、より効果的な事業展開を可能にすることが期待されます。
来年度も、ものづくり補助金は、中小企業の多様な成長戦略をサポートする制度となりそうです。上手に活用して、将来的な成長に役立てていきましょう。
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