生鮮食品や冷凍食品は、搬送中から店舗での販売まで、一貫して低温での管理が必要です。しかし従来の冷蔵用機器は温室効果ガスの排出量が多いことが課題となっています。
国は2050年までのカーボンニュートラルの実現を目指し、食品製造工場や食品小売店舗でのコールドチェーンの脱炭素化に向けた補助金の公募を開始しました。今回は令和5年度「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」の内容や申請方法についてお伝えします。
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この記事の目次
脱炭素型自然冷媒の普及を目指して
食品の鮮度を保つためには、適切な温度での保存と輸送が不可欠です。食品製造工場からスーパーマーケット、レストランのキッチンまで、食品は冷凍冷蔵機器による「コールドチェーン」を通じて管理されています。
業務用冷凍冷蔵機器には従来、冷媒として、代替フロンと呼ばれるハイドロフルオロカーボン(HFC)が主に使用されてきました。代替フロンはオゾン層を破壊しないものとして普及しましたが、地球温暖化を促進させる効果があるため、2019年からは排出抑制の対象となっています。
国の調査では、2005年から2019年にかけて、HFCの使用量は大幅な増加傾向にあることも報告されています。
出典:代替フロンに関する状況と現行の取組について
現在、冷凍冷蔵倉庫や食品製造工場、食品小売店舗で使用されるショーケースなどでは、温室効果が極めて小さい自然冷媒の利用が進められています。しかしこうした新しい機材の導入には、初期費用も課題のひとつです。
「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」では、脱フロン・脱炭素化を進めるために補助金が交付されます。この補助金を活用することで、環境に配慮した脱炭素型自然冷媒の冷凍冷蔵機器への移行を、経済的な負担を軽減しながら進めることが可能となるのです。
「コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業」とは
業務用冷凍冷蔵機器については温室効果の高いHFCにかわり、温室効果が極めて小さいアンモニア、二酸化炭素、空気、水等を利用した自然冷媒による機器が開発されています。特に冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場や食品小売店舗におけるショーケースなどの脱炭素型自然冷媒機器の分野では、技術開発が活発です。
こうした脱炭素型自然冷媒の冷凍冷蔵機器のさらなる普及を目指すために、コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業が設置されました。
まずは本事業の補助率や対象事業について、見ていきましょう。
補助率・上限額
本事業の補助率と上限額は、以下のとおりです。
■補助率
原則として1/3
・ただし「先進的な中小企業」に合致し、審査時の得点順上位10%以内の事業者は1/2
■上限額
5億円
・フランチャイズ形態のコンビニエンスストアは2億5,000万円
補助率と上限額の詳細については、以下の表も参照してください。
出典:公募要領
対象経費
補助のとなる経費は、以下の①~④です。
①工事費
②設備費
③業務費
④事務費
対象事業者
対象事業者は、以下のいずれかです。
①民間企業
②地方公共団体
③個人事業主
④その他、環境大臣の承認を得て機構が適当と認める者
対象事業
補助の対象事業は①基本要件と②対象事業の要件を満たす事業です。
①基本要件 |
---|
■事業を行うための実績・能力・実施体制が構築されている ■申請時に事業内容・資金調達計画等が、明確な根拠に基づき示されている ■導入する設備等について、国からの他の補助金を受けていない ■暴力団排除に関する誓約事項に誓約する |
②対象事業の要件 |
---|
■冷凍冷蔵倉庫・食品製造工場に用いられる脱炭素型自然冷媒機器・食品小売店舗におけるショーケース・その他の脱炭素型自然冷媒機器を導入する ■原則として、エネルギー管理を一体で行う事業所単位で補助申請を行う (※同一事業所において脱炭素型自然冷媒機器を併せて導入する場合は除く) ■応募申請時に、機器の設置場所が確定している ■脱炭素型自然冷媒機器導入に関する計画が作成されている ■機構の指定する事業報告書を指定する時期までに提出する ■新たに設置する脱炭素型自然冷媒機器の導入に伴い、既存の冷凍・冷蔵機器を撤去する場合は、フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律に基づいた処理を行う ■補助事業の実施にあたり、高圧ガス保安法等の関係諸法令を遵守する ■導入する脱炭素型自然冷媒機器については、当該機器の製造者等において安全性の評価を行い、対策をとる ■脱炭素型自然冷媒機器の省エネ性能等が最大限発揮できるよう、機器の設置環境に配慮する |
補助事業期間
令和5年度の事業実施期間は、原則として交付決定日以降から令和6年2月29日までです。ただし複数年度事業に該当する事業は、初年度の交付決定日以降から翌年度の令和7年2月28日まで(2箇年度)とすることができます。
申請方法
次に、申請の方法について確認しましょう。申請は郵送または書類を持参して行います。電子メール等での申請はできませんので、注意してください。
公募期間や必要な書類についてまとめました。
公募期間
令和5年5月11日(木)~ 令和5年6月12日(月)17時必着
申請方法
申請時は、以下のものを用意してください。
①印刷した書類
②当該書類の電子データを保存した電子媒体
必要書類
申請に必要な主な書類は、以下の①~⑥です。
必要書類 | |
①応募申請書 ・法人番号(国税庁法人番号)を記載した場合は、代表者の押印は不要です |
|
②実施計画書 | ■導入前後の比較が出来る概略系統図 ■事業所内における導入前後の設備の配置(計画)図、新築の場合は敷地配置(計画)図 ■導入前後の機器表 ■脱炭素型自然冷媒機器の設備動力や冷媒保有量等CO2削減効果計算書で使用した数値の根拠となる設計資料と機器カタログ類 ■CO2削減効果計算書に撤去する既存機器を入力した場合は、使用した各数値の根拠となる設計資料等 ■導入設備の安全対策の概要 ■リースを活用する場合は、契約書(案)の写しなど ■工程表 ■既存の冷凍・冷蔵機器で冷媒としてフロン類を含むものを撤去する場合は、当該機器に関わる以下の書類 ・回収依頼書または委託確認書の写し ・引取証明書の写し ・再生証明書または破壊証明書の写し |
③経費内訳 | ■経費内訳 ■脱炭素型自然冷媒機器導入費用の見積書等 |
④代表事業者の業務概要がかる資料および定款または寄附行為 | |
⑤代表事業者の経理状況説明書 | |
⑥その他参考資料 |
まとめ
地球環境への対応は、すべての人にとって重要な課題のひとつとなりました。環境への企業の態度は、社会的な評価にもつながります。しかし日本では長期化する物価高に加え、回復しつつある経済活動への対応など、企業にとって難しい局面が続いています。特に予算的余裕の少ない中小企業にとって、新しい機材の導入は大きな負担です。
コールドチェーンを支える冷凍冷蔵機器の脱フロン・脱炭素化推進事業では必要経費の3分の1、最大で5億円と大幅な補助が行われます。脱炭素型自然冷媒の導入には、ぜひこの支援を申請してください。
環境とともに成長を目指す企業こそ、補助金を活用して、持続可能な社会を目指しましょう。