政府は今年2月以降新型コロナウイルスへの対応として、コロナの影響を受ける事業者に向けた「貸付要件の緩和」、売上の減少を受ける事業主への「低金利融資」、更に売上減少が深刻な事業者には「特別利子補給(実質無利子化)」という三段階の資金繰り支援制度を設け、中小事業者の資金繰りの支援を行っています。
コロナ関連の貸付・融資制度は非常に種類が多く、どの制度を利用すればよいのか分からないという事業者の方も多くいらっしゃることとは思いますが、それぞれの制度は主に「業種」や「売上減少の状況」などによって利用対象が限定されているため、ある程度制度全体のイメージを理解することが出来れば、自社にとって最も適切な制度を見つけ出すことはそれほど難しくはありません。
そこで、今回はコロナ対応で実施されている政府の資金繰り支援策について、コロナで特に大きな影響を受けている飲食業や宿泊業などを対象にする「生活衛生関連業向け政府系融資」と、それ以外の業種を対象とする「一般向け政府系融資」のそれぞれの体系について紹介したいと思います。
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この記事の目次
政府系融資(一般)
新型コロナ関連の資金繰り政策のうち、生衛業(飲食店や宿泊施設など)以外の中小企業・個人事業者主などを対象とした資金繰り支援策(直接融資関連)が下記の5つの制度です。
セーフティネット貸付の要件緩和
従来からあるセーフティネット貸付の内容をそのままに、コロナ対応として利用条件の緩和を行ったものです。
要件は緩和されていますが制度内容に特に優遇があるわけではないため、様々な融資制度が創設されているコロナ禍においては、利用件数の増加はほぼないようです。
(1)セーフティネット貸付
・利用対象:中小法人、個人事業主など
・売上条件:コロナの影響が見込まれる事業者であれば利用可※実質無条件
・金利:中小1.11% 個人1.86%※基準金利
・融資限度:中小事業7.2億 国民事業4800万円
・据置期間:3年
・貸付期間:設備資金15年以内、運転資金8年以内
・担保・保証人:原則必要
5%以上の売上減少で利用できる融資制度
売上減少が5%以上ある事業者の方は、下記で紹介する3種類の資金繰り支援の中から利用する制度を選択することが可能です。
とはいえ、「危機対応融資」はこれまでに商工中金と取引がない事業者の方は実質的に利用する事が難しく、「マル経融資」は商工会議所の経営指導員の指導を受ける必要があるためスピード感に欠けることなどから、実際には利用者の大半が「特別貸付」を選択しています。
(2)新型コロナウイルウイルス特別貸付
・利用対象:中小法人、個人事業主など
・売上条件:5%以上の売上減少※個人事業主は条件無し
・金利:当初3年間金利0.21%~0.36%※以降は基準金利適用
・融資限度:6億円(利下げは2億円迄)
・据置期間5年
・貸付期間:設備投資20年以内、運転資金15年以内
・担保・保証人:原則無担保で利用可
(3)商工中金による危機対応融資
・利用対象:中小法人、個人事業主など
・売上条件:5%以上の売上減少※個人事業主は条件無し
・金利:当初3年間金利0.21%~0.36%※以降は基準金利適用
・融資限度:6億円(利下げは2億円迄)
・据置期間:5年
・貸付期間:設備投資20年以内、運転資金15年以内
・担保・保証人:原則無担保で利用可
(4)新型コロナウイルス対策マル経融資
・利用対象:小規模事業者のみ
・売上条件:5%以上の売上減少
・金利:当初3年間金利0.21%~0.36%※以降は基準金利適用
・融資限度:既存の融資と別枠で1000万円
・据置期間:5年
・貸付期間:設備投資20年以内、運転資金15年以内
・担保・保証人:無担保・無保証人で利用可
・その他:※商工会議所の指導員の経営指導が必要
20%以上(事業規模による)の売上減少で利用できる特別利子補給
上で紹介した「(2)新型コロナウイルス特別貸付」「(3)商工中金による危機対応融資」「(4)新型コロナウイルス対策マル経融資」のいずれかを利用した事業者を対象に、更に大幅な売上減少がある場合に利子の補給を行い、最長3年間分の利子相当額を一括で助成し、「実質無利子化」を実現するのが「特別利子補給制度」です。
(5)特別利子補給制度(実質無利子)
・利用対象:中小法人、小規模事業者
・売上条件:中小20%以上、小規模事業者15%以上の売上減少※個人は無条件
・助成内容:3年間の利子相当額を一括支給することで実質無利子化
・補給上限:中小事業2億円、国民事業4000万円
以上のように一般向け政府系融資制度としては上記の5種類の制度が用意されていますが、コロナ禍ではほとんどの事業者の方が大幅な売上減少を経験しているため、利用しやすさ等も考慮すると「新型コロナウイルス特別貸付+特別利子補給制度」を前提に窓口に相談を行うケースが最も多くなるのではないでしょうか。
生活衛生関連業向け政府系融資
生活衛生関連業(以下:生衛業)というのは、「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」で定められた飲食業や宿泊業などを含む18業種の総称です。
生活衛生関連業とは?※東京都生活衛生営業指導センターHP
https://www.seiei.or.jp/tokyo/seiei/
新型コロナウイルス感染症で大きな影響を受ける生衛業を対象に、実施されている資金繰り支援策は下記の4種類(利子補給については一般向けと共通)です。
コロナの影響で「今後も売上減少が見込まれる」場合にも利用できる制度
現在も生衛業はコロナの影響を大きく受けており、今後もしばらくは売上の回復が難しいと感じている事業者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
通常はこうした状況で融資審査を通過することは非常に困難ですが、衛生環境激変対策特別貸付は、衛生環境の激変に伴って10%以上の売上減少がある事業者を対象に「今後も売上減少が見込まれる」状況でも、中長期的に経営の回復が見込まれる場合には「無担保・無保証」で融資を行う制度です。
(1)衛生環境激変対策特別貸付
・利用対象:旅館業、飲食店、喫茶店営業を営む者
・売上条件:10%以上の売上減少
・基準金利:0.96%~1.86%
・融資限度:衛生環境の激変自由ごとに別枠1000万円(旅館業は3000万円)
・据置期間:2年
・貸付期間:運転資金7年以内
・担保・保証人:無担保で利用可
生衛業向けの新型コロナウイルス感染症特別貸付
生衛業を対象とした新型コロナウイルス感染症特別貸付で、一般向けよりも上限額が低く設定されています。既存の融資と別枠で8000万円の融資が可能です。
(2)生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
・利用対象:中小法人、個人事業主など
・売上条件:5%以上の売上減少
・金利:当初3年間金利0.36%※以降は基準金利適用
・融資限度:既存の融資と別枠で8000万円
・据置期間:5年以内
・貸付期間:設備投資20年以内、運転資金15年以内
・担保・保証人:無担保で利用可
設備投資や運転資金を無担保・無保証で融資
生活衛生同業組合などの経営指導を受けている小規模事業者向けに実施されている「生活衛生関係営業経営改善資金特別貸付」に、コロナ対応として新たに1000万円の特別枠を追加する制度です。
(3)新型コロナウイルス対策衛経融資
・利用対象:生活衛生同業組合などの経営指導を受ける小規模事業者
・売上条件:5%以上の売上減少
・金利:当初3年間金利0.36%※以降は基準金利適用
・融資限度:通常枠2000万円+別枠1000万円
・据置期間:設備資金4年、運転資金3年以内
・貸付期間:設備投資10年以内、運転資金7年以内
・担保・保証人:無担保・無保証人で利用可
④20%以上の売上減少で利用できる特別利子補給
一般向け融資と同様、中小事業2億円、国民事業4000万円までの融資について特別利子補給制度を利用する事が可能です。
(4)特別利子補給制度
・利用対象:中小法人、小規模事業者
・売上条件:中小20%以上、小規模事業者15%以上の売上減少
・助成内容:3年間の利子相当額を一括支給することで実質無利子化
・補給上限:中小事業2億円、国民事業4000万円
以上のように、金利の引き上げや特別利子補給が利用できる点は一般向けの融資と同様の仕組みとなっています。
生衛業においても、やはり「新型コロナウイルス感染症特別貸付+特別利子補給」の利用者が多いようですが、コロナの第3波により経営回復のタイミングがつかめない現在の生衛業においては、無担保無保証の「衛生環境激変対策特別貸付」で現状をまず凌ぐという選択も、十分に考慮すべきかもしれません。
まとめ
今回は政府が実施している新型コロナ関連の資金繰り政策の中から、「政府系融資の体系」について紹介いたしました。
新型コロナ関連の資金繰り政策としては今回紹介した他にも「信用保証協会による民間の信用保証付き融資」が実施されています。
金利引き下げや、特別利子補給については政府系融資と同様の仕組みを採用していますが、詳細については次回の記事で詳しく紹介したいと思います。
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