新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、これまでの「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」が統合されて2026年度に始まった補助金です。新たな事業への進出や革新的な新製品・新サービスの開発を検討している個人事業主の中には、「この補助金を活用したい」と考えている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は個人事業主も申請可能です。ただし、対象外となる場合もあるため、要件をしっかり押さえておく必要があります。
本記事では、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金を個人事業主が申請する際の要件やスケジュールを解説します。
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この記事の目次
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は個人事業主も対象
前述したとおり、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は個人事業主も申請可能です。公募要領によると、補助対象者である「中小企業者」は「資本金又は常勤従業員数が一定の数字以下となる会社又は個人」と定義されています。
また、公募要領の添付書類の項目には「個人事業主の場合:直近3期分の青色申告決算書(白色申告の場合は収支内訳書)」といった個人事業主向けの提出書類が明記されており、口頭審査の対応者にも「個人事業主本人」が挙げられていることから、個人事業主は本補助金の申請対象です。
なお、本補助金には次の3つの事業枠があり、いずれも個人事業主が申請できます。
| 事業枠 | 概要 |
|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービス開発の取組を支援 |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化の取組を支援 |
旧・新事業進出補助金の後継にあたるのは「新事業進出枠」です。本記事では新事業進出枠を中心に解説します。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象となる個人事業主
資本金又は常勤従業員数が下表の数字以下となる会社又は個人が補助の対象です。
| 業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業・建設業・運輸業 | 3億円 | 300人 |
| 卸売業 | 1億円 | 100人 |
| サービス業(ソフトウェア業・情報処理サービス業・旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
| 小売業 | 5,000万円 | 50人 |
| ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
| ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
| 旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
| その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
業種に応じて、資本金の金額と従業員数に関する要件が定められています。
また、常勤従業員数が下表の数字以下の会社又は個人は「小規模企業者・小規模事業者」に区分されます。小規模企業者・小規模事業者は、革新的新製品・サービス枠において補助率が2/3に引き上げられるため、従業員数の少ない個人事業主にとって有利な区分です。
| 業種 | 常勤従業員数 |
|---|---|
| 製造業 | 20人 |
| 商業・サービス業 | 5人 |
| うち宿泊業・娯楽業 | 20人 |
| その他の業種(上記以外) | 20人 |
なお、上記に該当しても、政治団体・宗教法人・暴力団に関連する事業者は対象外です。
上記の表は、公募要領より「中小企業者」「小規模企業者・小規模事業者」に該当する内容を示したものです。補助対象にはこのほか、「特定事業者の一部」や「特定非営利活動法人」「農事組合法人」「対象リース会社」も含まれます。詳しくは公募要領をご確認ください。
出典:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の対象外となるケース
個人事業主は本補助金を申請可能ですが、状況によっては対象外となるケースもあります。ここでは、個人事業主に関わりの深い具体例を紹介します。
申請時に従業員数が0人の事業者
応募申請時点で従業員数が0人の事業者は、本補助金の対象となりません。これは3つの事業枠すべてに共通する要件です。従業員を雇用せず一人で事業を営んでいる個人事業主の方はご注意ください。
なお、個人事業主本人や会社役員は、中小企業基本法上の「常時使用する従業員」には含まれません。
一方で、公式FAQでは、現在従業員が0名であっても、応募申請時までに従業員を雇用し要件を満たしていれば申請可能であることが示されています。ただし、専ら本補助金の対象事業者となることを目的として、資本金・従業員数・株式保有割合等を変更していると認められた場合には、申請時点にさかのぼって対象外となる場合があるため注意が必要です。
新規設立・創業後1年に満たない事業者(新事業進出枠のみ)
新事業進出枠では、応募申請時を基準として新規設立・創業後1年を経過していない事業者は対象外です。旧制度では公募開始日が基準でしたが、新制度では公式FAQにて「応募申請時」を基準とすることが示されています。また、申請には最低でも1期分の決算書の提出が必要となります。
ここは旧・新事業進出補助金からの変更点です。旧制度では補助金全体の対象外要件でしたが、新制度では「新事業進出枠に限る」とされており、革新的新製品・サービス枠には創業1年未満を対象外とする規定はありません。創業間もない個人事業主の方は、革新的新製品・サービス枠の活用も検討してみましょう。
家族が同一生計で事業を営んでいる場合(みなし同一事業者)
本補助金では、同一事業者(みなし同一事業者を含む)の応募は1回の公募につき1申請に限られます。みなし同一事業者の判定にあたっては、配偶者・親子及びその他生計を同一にしている者はすべて同一として取り扱われます。
たとえば、夫婦がそれぞれ個人事業主として別々に申請することは、生計が同一であれば認められません。また、過去に交付決定を受けた個人事業主が設立した法人についても、同様の取り扱いとなります。家族で事業を営んでいる方は特に注意が必要です。
その他の対象外となるケース
このほか、次のような事業者も補助対象外です。
| その他の補助対象外となる事業者の例 |
|---|
| 申請締切日を起点に16か月以内に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・本補助金の補助金交付候補者として採択された事業者(採択辞退者を除く)、又は申請締切日時点でこれらの交付決定を受けて補助事業実施中の事業者 |
| 応募申請日を起点に過去3年間に、事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金の交付決定を合計2回以上受けた事業者 |
| 収益事業を行っていない法人 |
| 直近過去3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業者 |
詳しくは公募要領の「1-4-2. 補助対象外となる事業者」をご確認ください。
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 公募要領(第1回)
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の補助金額と要件
本補助金の補助金額・補助率は、事業枠ごとに体系が異なります。まずは3つの枠の金額を比較してみましょう。
各事業枠の補助金額・補助率
| 項目 | 革新的新製品・サービス枠 | 新事業進出枠 | グローバル枠 |
|---|---|---|---|
| 補助下限額 | 100万円 | 750万円 | 750万円 |
| 補助上限額 | ・従業員数1〜5人:750万円(850万円) ・6〜20人:1,000万円(1,250万円) ・21〜50人:1,500万円(2,500万円) ・51人以上:2,500万円(3,500万円) | ・従業員数1〜20人:2,500万円(3,000万円) ・21〜50人:4,000万円(5,000万円) ・51〜100人:5,500万円(7,000万円) ・101人以上:7,000万円(9,000万円) | ・従業員数1〜20人:2,500万円(3,000万円) ・21〜50人:4,000万円(5,000万円) ・51〜100人:5,500万円(7,000万円) ・101人以上:7,000万円(9,000万円) |
| 補助率 | 中小企業者1/2(地域別最低賃金引上げ特例適用時2/3) 小規模企業者・小規模事業者、再生事業者2/3 | 中小企業者(小規模企業・小規模事業者、再生事業者含む)1/2(地域別最低賃金引上げ特例適用時2/3) | 中小企業者(小規模企業・小規模事業者、再生事業者含む)2/3 |
| 補助事業実施期間 | 交付決定日から10か月以内(ただし採択発表日から12か月以内) | 交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内) | 交付決定日から14か月以内(ただし採択発表日から16か月以内) |
なお、補助対象経費にも枠ごとの違いがあり、建物費(生産施設・販売施設等の建設・改修に要する経費)を計上できるのは新事業進出枠とグローバル枠のみです。店舗の改装等を伴う計画を検討している方は注意しましょう。
革新的新製品・サービス枠は補助下限額が100万円と低く、小規模企業者・小規模事業者には補助率2/3が適用されるため、投資規模が比較的小さい個人事業主の場合、金額面では革新的新製品・サービス枠のほうが検討しやすいケースもあります。
ただし、同枠は革新的な新製品・新サービス開発の取組が対象であり、新製品・新サービスの開発を伴わない単なる設備導入は対象外となる点には注意が必要です。開発を伴わず、既存事業と異なる市場・業態へ進出する計画であれば、新事業進出枠が申請先となります。
補助対象事業の基本要件
どの事業枠に申請する場合も共通で、以下の基本要件をすべて満たす3〜5年の事業計画に取り組むことが必要です。
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| (1)付加価値額要件 | 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること |
| (2)賃上げ要件 | 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること ※目標未達の場合、補助金返還義務あり |
| (3)事業場内最賃水準要件 | 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること ※目標未達の場合、補助金返還義務あり |
| (4)ワークライフバランス要件 | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること |
| (5)子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組み要件 | ライフデザインサービスの活用、家事代行・ベビーシッターサービスの活用、子育て支援制度の従業員への周知等のいずれかに取り組むこと |
| (6)金融機関要件 | 補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること |
旧制度と比べると、賃上げ要件が「給与支給総額」から「一人当たり給与支給総額」基準(年平均成長率+3.5%以上)に変わったほか、「子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組み要件」が新たに加わっています。また、賃上げ要件と事業場内最賃水準要件は目標未達の場合に補助金の返還義務が生じる点にも注意が必要です。
このほか、補助上限額の引き上げを受けられる「賃上げ特例」(一人当たり給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上かつ事業場内最低賃金+50円以上)と、補助率の引き上げを受けられる「地域別最低賃金引上げ特例」が設けられています。
一般事業主行動計画の公表は従業員数にかかわらずすべての申請者に必要で、「両立支援のひろば」への掲載には1〜2週間程度かかります。申請を検討している個人事業主の方は早めに準備しておきましょう。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の申請スケジュール
第1回公募のスケジュールは以下のとおりです。
| 公募回 | 詳細 |
|---|---|
| 第1回 | 公募開始:令和8年6月29日(月) 申請受付開始:令和8年9月30日(水) 応募締切:令和8年10月30日(金)18:00(厳守) 採択発表:令和9年1月頃(予定) |
なお、第1回公募の申請受付・応募締切・採択発表は、当初の予定(申請受付:8月31日、応募締切:9月30日、採択発表:令和8年12月頃)から約1か月後ろ倒しに変更されています。最新のスケジュールは必ず公式サイトでご確認ください。
申請は電子申請システムでのみ受け付けられており、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。アカウントの発行には1週間程度かかるため、早めに取得しておくことをおすすめします。
また、審査の一環として口頭審査が実施される場合があります。口頭審査は申請事業者自身(個人事業主本人等)が対応する必要があり、経営コンサルタント等の同席は認められません。
個人事業主の申請に関するよくある質問
従業員がいない一人親方・フリーランスは申請できる?
応募申請時点で従業員数が0名の事業者は補助対象外です。個人事業主本人は「常時使用する従業員」に含まれませんが、応募申請時までに従業員を雇用し、要件を満たしていれば申請可能です。
白色申告の個人事業主でも申請できる?
申請可能です。白色申告の場合は、決算書類として収支内訳書を提出します。
採択後に法人成りできる?
交付決定前の法人成りによる権利の承継は、いかなる理由でも認められません。交付決定後に法人化して補助事業を法人で行う場合は、事前に事務局の承認を得る必要があります。
夫婦がそれぞれ個人事業主として申請できる?
配偶者・親子など生計を同一にしている者はみなし同一事業者として扱われるため、1回の公募につきいずれか1名しか申請できません。
旧・新事業進出補助金に採択された場合は?
申請締切日を起点に16か月以内に旧・新事業進出補助金の補助金交付候補者として採択された事業者や、交付決定を受けて補助事業を実施中の事業者は、本補助金の対象外です。
参考:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 よくあるご質問
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、法人だけでなく個人事業主も申請できる補助金です。ただし、従業員が0人の事業者は全枠共通で対象外となるほか、新事業進出枠では創業後1年が経過していない事業者も対象外となる点に注意しましょう。
旧・新事業進出補助金からは、賃上げ要件をはじめとする基本要件や補助金額の体系が変わっています。新たな事業拡大を検討している個人事業主にとって有効な支援策となりますので、要件を満たす方は活用を視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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