
令和7年(2025年)4月22日より、中小企業新事業進出補助金の第1回目の公募が開始されています。この補助金は、中小企業や小規模事業者の成長につながる新事業展開や構造転換を支援する制度です。本記事では、中小企業新事業進出補助金の目的や対象となる企業、支援内容について解説します。
※令和7年5月22日更新
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この記事の目次
中小企業新事業進出補助金とは?
日本の中小企業や小規模事業者は、物価高や人手不足、最低賃金の引き上げなど、経営環境が厳しさを増す中で、現状維持では持続可能な成長を遂げることが難しい状況にあります。そのような状況下で競争力を高めるためには、企業の成長・拡大に向けて、新規事業の開拓や事業の再構築といった変革に取り組むことが必要になってきます。
中小企業新事業進出補助金は、企業がこうした挑戦を行う際の投資を支援し、成長基盤を整えることを目的としています。本補助金の予算規模は、既存基金を活用して、1500億円程度になります。
中小企業新事業進出補助金のスケジュール
現在、中小企業新事業進出補助金の第1回目の公募が始まっています。公募開始:令和7年4月22日(火) 申請受付開始:令和7年6月頃(予定) 応募締切:令和7年7月10日(木)18:00(厳守) 採択発表:令和7年10月頃(予定) |
令和7年5月22日時点では、第2回目以降のスケジュールはまだ公開されていません。
補助金の申請は電子申請システムを通じて行うため、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必須です。加えて、「次世代育成支援対策推進法」に基づく一般事業主行動計画の策定・公表も必要となります。いずれの手続きも完了までに1〜2週間を要するため、余裕を持って準備を進めるようにしてください。
令和7年5月 応募申請ガイドが追加
令和7年5月19日より、「応募申請ガイド」が公開されました。中小企業新事業進出補助金の概要や要件がわかりやすくまとめられているので、ぜひご一読ください。また、令和7年5月21日には、申請時に必要な添付書類をまとめた「添付書類確認シート」も公開されています。
応募申請ガイドと添付書類確認シートに関しては、中小企業新事業進出補助金の公式サイトの資料ダウンロードをご覧ください。
中小企業新事業進出補助金の活用が期待される場面とは?
中小企業新事業進出補助金は、企業の成長や事業の拡大を目指して「既存とは異なる新たな事業」に挑戦する中小企業等に対して、設備投資などにかかる費用の一部を補助する制度です。
この補助金は、中小企業が直面する課題や転機への対応を支えるもので、たとえば次のような場面での活用が想定されています。
■機械加工業のノウハウを活かして、半導体製造装置部品の製造に進出する
■医療機器製造の技術を応用し、蒸留所を設けてウイスキー製造業に挑戦する
このように、本補助金は単なる設備更新や既存事業の延長ではない、新しい市場・高付加価値事業へのチャレンジを支援対象としています。
中小企業新事業進出補助金の要件と補助対象経費
補助を受けるにはいくつかの要件を満たす必要があります。また、対象となる経費もあらかじめ定められています。
基本要件
中小企業等が、以下の要件を満たす3~5年の事業計画に取り組むことが必要です。
(1) 新事業進出要件 新事業進出指針に示す「新事業進出」の定義に該当する事業であること |
(2) 付加価値額要件 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、付加価値額(または従業員一人あたり付加価値額)の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること |
(3) 賃上げ要件 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、以下のいずれかの水準以上の賃上げを行うこと ①一人当たり給与支給総額の年平均成長率を、事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上増加させること ②給与支給総額の年平均成長率を2.5%以上増加させること |
(4) 事業場内最賃水準要件 補助事業終了後3~5年の事業計画期間において、毎年、事業所内最低賃金が補助事業実施場所都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること |
(5) ワークライフバランス要件 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表していること |
(6) 金融機関要件 補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること |
※その他、賃上げ特例の適用を受ける場合の追加要件が規定されます。
賃上げ特例の要件
賃上げによる補助上限の変更 |
補助事業実施期間内に、以下の要件をいずれも満たすこと (1) 給与支給総額を年平均6.0%以上増加させること (2) 事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げること |
賃上げ特例を適用するには、補助事業の実施期間中に給与支給総額を年平均で6.0%以上引き上げ、あわせて事業場内最低賃金を年額50円以上引き上げる必要があります。新たな事業場で補助事業を行う場合には、既存の事業場での最低賃金を基準とし、それ以上の水準で新たな事業場における最低賃金を年50円以上引き上げなければなりません。これらの賃上げに取り組む意思を示すため、応募申請時には大幅な賃上げに向けた計画書の提出が求められます。
【補助対象経費】
本補助金では、新事業進出や事業転換にかかる経費が補助対象となります。主な補助対象経費は以下のとおりです。
補助対象者 |
機械装置・システム構築費 |
建物費 |
運搬費 |
技術導入費 |
知的財産権等関連経費 |
外注費 |
専門家経費 |
クラウドサービス利用費 |
広告宣伝・販売促進費 |
中小企業新事業進出補助金の補助上限額・補助率
補助金額は、従業員数に応じて最大9,000万円(特例適用時)、補助率は1/2以下です。
補助金額(補助下限額・補助上限額)
- 従業員数 20人以下: 750万円~2,500万円(賃上げ特例適用時: 最大3,000万円)
- 従業員数 21~50人: 750万円~4,000万円(賃上げ特例適用時: 最大5,000万円)
- 従業員数 51~100人: 750万円~5,500万円(賃上げ特例適用時: 最大7,000万円)
- 従業員数 101人以上: 750万円~7,000万円(賃上げ特例適用時: 最大9,000万円)
補助率
中小企業等の場合: 1/2以下
事業実施期間
交付決定から14か月以内 ※採択発表日から計算すると16か月以内となります。
中小企業新事業進出補助金の補助対象者
本補助金の対象となるのは、日本国内に「本社」と「補助事業の実施場所」がある事業者で、以下のいずれかに該当するものです。
(1) 中小企業者
資本金または常勤従業員数が下表の数字以下となる会社または個人であること。
業種 | 資本金 | 常勤従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業 (ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業 (自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
※常勤従業員数には、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者は含まれません。
(2) 中小企業者等に含まれる「中小企業者」以外の法人
以下のような法人も補助対象となります。(※従業員数300人以下)
- 「中小企業等経営強化法(平成11年法律第18号)」第2条第1項第6号~第8号に定める法人(企業組合等)
- 「法人税法(昭和40年法律第34号)」別表第2に該当する法人(一般社団法人・一般財団法人については営利・非営利を問わない)
- 「農業協同組合法(昭和22年法律第132号)」に基づき設立された農事組合法人
- 「労働者協同組合法(令和2年法律第78号)」に基づき設立された労働者協同組合
- その他の公益法人等(法令上、法人税法以外で認定されたもの)
(3) 特定事業者の一部
特定事業者として補助対象となるのは、以下のいずれかに該当するものです。
対象組織 | 主な要件 |
①常勤従業員数が右記の数字以下となる会社または個人 | ・資本金10億円未満 ・業種別の従業員数: 製造・建設・運輸業:500人以下 卸売業:400人以下 サービス・小売業(※一部除く):300人以下 その他の業種:500人以下 |
② 生活衛生同業組合等 | ・構成員の2/3以上が以下に該当: 常時使用従業員が300人以下(卸売業は400人以下) 資本金10億円未満 |
③ 酒造組合・酒販組合等 | (酒造関連) ・構成員の2/3以上が以下に該当: 従業員500人以下・資本金10億円未満の酒類製造業者 (酒販関連) ・構成員の2/3以上が以下に該当: 従業員300人以下(卸売業は400人以下)・資本金10億円未満の酒類販売業者 |
④ 内航海運組合・連合会 | ・構成員の2/3以上が以下に該当: 従業員500人以下・資本金10億円未満の内航海運事業者 |
⑤ 技術研究組合 | ・構成員の2/3以上が以下に該当: 上記① に記載の事業者または企業組合・協同組合 |
(4) 対象リース会社
中小企業等がリース会社に支払うリース料から補助金相当分が減額されることなどを条件に、中小企業等とリース会社の共同申請が認められており、リース会社を対象に補助金を交付することが可能です。この場合のリース会社については、中小企業者等に限りません。
まとめ
「中小企業新事業進出補助金」は、成長を目指す中小企業や小規模事業者が、新たな事業への挑戦を進める際の投資を支援する制度です。申請にあたっては、製品等や市場の新規性が求められるほか、補助事業終了後3~5年の事業計画期間における給与支給総額の年平均成長率2.5%以上増加や、事業場内最低賃金の引き上げなどの賃上げ要件を満たす必要があります。
本補助金は新商品または新サービスの提供を検討している企業にとって、有効な資金調達手段となります。制度の詳細を確認のうえ、自社の成長戦略に合わせて活用をご検討ください。
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