中小企業新事業進出補助金は、事業拡大のため、新たな事業に進出を目指す中小企業等を支援する補助金です。令和7年(2025年)度から公募開始された新しい補助金のため、審査基準が気になる方も多いのではないでしょうか。
この補助金は書面審査だけでなく、一定の基準を満たすとオンラインでの審査となる可能性もあります。本記事では、中小企業新事業進出補助金の審査基準や加点・減点項目、オンラインでの審査について解説します。
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この記事の目次
中小企業新事業進出補助金の審査項目
中小企業新事業進出補助金に申請すると、書面での審査が行われます。書面審査の観点は、以下の7つです。
| 項目 | 主な内容 |
| ①補助対象事業としての適格性 | 公募要領に記載する要件を満たすか |
| ②新規事業の新市場性・高付加価値性 | 新規事業は社会における一般的な普及度や認知度が低いか、または新製品等のジャンル・分野と比較し高付加価値化を図るものか |
| ③新規事業の有望度 | 新規事業が継続的に売上・利益を確保できるだけの市場規模があるか |
| ④事業の実現可能性 | 事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか |
| ⑤公的補助の必要性 | 補助事業として費用対効果が高いか |
| ⑥政策面 | 今後より市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野に進出することを通じて、日本経済の構造転換を促せるか |
| ⑦大規模な賃上げ計画の妥当性 | 大規模な賃上げの取り組みが具体的に示されており、記載内容や算出根拠が妥当なものか(賃上げ特例の適用者のみ) |
それぞれの内容を詳しくみていきましょう。
補助対象事業としての適格性
1つ目の補助対象事業者としての適格性は、以下の2点から判断されます。
| ①公募要領に記載する補助対象者、補助対象事業の要件、補助対象事業等を満たすか。 ②補助事業により高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値が設定されており、かつその目標値の実現可能性が高い事業計画となっているか。 |
補助対象者の要件については、満たさない場合は不採択となるため、一番に確認しておきたい点となります。
「より高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値」においては、基準値よりも高い目標値を設定すると評価される傾向にありますが、その達成可能性もしっかり審査されるため注意が必要です。
新規事業の新市場性・高付加価値性
2つ目の新規事業の新市場性・高付加価値性では、①もしくは②の選択制となります。
| ①補助事業で取り組む新規事業により製造又は提供する、製品又は商品若しくはサービスのジャンル・分野の、社会における一般的な普及度や認知度が低いものであるか。 ②同一のジャンル・分野の中で、当該新製品等が、高水準の高付加価値化・高価格化を図るものであるか |

本項目のイメージとしては、まず新市場性の有無が審査され、該当しない場合でも高付加価値性が認められれば、補助対象となる仕組みです。つまり、新市場性と高付加価値性のどちらかを満たしている必要があります。
新規事業の有望度
3つ目の新規事業の有望度では、以下の3点が審査されます。
| ① 補助事業で取り組む新規事業が、自社がアプローチ可能な範囲の中で、継続的に売上・利益を確保できるだけの市場規模を有しているか。成長が見込まれる市場か。 ② 補助事業で取り組む新規事業が、自社にとって参入可能な事業であるか。 ③ 競合分析を実施した上で、顧客ニーズを基に、競合他社と比較して、自社に明確な優位性を確立する差別化が可能か |
この項目では、新事業に十分な市場規模があるか、また他社と差別化されているかが重視されます。そのため、代替製品やサービス、競合の調査が重要なポイントとなります。
事業の実現可能性
4つ目の事業の実現可能性では、以下の4点が審査されます。
| ①事業化に向けて、中長期での補助事業の課題を検証できているか。また、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールや課題の解決方法が明確かつ妥当か。 ②最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。 ※複数の事業者が連携して申請する場合は連携体各者の財務状況等も考慮します。 ③事業経費や補助対象経費が真に事業目的の達成のために必要な額か。 ④補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保出来ているか。第三者に過度に依存している事業ではないか。過度な多角化を行っているなど経営資源の確保が困難な状態となっていないか。 |
この項目では、スケジュールや財務状況等から、事業を実現できる可能性があるかどうかが問われます。計画が机上の空論にならないよう、現実的かつ具体的な構想としてまとめることが大切です。
公的補助の必要性
5つ目の公的補助の必要性では、以下の4点が審査されます。
| ① 川上・川下への経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、新たな雇用を生み出す事業等、国が補助する積極的な理由がある事業はより高く評価。 ② 補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性、事業の継続可能性等)が高いか。 ③ 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。 ④ 国からの補助がなくとも、自社単独で容易に事業を実施できるものではないか。 |
この項目では、補助金を活用することにどれほどの社会的・経済的な意義があるかが重視されます。国が補助する積極的な理由があれば高く評価されますが、「補助がなくても事業ができるのではないか」と判断されると、評価が下がる可能性があります。
政策面
6つ目の政策面では、以下の4点が審査されます。
| ① 経済社会の変化に伴い、今後より市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野に進出することを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。 ② 先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、我が国の経済成長・イノベーションを牽引し得るか。 ③ ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理等により差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。 ④ 地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより、大規模な雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。 |
※ 以下に選定されている事業者や承認を受けた計画がある事業者は審査で考慮されます。
・地域未来牽引企業
・地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画
この項目では、現在の政策や経済状況を踏まえて、今後市場の成長に貢献する事業であるかどうかが問われます。また、大規模災害等の復興を含め、地域の特性を活かした事業による経済効果や雇用創出が期待できることも重要な判断要素です。
なお、「地域未来牽引企業」「地域未来投資促進法に基づく地域経済牽引事業計画」に選定されている事業者や、承認を受けた計画がある事業者は、審査で有利になる可能性があります。
大規模な賃上げ計画の妥当性
7つ目の大規模な賃上げ計画の妥当性は、賃上げ特例の適用者のみが対象となる項目です。この項目では、以下の2点が審査されます。
| ① 大規模な賃上げの取組内容が具体的に示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか。 ② 一時的な賃上げの計画となっておらず、将来にわたり、継続的に利益の増加等を人件費に充当しているか。 |
賃上げ特例を適用すると補助上限額が大幅に上乗せされますが、一方で厳しめの賃上げ要件の達成が求められるため、しっかり検討した事業計画を立てる必要があります。単なる一時的な引き上げではなく、将来的にも持続可能な仕組みとして取り組むことが大切です。
加点される項目
中小企業新事業進出補助金では、申請時点で以下の項目の要件を満たしていれば、一定程度の加点対象となります。数日で取得できる制度もあるため、要件を満たせるものがないか確認してみましょう。
パートナーシップ構築宣言
パートナーシップ構築宣言は、サプライチェーン全体の付加価値向上を目指し、親事業者と下請事業者の望ましい取引を推進する制度です。
【内容・要件】
・「発注者」側の立場から、「代表権のある者の名前」で宣言する
・「パートナーシップ構築宣言」で宣言を公表
【取得までの期間】
約10日
くるみん認定
くるみん認定とは、次世代育成支援対策推進法に基づき、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けられる制度です。
【内容・要件】
・トライくるみん、くるみん又はプラチナくるみんのいずれかの認定を受ける
【取得までの期間】
行動計画によって数ヶ月以上かかる場合あり
えるぼし認定
えるぼし認定とは、女性の活躍推進に積極的に取り組む優良企業を認定する制度です。
【内容・要件】
・えるぼし1~3段階又はプラチナえるぼしのいずれかの認定を受ける
【取得までの期間】
数ヶ月以上かかる場合あり
アトツギ甲子園に出場
アトツギ甲子園とは、後継者達が、先代経営者がこれまで構築してきた人材やノウハウ等を活かしながら、新規事業アイデアを発表する制度です。
【内容・要件】
・アトツギ甲子園のピッチ大会に出場した事業者を評価
・ピッチ大会に「出場済み」であることが要件
健康経営優良法人認定制度
健康経営優良法人認定制度とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考える取り組みを支援する制度です。
【内容・要件】
・健康経営優良法人2025の認定を受けている企業を評価
・2025年度の募集はすでに終了しており、今から申請はできない
技術情報管理認証制度
技術情報管理認証制度とは、国が策定した基準に基づき、重要な情報を適切に管理できている企業を認証する制度です。
【内容・要件】
・技術情報管理認証制度の認証を受けている事業者を評価
【取得までの期間】
早くて1~2ヶ月
成長加速化マッチングサービスで挑戦課題を登録
成長加速化マッチングサービスとは、中小企業と支援機関をつなぎ、中小企業の成長や挑戦を支えるマッチングプラットフォームです。
【内容・要件】
・成長加速化マッチングサービスへの会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者を評価
【取得までの期間】
・最短1日程度
※GビズID取得までに1週間程度必要
再生事業者
中小企業活性化協議会等から支援を受けており、以下のいずれかに該当している事業者は加点の対象となります。
①再生計画等を「策定中」
②再生計画等を「策定済」かつ応募締切日から遡って3年以内に再生計画等が成立等した者
該当する事業者は、申請時に事業再生支援を受けた支援機関等による確認書の提出が必要です。
減点される項目
中小企業新事業進出補助金では、計画した事業内容や事業者の状況によっては、審査で減点対象となる場合があります。減点される項目は、以下の3点です。
| ①加点項目要件未達事業者 過去に、中小企業庁が所管する補助金で賃上げに関する加点を受けて採択され、申請した加点項目要件を達成できなかった場合、未達後の18か月間は大幅に減点(災害・盗難等、正当な理由がある場合を除く) ②過剰投資の抑制 特定の期間に、類似のテーマ・設備等に関する申請が集中している場合、一時的流行による過剰投資誘発の恐れがあるため、別途審査 ③他の補助事業の事業化が進展していない事業者 過去に中小企業新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金を受給しており、事業化が進展していなければ減点 ④「新事業進出指針の手引き」の「3-5.評価が低くなる例」に該当する場合 中小企業による大胆な新事業進出を支援する観点から、下記のような事例は相対的に評価が低くなる場合があります。 ・事業者の事業実態に照らして容易に製造等が可能な新製品等を製造等する場合 ・既存の製品等に容易な改変を加えた新製品等を製造等する場合 ・既存の製品等を単に組み合わせて新製品等を製造等する場合 |
上記の内、②の「過剰投資の抑制」に関しては、事業者側では把握できないことも多いですが、①の「加点項目要件未達事業者」と③の「他の補助事業の事業化が進展していない事業者」に関しては、過去の補助金で無理な事業計画を立てていなければ避けられる内容です。
今後の補助金申請で不利にならないためにも、達成できる可能性を考慮しながら、中小企業新事業進出補助金の事業計画を検討する必要があります。
オンラインの口頭審査を受ける場合も
中小企業新事業進出補助金では、申請事業者が一定の基準を満たすと、必要に応じてオンラインで口頭審査を受ける場合もあります。オンライン審査の対象になったにもかかわらず、受験しなかった場合、不採択となるため注意が必要です。
審査は1事業者15分程度で、Zoom等を使用して実施されます。申請者等の代表となる人が参加し、経営コンサルタントや社外顧問等の同席は認められません。
オンライン審査は必ず受けるとは限りませんが、審査対象となった場合を考慮し、パソコン・カメラ・マイク等の機材がそろっているか、通信環境に問題はないか申請前に確認しておくことをおすすめします。
まとめ
中小企業新事業進出補助金は、事業の新たな挑戦を後押しする制度である一方、審査のポイントや注意点も多くあります。加点や減点の要素、そしてオンライン審査の可能性まで、事前に把握しておくことで、申請の精度を高めることができます。
補助金を活用したいと考える方は、自社の事業内容や過去の実績を見直しながら、無理のない現実的な計画を立てて取り組むことが大切です。
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