新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、令和8年(2026年)6月29日に第1回公募が始まった新しい補助金です。革新的新製品・サービス枠、新事業進出枠、グローバル枠の3つの申請枠が設けられています。
本補助金は、旧制度である「中小企業新事業進出補助金」や「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」の内容を引き継いでいますが、異なる補助金とされています。これらの補助金の利用実績は、本補助金の減点項目や補助対象外要件に関わるほか、審査の観点や加点項目の構成にも違いがあるため、過去に申請経験のある方も改めて確認が必要です。
本記事では、第1回公募要領に基づき、書面審査の項目、加点・減点項目、オンラインの口頭審査、採択後の実地検査について解説します。
・公募開始:令和8年(2026年)6月29日(月)
・申請受付開始:令和8年(2026年)9月30日(水)
・申請締切:令和8年(2026年)10月30日(金)18:00
・採択発表:令和9年(2027年)1月頃(予定)
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この記事の目次
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金について
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金に申請すると、外部有識者からなる審査委員会による書面審査が行われます。また、一定の基準を満たした事業者には、必要に応じてオンラインでの口頭審査が実施されます。
書面審査の項目は、大部分が3枠共通です。枠によって異なるのは、次の2点だけです。
・グローバル枠は「事業の実現可能性」の中で、輸出先の国・地域特有のリスクや法規制・商習慣の把握が追加で問われる
また、加点項目14項目のうち12項目は3枠共通で、輸出関連の2項目のみグローバル枠限定です。自社が申請する枠でどの項目が審査されるのかを押さえたうえで、事業計画書を作成しましょう。
書面審査の項目
書面審査の観点は、以下のとおりです。| 項目 | 主な内容 | 対象 |
|---|---|---|
| ①補助対象事業としての適格性 | 公募要領に記載する要件を満たすか。経費が事業目的の達成のために真に必要かつ合理的な額か | 全枠 |
| ②経営戦略との整合性 | これまでの事業活動との一貫性があり、経営戦略上に明確に位置付けられているか | 全枠 |
| ③事業の実現可能性 | 目標値の実現可能性、実施体制、顧客ターゲットの明確性、スケジュール、財務状況等 | 全枠 |
| ④新規事業の新市場性・高付加価値性 | 新製品等のジャンル・分野の普及度・認知度が低いか、または高水準の高付加価値化を図るものか | 新事業進出枠のみ |
| ⑤公的補助の必要性 | 経済波及効果や費用対効果が高く、国が補助する積極的な理由があるか | 全枠 |
| ⑥政策面 | 日本経済の構造転換や地域経済の成長に資するか | 全枠 |
| ⑦大規模な賃上げ計画の妥当性 | 賃上げの取組内容が具体的で、算出根拠が妥当か | 賃上げ特例の適用希望者のみ |
それぞれの内容を詳しくみていきましょう。
補助対象事業としての適格性
1つ目の適格性では、以下の2点が審査されます。
| ①「補助対象事業の要件」を満たすか。 ②事業経費や補助対象経費が事業目的の達成のために真に必要かつ合理的な額か。 |
補助対象者・補助対象事業の要件を満たさない場合は不採択となるため、最初に確認しておきたい項目です。本補助金では、付加価値額要件(年平均成長率4.0%以上)や賃上げ要件(一人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上)など、基本要件の水準が従来の新事業進出補助金やものづくり補助金とは異なる点にも注意が必要です。
本制度の詳しい要件については、以下の記事でご確認ください。
あわせて読みたい:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?最大9,000万円 第1回公募・統合後の変更点を解説
また、経費の必要性・妥当性もこの項目で審査されます。事業計画に対して過度な経費を計上していると評価を下げる要因になります。
経営戦略との整合性
2つ目の経営戦略との整合性は、本補助金で明確に位置付けられた審査の観点です。従来の新事業進出補助金の書面審査にはなかった項目で、以下の3点が審査されます。
| ①これまでの事業活動や過去の取組との一貫性を有し、経営戦略上に明確に位置付けられたものであるか。事業の転換がある場合は合理的な理由が示されているか。 ②外部環境と自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の強み・弱みを踏まえ、本事業が競争優位性を発揮できる内容となっているか。 ③現状の課題が適切に認識されており、その解決に向けて高付加価値化・成長につながる実効性の高い事業計画となっているか。 |
新規事業が「思いつき」ではなく、会社全体の経営戦略の延長線上にあることを示す必要があります。既存事業の分析(SWOT分析等)から新規事業への流れを一貫したストーリーとして描くことが重要です。
事業の実現可能性
3つ目の事業の実現可能性では、以下の5点が審査されます。
| ①高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値が設定されており、その実現可能性が高い事業計画となっているか。 ②補助事業を適切に遂行し得る体制(人材、事務処理能力等)を確保できているか。第三者に過度に依存していないか。 ③製品・サービスの価値、顧客ターゲットの明確性、ニーズの裏付け、選ばれる理由が整理されているか。 ④事業化に向けた課題の検証、遂行方法、スケジュールが明確かつ妥当か。 ⑤補助事業を適切に遂行できる財務状況が確保されているか。金融機関等からの十分な資金調達が見込めるか。 |
付加価値額・賃上げの目標値は、基準値を上回る高い値を設定すると「高さの度合いと実現可能性」の両面から評価されます。高すぎる目標は未達時の補助金返還リスクにも直結するため、実現可能な水準で設計することが大切です。
なお、グローバル枠では、輸出先の国・地域に特有のリスクや、文化、法規制、商習慣の違いを十分に把握していることが追加で求められます。
新規事業の新市場性・高付加価値性(新事業進出枠のみ)
4つ目の新市場性・高付加価値性は、新事業進出枠だけに適用される審査項目で、①と②の選択制です。
| ①補助事業で取り組む新規事業により製造等する新製品等のジャンル・分野の、社会における一般的な普及度や認知度が低いものであるか。 ②同一のジャンル・分野の中で、当該新製品等が、高水準の高付加価値化・高価格化を図るものであるか。 |
まず新市場性の有無が審査され、該当しない場合でも高付加価値性が認められれば対象となる仕組みです。どちらで申請すべきかの判断は、次のセクションで解説します。
新市場性と高付加価値性、どちらで申請すべきか選び方
中小企業庁・中小機構が公表している「新市場・高付加価値事業の考え方」では、審査のイメージが次のフローで示されています。
・NOの場合、「高付加価値事業」であるか?→YESなら対象
・どちらにも該当しない場合→対象外
選び方の目安は以下のとおりです。
| 申請区分 | 向いているケース・必要な準備 |
|---|---|
| 新市場性で申請 | 製品・サービスの属するジャンル自体がまだ世の中に普及していない場合(例:水素発生装置の部材、就職プラットフォーム等の新興分野)。 普及度・認知度の低さを裏付ける客観的なデータ・統計の提示が必須です。 |
| 高付加価値性で申請 | ジャンル自体は一般的(焼肉店、ネイルサロン等)だが、業界の相場と比べて高水準の高付加価値化・高価格化を図る場合。 ジャンル内の一般的な付加価値・相場価格の調査と、高付加価値化の源泉となる自社の価値・強みの分析が必要です。 |
注意したいのが、ジャンル・分野の区分の仕方です。区分の際には、製品等の「性能」「サイズ」「素材」「価格帯」「地域性」「業態」「顧客層」「効果」等の要素を排除する必要があります。
| 新規事業の内容 | 適切な区分 | 不適切な区分 |
|---|---|---|
| 高精密小型医療機器部品の製造 | 医療機器部品 | 高精密小型医療機器部品 |
| 東京都港区で高級焼肉店を経営 | 焼肉店 | 東京都港区の高級焼肉店 |
| 無人店舗でのセルフネイルサロンを経営 | ネイルサロン | 無人店舗でのセルフネイルサロン |
「高級」「無人店舗」などの特色を含めて狭く区分し、「このジャンルは普及していない」と主張することは認められません。事業の特色は「事業の実現可能性」等の他の審査項目で考慮されるため、新市場性の主張が難しい場合は、無理をせず高付加価値性で申請する方が現実的なケースも多いでしょう。
出典:新市場・高付加価値事業の考え方(中小企業庁・中小機構)
公的補助の必要性
5つ目の公的補助の必要性では、以下の4点が審査されます。
| ①川上・川下への経済波及効果が大きい事業や社会的インフラを担う事業、新たな雇用を生み出す事業、将来的に国内地域での新たな需要を創出する事業など、国が補助する積極的な理由がある事業はより高く評価。 ②補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性、事業の継続可能性等)が高いか。 ③先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献し得る事業か。 ④国からの補助がなくとも、自社単独で容易に事業を実施できるものではないか。 |
「補助がなくても実施できるのではないか」と判断されると評価が下がる可能性があります。補助金を活用する社会的・経済的な意義を示すことがポイントです。
政策面
6つ目の政策面では、以下の3点が審査されます。
| ①経済社会の変化(関税による各産業への悪影響、中東情勢の緊迫化による原油由来製品・資材の供給途絶や高騰等を含む)に伴い、今後より市場の成長や生産性の向上が見込まれる分野に進出することを通じて、日本経済の構造転換を促すことに資するか。 ②地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等への経済的波及効果により、大規模な雇用の創出や地域の経済成長(大規模災害からの復興等を含む)を牽引する事業となることが期待できるか。 ③地域ごとに戦略的に形成していく産業クラスターと整合し、その形成・拡大に資するか。 |
第1回公募要領では、関税や中東情勢といった足元の経済社会の変化が例示として明記されました。ただし、電気代・ガソリン代・ガス代など一般的なエネルギー価格や通常の物価の高騰は対象外とされている点に注意が必要です。
大規模な賃上げ計画の妥当性
7つ目の大規模な賃上げ計画の妥当性は、賃上げ特例(補助上限額の引上げ)の適用を希望する事業者のみが対象です。
| ①大規模な賃上げの取組内容が具体的に示されており、その記載内容や算出根拠が妥当なものとなっているか。 ②一時的な賃上げの計画となっておらず、将来にわたり継続的に利益の増加等を人件費に充当しているか。人件費だけでなく設備投資等にも適切に充当し、企業の成長が見込まれるか。 |
賃上げ特例では、一人当たり給与支給総額を年平均6.0%以上(基準の3.5%+2.5%)増加させること等が求められ、未達の場合は上限引上げ分の補助金の全額返還を求められます。持続可能な仕組みとして設計できるか、慎重に検討しましょう。
加点される項目
本補助金では、申請締切日時点で以下の要件を満たしていれば、審査で一定程度の加点対象となります。第1回公募の加点項目は全部で14項目です。
| 加点項目 | 対象枠 | 準備の目安 |
|---|---|---|
| ①パートナーシップ構築宣言 | 全枠 | 約10日 |
| ②くるみん認定 | 全枠 | 数か月以上 |
| ③えるぼし認定 | 全枠 | 数か月以上 |
| ④健康経営優良法人2026 | 全枠 | 認定済みの事業者のみ |
| ⑤再生事業者 | 全枠 | 支援機関の確認書が必要 |
| ⑥経営革新計画 | 全枠 | 承認まで1~2か月程度 |
| ⑦事業継続力強化計画 | 全枠 | 認定まで1か月程度 |
| ⑧DX認定 | 全枠 | 申請から2か月程度 |
| ⑨J-Startup/J-Startup地域版 | 全枠 | 選定済みの事業者のみ |
| ⑩新規輸出1万者支援プログラム | グローバル枠のみ | 最短即日登録 |
| ⑪日本の食輸出1万者支援プログラム | グローバル枠のみ | 最短即日登録 |
| ⑫研究開発費・試験研究費の計上 | 全枠 | 前期までの計上実績が必要 |
| ⑬地域別最低賃金引上げ | 全枠 | 賃金台帳の提出が必要 |
| ⑭事業場内最低賃金引上げ(63円以上) | 全枠 | 賃金台帳の提出が必要 |
従来の新事業進出補助金の加点項目にあった「アトツギ甲子園」「技術情報管理認証制度」「成長加速化マッチングサービス」は、本補助金の第1回公募要領の加点項目には含まれていません。一方で、経営革新計画・事業継続力強化計画・DX認定など、ものづくり補助金でも採用されていた項目と共通する加点が多く含まれています。従来の補助金の感覚のまま準備を進めないよう注意しましょう。
以下、主な項目の内容を解説します。
パートナーシップ構築宣言
サプライチェーン全体の付加価値向上を目指し、親事業者と下請事業者の望ましい取引を推進する制度です。
・「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて、令和8年1月1日に更新されたひな形を利用して宣言を公表していること
※旧ひな形のまま公表している場合は加点対象外となるおそれがあります。過去に宣言済みの事業者も、最新ひな形への更新を確認しましょう。
くるみん認定
次世代育成支援対策推進法に基づき、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定を受けられる制度です。
・トライくるみん、くるみん、プラチナくるみんのいずれかの認定を受けていること
※くるみん認定を受けている場合、基本要件の「子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組み要件」が免除されるメリットもあります。
えるぼし認定
女性の活躍推進に積極的に取り組む優良企業を認定する制度です。
・えるぼし1~3段階またはプラチナえるぼしのいずれかの認定を受けていること
詳しくはこちら:くるみん・えるぼし認定とは?補助金加点の対象制度と申請方法を解説【2026年】
健康経営優良法人認定制度
従業員等の健康管理を経営的な視点で考える取り組みを支援する制度です。
・健康経営優良法人2026に認定されている事業者を評価
再生事業者
中小企業活性化協議会等から支援を受けており、以下のいずれかに該当する事業者は加点対象となります。
・再生計画等を「策定済」かつ申請締切日から遡って3年以内に再生計画等が成立等した者
該当する事業者は、申請時に支援機関等による確認書の提出が必要です。
経営革新計画
経営革新計画とは、中小企業等経営強化法に基づき、新たな事業活動による経営向上を目指す中小企業の計画を都道府県知事等が承認する制度です。承認を受けると、低利融資や保証の特例など各種支援策の対象にもなります。
・申請締切日時点で有効な「経営革新計画」の承認を取得していること
申請時には経営革新計画承認書の写し(計画期間が記載されていない場合は経営革新計画書の写し)の提出が必要です。計画期間が確認できない書類を添付した場合は加点されません。
事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画
事業継続力強化計画とは、中小企業が策定する防災・減災の事前対策に関する計画を経済産業大臣が認定する制度です。複数の事業者が連携して取り組む場合は「連携事業継続力強化計画」として認定を受けられます。
・申請締切日時点で有効な「(連携)事業継続力強化計画」の認定を取得していること
DX認定
DX認定とは、情報処理促進法に基づき、デジタル技術による変革(DX)推進の準備が整った事業者を国が認定する制度です。
・申請締切日時点で有効な「DX認定」を取得していること
J-Startup、J-Startup地域版
J-Startupとは、世界で活躍が期待されるスタートアップ企業を選定し、官民一体で集中支援する経済産業省のプログラムです。J-Startup地域版は、各地域の経済産業局等が地域発の有望スタートアップを選定するものです。
・「J-Startup」または「J-Startup地域版」に選定された事業者を評価
新規輸出1万者支援プログラム/日本の食輸出1万者支援プログラム(グローバル枠のみ)
いずれも、輸出に挑戦する中小企業等を国が官民一体で後押しするプログラムです。新規輸出1万者支援プログラムは輸出に新たに取り組む事業者を、日本の食輸出1万者支援プログラムは農林水産物・食品の輸出に取り組む事業者を対象としており、グローバル枠に申請する場合のみ加点対象となります。
・各プログラムのポータルサイトで登録が完了していること
・登録は申請事業者自身で行うこと
研究開発費・試験研究費の計上
認定制度への申請ではなく、決算や税務申告における研究開発費・試験研究費の計上実績を評価する加点です。日頃から研究開発に取り組んでいる事業者が対象となります。
・申請締切の前期までに、会計上の研究開発費または税務上の試験研究費を定められた書類において計上し、研究開発を推進していること
申請時には、過去4年以内に税務申告に使用した「別表六(十)」の写し、または研究開発費が計上された「販売費及び一般管理費明細書」の写し等の提出が必要です。
地域別最低賃金引上げに係る加点
地域別最低賃金の引上げの影響を受けやすい事業者、すなわち最低賃金に近い水準で雇用する従業員の割合が高い事業者を評価する加点です。
・2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員の30%以上である月が3か月以上あること
申請時には、所定様式に加えて該当3か月分の賃金台帳の写しの提出が必要です。なお、この要件は補助率を2/3に引き上げる「地域別最低賃金引上げ特例」と共通ですが、もともと補助率が2/3の事業者(革新的新製品・サービス枠の小規模企業者等・再生事業者、グローバル枠)は特例の適用対象外で、加点のみの申請となります。加点のみ適用の場合、事業場内最賃水準要件は除外されません。
事業場内最低賃金引上げに係る加点
自社の事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を、すでに大きく引き上げている事業者を評価する加点です。
・2025年7月と応募申請直近月の事業場内最低賃金を比較し、全国目安で示された額(63円以上)の賃上げをしていること
申請時には、所定様式に加えて2025年7月分と応募申請直近月分の賃金台帳の写しの提出が必要です。
賃金関連の加点(⑬⑭)は裏付け資料の整備がカギになります。申請直前に賃金台帳を慌てて整理すると抜け漏れが起きやすいため、該当可能性がある事業者は早めに準備しましょう。
減点される項目
第1回公募では、以下の5つの減点項目が定められています。「補助金複数回利用者」「補助要件未達事業者」など、過去の補助金利用実績を厳しく見る項目が並んでいる点が特徴です。
| 減点項目 | 内容 |
|---|---|
| ①加点項目要件未達事業者 | 中小企業庁が所管する補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金、事業再構築補助金、省力化投資補助金等)で賃上げに関する加点を受けて採択されたにもかかわらず、加点項目要件を達成できなかった場合、未達報告から18か月間は大幅に減点(災害等の正当な理由がある場合を除く) |
| ②過剰投資の抑制 | 特定の期間に類似のテーマ・設備等に関する申請が集中している場合、一時的流行による過剰投資誘発の恐れがあるため別途審査を行い、過剰投資と判断された申請は大幅に減点 |
| ③他の補助事業の事業化が進展していない事業者 | 過去に新事業進出補助金・事業再構築補助金・ものづくり補助金を受給しており、直近の事業化状況報告における事業化段階が3段階以下の場合は減点 |
| ④補助金複数回利用者 | 申請締切日から過去3年間に、ものづくり補助金または新事業進出補助金で交付決定を1回受けている事業者は減点 |
| ⑤補助要件未達事業者 | ものづくり補助金または新事業進出補助金の第1回公募以降、交付決定を受けて事業を実施したものの、賃上げ要件・事業場内最賃水準要件を達成できなかった事業者は減点 |
特に注意したいのが④です。過去3年以内にものづくり補助金や新事業進出補助金の交付決定を1回受けているだけで減点対象となります(2回以上の場合はそもそも補助対象外)。これらの補助金を活用した事業者が続けて本補助金に申請する場合、この減点を前提に、より完成度の高い事業計画が求められることになります。
②の「過剰投資の抑制」は事業者側で把握しにくい項目ですが、①③⑤は過去の補助金で無理のない事業計画を立てていれば避けられる内容です。今後の申請で不利にならないためにも、達成可能な目標値の設定が重要です。
申請内容によりオンラインの口頭審査を受ける場合がある
本補助金では、一定の審査基準を満たした事業者の中から、必要に応じてオンラインの口頭審査が行われます。口頭審査の概要は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 審査内容 | 事業計画の適格性、優位性、実現可能性、継続可能性等 |
| 審査方法 | Zoom等のオンライン形式。会議用URLは事務局が発行 |
| 所要時間 | 1事業者15分程度(開始5分前から接続テストのため入室) |
| 予約 | 電子申請が完了した事業者から随時、受験日時の予約案内がメールで届く(先着順) |
口頭審査の対象になったにもかかわらず受験しなかった場合は不採択となるため、注意が必要です。
予約は先着順のため、申請完了が締切間際になると選べる日時が限られます。早期に電子申請を完了させることが、口頭審査対策の第一歩です。
対応できるのは申請事業者自身に限られる
口頭審査に対応できるのは、申請事業者自身に限られます。外部支援者の対応や同席はできません。
ただし「代表者本人だけ」という意味ではなく、以下に該当する方であれば対応可能です。
・法人代表者
・株式会社取締役(社外取締役を除く)
・応募時の労働者名簿に記載されている「担当者」もしくは「経理担当者」(勤務実態がない者を除く)
事業計画作成支援者、経営コンサルタント、社外顧問など、申請事業者以外の対応や同席は一切認められません。同席が確認された場合は不採択となる場合があり、審査対応者が申請事業者自身でないことが判明した場合は、採択・交付決定の取消や補助金返還の対象にもなります。
外部支援者に事業計画書の作成を丸投げしていると、口頭審査で答えられません。経営者自身が、なぜ市場性があるのか、どうやって賃上げ原資を確保するのかを自分の言葉で説明できる状態にしておくことが不可欠です。
事前準備と当日の注意点
口頭審査を受ける場合は、以下の準備が求められます。
・PC内蔵もしくは外付けのWebカメラ、マイク、スピーカー(イヤフォン・ヘッドセットは使用不可)
・顔写真付きの身分証明書(運転免許証、パスポート、マイナンバーカード等)
・会社の会議室等、審査に適した環境(公共スペースは不可)
審査中はカメラをオンにし、上半身(顔と耳と肩が明瞭に判別できる状態)を映す必要があります。音声は録音され、審査中の質問は受け付けられません。また、口頭審査の内容を他者に口外することは禁止されており、口外が判明した場合は不採択や採択取消の対象となります。
採択後は実地検査が行われる
審査を通過して採択されても、それで終わりではありません。本補助金では、補助事業が適切に実施されていることを確認するため、事務局による実地検査が行われます。
実績報告時の実地検査(確定検査)
補助事業を完了したときは、その日から起算して30日を経過した日、または補助事業完了期限日のいずれか早い日までに実績報告書を提出する必要があります。期限までに提出されなかった場合、交付決定は取り消されます。
実績報告後は、補助金額の確定にあたり、原則として事務局が実地検査を行います。検査では取得財産や帳簿類の確認が行われ、確認ができない場合は当該財産等に係る金額は補助対象となりません。正当な理由なく検査への協力を拒否した場合は、交付決定が取り消されます。
補助金支払い後の抜き打ち検査
補助金の支払い以降も、事業の進捗状況等の確認のため、会計検査院や事務局等が抜き打ちで実地検査に入ることがあります。検査の結果、補助金の返還命令等が出された場合は必ず従わなければなりません。
実地検査に備えて、見積書・契約書・納品書・請求書・振込記録などの証憑類や帳簿を整理し、取得財産をすぐに確認できる状態にしておくことが大切です。補助事業に係る経理の証拠書類は、補助金を受給した年度の終了後5年間の保存義務があります。
また、補助事業完了後は5年間(計6回)にわたり事業化状況報告の提出が必要で、賃上げ要件等の未達が確認された場合には補助金の返還を求められることがあります。採択後の管理体制まで含めて準備しておきましょう。
よくある質問
審査基準や加点項目は、申請枠によって違う?
書面審査の観点は大部分が3枠共通です。「新規事業の新市場性・高付加価値性」のみ新事業進出枠限定で、グローバル枠では輸出先特有のリスク等の把握が追加で問われます。加点は14項目中12項目が共通で、輸出関連の2項目のみグローバル枠限定です。
過去にものづくり補助金や新事業進出補助金に採択されていても申請できる?
申請自体は可能です。ただし、過去3年間に交付決定を合計2回以上受けている場合は補助対象外となり、1回の場合も減点対象となります。また、申請締切日から16か月以内に採択された事業者や、補助事業を実施中の事業者も対象外です。
加点項目はいつまでに満たせばいい?
すべての加点項目は申請締切日時点で満たしている必要があります。パートナーシップ構築宣言(約10日)や輸出支援プログラムへの登録(最短即日)など短期間で対応できるものもあるため、申請準備と並行して取得可能な項目がないか確認しましょう。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、従来の新事業進出補助金やものづくり補助金とは異なる補助金であり、審査の観点・加点項目・減点項目の構成にも違いがあります。ポイントは以下のとおりです。
・「経営戦略との整合性」が審査の観点として明確に位置付けられ、既存事業との一貫性が問われる
・加点は14項目。従来の新事業進出補助金にあった一部の加点は含まれず、経営革新計画・DX認定・賃金関連の加点などが並ぶ
・減点は5項目。過去3年以内にものづくり補助金・新事業進出補助金の交付決定を1回受けているだけで減点対象になる点に注意
・口頭審査に対応できるのは申請事業者自身(個人事業主本人、法人代表者、取締役、労働者名簿記載の担当者等)のみ。外部支援者の対応・同席は一切不可
加点の積み上げと減点の回避、そして経営者自身が語れる事業計画づくりが採択への近道です。自社の状況を見直しながら、無理のない現実的な計画で申請に臨みましょう。
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