「毎月の電気代が上がり続けていて、どう対処すればいいかわからない」「省エネをしたいのに、何から手をつければよいのか見当もつかない」――こうした悩みを抱える中小企業の経営者は少なくありません。
長引く円安と燃料価格の高止まりを背景に、電気代はここ数年で急騰しています。にもかかわらず、帝国データバンクの調査では、電気料金の増加分を販売価格やサービス料金に「全く価格転嫁できていない」と回答した企業が57.2%にのぼりました。
そんな状況に対応するために国が用意しているのが「省エネ診断」です。省エネの専門家が工場・ビル・店舗等に訪問し、エネルギーの使用状況を分析したうえで、具体的な改善策を提案してくれます。しかも、診断費用の大部分は国が補助するため、事業者の自己負担は最低6,006円(税込)から。費用ゼロで実施できる省エネ対策を提案してもらえるケースもあります。
この記事では、省エネ診断の必要性・メリットから、診断メニューの種類・料金・対象者・申込方法まで、中小企業の経営者や担当者の方に向けてわかりやすく解説します。
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この記事の目次
なぜ今、省エネ診断が必要なのか?
中小企業にとって、エネルギーコストはもはや「経営上の最重要課題」のひとつです。では、なぜ今、省エネ診断が求められているのでしょうか。大きく3つの理由があります。
① 電気代・光熱費の高騰が続いている
2022年以降、ウクライナ情勢に端を発した国際的なエネルギー価格の高騰と円安が重なり、日本の電気料金は急上昇しました。国の補助策が一時的に負担を抑えてきましたが、根本的な解決にはなっていません。再生可能エネルギー賦課金も年々増加しており、2026年度は1kWhあたり4.18円と、制度開始以来、初めて4円台に到達しました。
長期的に見ても、電気代の上昇トレンドが続く可能性は高く、企業が自ら省エネに取り組むことが不可欠です。
② エネルギーコストを価格転嫁できない中小企業が多い
大企業と異なり、中小企業・小規模事業者はエネルギーコストの増加分を取引先への価格転嫁によって吸収することが難しい立場です。光熱費の上昇がそのまま利益の圧迫につながるため、省エネによるコスト削減が直接的に経営改善へとつながります。
③ 脱炭素・GX対応が企業に求められている
国は2050年カーボンニュートラルの実現を目標に掲げており、企業にも脱炭素への対応が求められています。省エネに取り組むことは、CO₂排出量の削減にも直結します。将来的に炭素税やカーボンプライシング(CO₂排出量に価格をつける仕組み)が本格導入された場合、省エネ対策をしていない企業はさらなるコスト負担を強いられる可能性があります。今から取り組みを始めることが、企業の将来を守ることにもつながります。
省エネ診断とは?制度の概要と3つのメニュー
省エネ診断(正式名称:中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費 地域エネルギー利用最適化・省エネルギー診断拡充事業)は、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)が実施する国の支援制度です。省エネの専門家が工場・ビル・店舗等を訪問し、エネルギーの使用状況を調査・分析のうえ、改善提案を行います。診断費用は国が大部分を補助するため、事業者の負担は大幅に抑えられています。診断メニューは大きく3種類あり、事業所の規模や目的に応じて選択できます。
・制度名:省エネ診断・伴走支援(中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費)
・実施主体:一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)
・対象:中小企業基本法に定める中小企業者(法人・個人事業主)
・補助対象:専門家による省エネ診断費用(診断費用の大部分を国が補助)
・根拠:令和7年度補正予算
① ウォークスルー診断
工場・事業所を専門家が実際に歩きながら(ウォークスルー)、目視や簡易計測によってエネルギーの使用状況を確認し、省エネ改善項目を提案するメニューです。「まずは気軽に診断を受けてみたい」という事業者に最適です。
プランは2種類あります。
| ウォークスルー診断の料金プラン | ||
|---|---|---|
| プラン | 内容 | 料金(税込) |
| 工場・事業所全体プラン | 工場・事業所内にある全ての設備を診断 | 16,016円〜51,051円(規模により変動) |
| 設備単位プラン(1設備) | 空調・照明など特定設備のみ診断 | 6,006円 |
| 設備単位プラン(2設備) | 2設備を組み合わせて診断 | 12,012円 |
診断対象設備は空調設備・照明設備・ボイラ・給湯器・コンプレッサ・受変電設備・デマンド・冷凍冷蔵設備・生産設備・給排水・排水処理・工業炉など、幅広い設備に対応しています。
ウォークスルー診断の主なメリット
- ニーズに応じた診断が可能(全体プランと設備単位プランを選択できる)
- 費用ゼロでできる省エネ取組(運用改善案)を提案してもらえる
- 省エネ取組の立案支援が受けられる
② IT診断
各種センサー(電力・圧力・流量・温度等)を活用して計測データを収集し、設備・プロセスごとのエネルギー使用状況を「見える化」したうえで、詳細な改善提案を行うメニューです。「データに基づいて精度の高い省エネ対策を実施したい」「中長期的な設備投資計画を立てたい」という事業者に向いています。
| IT診断の概要 | |
|---|---|
| 料金(税込) | 上限220,000円(実施内容により変動) |
| 内容 | 各種センサーで計測・見える化・分析し、省エネ課題やプロセス改善について提案 |
IT診断の主なメリット
- エネルギーロスの原因を特定し、ムダを根本から削減できる
- エネルギー使用状況が可視化され、改善ポイントが明確になる
- 現場の実態に即した、より詳細な省エネ提案を受けられる
③ 伴走支援
省エネ診断を受けた後、設備更新の仕様検討から補助金等の申請サポート、設備導入後の効果検証・定着支援まで、専門家が継続的にサポートするメニューです。「診断を受けたあと、実際の省エネ施策をどう進めればよいか不安」という方に最適です。
| 伴走支援の概要 | |
|---|---|
| 料金(税込) | 最大51,051円(実施内容により変動) |
| 主な支援内容例 | 省エネ診断後の継続的支援、設備更新の仕様検討・効果検証、エネルギーロスの計測・把握、金融機関への融資サポート、補助金申請のサポート |
※ウォークスルー診断の申込時に、伴走支援も併せて申込が可能です。
※診断機関によって実施可能なメニューは異なります。申込ページで詳細をご確認ください。
省エネ診断を受けるメリット

省エネ診断には、コスト削減以外にもさまざまなメリットがあります。特に中小企業にとって魅力的な点を整理します。
メリット① 低コストで専門家の知見を活用できる
通常、省エネコンサルタントに依頼すれば数十万円かかるケースも珍しくありません。しかし省エネ診断は国が費用を補助するため、ウォークスルー診断なら最低6,006円(税込)から利用できます。自社でエネルギーの専門知識を持たなくても、プロの視点から改善提案を受けられるのは大きな魅力です。
メリット② 費用ゼロでできる省エネ対策を見つけられる
診断の結果、設備投資なしで実施できる「運用改善」の提案を受けられるケースが多くあります。たとえばエアコンの設定温度の見直し・圧縮空気の漏れ修繕・照明の消灯ルール見直しなど、すぐに実行できる取組です。費用をかけずに光熱費を削減できる可能性があります。
メリット③ 設備投資の優先順位が明確になる
「どの設備を更新すれば最も効果が大きいか」を、データに基づいて把握できます。限られた経営資源を最も効果の高い投資に集中できるため、ROI(投資対効果)の高い省エネ対策を計画的に進めることが可能です。
メリット④ 補助金申請のサポートも受けられる
伴走支援では、省エネ設備の導入に使える補助金(省エネ・非化石転換補助金など)の申請サポートも実施しています。診断から補助金申請まで、同じ専門家がワンストップで支援してくれるため、申請実務の負担が大きく軽減されます。
メリット⑤ 脱炭素・GXへの第一歩を踏み出せる
省エネ診断は、自社のエネルギー使用状況を「見える化」する最初のステップです。取引先や金融機関から脱炭素対応を求められている企業にとっても、客観的なデータに基づく省エネ計画の策定につながります。
省エネ診断の対象者・要件
支援対象者
省エネ診断・伴走支援を受けられるのは、原則として申込時点で中小企業基本法に定める中小企業者(法人・個人事業主)です。業種ごとの資本金・従業員数の基準は以下の通りです。
| 中小企業の定義(業種別) | ||
|---|---|---|
| 業種 | A. 資本金の額または出資の総額 | B. 常時使用する従業員数 |
| 製造業・建設業・運輸業・その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
A・Bのいずれかの条件に該当する法人・個人事業主が対象です。また、会社法上の会社に該当しない事業者の場合は、前年度もしくは直近1年間のエネルギー使用量(原油換算値)が1,500kl未満の事業所であることが条件です。
中小企業者であっても、年間エネルギー使用量(原油換算値)が1,500kl以上の事業所の場合は、SIIが提供する「みなし大企業に該当しないことの宣誓書」を提出することで受診が可能です。
申込から診断完了までの流れ
省エネ診断の申込から完了までは、以下の7ステップで進みます。公式サイトから診断機関を検索して申込むことができます。

| 省エネ診断の流れ(ウォークスルー診断の場合) | |
|---|---|
| STEP 1 検索 | 公式サイトで事業所所在地・希望する診断を選択して診断機関を検索 |
| STEP 2 申込み | 希望する診断機関を選択し、申込みをする |
| STEP 3 調整 | 省エネ診断の内容・日程を診断機関と調整 |
| STEP 4 契約 | 診断機関と診断に関する契約を締結 |
| STEP 5 受診 | 専門家が事業所を訪問し、省エネ診断を実施 |
| STEP 6 報告 | 診断報告会にて省エネに関する提案を受け、取組内容を検討 |
| STEP 7 支払い | 診断機関より請求書を受領し、自己負担分を支払い |
省エネ診断に関するよくある質問
省エネ診断は無料で受けられますか?
完全無料ではありませんが、国が診断費用の大部分を補助するため、事業者の自己負担は最低6,006円(税込・設備単位プラン1設備の場合)から利用できます。工場・事業所全体プランでも、規模によって16,016円〜51,051円(税込)の自己負担で受診できます。
個人事業主でも省エネ診断を受けられますか?
はい、受けられます。法人だけでなく、中小企業基本法に定める中小企業者に該当する個人事業主も対象です。業種ごとの資本金・従業員数の基準を満たしていれば申込可能です。
どんな設備が診断対象になりますか?
ウォークスルー診断では、空調設備・照明設備・ボイラ・給湯器・コンプレッサ・受変電設備・デマンド・冷凍冷蔵設備・生産設備・給排水・排水処理・工業炉など幅広い設備が対象です。工場・事業所全体プランでは、施設内すべての設備を診断します。
ウォークスルー診断とIT診断はどう違いますか?
ウォークスルー診断は専門家が目視・簡易計測で現状を把握し、改善提案を行うシンプルなメニューです。一方、IT診断は各種センサーを用いて詳細な計測データを収集・分析するため、より精度の高い省エネ提案が得られます。費用はIT診断の方が高くなりますが(上限220,000円・税込)、大規模な省エネ投資を検討している場合や、エネルギーロスの原因を正確に特定したい場合に適しています。
伴走支援とは何ですか?
伴走支援とは、省エネ診断を受けた後も専門家が継続的にサポートするメニューです。設備更新の仕様検討や効果検証、補助金申請のサポート、金融機関への融資サポートなど、省エネ取組を「診断」から「実行・定着」まで一貫して支援します。料金は最大51,051円(税込)で、ウォークスルー診断と同時に申込むことも可能です。
省エネ診断の結果、設備投資が必要になった場合、補助金は使えますか?
はい、使える場合があります。省エネ設備への投資に対しては、省エネ・非化石転換補助金など国の補助金を活用できるケースがあります。伴走支援では補助金申請のサポートも行っているため、診断結果をもとにスムーズに申請準備を進めることが可能です。
省エネ診断はどこに申込めばよいですか?
公式サイト(https://shoeneshindan.jp/guide/search/)から、事業所の所在地と希望する診断を選択して診断機関を検索・申込できます。地域によって対応している診断機関が異なります。
大企業は省エネ診断を受けられませんか?
原則として、対象は中小企業基本法に定める中小企業者(法人・個人事業主)です。ただし、中小企業者であっても年間エネルギー使用量(原油換算値)が1,500kl以上の事業所の場合は、SIIが提供する「みなし大企業に該当しないことの宣誓書」を提出することで受診が可能です。
診断を受けたら必ず設備投資をしなければなりませんか?
いいえ、設備投資は必須ではありません。診断では費用ゼロでできる「運用改善」の提案も行います。たとえばエアコンの設定温度の見直しや照明の消灯ルールの徹底など、すぐに実行できる取組も提案されます。設備投資については、提案内容を踏まえたうえで事業者が自身で判断できます。
省エネ診断の問い合わせ先はどこですか?
令和7年度補正事業のお問い合わせ先は、ナビダイヤル「0570-000-680」(IP電話用:042-303-0413)です。受付時間は10:00〜12:00・13:00〜17:00(土日祝を除く)です。お電話での問い合わせには通話料がかかりますのでご注意ください。
まとめ
省エネ診断は、エネルギーコストの高騰に直面する中小企業が、低コストで専門家の知見を借りながら光熱費削減に取り組める、非常に使い勝手のよい制度です。
・最低6,006円(税込)から専門家に診断してもらえる
・費用ゼロでできる省エネ改善策を提案してもらえる
・ウォークスルー診断・IT診断・伴走支援の3メニューから選択可能
・対象は中小企業者(法人・個人事業主)
・補助金申請サポートや脱炭素対応にもつながる
「電気代が高くて経営を圧迫している」「省エネをしたいが何から始めればよいかわからない」と感じている中小企業の経営者・担当者の方は、まず省エネ診断を受けてみることをおすすめします。専門家のアドバイスをもとに、無理なくコスト削減と脱炭素対応を進めることができます。
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