出産費用の無償化は、2026年9月に入って「いつやるか」から「中身をどう決めるか」の段階へ進みました。厚生労働省は2026年8月26日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会で「妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会」の新設を示し、了承されています。この内容は2026年9月3日の第214回社会保障審議会・医療保険部会にも報告され、検討会は2026年10月初旬にキックオフ、12月頃にとりまとめというスケジュールが公表されました。
土台となる法律はすでに動いています。正常分娩の費用を公的な仕組みでまかなう新制度を盛り込んだ「健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)」は、2026年5月29日に参議院本会議で可決・成立し、2026年6月5日に公布されました。
ただし「無償化」という言葉から思い浮かべるイメージと、実際の制度の中身にはズレがあります。出産に関する部分の施行は「公布後2年以内に政令で定める日」とされ、遅くとも2028年6月4日まで。しかも無償になるのは正常分娩の標準的な費用だけで、帝王切開・無痛分娩・付加サービスの扱いは別です。
この記事では、出産費用無償化について、2026年9月時点の最新スケジュール、無料になるもの・ならないもの、出産育児一時金50万円に代わる「分娩費」と「出産時一時金」の中身、帝王切開・無痛分娩の扱い、「ずるい」「不公平」と言われる理由、そして制度開始までに使える現行支援まで整理します。
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この記事の目次
出産費用無償化はいつから?【2026年6月5日公布・施行は2028年6月4日まで】
出産費用無償化の施行日は、2026年9月時点でまだ確定していません。根拠法である健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)は2026年6月5日に公布されましたが、出産に関する給付体系の見直しの施行日は「公布後2年以内に政令で定める日」と定められているためです。逆算すると、遅くとも2028年6月4日までには施行される計算になります。
| 時点 | できごと |
|---|---|
| 2026年4月24日 | 衆議院厚生労働委員会が附帯決議を採択(周産期医療体制の確保などを要請) |
| 2026年5月28日 | 参議院厚生労働委員会が附帯決議を採択 |
| 2026年5月29日 | 参議院本会議で可決・成立 |
| 2026年6月5日 | 令和8年法律第31号として公布 |
| 2026年8月26日 | 中医協総会が新検討会の設置を了承 |
| 2026年9月3日 | 第214回社会保障審議会・医療保険部会に報告 |
| 2026年10月初旬 | 検討会キックオフ(月1〜2回開催・構成員15名) |
| 2026年12月頃 | 検討会のとりまとめ |
| 公布後2年以内 | 施行(2028年6月4日まで/2027年度中の可能性も残る) |
新設された「妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会」では、出産に係る診療・ケアの体制や内容、施設基準を検討する際の着眼点などを議論します。2026年10月から11月にかけて分娩取扱施設の実態調査の結果が順次報告され、12月頃のとりまとめを経て中医協で具体的な単価設定に入る流れです。
「出産費用無償化」と「出産の保険適用」は何が違う?
結論から言えば、「出産費用無償化」と「出産の保険適用」は、ほぼ同じ意味で使われています。ただし制度の作りは、病気やケガと同じ3割負担の保険診療にするものではありません。
新制度では、保険診療以外の分娩(正常分娩の対応)について国が分娩1件当たりの基本単価を設定し、保険者から医療機関へ直接支払う「現物給付化」を行います。妊婦は窓口でお金を払わずに済む仕組みです。「保険適用=3割負担が発生する」と誤解されがちですが、正常分娩の標準的な費用については自己負担が生じない設計になっています。
2026年・2027年に出産予定なら無償化に間に合う?
2026年中に出産する方は、無償化には間に合いません。2026年9月時点で施行日は未定であり、2026年度中に無償化がスタートすることはないためです。
2027年度の出産については、施行時期と医療機関の対応状況の両方に左右されます。新制度は施設の選択により当分の間は現行の出産育児一時金を続けることも認められるため、施行後であっても、出産する施設が新制度に移行しているかどうかで扱いが変わります。焦る必要はありません。現行の出産育児一時金50万円をはじめ、後半で紹介する支援制度を組み合わせて活用しましょう。
出産費用無償化で何が無料になる?対象になるもの・ならないもの
出産費用無償化で自己負担がゼロになるのは、正常分娩の標準的な費用のみです。「出産にまつわるすべての費用が無料になる」わけではありません。2026年9月時点で示されている整理は次のとおりです。| 区分 | 自己負担 | 内容 |
|---|---|---|
| 正常分娩の基本費用 | 0円(無償) | 国が分娩1件当たりの基本単価を設定し、保険者から施設へ直接支給 |
| 帝王切開・吸引分娩など | 3割負担(現状維持) | もともと公的医療保険が適用されている医療行為 |
| 付加サービス | 全額自己負担 | 個室差額、お祝い膳、エステ、記念写真撮影など |
| 無痛分娩の追加費用 | 全額自己負担(当面) | 麻酔科医の確保と地域差が課題。自治体独自の助成あり |
| 妊婦健診 | 別枠で「標準額」を設定 | 母子保健法を改正し、公費負担と見える化の仕組みを整備 |
帝王切開は出産費用無償化の対象?手出しは増える?
帝王切開は出産費用無償化の対象外です。帝王切開はもともと公的医療保険が適用される医療行為で、自己負担は3割。無償化の議論が始まる前から通常の保険診療として扱われてきました。
正常分娩の自己負担がゼロになる一方で帝王切開には3割負担が残るため、「帝王切開のほうが手出しが多くなるのでは」という指摘があります。実務上の負担は、次の3点で軽くなります。
- 月の医療費が所得区分ごとの上限額を超えた分は、高額療養費制度で払い戻される
- 民間の医療保険に加入していれば、手術給付金・入院給付金の対象になるケースが多い
- 改正法では、保険診療の一部負担金などの負担軽減を図るため、全ての妊婦に定額の現金給付(出産時一時金)を行う仕組みが新設される
つまり帝王切開でも、新しく創設される現金給付を一部負担金に充てられる設計です。ただし金額は政令で定めることになっており、2026年9月時点では未定です。
無痛分娩は保険適用される?東京都は最大10万円を助成
無痛分娩の追加費用(麻酔費用)は、当面は無償化の対象外で全額自己負担となる見通しです。相場は10万〜20万円程度で、正常分娩費用に上乗せして請求されるのが一般的です。背景には、無痛分娩を安全に実施できる麻酔科医が全国的に不足していること、実施可能な施設に大きな地域差があることがあります。
もっとも、国会の附帯決議では「麻酔を実施する医師の確保や安全管理体制の標準化など、安全で質の高い無痛分娩の提供体制を確保するための方策を講ずること」が求められており、環境整備は今後の課題として明示されています。
自治体独自の助成はすでに始まっています。東京都は2025年10月1日以降の出産を対象に、無痛分娩費用を上限10万円まで助成(所得制限なし、都が公表する対象医療機関での出産、申請は出産日の翌日から1年以内)。岡山県備前市など、都道府県以外でも独自助成を設ける自治体が増えています。
個室差額・お祝い膳は無料になる?「見える化」が義務化へ
個室・特別室の差額ベッド代やお祝い膳といった付加サービスは、無償化後も引き続き全額自己負担です。無償化されるのは、あくまで分娩対応の標準的な費用に限られます。
そのうえで改正法は、施設が提供するサービスの内容・費用等に関する情報提供を義務付けました。妊産婦が自分のニーズに応じて納得感を持ってサービスを選べるようにするためです。厚生労働省のウェブサイト「出産なび」も活用され、施設ごとの費用やサービス、新制度に対応しているかどうかを事前に確認できる方向で整備が進みます。
出産育児一時金50万円はなくなる?新しい「分娩費」と「出産時一時金」
「出産一時金がなくなる」「出産育児一時金は廃止される」という検索が増えていますが、正確には廃止ではなく出産育児一時金に代わる新しい給付方式(分娩費・出産時一時金)へ切り替わるというのが改正法の内容です。改正法は国民健康保険法などに「分娩費及び出産時一時金の創設」を規定しています。
| 項目 | 現行(出産育児一時金) | 新制度 |
|---|---|---|
| 給付の形 | 原則50万円の現金給付(直接支払制度で施設へ) | 分娩費=国が定めた基本単価を保険者から施設へ直接支給(現物給付) |
| 妊婦の負担 | 費用が一時金を超えた分は自己負担 | 正常分娩の標準的な費用は自己負担なし |
| 金額の決め方 | 法令で一律50万円 | 基本単価は告示事項。体制・役割等を評価した加算を設定 |
| 現金給付 | 出産育児一時金がその役割 | 出産時一時金として全ての妊婦に定額を給付(金額は政令事項) |
| 経過措置 | ー | 施設の選択により、当分の間は施設単位で現行制度の適用も可能 |
ポイントは、現金給付そのものが消えるわけではないという点です。新制度では、分娩費(現物給付)とは別に、保険診療の一部負担金など出産時の費用負担を軽くするため、全ての妊婦に定額の現金給付(出産時一時金)が支給されます。
分娩費・出産時一時金はいくらになる?
金額は2026年9月時点で未定です。分娩費の基本単価は厚生労働大臣の告示で、出産時一時金の金額は政令で定めることとされており、いずれもこれから決まります。
金額設定の考え方については、国会の附帯決議で方向性が示されています。医療保険財政および保険料負担への影響を十分に考慮すること、地域における分娩施設の経営実態を踏まえた標準的費用の設定と加算措置を講じること、物価動向や人件費などの経済状況の変化に応じて不断に見直すこと。この3点が、今後の中医協での議論の前提になります。
施設によって新制度と現行制度が分かれる?
分かれます。改正法は、施設の選択により当分の間は施設単位で現行の出産育児一時金の適用を受けることも可能としているためです。同じ時期に出産しても、施設によって「新制度で窓口負担ゼロ」と「従来どおり一時金」に分かれる期間が生じます。
この経過措置について、参議院厚生労働委員会の附帯決議は「できる限り多くの分娩施設が新たな給付体系を選択するよう促す」「妊産婦の選択に不利益・不公平が生じたり、保険者に過度な事務負担が生じたりすることのないようにする」と求めています。出産する施設がどちらの方式かは、事前に確認しておくと安心です。
妊婦健診の費用も無償になる?「標準額」の新設で自己負担を圧縮
妊婦健診は出産費用無償化とは別枠ですが、同じ改正法で経済的負担を軽くする仕組みが入りました。母子保健法を改正し、国が「望ましい基準」に関して診療報酬等を勘案した「標準額」を定め、市町村と医療機関がこれを勘案するよう努めるという内容です。施行は出産の給付体系と同じく公布後2年以内とされています。
背景にあるのは、公費負担と自己負担の大きなばらつきです。令和7年4月時点で、妊婦1人当たりの公費負担額は全国平均11.4万円、最低8.6万円から最高14.1万円まで開きがあります。医療機関での妊婦健診(国が告示する回数・検査項目の範囲内)の自己負担額は、約3割超の施設で0円である一方、約1割は3万円以上という状況です。
さらに国は、妊婦が適切に選択できるよう、医療機関の協力を得て妊婦健診の内容・費用等の情報を収集・公表することとされました。医療機関等が独自に行う検査やサービスは自己負担が原則である点は変わりません。
なぜ出産費用無償化が必要になった?3つの構造的な理由
出産費用無償化が法制化された背景には、出産費用の上昇・地域格差・一時金では足りない世帯の多さという3つの問題があります。少子化対策の柱として、これらを一体で解決する必要があると整理されました。
①出産費用が上がり続け、令和6年度は全国平均約52万円
正常分娩の全国平均出産費用は、令和6年度で約52万円(51万9,805円)。前年度から約1万3,000円増え、現行の出産育児一時金50万円を全国平均で約2万円上回りました。この金額は室料差額や産科医療補償制度の掛金などを除いた額です。
出産育児一時金は2023年4月に42万円から50万円へ引き上げられましたが、その後も費用上昇が続きました。「一時金を上げても妊婦の負担軽減につながらない」という課題が、給付方式そのものを見直す直接の理由になっています。
②同じ正常分娩でも東京都と熊本県で約1.6倍の差
令和6年度の都道府県別の平均出産費用は、最も高い東京都が64万8,309円、最も低い熊本県が40万4,411円。その差は約24万円、倍率にして約1.6倍です。
同じ正常分娩でありながら、住む地域だけで自己負担がこれほど変わる状況は公平性の観点から見過ごせない、という議論が続いてきました。全国同水準の基本単価を設定する新制度には、この地域格差を是正する狙いがあります。
③出産費用が一時金を超える世帯が約45%
出産費用が出産育児一時金(50万円)を超えるケースは、全体の約45%にのぼります。とくに東京・神奈川・大阪など都市部では、50万円では足りないケースが半数以上を占めます。
子どもを迎える喜びのはずが、退院時の追加負担で家計が圧迫される。この現状を変えるため、政府は「標準的な出産費用の自己負担ゼロ」を打ち出しました。
出産費用無償化のメリット・デメリット|「ずるい」「不公平」と言われる理由
出産費用無償化には大きな期待がある一方、産科医療の現場からは慎重な意見も出ています。SNSでは「ずるい」「独身や子なし世帯が損をする」といった声も見られます。論点を整理します。
・正常分娩の標準的な費用について、窓口での支払いが不要になる
・全国同水準の基本単価により、地域による費用の不公平感が解消される
・サービス内容と費用の情報提供が義務化され、退院時に請求書を見て驚くケースが減る
・経済的理由で出産をためらっていた家庭の後押しになる可能性がある
・全国一律の基本単価が低めに設定されると、産科医療機関の経営が悪化するおそれ
・分娩取扱施設はすでに減少傾向。撤退が進めば「近くで産めない」問題が深刻化しかねない
・財源は社会保険料が中心のため、現役世代の保険料負担につながる
こうした懸念に対し、衆参両院の附帯決議は「周産期医療提供体制の整備は国のインフラ整備に関わる問題であり、公費による支援を含む必要な対応策を検討すること」と明記しました。妊婦の経済的負担の軽減と地域の産科医療体制の維持をどう両立させるかが、施行に向けた最大の論点です。
「ずるい」「不公平」という声にどう答えるのか
「子育て世帯だけ優遇されている」「独身や子なし世帯の保険料で子育て家庭を支えるのは不公平」という受け止めは、制度が保険料を財源とする以上、避けて通れない論点です。政府側は、少子化は社会全体で受け止めるべき課題であり、次世代の担い手を増やすことが将来の年金・医療を支えるという考え方を示しています。また、全国同水準の給付にすることで「どこで産むか」による不公平を解消する点も強調されています。
なお、子ども・子育て支援金(いわゆる「独身税」と呼ばれることのある拠出金)は2026年度から段階的に徴収が始まっており、こちらは出産費用無償化とは別の制度です。負担の全体像を知りたい方は関連記事もあわせてご覧ください。
制度開始までに使える出産関連の支援制度【2026年9月時点】
無償化の施行は早くても2027年度、遅ければ2028年6月までです。いま出産を控えている方は、現時点で使える支援制度を確実に押さえておきましょう。主な制度は次のとおりです。
| 制度名 | 支給額・内容 |
|---|---|
| 出産育児一時金 | 子ども1人につき原則50万円。直接支払制度で施設へ支払われる |
| 妊婦のための支援給付 | 妊娠届出時と出産後に各5万円(計10万円) |
| 出産手当金 | 健康保険の被保険者が産休を取得した場合、標準報酬日額の3分の2相当を支給 |
| 医療費控除 | 1年間の自己負担が10万円超なら、確定申告で所得税が還付される |
| 高額療養費制度 | 帝王切開などで医療費が高額になった場合、月の自己負担に上限 |
| 東京都無痛分娩費用助成 | 上限10万円。2025年10月1日以降の出産、都が公表する対象医療機関が条件 |
| 018サポート(東京都) | 都内在住0〜18歳に月額5,000円(年間最大6万円) |
| 国民年金の育児期間保険料免除 | 2026年10月開始。自営業・フリーランスの国民年金保険料を免除 |
自治体独自の上乗せ助成は必ずチェックする
見落とされがちなのが、市区町村独自の出産費用助成です。国の制度に上乗せされるため、対象になれば数万円から数十万円の差が出ます。代表的な例を挙げます。
- 東京都港区:出産費用の助成金算出上限額は1人81万円(双子129万円、三つ子177万円)。出産育児一時金等を差し引いた額を助成し、1人の出産で最大31万円。申請は出生日から1年以内
- 神奈川県横浜市:出産費用助成金として子ども1人につき最大9万円。健康保険組合の付加給付がある場合はその額を差し引き。申請は出産日の翌日から1年以内、子育て応援アプリ「パマトコ」から
いずれも申請期限が「出産から1年以内」と区切られており、知らずに過ぎてしまうと受け取れません。お住まいの市区町村の公式サイトで「出産」「妊娠」と検索し、独自制度の有無を出産前に確認しておきましょう。
出産費用無償化に関するよくある質問
出産費用無償化はいつから始まりますか?2026年からですか?
2026年からではありません。根拠となる健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)は2026年5月29日に成立し、2026年6月5日に公布されました。出産に係る給付体系の見直しの施行日は「公布後2年以内に政令で定める日」とされているため、遅くとも2028年6月4日までに施行されます。2026年9月時点で具体的な施行日は決まっておらず、2026年度中に無償化が始まることはありません。現在妊娠中の方は、引き続き現行の出産育児一時金50万円などを利用します。
出産育児一時金50万円はなくなりますか?廃止されますか?
廃止ではなく、出産育児一時金に代わる新しい給付方式に切り替わります。具体的には、国が定めた分娩1件当たりの基本単価を保険者から施設へ直接支給する「分娩費」(現物給付)と、全ての妊婦に定額を支給する「出産時一時金」(現金給付)が創設されます。さらに、施設の選択により当分の間は施設単位で現行の出産育児一時金の適用を受けることも可能とされているため、施行後しばらくは新制度の施設と従来どおりの施設が混在します。出産予定の医療機関がどちらの方式かを事前に確認しておくと安心です。
分娩費や出産時一時金はいくらもらえますか?
2026年9月時点では金額は決まっていません。分娩費の基本単価は厚生労働大臣の告示で、出産時一時金の金額は政令で定めることとされており、これから具体化されます。国会の附帯決議では、金額設定にあたって医療保険財政および保険料負担への影響を十分考慮すること、地域における分娩施設の経営実態を踏まえた標準的費用の設定と加算措置を講じること、物価動向や人件費の変化に応じて不断に見直すことが求められています。2026年10月に始まる検討会の議論と、その後の中医協での審議で水準が固まる見通しです。
帝王切開は無償化の対象ですか?手出しが増えますか?
帝王切開は無償化の対象外です。帝王切開はもともと公的医療保険が適用されている医療行為で、自己負担は3割となります。入院期間が長くなりやすいため、正常分娩より自己負担額が大きくなる可能性はあります。ただし月の医療費が所得区分ごとの上限額を超えた分は高額療養費制度で払い戻され、民間の医療保険に加入していれば手術・入院給付金の対象になるケースが多くあります。加えて新制度では、保険診療の一部負担金などの軽減を図るために全ての妊婦へ定額の現金給付(出産時一時金)が行われます。
無痛分娩は保険適用・無償化されますか?
無痛分娩の追加費用(麻酔費用)は、当面は無償化の対象外で全額自己負担となる見通しです。相場は10万〜20万円程度で、正常分娩費用に上乗せして請求されます。麻酔科医の確保が全国的に難しく、実施可能な施設に地域差が大きいことが理由です。国会の附帯決議では、麻酔を実施する医師の確保や安全管理体制の標準化など、安全で質の高い無痛分娩の提供体制を確保する方策を講じるよう求められています。東京都は2025年10月1日以降の出産を対象に上限10万円の助成を行っており、自治体独自の助成も広がっています。
妊婦健診の費用も無償になりますか?
出産費用無償化とは別枠で、同じ改正法により妊婦健診の負担軽減の仕組みが整備されます。母子保健法を改正し、国が「望ましい基準」に関して診療報酬等を勘案した「標準額」を定め、市町村と医療機関がこれを勘案するよう努めることとされました。施行は公布後2年以内です。令和7年4月時点で妊婦1人当たりの公費負担額は全国平均11.4万円(最低8.6万円〜最高14.1万円)、医療機関での自己負担額は約3割超の施設で0円である一方、約1割は3万円以上とばらつきがあります。医療機関独自の検査やサービスは引き続き自己負担が原則です。
2027年・2028年に出産予定です。無償化に間に合いますか?
施行日が「公布後2年以内に政令で定める日」であるため、2028年6月4日までには施行されます。2027年度中に施行される可能性は残っていますが、2026年9月時点では確定していません。加えて、施設の選択により当分の間は現行の出産育児一時金を続けられる経過措置があるため、施行後であっても出産する施設が新制度に移行しているかどうかで扱いが変わります。2027年出産予定の方は現行制度を前提に準備し、2028年以降に出産予定の方は施設の対応状況を事前に確認するのが確実です。
出産費用の全国平均はいくらですか?地域差はどれくらいありますか?
令和6年度の正常分娩の全国平均出産費用は約52万円(51万9,805円)で、前年度から約1万3,000円増加し、現行の出産育児一時金50万円を約2万円上回っています。都道府県別では最も高い東京都が64万8,309円、最も低い熊本県が40万4,411円で、その差は約24万円、倍率にして約1.6倍です。なおこの金額は、室料差額や産科医療補償制度の掛金などを除いた額です。出産費用が出産育児一時金を超えるケースは全体の約45%で、都市部では半数以上を占めます。
出産費用無償化のデメリットや「ずるい」と言われる理由は何ですか?
主に3つの課題が指摘されています。①全国一律の基本単価が低めに設定されると産科医療機関の経営が悪化するおそれ、②分娩取扱施設の減少がさらに進み「近くで産めない」問題が深刻化する可能性、③財源が社会保険料中心のため現役世代の負担増につながりかねない、という点です。SNSでは「独身や子なし世帯の保険料で子育て家庭を支援するのは不公平」「帝王切開だと手出しが増える」という声もあります。衆参両院の附帯決議は、周産期医療提供体制の整備は国のインフラ整備に関わる問題であり公費による支援を含む対応策を検討するよう求めており、妊婦の負担軽減と産科医療体制の維持の両立が最大の論点です。
東京都や横浜市は独自に出産費用を助成していますか?
自治体独自の助成はすでに実施されています。東京都港区は出産費用の助成金算出上限額を1人81万円(双子129万円、三つ子177万円)とし、出産育児一時金等を差し引いた額を助成するため、1人の出産で最大31万円を受け取れます。神奈川県横浜市は出産費用助成金として子ども1人につき最大9万円を支給し、健康保険組合の付加給付がある場合はその額を差し引きます。東京都は無痛分娩費用について上限10万円の助成を行っています。いずれも申請期限は出産から1年以内が原則なので、早めに手続きしましょう。
今から出産する場合、どんな支援制度が使えますか?
2026年9月時点で使える主な制度は、①出産育児一時金(原則50万円)、②妊婦のための支援給付(妊娠届出時と出産後に各5万円・計10万円)、③出産手当金(健康保険の被保険者が産休を取得した場合)、④医療費控除(年間の自己負担が10万円超で確定申告により還付)、⑤高額療養費制度(月の自己負担に上限)、⑥自治体独自の助成(東京都港区は最大31万円、横浜市は最大9万円など)、⑦東京都無痛分娩費用助成(上限10万円)、⑧018サポート(東京都在住0〜18歳に月額5,000円)、⑨2026年10月開始の国民年金の育児期間保険料免除(自営業・フリーランス向け)です。市区町村の公式サイトで「出産」「妊娠」を検索し、独自制度を確認しましょう。
出産費用無償化の今後のスケジュールはどうなりますか?
2026年8月26日の中医協総会で「妊娠・出産・産後における診療やケアの内容等に関する検討会」の新設が了承され、2026年9月3日の第214回社会保障審議会・医療保険部会にも報告されました。検討会は構成員15名で月1〜2回程度開催され、2026年10月初旬にキックオフ、10月から11月にかけて出産に係る診療・ケアの体制や内容、施設基準の着眼点などを議論し、分娩取扱施設の実態調査の結果も順次報告されます。2026年12月頃にとりまとめを行い、その後に中医協で具体的な単価設定などの議論が進む流れです。
まとめ
出産費用の無償化は、2026年9月時点で「実施が決まった制度」であり、いまは金額と運用の細部を詰める段階にあります。押さえておきたいポイントは次のとおりです。
・2026年10月に検討会がキックオフし、12月頃にとりまとめ。金額は告示・政令でこれから決まる
・出産育児一時金は「分娩費」(現物給付)と「出産時一時金」(全妊婦への現金給付)に置き換わる
・当分の間は施設の選択で現行制度も継続。新旧の方式が施設ごとに分かれる
・無償になるのは正常分娩の標準的な費用のみ。帝王切開・無痛分娩・付加サービスは自己負担が残る
・産科医療体制の維持と保険料負担のバランスが、施行に向けた最大の論点
いま妊娠中の方、これから出産を迎える方は、現行の支援制度と自治体独自の上乗せ助成を確実に受け取ることが最優先です。特に自治体の助成は「出産から1年以内」の期限があるものが多く、知らないまま期限切れになるケースが少なくありません。制度の最新動向を追いながら、いま使えるお金を取りこぼさないようにしましょう。
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