高年齢者、障害者、母子家庭の母など、一般的な採用活動では雇用が難しいとされる方を採用する中小企業に、1人あたり最大240万円の助成金が支給される制度があります。
それが、特定求職者雇用開発助成金の「特定就職困難者コース」です。4つあるコースのうち最も支給額が大きく、利用実績も多い主力コースで、対象者の属性や労働時間、企業規模に応じて60万円〜240万円が支給されます。
本記事では、支給額・対象条件・申請手順から最新の変更点まで、中小企業の人事・経営者向けにわかりやすく解説します。
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合わせて読みたい:特定求職者雇用開発助成金とは?全4コースと対象者・申請方法を解説【2026年・令和8年
この記事の目次
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは?
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、高年齢者や障害者、母子家庭の母など、就職が特に困難な方をハローワーク等の紹介により継続して雇用する事業主に対して助成する制度です。雇入れ後に支払った賃金相当額の一部を助成することで、就職困難者の雇用機会を拡大することを目的としています。
大まかな流れは、①ハローワーク等に求人を出し、②紹介された対象者を雇用、③6か月ごとに支給申請というシンプルなものです。中小企業が重度障害者等(重度の身体・知的障害者、45歳以上の障害者、精神障害者)を週30時間以上で雇用し、3年間継続雇用した場合、1人あたり総額240万円(6か月ごとに40万円×6回)が支給されます。
2026年度の変更点
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、2026年度(令和8年度)以降、以下の点が変更されています。
| 対象 | 変更内容 |
|---|---|
| 高年齢者(60歳以上) | 令和8年5月1日以降は、ハローワーク等で個別支援を受けている方のみが対象 |
| 全コース共通 | 令和8年4月1日以降の申請分から、賃金台帳の提出が必須 |
① 高年齢者(60歳以上)の要件厳格化(令和8年5月1日〜)
令和8年5月1日以降、60歳以上の方をハローワーク等の紹介で雇い入れる場合、「ハローワーク等において就労に向けた個別支援を受けていること」が新たな要件として追加されました。
従来は「雇入れ時に60歳以上であること」のみで対象となっていましたが、今後は就労支援を受けている求職者に対象が絞り込まれます。
また、「特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること」を明示した職業紹介を行った場合のみ支給申請が可能となるため、ハローワーク等への求人申込み時に本助成金の利用を希望する旨を伝えておくことが重要です。
② 賃金台帳の提出が必須に(令和8年4月1日〜)
令和8年4月1日以降の申請分からは、賃金台帳の提出が確認できない場合、不支給となります。賃金台帳は労働基準法に基づく法定帳簿で、氏名・賃金計算期間・労働日数・労働時間数・時間外/休日/深夜労働の時間数・基本給や手当の種類と金額などの記載が必要です。
対象となる労働者
本コースの対象者は、以下のいずれかに該当する65歳未満(高年齢者区分は60歳以上)の求職者です。
| 区分 | 備考 |
|---|---|
| 高年齢者(60歳以上) | 令和8年5月1日以降は、ハローワーク等で個別支援を受けていることが必要 |
| 母子家庭の母等・父子家庭の父 | 児童扶養手当の受給歴がある方 |
| 身体障害者 | 身体障害者手帳所持 |
| 知的障害者 | 療育手帳所持 |
| 精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳所持 |
| 重度障害者等 | 重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者、精神障害者 |
| ウクライナ避難民 | 令和4年5月30日〜当分の間、65歳未満 |
| 補完的保護対象者 | 令和5年12月1日〜当分の間 |
なお、障害者手帳を持たない発達障害や難治性疾患のある方は、別コースである「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」の対象となります。
対象となる事業主
対象となる事業主の主な要件は、以下のとおりです。
| ・雇用保険の適用事業主であること、ハローワーク等の紹介により対象労働者を雇い入れること |
| ・対象労働者を雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れ65歳以上に達するまで継続雇用しかつ継続して2年以上雇用すること |
| ・対象労働者の雇入れ日の前後6か月間に事業主都合で従業員を解雇(勧奨退職を含む)していないこと |
| ・特定受給資格者となる離職理由で離職した被保険者数が雇入れ日の被保険者数の6%を超えていないこと |
| ・労働保険料を滞納していないこと |
| ・対象労働者の出勤簿・賃金台帳・労働者名簿を整備・保管していること |
有期雇用労働者として雇用する場合は、雇用契約書に「自動更新」であることの記載が必要です(令和5年10月1日〜)。就業規則の解雇要件を超える更新条件が付されている場合は対象外となります。
なお、以下の場合は助成の対象外です。
・代表者や役員の3親等以内の親族を雇い入れる場合
・過去3年以内に雇用・派遣・請負などで関係があった方を雇い入れる場合
・対象期間中の賃金を支払期日までに支払っていない場合(時間外手当等を含む)
支給額
助成金は、助成対象期間を6か月ごとに区分した「支給対象期」ごとに一定額が支給されます。支給額は対象労働者の区分・労働時間・企業規模に応じて、以下のとおりです。
| 労働時間 | 対象労働者の区分 | 中小企業 | 大企業 | 助成期間(中小/大) |
|---|---|---|---|---|
| 短時間労働者以外 (週30時間以上) | 高年齢者・母子家庭の母等 | 60万円 | 50万円 | 1年/1年 |
| 身体・知的障害者(重度等を除く) | 120万円 | 50万円 | 2年/1年 | |
| 重度障害者等 | 240万円 | 100万円 | 3年/1年半 | |
| 短時間労働者 (週20〜30時間未満) | 高年齢者・母子家庭の母等 | 40万円 | 30万円 | 1年/1年 |
| 身体・知的・精神障害者 | 80万円 | 30万円 | 2年/1年 |
※支給対象期ごとの支給額は、支給対象期に対象労働者が行った労働に対して支払った賃金額を上限とします。
※「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方を指します。
※「重度障害者等」とは、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者、精神障害者を指します。
たとえば中小企業が45歳以上の身体障害者を週30時間以上で雇用し、3年間継続雇用した場合、半年ごとに40万円が6回支給され、総額240万円を受給できます。
申請の流れ
特定就職困難者コースの受給までの大まかな流れは、以下のとおりです。
| ①ハローワーク等に求人を申し込む |
| ②ハローワーク等から対象者の紹介を受け、雇い入れる |
| ③雇入れ日から6か月経過後、第1期支給申請書を提出する(末日の翌日から2か月以内) |
| ④審査を経て助成金が振り込まれる |
| ⑤以降、6か月ごとに第2期・第3期…の申請を繰り返す |
申請方法
支給対象期ごとに、事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワークへ申請します。各支給対象期の末日の翌日から2か月以内が申請期間です。期限を過ぎた申請は受理されず、該当期の助成金は受け取れません。
なお、ハローワーク等の紹介を受ける前に採用選考を開始していた場合は対象外となるため、「求人申込み → 紹介 → 選考 → 雇入れ」の順を守ることが重要です。
必要な主な書類
主な申請書類は、以下のとおりです。
・対象労働者雇用状況等申立書
・母子家庭の母等申立書(該当者のみ)
・離職割合除外申立書(該当者のみ)
・障害者雇用関係助成金個人番号登録届
・雇用契約書または雇入通知書
・賃金台帳(令和8年4月1日以降の申請から必須)
・出勤簿・タイムカード
・対象労働者の氏名・年齢が確認できる書類
なお、電子申請(e-Gov)の利用も可能です。
よくある質問
65歳以上の方も対象になる?
なります。令和5年4月から旧「生涯現役コース」が廃止され、65歳以上の方も特定就職困難者コースの高年齢者区分として統合されました。ただし、令和8年5月1日以降はハローワーク等で個別支援を受けていることが必要です。
障害者手帳は必須?
身体・知的・精神障害者として申請する場合は、それぞれ身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳が必要です。手帳を持たない発達障害・難病の方は、別コース(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の対象となります。
パートやアルバイトでの雇用も対象になる?
週所定労働時間が20時間以上30時間未満の短時間労働者であれば対象になります。ただし、支給額は週30時間以上の場合より低く設定されています。週20時間未満の場合は雇用保険の対象にならないため、本助成金の対象外です。
自社HPからの直接応募で採用した人も対象になる?
なりません。本コースはハローワーク、地方運輸局、特定地方公共団体、許可・届出済の民間職業紹介事業者の紹介により雇い入れた場合のみが対象です。
途中で対象労働者が退職した場合はどうなる?
退職した支給対象期分は原則として不支給となります。たとえば半年ごとに4期(2年間)の助成を受けるコースで第3期の途中に退職した場合、第3期分以降の助成金は受け取れません。
まとめ
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、中小企業が就職困難者の雇用を進める際の強力な支援制度です。対象者の幅が広く、支給額も1人あたり最大240万円と手厚いため、障害者雇用や高齢者雇用を検討する企業にとって見逃せない制度といえるでしょう。
令和8年5月1日以降は高年齢者要件の厳格化や、令和8年4月からの賃金台帳提出必須化など、制度改正が頻繁に行われています。申請要件や書類は年度ごとに変わるため、最新情報の確認が欠かせません。
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