人手不足が深刻化するなか、高年齢者や障害者、母子家庭の母など、これまで採用の対象として検討してこなかった層に目を向ける企業が増えています。とはいえ「定着してもらえるだろうか」「教育に時間がかかるのでは」といった不安から、一歩を踏み出せずにいる経営者の方も多いのではないでしょうか。
こうした採用を財政面から後押しするのが、特定求職者雇用開発助成金の「特定就職困難者コース」です。全4コースのうち最も支給額が大きく利用実績も多い主力コースで、中小企業が重度障害者等を週30時間以上で雇い入れた場合、3年間で総額240万円が支給されます。実務では「特開金(とっかいきん・とくかいきん)」とも呼ばれます。
ただし令和8年5月1日から高年齢者(60歳以上)の要件が見直され、令和8年4月1日以降の申請では賃金台帳の提出が必須になりました。本記事では厚生労働省の令和8年度版リーフレットに沿って、対象者・支給額・申請の流れ・不支給になりやすいパターンまで整理します。
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合わせて読みたい:特定求職者雇用開発助成金(特開金)とは?最大240万円・全4コースの対象者と申請方法
この記事の目次
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)とは?
特定就職困難者コースは、高年齢者や障害者、母子家庭の母などの就職困難者をハローワーク等の職業紹介により継続雇用する事業主に対し、賃金相当額の一部を助成する制度です。雇用保険法第62条を根拠とする雇用保険二事業の助成金で、申請窓口は事業所を管轄する労働局またはハローワークです。
大まかな流れは①ハローワーク等に求人を出す→②紹介された対象者を雇い入れる→③6か月ごとに支給申請するという3ステップ。助成金は一括ではなく、6か月ごとの「支給対象期」に区切って2回〜6回に分割して支給されます。
助成の対象となる雇用形態は?
正規雇用・無期雇用に加え、有期雇用でも「自動更新」の契約であれば助成対象になります。ただし勤務成績等により更新の有無を判断する契約は対象外です。
また、雇入れ時点で「対象労働者を65歳以上に達するまで継続して雇用し、かつ雇用期間が継続して2年以上であること」が確実と認められる必要があります。短期の雇用を前提とした採用では対象になりません。
なお正規雇用として雇い入れる際に試用期間を設けること自体は問題ありませんが、第1期の支給申請時点で試用期間が継続している場合や、試用期間と本採用で雇用契約が別になっている場合は助成対象外となります。
就職困難者とは?助成金と雇用保険で意味が異なる
「就職困難者」という言葉は、事業主向けの助成金と、労働者向けの雇用保険とで、それぞれ別の意味で使われます。混同しやすいため、まず整理しておきましょう。
| 比較項目 | 助成金上の就職困難者 | 雇用保険上の就職困難者 |
|---|---|---|
| 制度 | 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース) | 雇用保険の基本手当(失業保険) |
| お金を受け取る人 | 雇い入れた事業主(会社) | 求職者本人 |
| 内容 | 1人あたり60万円〜240万円を支給 | 所定給付日数が一般の離職者より長く設定される |
| 手続き先 | 労働局またはハローワーク(事業主が申請) | ハローワーク(本人が求職申込時に申告) |
助成金でいう「就職困難者」の範囲は?
助成金上の就職困難者とは、高年齢者・障害者・母子家庭の母等など、労働市場において就職が特に困難な状態にある求職者を指します。単に「なかなか就職先が決まらない人」という意味ではなく、対象区分が制度上あらかじめ定められている点が特徴です。具体的な区分は後述します。
雇用保険の「就職困難者」は給付日数が延びる制度
一方、雇用保険上の就職困難者に該当すると、失業給付(基本手当)の所定給付日数が一般の離職者より長くなります。障害者手帳の所持者などが対象で、被保険者であった期間が1年以上の場合、45歳未満で300日、45歳以上65歳未満で360日が上限です。こちらは求職者本人がハローワークで求職申込みをする際に申告する制度であり、事業主が申請する助成金とは別物です。
令和8年度(2026年度)の変更点は?
特定就職困難者コースは令和8年度に2つの重要な変更がありました。いずれも「知らずに採用してしまうと申請できなくなる」タイプの改正のため、採用計画の段階で確認しておく必要があります。
| 変更内容 | 適用時期 | 実務への影響 |
|---|---|---|
| 高年齢者(60歳以上)の要件見直し | 令和8年5月1日以降の紹介分から | ハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けている方のみが対象に |
| 賃金台帳の提出が必須化 | 令和8年4月1日以降の申請分から | 賃金台帳が確認できない場合は不支給 |
①高年齢者(60歳以上)の要件見直し【令和8年5月1日〜】
令和8年5月1日以降にハローワーク等から紹介された60歳以上の方を雇い入れる場合、従来の「雇入れ時の年齢が60歳以上であること」に加えて、紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが要件に追加されました。
| 紹介日 | 高年齢者(60歳以上)の要件 |
|---|---|
| 令和8年5月1日より前 | 雇入れ時の年齢が60歳以上であること |
| 令和8年5月1日以降 | 雇入れ時の年齢が60歳以上であることに加え、紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていること |
あわせて、原則として「特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること」を明示した職業紹介を行った場合のみ支給申請が可能となりました。求人申込みの時点でハローワークの担当者に本助成金の活用を希望する旨を伝え、紹介を受ける方が対象労働者に該当するかを事前に確認しておきましょう。
②賃金台帳の提出が必須化【令和8年4月1日〜】
令和8年4月1日以降の申請分からは、賃金台帳の提出が確認できない場合、不支給となります。賃金台帳は労働基準法第108条に基づく法定帳簿で、次の項目の記載が必要です。
・性別
・賃金計算期間
・労働日数
・労働時間数
・時間外労働・休日労働・深夜労働の時間数
・基本給、手当その他賃金の種類ごとの額
・賃金の一部を控除した場合はその額
給与明細だけでは代替できません。市販の給与ソフトを利用している場合でも、法定項目がすべて出力される様式になっているかを申請前に確認しておきましょう。
特定就職困難者コースの対象となる労働者は?
対象となるのは、採用日時点の満年齢が65歳未満の求職者です。ただし高年齢者(60歳以上)の区分に限り、65歳以上の方も助成対象になります。
対象者の区分一覧
| 区分 | 該当する方 | 備考 |
|---|---|---|
| ①高年齢者等 | 高年齢者(60歳以上)、母子家庭の母等、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、北朝鮮帰国被害者等、アイヌの人々、ウクライナ避難民、補完的保護対象者 など | 高年齢者は令和8年5月1日以降、ハローワーク等での個別支援が必要 |
| ②身体・知的障害者(重度等を除く) | 身体障害者手帳・療育手帳の所持者 | 45歳未満かつ重度に該当しない方 |
| ③重度障害者等 | 重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者、精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳の所持者は年齢を問わず③ |
ウクライナ避難民は令和4年5月30日から、補完的保護対象者は令和5年12月1日から、それぞれ当分の間の措置として対象に加えられています。
60歳以上・65歳以上の高年齢者はどこまで対象?
高年齢者(60歳以上)の区分に限り、65歳以上の方も対象になります。令和4年度末で「生涯現役コース」が廃止され、令和5年4月から65歳以上の雇用も特定就職困難者コースに統合されたためです。対象者の年齢要件は「60歳以上65歳未満」から「60歳以上」に変更されています。
一方、②③の障害者区分や、母子家庭の母等については、採用日時点で65歳未満である必要があります。
母子家庭の母等・父子家庭の父の要件は?
母子家庭の母等とは、20歳未満の子を扶養している配偶者のない女性などを指し、児童扶養手当の受給歴などから確認されます。申請時には「母子家庭の母等申立書」の提出が必要です。父子家庭の父も同様に①の区分に含まれ、支給額は高年齢者と同じ60万円(中小企業・週30時間以上の場合)です。
障害者手帳がない場合はどうなる?
本コースで障害者区分として申請するには、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかが必要です。手帳を持たない発達障害者や難治性疾患のある方は、同じ特定求職者雇用開発助成金の「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」の対象になります。手帳の有無で申請するコースが変わる点に注意しましょう。
特定就職困難者コースの対象となる事業主の要件は?
対象は雇用保険の適用事業主で、ハローワーク等の紹介により対象労働者を雇い入れた事業主です。紹介より前に採用選考を開始していた場合は対象外となるため、「求人申込み→紹介→選考→雇入れ」の順序を必ず守ってください。
事業主に関する主な要件
・対象労働者の賃金を支払期日までに支払っていること
・労働保険料を滞納していないこと
・採用日前後6か月間に事業主都合による解雇(勧奨退職を含む)をしていないこと
・採用日前後6か月間に、特定受給資格者となる理由で離職した被保険者数が、採用日における被保険者数の6%を超えていないこと(離職者が3人以下の場合を除く)
・支給申請日の前日から過去3年間に、本コース等の助成対象期間中に事業主都合で対象労働者を解雇・雇止め等していないこと
・対象労働者の出勤簿・賃金台帳・労働者名簿を整備し保管していること
なお、支給決定を受けた事業主は国の会計検査の対象となることがあります。関係書類は支給決定日から5年間の整理保存が求められます。
対象労働者に関する要件(対象外になるケース)
次のいずれかに該当する場合、その労働者は助成の対象になりません。
| 対象外となるケース | 補足 |
|---|---|
| ハローワーク等の職業紹介以前に採用選考を開始していた | ハローワークのオンライン自主応募も対象外。求人サイト等で直接募集し、応募後に形式的な職業紹介を受けた場合も同様 |
| 職業紹介時点で在職者だった | ただし重度障害者・45歳以上の障害者・精神障害者を週30時間以上で雇い入れる場合は在職者でも対象 |
| 採用した事業所と関係があった | 過去3年間に事業所で就労させたことがある場合、事業主と3親等以内の親族である場合など |
| 助成対象期間の途中などで離職した労働者 | 労働者の責めに帰すべき理由による解雇などは除く |
| 性風俗関連営業等で接待業務などに従事する労働者 | 事業内容と従事業務の両方で判断される |
就労継続支援A型事業所が雇い入れる場合の特別要件
就労継続支援A型事業所が対象労働者をサービス利用者として雇い入れる場合、過去に本コースの支給決定を受けた方の離職割合が25%を超えていると助成対象になりません。具体的には、雇入れ日から1年を経過する日、または助成対象期間の末日の翌日から1年を経過する日が基準期間(対象労働者の雇入れ日の前後6か月間)内にある方が5人以上いる場合に、その離職割合で判定されます。
ただし、A型事業所の支援を受けて一般就労へ移行したことによる離職は、この離職割合の計算から除かれます。
特定就職困難者コースの支給額はいくら?
支給額は対象労働者の区分・週の所定労働時間・企業規模の3要素で決まります。助成対象期間を6か月ごとに区切った「支給対象期」ごとに分割して支給されます。
短時間労働者以外(週30時間以上)の支給額
| 対象労働者の区分 | 中小企業の合計額 | 支払い方法(中小) | 大企業の合計額 | 支払い方法(大企業) |
|---|---|---|---|---|
| ①高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等 など | 60万円 | 30万円×2期(1年) | 50万円 | 25万円×2期(1年) |
| ②身体・知的障害者(重度等を除く) | 120万円 | 30万円×4期(2年) | 50万円 | 25万円×2期(1年) |
| ③重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者 | 240万円 | 40万円×6期(3年) | 100万円 | 33万円×3期(1年6か月・第3期は34万円) |
たとえば中小企業が45歳以上の身体障害者を週30時間以上で雇い入れ、3年間継続雇用した場合、6か月ごとに40万円が6回支給され、総額240万円を受給できる計算になります。
短時間労働者(週20〜30時間未満)の支給額
| 対象労働者の区分 | 中小企業の合計額 | 支払い方法(中小) | 大企業の合計額 | 支払い方法(大企業) |
|---|---|---|---|---|
| ①高年齢者(60歳以上)・母子家庭の母等 など | 40万円 | 20万円×2期(1年) | 30万円 | 15万円×2期(1年) |
| ②身体・知的障害者(重度等を除く) | 80万円 | 20万円×4期(2年) | 30万円 | 15万円×2期(1年) |
| ③重度障害者、45歳以上の障害者、精神障害者 | 80万円 | 20万円×4期(2年) | 30万円 | 15万円×2期(1年) |
「短時間労働者」とは1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方を指します。週20時間未満の場合は雇用保険の被保険者にならないため、本助成金の対象外です。
支給額が減額されるケース
支給額は定額ですが、次の場合は減額されることがあります。
・所定労働時間より実労働時間が著しく短い場合
・週当たりの賃金額が「最低賃金×30時間」を下回る場合
助成金ありきで低い賃金を設定すると、かえって支給額が目減りする設計になっている点に留意しましょう。
特定就職困難者コースの申請の流れと申請期限は?
支給申請は各支給対象期の末日の翌日から2か月以内です。期限を過ぎた申請は理由を問わず受理されず、その期の助成金は受け取れません。
受給までの6ステップ
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①求人の申込み | ハローワーク等に求人を出す。本助成金の活用希望を伝えておく |
| ②紹介・雇入れ | ハローワーク等から対象者の紹介を受けて雇い入れる |
| ③第1期の支給申請 | 第1支給対象期の末日の翌日から2か月以内に労働局またはハローワークへ提出 |
| ④調査・確認 | 支給申請書の記載事項を支給要件に照らして審査 |
| ⑤支給・不支給決定 | 審査結果は通知書で申請事業主へ告知される |
| ⑥助成金の支給 | 指定口座へ振込。以降は第2期・第3期…と6か月ごとに申請を繰り返す |
支給対象期の起算日はいつ?
支給対象期は起算日から6か月ごとに区切った期間です。起算日は賃金締切日の有無によって変わるため、自社の給与サイクルに当てはめて確認してください。
| ケース | 起算日 |
|---|---|
| 賃金締切日が定められていない場合 | 雇入れ日 |
| 賃金締切日が定められている場合 | 雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日 |
| 賃金締切日に雇い入れた場合 | 雇入れ日の翌日 |
| 賃金締切日の翌日に雇い入れた場合 | 雇入れ日 |
たとえば賃金締切日が毎月15日の中小企業が4月1日に高年齢者を雇い入れた場合、起算日は4月16日、第1支給対象期は4月16日から10月15日まで、申請期間は10月16日から12月15日までとなります。
必要な提出書類
各支給対象期の申請ごとに、次の書類を提出します。第2期以降も同様の手続きが必要です。
・対象労働者雇用状況等申立書(様式第5号)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
・賃金台帳等(令和8年4月1日以降の申請から必須)
・出勤簿等
・雇用契約書または雇入れ通知書
・対象者であることを証明するための書類(障害者手帳の写し、母子家庭の母等申立書など)
このほか労働局から追加書類の提出を求められる場合があります。電子申請(e-Gov)にも対応しています。
不支給になりやすい5つのパターン
特定就職困難者コースは要件が明確な反面、「手順を間違えると後から取り返せない」タイプの助成金です。実務で起こりやすい不支給パターンを整理しました。
| パターン | なぜ不支給になるのか |
|---|---|
| 自社サイトや求人サイトから直接応募してきた人を採用した | ハローワーク等の職業紹介を経ていないため。応募後に形式的に職業紹介を受けても対象外 |
| ハローワークのオンライン自主応募で採用した | 職業紹介に該当しないため対象外 |
| 助成金の対象者と知らずに雇い入れ、後から気づいた | 本助成金は雇入れを決定するインセンティブとして設計されているため、紹介時点で対象労働者であることを事業主が承知している必要がある |
| 採用日の前後6か月に事業主都合の解雇があった | 勧奨退職も事業主都合に含まれるため、他部門の人員整理も影響する |
| 賃金台帳が整備されていなかった | 令和8年4月1日以降の申請分から提出が必須。確認できない場合は不支給 |
なお、偽りその他不正な行為によって助成金を受給した場合は、全額返還に加えて5年間すべての助成金が受給できなくなり、悪質なものは事業主名の公表や詐欺罪での処罰の対象にもなります。
他の助成金との併用はできる?
トライアル雇用助成金で雇い入れた対象者(母子家庭の母等、父子家庭の父、中国残留邦人等永住帰国者、障害者)を、トライアル雇用終了後も引き続き継続して雇用する場合、本助成金の一部を受給できる場合があります。まずトライアル雇用で適性を見極め、常用雇用へ移行するタイミングで特定就職困難者コースを申請するという組み立てが可能です。
ただし、他の助成金の支給を受けている場合は対象外となるケースもあります。また国・地方公共団体・行政執行法人などの機関(これらからの委託事業に対象労働者が従事する場合を含む)は支給対象とならない場合があります。併用の可否は、必ず管轄の労働局・ハローワークに事前確認してください。
特定就職困難者コースに関するよくある質問
特定就職困難者コースは最大いくらもらえますか?
中小企業が重度障害者、45歳以上の障害者、または精神障害者を週30時間以上で雇い入れ、3年間継続雇用した場合の240万円が最大額です。6か月ごとの支給対象期に40万円ずつ、計6期に分けて支給されます。身体・知的障害者(重度等を除く)は120万円(30万円×4期)、高年齢者や母子家庭の母等は60万円(30万円×2期)です。大企業の場合はそれぞれ100万円・50万円・50万円となります。なお支給対象期ごとの支給額が、その期に支払った賃金額を上回る場合は、賃金総額が支給額の上限になります。
65歳以上の方も対象になりますか?
高年齢者(60歳以上)の区分に限り対象になります。令和4年度末で「生涯現役コース」が廃止され、令和5年4月から65歳以上の雇用も特定就職困難者コースに統合されたためです。対象者の年齢要件も「60歳以上65歳未満」から「60歳以上」に変更されています。ただし障害者区分や母子家庭の母等については、採用日時点で65歳未満である必要があります。また令和8年5月1日以降に紹介を受ける場合は、紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていることが必要です。
令和8年5月からの高年齢者の要件変更で何が変わりましたか?
令和8年5月1日以降に紹介された60歳以上の方については、「雇入れ時の年齢が60歳以上であること」に加えて「紹介日においてハローワーク等で就労に向けた個別支援を受けていること」が要件に追加されました。あわせて、原則として「特定求職者雇用開発助成金の対象労働者であること」を明示した職業紹介を受けた場合のみ支給申請が可能になります。求人申込みの段階でハローワークの担当者に本助成金の活用を希望する旨を伝え、紹介される方が対象労働者に該当するかを採用前に確認しておくことが重要です。
自社サイトからの直接応募で採用した人も対象になりますか?
対象になりません。本コースはハローワーク、地方運輸局、適正な運用を期することのできる特定地方公共団体、厚生労働大臣の許可を受けた有料・無料職業紹介事業者、または無料船員職業紹介事業者の紹介により雇い入れた場合のみが対象です。ハローワークのオンライン自主応募も対象外となります。また求人サイト等で直接募集し、応募があった後に形式的な職業紹介を経て採用した場合も同様に対象外です。ハローワーク等の紹介以前に採用選考を開始していた場合も助成対象になりません。
親族を雇い入れた場合も対象になりますか?
事業主と3親等以内の親族である場合は対象になりません。「採用した事業所と関係のあった者」として対象労働者の要件から除外されるためです。3親等以内には、親・子・祖父母・孫・兄弟姉妹・おじおば・甥姪・曾祖父母・曾孫などが含まれます。同様に、過去3年間にその事業所で就労させたことがある方も対象外です。役員個人との親族関係も判断対象になるため、家族経営の企業では特に注意が必要です。
パートやアルバイトでの雇用も対象になりますか?
1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の「短時間労働者」であれば対象になります。ただし支給額は週30時間以上の場合より低く、中小企業の場合は高年齢者・母子家庭の母等が40万円、障害者区分が80万円です。週20時間未満の場合は雇用保険の被保険者にならないため、本助成金の対象外となります。なお雇用形態としては、正規雇用・無期雇用のほか、対象労働者が望む限り更新できる「自動更新」の有期雇用契約であれば対象になります。
障害者手帳がなくても申請できますか?
本コースの障害者区分として申請する場合は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳のいずれかが必要です。手帳を持たない発達障害者や難治性疾患のある方は、同じ特定求職者雇用開発助成金の「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」の対象となります。こちらは医師の診断書等により対象者であることを確認する仕組みで、支給額は中小企業で最大120万円です。手帳の有無によって申請するコースが変わるため、ハローワークに紹介を依頼する段階で確認しておきましょう。
途中で対象労働者が退職した場合はどうなりますか?
対象労働者が支給対象期の途中で離職した場合、その支給対象期については原則として助成金を受け取れません。たとえば6期にわたって助成を受けるケースで第3期の途中に退職した場合、第3期分以降は不支給となり、すでに支給決定を受けた第1期・第2期分のみが手元に残ります。さらに、助成対象期間中に事業主都合で対象労働者を解雇・雇止めした場合は、その後3年間、本助成金の申請ができなくなります。定着支援まで含めた受入れ体制を整えることが重要です。
「就職困難者」と「特定求職者」は同じ意味ですか?
本助成金の文脈ではほぼ同義で使われます。「特定求職者」は労働市場において就職が特に困難な状態にある求職者を指し、高年齢者・障害者・母子家庭の母等・生活保護受給者などが該当します。ただし雇用保険の「就職困難者」は別の意味を持ち、障害者手帳の所持者などが基本手当(失業保険)の所定給付日数を長く受けられる制度を指します。被保険者であった期間が1年以上の場合、45歳未満で300日、45歳以上65歳未満で360日が上限です。前者は事業主が受け取る助成金、後者は求職者本人が受け取る給付であり、まったく別の制度です。
支給申請はいつまでにすればよいですか?
各支給対象期の末日の翌日から2か月以内です。支給対象期は起算日から6か月ごとに区切られ、起算日は賃金締切日が定められていない場合は雇入れ日、定められている場合は雇入れ日の直後の賃金締切日の翌日となります。たとえば賃金締切日が毎月15日の企業が4月1日に雇い入れた場合、起算日は4月16日、第1支給対象期は4月16日から10月15日まで、申請期間は10月16日から12月15日までです。申請期限を過ぎた場合はいかなる理由でも受理されず、その期の助成金は受け取れないため、余裕をもって書類を準備してください。
まとめ
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、中小企業が就職困難者を雇い入れる際に1人あたり60万円〜240万円を受給できる、採用系助成金の主力制度です。対象者の幅が広く支給額も手厚いため、障害者雇用や高年齢者雇用を検討する企業にとって活用価値の高い制度といえるでしょう。
一方で、令和8年5月1日からは高年齢者(60歳以上)についてハローワーク等での個別支援が要件に加わり、令和8年4月1日以降の申請では賃金台帳の提出が必須になりました。いずれも採用後に気づいても取り返しがつかない改正です。「求人申込みの段階でハローワークに助成金の活用希望を伝える」「紹介前に採用選考を始めない」「賃金台帳を法定項目どおり整備する」という3点を押さえたうえで、採用計画を進めていきましょう。
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