これから起業を考えている方の中には、「会社設立の費用を少しでも抑えたい」「創業資金の調達を有利に進めたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
「特定創業支援等事業」を活用すれば、こうした創業時の負担を軽減できる可能性があります。市区町村が実施する創業塾や窓口相談などを受けて証明書の交付を受けると、登録免許税の軽減や創業融資の優遇が受けられたり、小規模事業者持続化補助金〈創業型〉の申請要件の一つを満たせたりする制度です。ただし、利用できる優遇措置は、創業前か創業後か、開業からの経過期間などによって異なります。
本記事では、特定創業支援等事業の仕組みや証明書で受けられる4つの優遇措置、対象者、証明書取得までの流れを解説します。これから創業する方や創業後5年未満の方は、ぜひ参考にしてください。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
特定創業支援等事業とは
特定創業支援等事業とは、産業競争力強化法に基づき、市区町村が商工会議所・商工会や地域金融機関、NPO法人などと連携して行う、創業希望者・創業者向けの継続的な支援事業です。
日本の開業率は3.8%(2024年度)と、欧米主要国と比べて低い水準にとどまっており、国はこうした状況を踏まえ、地域の創業を増やすための施策として本制度を推進しています。
本制度は、市区町村が民間の支援機関と連携して「創業支援等事業計画」を作成し、国の認定を受ける仕組みです。認定を受けた計画は全国47都道府県の約1,580市区町村にのぼり(2026年6月時点)、多くの自治体で支援が実施されています。
この計画に位置づけられた支援事業のうち、次の要件を満たすものが「特定創業支援等事業」です。
・原則として1か月以上の期間にわたり、4回以上継続して実施されること
代表的な例としては、4回以上の講義を行う創業塾(創業セミナー)や専門家による継続的な個別相談、インキュベーション施設入居者への継続支援などが挙げられます。どの形式で実施しているかは自治体によって異なるため、創業予定地の市区町村で確認しましょう。
証明書で受けられる4つの優遇措置
特定創業支援等事業による支援を受けると、市区町村に「支援を受けたことの証明書」の交付を申請できます。この証明書で受けられる優遇措置は、以下の4つです。| 優遇措置 | 内容 |
|---|---|
| ①登録免許税の軽減 | 会社設立時の登録免許税が資本金の0.7%→0.35%に半減 |
| ②創業関連保証の特例 | 信用保証協会の創業関連保証を事業開始6か月前から利用可能 |
| ③日本政策金融公庫の融資優遇 | 新規開業・スタートアップ支援資金で特別利率の適用など |
| ④持続化補助金〈創業型〉 | 申請要件の一つを満たせる(補助上限200万円・補助率2/3) |
ただし、証明書があれば4つすべてを利用できるとは限りません。創業前か創業後か、開業からの経過期間などによって、利用できる優遇措置は異なります。また、融資や保証には金融機関・信用保証協会による審査が、補助金には採択審査が別途あります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
①会社設立時の登録免許税が半額に
会社設立の登記にかかる登録免許税が、資本金の0.7%から0.35%に軽減されます。
| 会社形態 | 通常の税額 | 軽減後の税額 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.35%(最低7.5万円) |
| 合同会社 | 資本金の0.7%(最低6万円) | 資本金の0.35%(最低3万円) |
株式会社なら最低でも7.5万円、設立費用を抑えられる計算です。
なお、現行制度では2027年(令和9年)3月31日までに受ける設立登記が対象です。2027年4月以降の取り扱いは、今後の税制改正や公式発表をご確認ください。また、支援を受けた市区町村の区域内で会社を設立する場合に限られます。
軽減の対象となるのは、これから行う設立登記です。すでに会社を設立した方が、納付済みの登録免許税を後から軽減してもらうことはできない点にもご注意ください。
②創業関連保証の特例(事業開始6か月前から利用可能)
信用保証協会の創業関連保証(保証限度額3,500万円)は、通常、個人開業なら1か月以内、法人設立なら2か月以内に事業を開始する具体的な計画がなければ申し込めません。
証明書があるとこの期間が6か月以内に延長され、事業開始のかなり前から保証付き融資の準備を進められます。開業資金の調達スケジュールに余裕が生まれる、実務上大きなメリットです。
③日本政策金融公庫の融資制度での優遇
日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」において、特別利率の適用などの優遇が受けられます。創業期は金利のわずかな差が資金繰りに影響するため、公庫融資を検討している方は押さえておきたい特例です。
④小規模事業者持続化補助金〈創業型〉の申請対象に
販路開拓などの取り組みにかかる経費の一部を補助する小規模事業者持続化補助金には、特定創業支援等事業による支援を受けた創業者を対象とする〈創業型〉があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象者 | 特定創業支援等事業による支援を受けた小規模事業者等 |
| 補助上限 | 200万円(インボイス特例の要件を満たす場合は最大250万円) |
| 補助率 | 2/3 |
2026年の公募では、原則として「特定創業支援等事業による支援を受けた日」と「開業日または法人設立日」の両方が、公募締切日から過去1年以内であることが求められます。証明書を取得しているだけでは申請できないため、受講時期と開業時期の両方に注意が必要です。〈創業型〉の活用を検討している場合は、公募締切から逆算して、支援を受ける時期と開業日を調整しましょう。
なお、開業届の提出や法人設立を済ませたものの、申請時点ではまだ商品・サービスの提供を始めていない事業者も対象になり得ます。ただし、補助事業の終了までに事業活動を開始する必要があります。最新の公募スケジュールや要件は、以下の記事でご確認ください。
詳しくはこちら:小規模事業者持続化補助金 創業型とは?最大250万円!一般型との違いも解説
特定創業支援等事業の対象者
証明書の発行対象は、認定特定創業支援等事業を受けた「創業者」です。対象となる方・ならない方を整理すると、以下のとおりです。
| 区分 | 具体例 |
|---|---|
| 対象となる方 | ・これから創業する個人(現在、事業を営んでいない個人)。学生、主婦・主夫、会社員も含まれます ・個人事業を開始してから5年未満の個人事業主 ・法人を設立し、事業を開始してから5年未満の法人の代表者 ・個人事業から法人成りした法人の代表者(個人事業の開始日から5年未満であることが必要) |
| 対象外となる方 | ・事業承継によって既存事業を引き継いだ方 ・現在の会社や個人事業を継続しながら、2社目などの新たな事業を始める方 ・既存の会社が事業の一部を切り出して新会社を設立する分社化のケース |
「事業を営んでいない個人」には学生や主婦(主夫)だけでなく、給与所得を得ている会社員も含まれます。一方、事業承継による開業は「事業を営んでいない個人が新たに事業を開始すること」に該当しないため、対象外です。
なお、一度廃業した方が別の事業で再び開業する場合は「事業を営んでいない個人」に該当するため、証明書の発行対象となります。
また、登録免許税の軽減を受けるためには、会社法上の発起人かつ会社の代表者となって会社を設立しようとする個人本人が証明を受ける必要があります。共同創業を予定している方は特にご注意ください。
証明書取得から優遇措置利用までの流れ
証明書の取得から優遇措置の活用までは、次の4つのステップで進みます。
①創業予定地の市区町村の実施状況を確認する
まず、中小企業庁のウェブサイトに市区町村別の創業支援等事業計画の一覧が掲載されているため、創業予定地の自治体が実施しているかを確認しましょう。各自治体の商工担当課や商工会議所のページでも確認できます。
自治体の確認はこちら:中小企業庁 市区町村別の創業支援等事業計画の概要
②特定創業支援等事業を受講する
次に、創業塾への参加や継続的な窓口相談などを通じて、原則として1か月以上・4回以上にわたり、経営・財務・人材育成・販路開拓の4つの知識を習得します。修了要件(出席率など)は事業ごとに定められているため、事前に確認しておくと安心です。
③市区町村に証明書の交付を申請する
受講後は、市区町村に証明書の交付を申請します。市区町村は、支援機関の受講記録や修了証、受講確認書などをもとに、所定の要件を満たしているかを確認します。申請様式や必要書類は自治体ごとに異なるため、案内に従って手続きしましょう。
なお、証明書には有効期限があります。一般に、認定された創業支援等事業計画の終了日、2027年3月31日、創業から5年を経過する前の日のうち、最も早い日が有効期限とされますが、様式や運用は自治体によって異なるため、発行自治体に確認してください。
④証明書を提出して優遇措置を利用する
最後に、証明書を提出先に添えて申請すれば、優遇措置が利用できます。登録免許税の軽減は法務局(設立登記時)、創業関連保証は信用保証協会・金融機関、融資の優遇は日本政策金融公庫、持続化補助金〈創業型〉は補助金事務局が提出先です。
利用する優遇措置によって証明書が必要なタイミングは異なります。受講・証明書申請・会社設立・補助金申請までのスケジュールを事前に確認しましょう。
特定創業支援等事業に関するよくある質問
どの自治体で受けても内容は同じ?
制度の枠組みと優遇措置は全国共通ですが、実施する事業の形式や開催時期、証明書の申請方法は自治体ごとに異なります。まずは創業予定地の市区町村に確認してください。
支援を受けた自治体と別の市区町村で創業してもいい?
証明書は支援を受けた市区町村が発行するもので、登録免許税の軽減はその市区町村内での会社設立が条件です。他の市区町村で創業する場合、受けられない優遇があるためご注意ください。
過去に廃業していても利用できる?
利用できます。一度廃業した方は「事業を営んでいない個人」に該当するため、証明書の発行対象です。また、信用保証協会には廃業経験者向けの「再挑戦支援保証」もあり、創業関連保証と併用できます(併用時の保証限度額は合計3,500万円)。
受講に費用はかかる?
費用は事業によって異なり、無料の個別相談・セミナーもあれば、有料の創業塾もあります。受講前に自治体や実施機関の案内を確認してください。
まとめ
特定創業支援等事業は、原則として1か月以上・4回以上の支援を受けて証明書の交付を受けることで、登録免許税の軽減、創業関連保証の特例、日本政策金融公庫の融資優遇、小規模事業者持続化補助金〈創業型〉の申請といった優遇措置の利用につながる制度です。利用できる優遇措置は創業のタイミングなどによって異なるため、活用したい措置から逆算して計画を立てることが大切です。
創業に必要な知識を体系的に学びながら、税負担の軽減や資金調達の優遇まで受けられるため、受講の負担に対して得られるリターンは大きいといえます。
実施内容は自治体ごとに異なるため、まずは創業予定地の市区町村の商工担当窓口や商工会議所に問い合わせて、直近の創業塾・相談事業のスケジュールを確認してみてはいかがでしょうか。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する


