日本全国で新型コロナウイルス感染症の再拡大が加速する中、感染が広がりやすい場所として注意が必要なのが、介護福祉施設等の高齢者施設です。
高齢者を多く抱える施設では一度感染が発生すると急速拡大の恐れが大きく、実際に施設でクラスターが発生しているケースも相次いでいます。その理由のひとつとして、高齢者施設では人手・設備等の不足により、感染症対策を満足に行えていないことが挙げられます。
そこで都内広域型施設の事業者が活用したいのが、感染症拡大防止のための設備・整備に要する費用を補助する「高齢者施設等の感染症対策設備整備推進事業」です。都内で介護福祉施設等を営んでおり、感染症対策を徹底したいとお考えの対象事業者は、ぜひこの記事を参考にしてください。
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この記事の目次
高齢者施設における感染症対策の現状と課題
高齢者施設では、感染症への抵抗力が弱い高齢者達が集団で生活しています。また、高齢者は認知機能が低下しているため、感染症対策への協力を求めるのも難しいのが現状です。このような高齢者施設での状況において、感染拡大を最小限に抑える取り組みが要求されています。
感染経路の主な原因は、接触・飛沫・空気・血液媒介によるものです。高齢者施設でこれらの感染経路を遮断するには、病原体を「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」ことへの配慮が不可欠です。
ただし、施設内で病原体が新たに発生するケースは極めて稀であり、施設外での感染によって施設内へ持ち込まれやすい傾向にあります。職員・新規入居者・面会者等に対し、日常での健康管理を徹底するとともに、感染拡大を防止するための環境を整えることが重要な課題です。
出典:厚生労働省 高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版
高齢者施設等の感染症対策設備整備推進事業とは
まずは各補助対象の内容や補助基準額などを解説します。なお、補助基準額は事業内容によって異なるため、ここでご確認ください。
概要
東京都内の高齢者施設における、新型コロナウイルス感染症等の拡大防止に関する事業をサポートします。下記項目の実施に要する費用を、補助率10/10で支援する取り組みです。
- 簡易陰圧装置の設置
- ゾーニング環境等の整備
- 多床室の個室化改修
補助対象事業
補助対象となる事業は、下記①~③に該当するものとします。なお、同一施設において下記①~③それぞれの補助要件を満たしている場合は、事業ごとの経費を明確に区分すれば、複数の事業で補助申請を行うことも可能です。
①簡易陰圧装置の設置に要する経費支援事業 |
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居室等に簡易陰圧装置を設置もしくは据えるとともに、簡易的なダクト工事等を実施する。(リース契約の場合は補助対象外です) ※「簡易陰圧装置」とは、周囲よりも低い圧力を生成(陰圧)する装置です。ウイルス等で汚染された空気を閉じ込め、室外への漏洩を抑制するとともに、浄化処理を行い清浄な空気を屋外へと排気するシステムです。 |
②感染拡大防止目的のゾーニング(清潔区域と汚染区域の区分け)環境等の整備に要する、下記(A)~(C)の経費支援事業 |
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(A)ユニット型施設における各ユニットへの玄関室設置に要する経費支援 各ユニットの共同生活室入口へ玄関室を設置する等によって、消毒や防護服の着脱等を目的としたスペース設置のための事業 (B)従来型個室・多床室のゾーニング経費支援 感染者と非感染者の行き来を分離するための、従来型個室・多床室の改修を実施する事業 (C)家族面会室の整備等経費支援 感染症拡大防止を施しつつ家族との面会を行うために要する、家族面会室の整備事業 ※主な例は下記の通りです。 - 2方向から出入り可能な家族面会室 - 家族面会室の複数設置や拡張 - 家族面会室での簡易陰圧装置換気設備の設置 - 家族面会室入口に消毒等が行える玄関室の設置 - 家族面会室を設けていない場合の新規整備 |
③多床室の個室化に必要な改修費支援事業 |
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感染の疑いがある利用者同士のスペースにおいて空間的な分離が行えるよう、多床室を個室化するための改修を実施する事業 ※可動式の壁による分離は認められますが、天井から隙間が空く場合は承認されないためご注意ください。 |
補助対象施設・事業所
東京都内で開設しており、下記に該当する定員30人以上の広域型施設等
- 特別養護老人ホーム並びに併設される短期入所生活介護事業所(短期入所生活介護事業所は定員29人以下を含みます)
- 介護老人保健施設(併設される短期入所療養介護事業所を含みます)
- 介護医療院(併設される短期入所療養介護事業所を含みます)
- 介護療養型医療施設(上記補助対象事業「③多床室の個室化改修に必要な支援事業」は除きます)
- 養護老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(特定施設入居者生活介護の指定を受けていない場合は、定員29人以下を含みます。また、上記補助対象事業「③多床室の個室化改修に必要な支援事業」は除きます)
- 短期入所生活介護事業所(特別養護老人ホームに併設されるものを除きます)
- 短期入所療養介護事業所(介護老人保健施設・介護医療院に併設されるもの、並びに上記補助対象事業「③多床室の個室化改修に必要な支援事業」を除きます)
(※注1)定員29人以下の施設・事業所に関しては区市町村経由の間接補助となるため、所在地の区市町村が補助事業を実施する場合のみ補助を受けられます。詳細は所在地の各区市町村へお問い合わせの上ご確認ください。
(※2)本補助事業は現利用者への処遇を実施している施設等が対象なので、開設準備中の施設等は対象外です。なお開設後でも、開設日前に締結した契約等に準じている事業は対象外となります。また、休止中の施設や事実上利用者の受け入れを行っていない居室等も、同様に対象外とみなされるのでご注意ください。
補助対象経費・補助基準額
ここでは、各補助対象事業についての補助対象経費・補助基準額について解説します。
①簡易陰圧装置の設置に関する経費支援事業
補助対象経費 | 簡易陰圧装置設置に要する備品購入費、工事費もしくは工事請負費、工事事務費 ※居室・静養室・医務室を設置した場合に限り、原則として1室につき1台とし、併せて施設等の定員数を上限とします。 ※工事事務費は、工事費もしくは工事請負費の2.6%を限度とします。 |
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補助基準額 | 簡易陰圧装置1台あたり 432万円 |
②感染拡大防止目的のゾーニング(清潔区域と汚染区域の区分け)環境等の整備に関する経費支援事業
補助対象経費 | ゾーニング環境の整備に要する備品購入費、工事費もしくは工事請負費、工事事務費 ※工事事務費は、工事費もしくは工事請負費の2.6%を限度とします。 |
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補助基準額 | (A)ユニット型施設における各ユニットへの玄関室設置に要する経費支援:1か所あたり 100万円 (B)従来型個室・多床室のゾーニング経費支援:1か所あたり 600万円 (C)家族面会室の整備等経費支援:1施設・事業所あたり 350万円 |
③多床室の個室化に必要な改修費支援事業
補助対象経費 | 多床室の個室化に要する工事費もしくは工事請負費、工事事務費 ※工事事務費は、工事費もしくは工事請負費の2.6%を限度とします。 |
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補助基準額 | 1床あたり 97万8,000円 |
※工事事務費については、工事施工に直接必要となる費用(旅費・消耗品費・通信運搬費・印刷製本費・設計監督料等)とします。なお、工事費もしくは工事請負費に備品購入費の相当額が含まれる場合は、その額を控除し算定します。
補助率
上記①~③全て10/10
交付申請から補助金交付までの流れ
補助金の概要を確認したら、申請から交付までのスケジュールを確認しましょう。なお、令和4年度の申請は1法人につき1回限りとなっています。もし複数の施設等で事業を行う場合は、全施設分をまとめて申請する必要があるのでご注意ください。
交付申請期限
令和4年9月15日(消印有効)
申請方法
東京都福祉保健局へ郵送
※来庁による持ち込みは認められません。
必要書類
- 申請事業所一覧
- 交付申請書(鑑)
- 所要額調書
- 事業計画書
- 誓約書
- 歳入歳出予算書抄本
- 印鑑証明書
- 設備の設置場所や施工箇所等が確認できる資料(平面図等)
- 見積書・契約書等の写し及び申請する機器等の内容(仕様)が確認できるもの
- その他参考となる資料(審査上、確認が必要となった際の別途資料等)
補助金交付までのスケジュール
1.交付申請
2.交付決定(交付申請期限から2か月程度)
3.実績報告書提出(補助事業完了後10日以内、令和5年4月10日まで)
4.交付額の確定通知受領(実績報告書の受領日より2か月程度)
5.補助金交付(交付金額確定後1か月程度)
「高齢者施設等の感染症対策設備整備推進事業」活用のメリット
各種高齢者施設は、利用者やその家族の生活を継続する上で欠かせない存在です。感染症対策の設備・整備が充実していれば、利用者への十分なサービスが継続的に提供可能なので、新規利用者の確保が見込めます。
また、介護施設は、訪問介護に比べて離職率が高い傾向にありますが、感染症対策が整った環境であれば、従業員の定着につながることも考えられます。
まとめ
今後、感染拡大がさらに進めば、高齢者施設ではマスク・消毒・換気等の感染症対策だけでは不十分となる可能性が高いです。日本はこれから総人口が減少していくなかで、高齢者が占める割合は増加していくことが予想されています。将来的な事業活動を見据え、感染症対策をより一層強化したいとお考えの対象事業者の皆さまは、ぜひこの機会に本助成事業を活用してみてはいかがでしょうか。