日本は「ものづくり大国」と呼ばれ、製造業が経済の大きな基盤のひとつとなっています。経済産業省の発表した「2022年版ものづくり白書」によると、新型コロナウイルスの影響によって悪化した業績も、2021年の調査では約半数の事業者が回復に転じました。
また、宇宙産業ビジネスにおけるベンチャー参入などを背景に、2017 年度以降は減少傾向にあった製造業の開業事業所数も2020 年度には増加しています。
ものづくりベンチャー企業育成支援のために、東京都では「Tokyo ものづくり Movement」を実施しています。今回は「Tokyo ものづくり Movement」の内容についてまとめました。
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この記事の目次
ものづくりベンチャーが抱える課題
ベンチャー企業の抱える課題に関しては、すでに「2016年版ものづくり白書」でまとめられています。
そこでは「開発資金」「事業計画策定スキル」が第1の谷、「量産化の壁」が第2の谷として指摘されました。具体的には、第1の谷では試作品の製造段階における資金面やプロジェクトの事業計画策定等が、第2の谷では量産化のための試作品やラインの選定が問題になるケースが挙げられています。
政府は2022年を「スタートアップ創出元年」とし、年末までに「スタートアップ育成5か年計画」を策定する方針です。岸田首相は、イノベーションの鍵となるスタートアップを5年で10倍に増やすとしています。
参考:経済産業省 METI Journal ONLINE
これを受けて、国や自治体からはベンチャー企業やスタートアップが抱える課題解決を支援する事業が実施されました。
このうち、「Tokyo ものづくり Movement」は試作品の製造段階における資金面での問題や、プロジェクトの事業計画策定等といった「第1の谷」の解決を中心に支援する事業です。
Tokyo ものづくり Movementとは
「Tokyo ものづくり Movement」は、アイデアを持つベンチャー企業に対して製品化・事業化のためのノウハウや資金面での支援を実施する事業です。専門スタッフによる技術指導などの支援のほか、最終審査のコンテストで選出された企業には上限1,000万円の開発資金が提供されます。
まずはコンテストの概要やプログラムの特徴について見ていきましょう。
未来のものづくりベンチャー発掘コンテスト
都内製造業の出荷額、付加価値額等は、減少傾向にあります。都内のものづくり産業の発展のためには、優れたベンチャーの育成が必要不可欠です。
創業間もないものづくりベンチャー等は、アイデアを形にするための設備や資金やノウハウが不足し、成長までに多くの時間と労力を要するという課題を抱えています。
本事業ではコンテスト前に試作支援があり、3Dプリンター等の設備利用や専門家のアドバイスを受けることができます。
段階に応じて必要な支援を受けながら、ベンチャー企業が短期間で成長できる仕組みを構築することが目的です。
プログラムの特徴
プログラムの特徴についてもう少し詳しく見ていきましょう。支援内容やコンテストまでの流れなどは以下のとおりです。
①コンテスト前
【試作支援】
■製品試作のサポート
・3Dプリンター(樹脂粉末積層造形機)等を無償で使用可能
・都産技研スタッフによる、製品試作サポート
■マーケティング支援
・専門スタッフによる、顧客課題の特定や市場規模のリサーチ、商品戦略などのマーケティング戦略アドバイス
②コンテストに向けたピッチ指導
■コンテスト出場選抜者向け専任講師による実践的なピッチトレーニング
③コンテストへの出場
■ベンチャーキャピタルや金融機関の前でピッチを披露
・最終採択者には上限1,000万円の開発資⾦と製品化・事業化に対するハンズオン支援
対象者
事業対象者の要件は、以下の①~③です。
①次の1・2または3のいずれかに該当すること
1.都内に本店または支店があり、法人登記を行ってから原則3年以内のベンチャー・中小企業等
2.東京都に納税・個人事業の開業の届出を行っており、開業の届出から原則3年以内の個人事業主
3.令和5年度末までに都内での創業を計画している個人
なお、コンテストまでに試作品が完成されていることが必要です。また、造形支援を受ける場合は原則 3D プリンターを利用してください。
②次のいずれかに該当するもの
■法人の場合、本店もしくは支店の所在等が都内に確認でき、都内で実質的に事業を行っていると判断できるカタログ等があること
■個人事業者の場合、都内で実質的に事業を行っていると判断できること
■創業予定者の場合、本事業の成果を活用し、都内で引き続き事業を営む予定であること
③次の全てに該当すること
■同一年度の応募は、一者につき一応募であること
■事業税、住民税等の滞納がないこと
■都産技研、都及び公社に対する債務の支払いが滞っていないこと
■過去に補助事業で不正等がないこと
■補助事業の継続が明確に可能であること
■関係法令等を遵守すること
■暴力団関係者・風俗関連業等ではないこと
■公的事業の支援先として適切であること
なお、以下の事業等は支援の対象外です。
■主要な部分が応募者による開発ではない事業
■開発・改良後、事業化を行わない事業
■開発・改良の全部または大部分を委託している事業
■本事業による事業化以外を目的とする事業
■本事業で開発・改良した成果物自体の販売を目的としている事業
■最終ユーザーとして特定の顧客を対象とするものや、汎用性がないと判断される事業
募集内容
募集内容は、以下のものです。
■革新的なアイデアや高度な技術等を有する都内ものづくりベンチャー・中小企業等による、まだ事業化に至っていないビジネスプラン
なお、試作品を用いて製品化・事業化プランを説明することが必要です。
支援内容
支援の内容は以下のとおりです。
■企業等の有する事業アイデアについて、都産技研が運営するデジタルものづくりサイトが無償で試作を支援する
■試作の事業化に関して、マーケティング視点での助言などを行う
■コンテストに向け、全2回のピッチトレーニングを行う
また、コンテストに通過した事業には、翌年度から上限 1,000 万円の資金支援やアクセラ支援が実施される予定です。
事業スキーム
本事業のスキームは、以下のとおりです。
■アイデア企業の募集
■試作支援
■コンテスト (審査会)
■事業化・アクセラ支援
応募方法
続いて、応募の方法について紹介します。応募は郵送とオンラインの両方で受け付けられています。いずれも締め切りは必着ですので、準備に時間がかかる場合には、オンラインでの応募が便利です。
募集期間
令和4年10月25日(火)~令和4年12月16日(金)
応募方法
応募はオンラインまたは郵送で行います。それぞれの応募方法は以下のとおりです。
【オンライン応募の場合】
応募フォームからお申し込みください。
【郵送の場合】
下記住所へご郵送ください。
〒101-0064
東京都千代田区神田猿楽町 2-8-11 VORT 水道橋Ⅲ 6F
株式会社ツクリエ Tokyo ものづくり Movement 事務局
審査方法
審査は、書類審査と面談の2段階で行われます。それぞれの「審査の視点」は以下のとおりです。
【審査の視点】
■応募要件を満たしているか
■製品に魅力があるか
■事業化を本気で目指しているか
■製品により事業が拡大できるか
■試作の実現度は高いか
■計画と想定スケジュールに無理はないか
応募スケジュール
応募と各審査のスケジュールは以下の通りです。
■コンテスト応募
令和4年10月25日~12月16日
■書類審査・面談審査・試作支援
随時実施
■推薦
令和5年1月上旬頃
■コンテスト出場選抜審査
1月下旬頃
■ピッチトレーニング
2月中旬頃
■コンテスト出場 (10者程度)
2月下旬~3月上旬
■事業家・アクセラ支援等 (7者程度)
4月~
活用のメリット
2016年にものづくりベンチャーの課題として挙げられた2つの谷は、その後のコロナ禍において、さらに深刻化しました。業績悪化によって多くの企業が倒産に追い込まれる現状では、ベンチャー企業を取り巻く環境はさらに厳しいものとなっています。
Tokyo ものづくり Movementは、資金面だけでなく、マーケティングや試作段階でのアドバイスが受けられることが大きな特徴のひとつです。
ポストコロナに向かって社会情勢が再び大きな変化を迎えようとするいまこそ、Tokyo ものづくり Movementを活用して、企業のさらなる成長に役立ててください。
まとめ
Tokyo ものづくり Movementは都内のベンチャー企業の成長を支援する事業です。若い企業による新しい事業の発展は、社会全体のイノベーションとなります。斬新なアイデアを持ちながらも資金面や試作製作に課題を抱える企業には、ぜひ活用してほしい制度です。