非正規労働者を処遇改善するともらえる助成金!キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)とは?

非正規雇用は、正規雇用と比べて、「雇用が不安定」「賃金が低い」「能力開発の機会が少ない」などといった課題があります。
平成29年度の総務省統計局調査によると、役員を除く雇用者5441万人のうち、正規従業員は前年同期に比べて44万人増加し、3422万人。非正規従業員については21万人増加し、2018万人という調査結果が出ています。
参考:総務省統計局 平成29年4~6月労働力調査結果の概要

少子高齢化は進行していくと考えられる中で、非正規雇用が増え続けるとどうなるでしょうか?
まずは、格差問題。正規雇用との格差が広がることで「結婚したくてもできない」「子供を産みたくても産めない」といった少子化加速の問題につながるでしょう。
また、労働者を雇用する企業側の影響についても考えなければなりません。
有期雇用である非正規社員が増えることで、長期的な人材育成ができないために企業成長の停滞や、停滞継続による利益低下も予想できます。

こうした負の連鎖を断ち切るため、非正規労働者の正社員化・処遇改善・人材育成を支援する制度として、厚生労働省が力を入れて取り組んでいるのが「キャリアップ助成金」です。
今回は「キャリアアップ助成金」の中でも、非正規雇用の処遇改善を行うことで、働くすべての方々が安心・納得して働き続ける環境整備を行う事業主を支援する助成事業をご紹介します。

1.キャリアアップ助成金とは?


「キャリアアップ助成金」とは、非正規雇用など企業内のキャリアアップ促進を行うため、
正社員化、人材育成、処遇改善などの取り組みをおこなう事業主を支援する制度です。

平成29年4月までは、キャリアアップ助成金のコース区分は以下3コースでした。
①正社員化コース
②人材育成コース
③処遇改善コース

平成29年4月からは、コース区分が以下8コースに変更されています。
正社員化コース
②人材育成コース
③賃金規定等改善コース
健康診断制度コース
⑤賃金規定等共通化コース
⑥諸手当制度共通化コース
⑦選択的適用拡大導入処遇改善コース
⑧短時間労働者労働時間延長コース

今回は、この中の「諸手当制度共通化コース」について詳しく見ていきます。

2.キャリアアップ助成金「諸手当制度共通化コース」とは?

キャリアアップ助成金の1つである「諸手当制度共通化コース」は、有期契約労働者等に対して、正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設置・適用した事業主が受給できる助成事業です。

「諸手当制度共通化コース」には、候補となる手当制度が11個あり、適用しやすいものを選択して導入することができます。
キャリアアップ助成金をきっかけに、まずは取り組みやすい制度から共通化して、労働者が安心して働くことのできる環境整備を検討してみませんか?

参考:厚生労働省 キャリアアップ助成金

3.どんな労働者が対象なの?

諸手当制度共通化コースは、次の①~④すべてに該当する労働者が対象です。

(1)雇用期間について

労働協約または就業規則に定められた、諸手当制度適用日前日から起算して3か月以上前の日から適用後6カ月以上継続して、支給対象事業主に雇用されている者

(2)雇用保険について

諸手当制度適用日以降の期間について、支給対象事業主の事業所で被保険者である者

(3)取締役の親族ではないこと

諸手当制度を新たに作成して適用を行った事業所の事業主、または取締役の3親等以外の者

(4)支給申請日において離職していないこと

4.対象事業主の範囲とは?

(1)キャリアアップ助成金(全コース共通)事業主要件

①雇用保険適用の事業主であること

②対象労働者の書類整備をしている事業主であること

出勤状況および賃金支払い状況等を明らかにする書類(労働者名簿など)の整備が必要です。

③中小企業事業主であること

④キャリアアップ管理者を置いていること

キャリアアップ管理者は、事業所ごとの設置が必要です。
「キャリアアップ管理者」の条件は、有期契約労働者などのキャリアアップに取り組む者として、必要な知識および経験を有していると認められる方、または事業主や役員の方が対象です。
条件を満たしキャリアアップ管理者となった方は、従業員への周知を行うなど、キャリアアップに向けた管理体制整備を行うことが必要です。

⑤キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を得ること

「キャリアアップ計画」の内容は、計画対象者、目標、期間を達成するために事業主が講じる措置などを盛り込むことが必要です。
キャリアアップ計画作成は、計画対象となる有期契約労働者等の意見も反映される様、労働組合など労働者代表からの意見を聴くことも必要です。

⑥キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること

諸手当制度を共通化する日までに、キャリアアップ計画を提出した上で取り組むことが必要です。

※キャリアアップ助成金「中小企業事業主」の範囲は、以下の通りです。

(2)「諸手当制度共通化コース」の事業主要件

1)次の11個のうち、いずれかの諸手当制度を新たに設けた事業主

キャリアアップ計画書に記載したキャリアアップ期間内に、諸手当制度を新たに就業規則等に規定し、雇用する有期労働者等に対して、正規雇用労働者と共通の以下11個ある諸手当制度のうち、いずれかを新たに設けた事業主が対象です。

①賞与
一般的に労働者の勤務成績に応じて、定期的または臨時に支給される手当(いわゆるボーナス)
②役職手当
管理職等、管理・監督などに準ずる職制上の責任のある労働者に対し、役割や責任の重さ等に応じて支給される手当
③特殊作業手当・特殊勤務手当
著しく危険、不快、不健康または困難な勤務その他の著しく特殊な勤務に従事する労働者に対して、勤務の特殊性に応じて支給される手当
④精皆勤手当
労働者の出勤奨励を目的として、事業主が定めた出勤成績を満たしている場合に支給される手当
⑤食事手当
勤務時間内における食事支出を補助することを目的として支給される手当
⑥単身赴任手当
勤務する事業所の異動、住居の移転、父母の疾病などのその他やむを得ない事業により、同居していた扶養親族と離別した労働者に対して、異動前の住居または事業所を異動後の住居または事業所との間の距離等に応じて支給される手当
⑦地域手当
複数の地域に事業所を有する場合に、特定地域に所在する事業所に勤務する労働者に対して、勤務地の物価や生活様式の地域差等に応じて支給される手当
⑧家族手当
扶養家族のある労働者に対して、扶養親族の続柄や人数等に応じて支給される手当
※扶養している子どもの数や教育に要する費用に応じて支給される子女教育手当も含みます
⑨住宅手当
自ら居住するための住宅(賃間を含む)または単身赴任する者で、扶養親族が居住するための住宅を借り受け、または所有している労働者に対する割増料金として支給される手当
⑩時間外労働手当
労働者に対して労働基準法第37条第1項に基づき、法定労働時間を超えた労働時間に対する割増賃金として支給される手当
⑪深夜・休日労働手当
労働者に対して労働基準法第37条第1項に基づき、休日の労働に対する割増賃金として支給される手当、または、同条第4項に基づき午後10時~午前5時までの労働に対する割増賃金として支給される手当

2)1)の11個ある諸手当制度の中で、次の3つのいずれかに該当し、6カ月分の賃金を支給した事業主

①賞与の諸手当については、6カ月分相当として50,000円以上支給した事業主
②役職手当~⑨住宅手当までについては、1ヵ月分相当として1つの手当につき3,000円以上支給した事業主
⑩時間外労働手当、または⑪深夜・休日労働手当については、割増率を法定割合の下限に5%以上加算して支給した事業主

3)導入する諸手当制度を該当者に適用させた事業主

導入する諸手当制度を全ての有期契約労働者等と正規雇用労働者等に適用させた、以下すべてに該当する事業主が対象です。

(1)諸手当制度の導入時期について

正規雇用労働者にかかる諸手当制度は、新たに有期契約労働者等に対して設ける諸手当制度と同時、またはそれ以前に導入している事業主。
また、諸手当制度を6カ月以上運用している事業主であり、支給申請日においても継続運用を続けていること。

(2)賃金規定、算出方法について

諸手当制度適用前と比べて、基本給等を減額していない事業主。
また、諸手当の支給を正規雇用労働者と同額、または同一の算出方法としている事業主。

(3)生産性要件について

生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合、生産性要件を満たした事業主。

生産性要件についてはこちらの記事をご参考ください: 生産性をあげるための方法10選!そして生産性向上に使える助成金は?

5.受給額

6.手続きの流れ

Step1:キャリアアップ計画の作成・提出(諸手当制度を共通化する日までに提出)
雇用保険適用所在地ごとに「キャリアアップ管理者」を配置し、労働組合等の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成した上で、管轄労働局へ提出しましょう。

Step2:諸手当制度共通化の実施
共通化後の「雇用契約書」や「労働条件通知書」を対象者への交付を忘れずに行いましょう。
共通化する諸手当制度は、適用前と比較して基本給等を減額した場合は対象外のため注意してください。

Step3:諸手当制度共通化後、6カ月分の賃金を支給

Step4:支給申請
諸手当支給後、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2カ月以内に申請を行いましょう。

Step5:支給決定

7.まとめ

いかがでしたか?
冒頭でも触れましたが、非正規労働者の増加は企業の長期的人材育成阻害の可能性や企業利益低下から経済状況悪化、さらには正規雇用との格差による少子化加速などといった影響が考えられます。そのため、非正規労働者を正社員へ転換を進めることは重要ですが、自ら希望する働き方として、非正規雇用で働くことを選択する方々が存在している、ということも理解して頂きたい事実です。
今回ご紹介した諸手当制度共通化コースは、非正規労働者等で働く方々に対して、現在および将来の生活に不安を抱えることのないように、賃金や福利厚生といった待遇面の充実を目的としています。
働く方すべてが安心・納得して働き続けられる環境を整備することは、少子高齢化が進む日本において取り組むべき課題の一つです。助成金が活用できる今、労働者が安心して働くことのできる環境整備のために、待遇面充実の取組を検討してみませんか?

参考:厚生労働省 キャリアアップ助成金