キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは、パート・アルバイトなどの有期雇用労働者等の基本給を定めた賃金規定等を3%以上増額改定した事業主に、労働者1人あたり最大7万円(中小企業・引き上げ率6%以上)を支給する厚生労働省の助成金です。1年度1事業所あたり100人まで申請でき、職務評価の活用と昇給制度の新設を行えば、1事業所あたり最大40万円の加算も受けられます。
2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金は全国加重平均1,177円(前年度比+56円)となり、10月1日から12月2日にかけて都道府県ごとに順次発効しています。最低賃金に合わせた時給の引き上げにも本コースは使えますが、最低賃金の発効日の前日までに改定・適用しないと、新最低賃金に達するまでの増額分は増額率に算入できません。発効日がまだ先の都道府県では、発効日から逆算して計画書の提出と改定を済ませることが受給のカギになります。
本記事では、令和8年度版パンフレットとQ&A(2026年7月29日改訂)に基づき、賃金規定等改定コースの支給額・加算措置・増額率の計算方法(時給の端数処理)・対象者・申請の流れ・不支給になりやすいケースを解説します。
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この記事の目次
キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースとは?
賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等(有期雇用労働者・無期雇用労働者などのいわゆる非正規雇用労働者)の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を実際に適用した場合に受けられる助成金です。賃金規定等とは、以下のように就業規則や労働協約において、賃金額の定めがあるものを指します。
・賃金規定(例:「基本給は時給によって定め、○級:○○円とする」)
・賃金一覧表・賃金テーブル(例:「1級:○○円、2級:○○円」。等級のほか「見習い」「一般」「中堅」等の区分名でも可)
これまでの賃金規定等より賃金額を引き上げることで本助成金の対象となるため、パート・アルバイトの賃上げを考えている事業者にとって有効な選択肢です。これまで賃金規定等がなく今回新たに策定した場合でも、対象労働者の過去3か月の賃金支給実態と比較して3%以上増額していることが確認できれば助成対象となります。
賃金規定等改定コースの助成額はいくら?引き上げ率別の早見表
賃金規定等改定コースの助成額は、基本給の引き上げ率に応じて労働者1人あたり4万円〜7万円(中小企業)です。1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人です。| 賃金引き上げ率 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 3%以上4%未満 | 4万円 | 2.6万円 |
| 4%以上5%未満 | 5万円 | 3.3万円 |
| 5%以上6%未満 | 6.5万円 | 4.3万円 |
| 6%以上 | 7万円 | 4.6万円 |
支給額の試算例は以下のとおりです。
| 取組内容(中小企業の場合) | 支給額 |
|---|---|
| パート従業員10人の賃金を3.5%引き上げた場合 | 4万円×10人=40万円 |
| 10人の賃金を6%引き上げ、あわせて昇給制度を新設した場合 | 7万円×10人+加算20万円=90万円 |
| 10人の賃金を職務評価を経て6%引き上げ、あわせて昇給制度を新設した場合 | 7万円×10人+加算20万円×2=110万円 |
引き上げ率が高いほど1人あたりの助成額も大きくなります。賃上げ幅を検討する際は、4%・5%・6%の区分ラインも意識しておくとよいでしょう。
中小企業に該当するかどうかの基準
中小企業かどうかは、業種ごとの「資本金の額・出資の総額」または「常時雇用する労働者の数」のいずれかで判定します。いずれも支給申請時点の額・人数で判断され、資本金等のない事業主は労働者数で判定します。
| 業種 | 資本金の額・出資の総額 | 常時雇用する労働者の数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
「常時雇用する労働者」とは、2か月を超えて使用され、かつ週の所定労働時間が通常の労働者と概ね同等である人を指します。
加算措置|職務評価・昇給制度の新設で最大40万円
賃金規定等改定コースには、本体助成に加えて2種類の加算措置があります。それぞれ1事業所あたり1回限りで、両方の要件を満たせば中小企業で合計40万円(大企業30万円)が加算されます。
| 措置内容 | 加算額 |
|---|---|
| 職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合 | 20万円(大企業15万円) |
| 有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合 | 20万円(大企業15万円) |
職務評価による加算の要件
職務評価とは、職務の大きさ(職務内容・責任の程度)を相対的に比較し、その職務に従事する労働者の待遇が職務の大きさに見合っているかを把握することをいいます。個々の労働者の仕事への取り組み方や能力を評価する人事評価・能力評価とは異なるためご注意ください。
職務評価の手法には、以下のように「要素別点数法」「単純比較法」「要素比較法」「分類法」の4つがあり、いずれの手法でも構いません。
加算を受けるためのポイントは以下のとおりです。
・有期雇用労働者等だけでなく正規雇用労働者も対象に含めて職務評価を実施すること
・職務評価結果と改定後の賃金テーブルの相関関係を示すこと(評価結果・等級格付け・賃金額の対応関係がわかる資料が必要)
・「単純比較法」「分類法」を用いる場合は、職務内容や責任の程度を職務説明書に整理する職務分析が必要
・「要素別点数法」を用いる場合は、各評価要素の重み(ウェイト)を原則、同一事業所内で共通にすることが必要
職務評価・職務分析の実施については、厚生労働省が設置する「働き方改革推進支援センター」で無料の個別相談やコンサルティングを受けられます。
昇給制度の新設による加算の要件
雇用するすべての有期雇用労働者等に適用される昇給制度を、新たに就業規則等に規定した場合に加算されます。賃金規定等の増額改定日と昇給制度の規定日は、同一のキャリアアップ計画期間内に含まれている必要があります。
<昇給制度の規定例>
「昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年○月○日をもって行うものとする。」
増額率「3%以上」はどう計算する?端数処理と注意点
増額率は「(改定後の基本給−改定前の基本給)÷改定前の基本給×100」で計算し、四捨五入せずに3%以上であることが必要です。比較するのは基本給であり、通勤手当などの諸手当は増額率の計算に含めません。
時給の端数を四捨五入すると3%に届かないことがある
厚生労働省のQ&Aでは、時給1,410円の等級を3%増額する例が示されています。1,410円×1.03=1,452.3円の端数を四捨五入して1,452円とすると、増額率は2.98%となり支給要件を満たしません。
| 改定前の時給 | 改定後の時給 | 増額率 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 1,410円 | 1,452円(四捨五入) | 2.98% | 対象外 |
| 1,410円 | 1,453円(切り上げ) | 3.04% | 3%以上4%未満(4万円) |
時給を設定する際は、円未満を切り上げたうえで、すべての等級について増額率を1つずつ検算しておくと安全です。
等級ごとに引き上げ率が異なる場合の支給単価
既存の賃金規定等を改定する場合は、対象労働者が位置づけられていない等級も含め、原則すべての等級を3%以上増額改定する必要があります。合理的な区分によらず等級間で引き上げ率が異なる場合は、最も低い引き上げ率の助成単価で支給額が決まります。
一方、業務レベル別など合理的な区分ごとに引き上げ率を変えた場合は、区分ごとの助成単価と人数で支給額を計算します。たとえば「上級職は5%、それ以外は3%」とした場合、上級職には6.5万円、それ以外には4万円(いずれも中小企業)が適用されます。
人事評価で降級した人は対象から外れる
賃金規定等を3%以上増額改定したものの、改定後の人事評価で降級し、結果として増額率が3%を下回った労働者は、対象労働者から除いて申請できます。降級後もなお3%以上の増額となっていれば、ほかの労働者と同じ増額率で対象に含められます。この場合、人事評価に係る規定や結果が確認できる書類の追加提出を求められます。
最低賃金の引き上げに合わせた賃上げでも使える?発効日前の改定がカギ
最低賃金の引き上げに合わせた賃上げでも、賃金規定等改定コースは利用できます。ただし、最低賃金の発効日以降に改定すると、新しい最低賃金に達するまでの増額分は増額率に含められません。最低賃金を上回る部分の増額分だけで3%以上を満たす必要があり、ハードルが大きく上がります。
2026年度の地域別最低賃金は、全国加重平均1,177円で、発効日は都道府県によって10月1日から12月2日まで分かれています。自社の事業所がある都道府県の発効日を確認し、その前日までに改定・適用を済ませるスケジュールを組みましょう。
発効日前後で増額率の扱いはどう変わる?
新最低賃金が1,280円の地域で、時給1,230円のパート従業員を1,280円に引き上げるケースで比べると、以下のとおりです。
| 改定(適用)のタイミング | 増額率の扱い | 判定(中小企業) |
|---|---|---|
| 最低賃金の発効日の前日まで | 1,230円→1,280円の増額分をすべて算入できる(4.06%) | 4%以上5%未満(5万円) |
| 最低賃金の発効日以降 | 1,280円に達するまでの増額分は算入できない | 対象外 |
いずれの場合も、改定日の前日までにキャリアアップ計画を提出していることが前提です。最低賃金対応を助成金につなげたい場合は、計画書の提出期限から逆算して準備を進めてください。
新最低賃金を下回る等級だけを引き上げてもよい?
新最低賃金を下回ることとなる等級だけを増額改定した場合も、支給対象となり得ます。ただし、新最低賃金の公示日以降、発効日の前日までに改定する必要があります。
厚生労働省のQ&Aでは、公示日以降・発効日の前日までに「最低賃金を下回る等級は5%、それ以外の等級は3%」引き上げた場合、それぞれの区分の助成単価と人数で支給額を決定するとされています。一方、発効日以後に最低賃金を下回る等級を新最低賃金まで引き上げただけで、最低賃金を上回る部分の増額が3%に満たない場合は対象外です。
基本給だけでは最低賃金を下回る場合の例外
改定前の賃金規定が最低賃金を下回っていた場合、最低賃金額まで引き上げても支給対象にはなりません。賃金規定が最低賃金を下回ること自体が法違反となるためです。
ただし、基本給に加えて残業代・賞与・退職金等の算定基礎に含まれる手当(地域手当など)を合算して最低賃金を上回っている場合は、例外的に「基本給相当額」で増額率を確認します。Q&Aでは、適用される最低賃金1,050円の地域で「基本給1,000円+地域手当60円」を「基本給1,040円+地域手当60円」に改定した例(1,060円→1,100円)が、支給対象となり得るものとして示されています。
賃金規定等改定コースの対象となる労働者・事業主
対象となる労働者の要件
以下のすべてに該当する労働者が対象です。
②増額改定した賃金規定等が適用され、改定前の基本給に比べて3%以上昇給していること
③増額改定した日の前日から起算して3か月前の日から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていないこと
④増額改定した日以降の6か月間、当該事業所において雇用保険被保険者であること
⑤事業主または取締役の3親等以内の親族でないこと
⑥支給申請日において離職していないこと
一部の労働者のみを対象とした賃上げでも、雇用形態別(正社員・パート・アルバイト等)、職種別、業務レベル別などの合理的な区分に基づく場合は助成対象となります。「定年後再雇用者を除く」といった雇用形態による限定も認められますが、年齢のみを理由とした限定(「○歳未満に限る」等)は認められません。
なお、改定日の前日から起算して3か月以内に採用した有期雇用労働者等にも、改定後の賃金規定等を適用する必要があります。ただし、対象労働者の要件①(3か月以上前から雇用)を満たさないため、支給人数には数えられません。
対象となる事業主の要件
以下のすべてを満たす事業主が対象です(⑤⑥は加算措置を受ける場合のみ)。
②賃金規定等を3%以上増額改定し、当該賃金規定等に属する有期雇用労働者等に適用させたこと(新たに賃金規定等を整備する場合を含む)
③増額改定前の賃金規定等を3か月以上運用していたこと(新規整備の場合は、整備前3か月分の賃金支払状況が確認できること)
④増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用し、かつ、対象労働者について定額で支給されている諸手当を減額していないこと
⑤【職務評価加算】有期雇用労働者等および正規雇用労働者を対象に、職務評価を実施したこと
⑥【昇給制度加算】雇用するすべての有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定したこと
正規雇用労働者の賃金規定等は、必ずしも増額改定する必要はありません。本コースで3%以上の増額が求められるのは、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等です。
全コース共通の要件
キャリアアップ助成金には、全コース共通の要件も定められています。こちらも忘れずに確認しておきましょう。
②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いていること(複数の事業所および労働者代表との兼任は不可)
③雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出していること(届出のみ、認定不要)
④対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできること
⑤キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだこと(支給申請時点で各コースに定めるすべての支給要件を満たす必要あり)
なお、以下に該当する事業主は受給できません。
・支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を未納の事業主
・支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
・性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
・暴力団と関わりのある事業主
・暴力主義的破壊活動を行った、または行う恐れがある団体等に属している事業主
・支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主
・支給申請時または支給決定時に、雇用保険適用事業所の事業主でない事業主
賃金規定等改定コースの申請の流れ|5つのステップ
申請は「計画書の提出→3%以上の増額改定→6か月の運用→支給申請→支給決定」の5ステップで進みます。キャリアアップ計画は改定日の前日まで、支給申請は6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内という2つの期限が特に重要です。
賃金締切日が月末・翌月15日払いの企業が4月1日に改定する場合のスケジュール例は、以下のとおりです。
| ステップ | 時期の目安 |
|---|---|
| 改定前の賃金規定等の運用 | 1月1日〜3月31日(3か月以上) |
| ①キャリアアップ計画の提出 | 3月31日まで(1か月前の3月初旬が目安) |
| ②賃金規定等の増額改定・適用 | 4月1日 |
| ③改定後の賃金規定等で運用 | 4月1日〜9月30日(6か月分) |
| 6か月目の賃金支払日 | 10月15日 |
| ④支給申請期間 | 10月16日〜12月15日 |
| ⑤支給決定 | 労働局の審査後 |
①キャリアアップ計画の作成・届出(改定日の前日まで)
雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置し、労働組合等の労働者代表の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長に提出(届出)します。労働局の認定は不要です。
計画期間は3年以上5年以内で設定します。提出期限は改定日の前日(行政機関の休日にあたる場合は翌開庁日)までですが、不備があった場合の再提出リスクを考慮し、1か月前を目安に余裕を持って提出しましょう。
ここでいう「改定日」は、就業規則の施行日ではなく増額後の賃金が給与に反映され始める「適用日」を指します。たとえば4月1日から増額後の賃金を当日分から支給する場合、適用日は4月1日です。
②賃金規定等の3%以上増額改定
賃金規定等のすべて(または合理的な区分に基づく一部)について、基本給が3%以上の増額となるように改定します。賃金一覧表を作成して取り組む場合の手順例は以下のとおりです。
・有期雇用労働者等の基本給を時給・日給または月給に換算する
・金額の多寡の順に一覧表を作成する
・すべての等級が3%以上の増額となるように改定し、改定後の基本給で実際に給与を支給する
常時10人以上の労働者を使用する事業所では、就業規則(賃金規定・賃金一覧表等の附則のみの改定を含む)の改定後、速やかに労働基準監督署へ届け出る必要があります。遅くとも支給申請前までに届出を済ませてください。
③改定後の賃金規定等で6か月運用・賃金支給
増額改定後の賃金規定等に基づき、6か月分の賃金を支給します。この間、基本給や定額で支給されている諸手当を適用前と比べて減額していないことが必要です。
勤務日数が11日未満の月は6か月のカウントから除かれます(有給休暇等により賃金が全額支給された日は出勤日とみなします)。時間外手当を翌月に別途支給している場合は、6か月分の時間外手当が支給される日が基準となります。
④助成金支給申請(賃金支給日の翌日から2か月以内)
増額改定後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して、2か月以内に管轄の都道府県労働局へ支給申請します。金融機関の休日等で前倒し支給した場合は、実際に支給した日の翌日から起算します。申請期間を1日でも過ぎると受理されないため、期限管理は厳重に行いましょう。
申請は窓口持参・郵送のほか、「雇用関係助成金ポータル」からの電子申請も可能です。郵送の場合は申請先への到着日が申請期間内である必要があります。電子申請にはGビズIDの取得が必要で、キャリアアップ計画の届出から電子申請で行っている必要があります。
⑤支給決定
労働局の審査を経て、支給・不支給が決定されます。支給申請書等の内容によっては、審査に時間がかかる場合があります。
申請時に提出する書類
賃金規定等改定コースの支給申請では、以下の書類の提出が必要です。
| 区分 | 書類 |
|---|---|
| 申請書類 | キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)、賃金規定等改定コース内訳(様式第3号・別添様式3)、支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)、支払方法・受取人住所届(未登録または振込口座変更の場合) |
| 添付書類 | 管轄労働局長に受理されたキャリアアップ計画書(写し)、改定前後の就業規則または労働協約等(写し)※新たに賃金規定等を整備した場合は改定前の規定は不要、対象労働者の改定前後の雇用契約書または労働条件通知書等(写し)、対象労働者の改定前後の賃金台帳等(写し)※改定前3か月分・改定後6か月分、出勤簿またはタイムカード等(写し)※賃金台帳等で出勤日数・労働時間数が確認できない場合、賃金台帳等に関する確認書 |
このほか、代理人が申請する場合は委任状(原本)、常時雇用する労働者数で中小企業であることを証明する場合は事業所確認票(様式第4号)の提出が必要です。職務評価加算を受ける場合は職務評価を実施したことがわかる書類(職務評価表や評価結果一覧表等)と賃金規定等への反映がわかる書類、昇給制度加算を受ける場合は規定前後の就業規則の提出も必要となります。
添付書類は実際に事業場で調製している原本またはその複写である必要があります。原本から転記・加工した書類の提出は、不支給や不正受給と判断される場合があるため避けてください。厚生労働省のホームページでは、申請前の確認に使える「支給申請チェックリスト」も公開されています。
他の助成金と併用できる?業務改善助成金・短時間延長コースとの関係
同一の取組について2つ以上の助成金を申請した場合、いずれか一方しか支給されない場合があります(併給調整)。賃上げ系の助成金と組み合わせる際は、以下の点に注意が必要です。
| 組み合わせ | 取扱い |
|---|---|
| 短時間労働者労働時間延長支援コース | 助成内容が重なるため併給不可(キャリアアップ助成金Q&A) |
| 業務改善助成金 | 業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者は、本コースの支給対象労働者として数えられない |
業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引き上げと設備投資等をセットで支援する制度です。最低賃金対応で両制度の活用を検討する場合は、どの労働者をどちらの助成金の対象にするかを事前に整理し、管轄の労働局に確認しておきましょう。
不支給になりやすいケースと申請前の注意点
キャリアアップ助成金は支給申請時の書類をもとに審査され、一度提出した書類の差し替えや訂正は原則できません。以下は、要件の誤認により不支給となりやすい代表的なケースです。
・時給の端数を四捨五入し、増額率が2.98%など3%未満になった
・基本給を3%以上上げた一方で、定額で支給している諸手当を減額した
・「○歳未満に限る」など、年齢のみを理由に対象者を限定した
・最低賃金の発効日以降に改定し、最低賃金を上回る部分の増額が3%に満たなかった
・支給申請期間(6か月分の賃金支給日の翌日から2か月以内)を過ぎた
・申請後に賃金の支払不足が判明した(追給して書類を差し替えることはできない)
・10人以上の事業所で、改定した就業規則を支給申請までに労働基準監督署へ届け出ていなかった
このほか、以下の点も申請前に確認しておきましょう。
・年度の途中で制度の要件等が変更になる場合があるため、取組の実施前に最新の要件を管轄の労働局またはハローワークに確認する
・支給申請書や添付書類の写し等は、支給決定から5年間保存する
・代理人に申請を任せていても、事業主名で申請する以上、不正受給に該当すれば事業主も処分の対象となる
厚生労働省のパンフレットによると、キャリアアップ助成金は例年約7万件活用される一方、約200件の不正受給が発覚しています。不正受給と判断されると、助成金の返還に加えて延滞金と違約金(返還額の20%)が請求され、5年間は雇用関係助成金を受給できなくなります。
賃金規定等改定コースに関するよくある質問
賃金規定等がなくても対象になる?
はい、新たに賃金規定等を作成して対象労働者の基本給を3%以上増額した場合も支給対象となります。その場合は、整備前3か月分の賃金台帳等と比較して3%以上の増額が確認できることが条件です。
パート・アルバイトの賃上げにも使える?
使えます。本コースの対象となる「有期雇用労働者等」には、パート・アルバイト・契約社員など、正規雇用労働者以外の有期・無期雇用労働者が広く含まれます。パート・アルバイトの時給を定めた賃金一覧表を3%以上増額改定するケースは、本コースの典型的な活用例です。
最低賃金の引き上げ分は増額率に含まれる?
最低賃金の発効日の前日までに改定・適用した場合は、新最低賃金に合わせた賃上げ分も含めて増額率を計算できます。発効日以降に改定した場合は、新最低賃金に達するまでの増額分は含められず、最低賃金を上回る部分の増額分だけで3%以上を満たす必要があります。
一部の労働者だけ昇給しても対象になる?
なります。ただし、雇用区分・職種・業務レベルなど、合理的な区分による限定である必要があります。年齢のみを理由とした限定は認められません。新最低賃金を下回る等級のみを改定する場合は、新最低賃金の公示日以降、発効日の前日までに改定する必要があります。
基本給を上げても諸手当を減額したら対象外になる?
対象外になります。基本給を3%以上増額改定した場合でも、定額で支給されている諸手当を合理的な理由なく減額していると支給対象外となります。
時給の端数は四捨五入してもよい?
四捨五入で3%を下回ると対象外です。時給1,410円を3%増額すると1,452.3円になりますが、四捨五入して1,452円にすると増額率は2.98%となり要件を満たしません。円未満は切り上げて1,453円以上に設定しましょう。
正社員の賃金も3%以上上げる必要がある?
必要ありません。本コースで3%以上の増額改定が求められるのは有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等であり、正規雇用労働者の賃金規定等は必ずしも改定する必要はありません。ただし、職務評価加算を受ける場合は、正規雇用労働者も含めて職務評価を実施する必要があります。
改定後に休職した労働者がいる場合はどうなる?
休職や育児・介護休業などで出勤がない月は、勤務した日に含めません。支給申請期間終了までに、勤務日数11日以上の月の賃金を6か月分支給できていない労働者は、対象労働者数から除いて助成額を算定します。その労働者も後から6か月分の賃金が支払われた場合は、別途支給申請ができます。
業務改善助成金と同じ労働者で両方受けられる?
業務改善助成金のQ&Aでは、業務改善助成金で賃金引上げの対象とした労働者を、キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)の支給対象労働者として数えることはできないとされています。両制度の活用を検討する場合は、対象労働者の切り分けを事前に管轄の労働局へ確認してください。
外国人技能実習生も対象になる?
キャリアアップ助成金のQ&Aでは、外国人技能実習生は正社員化コースの対象外ですが、賃金規定等改定コースを含む処遇改善系のコースでは対象となり得るとされています。特定技能1号の在留資格の方も同様です。
従業員10人未満で就業規則がなくても申請できる?
就業規則または労働協約に賃金規定等を定める必要があります。10人未満の事業所で就業規則を作成する場合は、取組日までに事業所内に周知したうえで、支給申請前に労働基準監督署へ届け出るか、事業主と労働者代表の氏名等を記載した申立書を添付します。
職種ごとに時期をずらして改定してもよい?
可能です。たとえば9月1日に事務職、10月1日に現場職の基本給をそれぞれ3%以上改定した場合、区分ごとに6か月分の賃金を支払った後、それぞれ支給申請できます。改定の対象となる賃金規定等は、改定前3か月から支給申請日まで運用している必要があります。
毎年申請できる?加算は何回まで?
本体助成は、年度ごとに賃金規定等を増額改定すれば繰り返し申請できます(1年度1事業所あたり上限100人)。一方、職務評価加算・昇給制度加算はそれぞれ1事業所あたり1回限りです。
参考:キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A(令和8年7月29日)
まとめ
キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給を3%以上引き上げることで、1人あたり最大7万円(1年度上限100人)の助成が受けられる制度です。職務評価の活用と昇給制度の新設を組み合わせれば、1事業所あたり最大40万円が加算されます。
2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円となり、10月から12月にかけて順次発効します。最低賃金対応の賃上げを助成金につなげるなら、発効日の前日までに改定・適用を済ませ、その前日までにキャリアアップ計画を提出しておくことが欠かせません。
時給の端数処理や諸手当の減額といった細かな点で不支給になるケースもあります。計画書の提出期限と支給申請期間の2つの期限を押さえ、計画的に取り組みましょう。
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