キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースとは?1人最大7万円の支給額・要件・申請の流れ【2026年度】

公開日:2019/7/28 更新日:2026/8/4
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非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するため、処遇改善等の取組を実施した事業主を支援する「キャリアアップ助成金」。その中で「賃金規定等改定コース」は、有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定した事業主を支援するコースです。

賃金の引き上げ率に応じて労働者1人あたり最大7万円が助成されるほか、職務評価の活用や昇給制度の新設により、1事業所あたり最大20万円の加算も受けられます。パート・アルバイトの賃上げを検討している事業者にとって、人件費負担を抑えながら処遇改善を進められる制度です。

本記事では、令和8年度版の最新情報に基づき、賃金規定等改定コースの支給額・対象要件・申請の流れをわかりやすく解説します。

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この記事の目次

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キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コースとは

賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等(有期雇用労働者・無期雇用労働者などのいわゆる非正規雇用労働者)の基本給の賃金規定等を3%以上増額改定し、その規定を実際に適用した場合に受けられる助成金です。賃金規定等とは、以下のように就業規則や労働協約において、賃金額の定めがあるものを指します。

・就業規則本体の賃金条項(例:「契約社員およびパートタイマーの賃金を○○のとおり定める」)
・賃金規定(例:「基本給は時給によって定め、○級:○○円とする」)
・賃金一覧表・賃金テーブル(例:「1級:○○円、2級:○○円」。等級のほか「見習い」「一般」「中堅」等の区分名でも可)


出典:キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)

これまでの賃金規定等より賃金額を引き上げることで本助成金の対象となるため、パート・アルバイトの賃上げを考えている事業者であれば、タイミングとしても制度としても有効な選択肢です。なお、これまで賃金規定等がなく今回新たに策定した場合でも、対象労働者の過去3か月の賃金支給実態と比較して3%以上増額していることが確認できれば助成対象となります。

キャリアアップ助成金には、以下のコースが用意されています。


キャリアアップ助成金の全体像については、以下の記事を参考にしてください。

あわせて読みたい:キャリアアップ助成金とは?【2026年・令和8年】全コースの支給額と対象事業者を解説

キャリアアップ助成金とは?令和8年度の全6コース・支給額・対象事業者を解説【2026年】

賃金規定等改定コースの助成額|引き上げ率別の早見表

賃金規定等改定コースでは、基本給の引き上げ率に応じて、労働者1人あたり以下の助成金が支給されます。

賃金引き上げ率中小企業大企業
3%以上4%未満4万円2.6万円
4%以上5%未満5万円3.3万円
5%以上6%未満6.5万円4.3万円
6%以上7万円4.6万円

中小企業の場合、引き上げ率が3%以上4%未満で4万円、6%以上なら最大の7万円となります。なお、1年度1事業所あたりの支給申請上限人数は100人です。

支給額の試算例は以下のとおりです。

取組内容(中小企業の場合)支給額
10人のパート従業員の賃金を3.5%引き上げた場合4万円×10人=40万円
10人の賃金を6%引き上げ、あわせて昇給制度を新設した場合7万円×10人+加算20万円=90万円

引き上げ率が高いほど1人あたりの助成額も大きくなるため、賃上げ幅を検討する際は助成額の区分(4%・5%・6%のライン)も意識しておくとよいでしょう。

注意点として、増額率は小数点以下切り捨てで判定されます。たとえば計算結果が2.98%の場合、四捨五入して3%とはみなされず支給対象外となるため、時給の端数設定には十分ご注意ください。

加算措置|職務評価・昇給制度の新設で最大20万円

賃金規定等改定コースには、本体助成に加えて2種類の加算措置があります。いずれも1事業所あたり1回限りです。

措置内容加算額
職務評価の手法の活用により賃金規定等を増額改定した場合20万円(大企業15万円)
有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定した場合20万円(大企業15万円)

職務評価による加算

職務評価とは、職務の大きさ(職務内容・責任の程度)を相対的に比較し、その職務に従事する労働者の待遇が職務の大きさに見合っているかを把握することをいいます。個々の労働者の仕事への取り組み方や能力を評価する人事評価・能力評価とは異なるためご注意ください。

職務評価の手法には、以下のように「要素別点数法」「単純比較法」「要素比較法」「分類法」の4つがあり、いずれの手法でも構いません。


出典:キャリアアップ助成金のご案内(令和8年度版)

加算を受けるためのポイントは以下のとおりです。

・賃金規定等の改定より前(同日可)に職務評価を実施すること(改定後の実施は加算対象外)
・有期雇用労働者等だけでなく正規雇用労働者も対象に含めて職務評価を実施すること
・職務評価結果と改定後の賃金テーブルの相関関係を示すこと(評価結果・等級格付け・賃金額の対応関係がわかる資料が必要)
・「単純比較法」「分類法」を用いる場合は、職務内容や責任の程度を職務説明書に整理する職務分析が必要
・「要素別点数法」を用いる場合は、各評価要素の重み(ウェイト)を原則、同一事業所内で共通にすることが必要

なお、職務評価・職務分析の実施については、厚生労働省が設置する「働き方改革推進支援センター」で無料の個別相談やコンサルティングを受けられます。

昇給制度の新設による加算

雇用するすべての有期雇用労働者等に適用される昇給制度を、新たに就業規則等に規定した場合に加算されます。賃金規定等の増額改定日と昇給制度の規定日は、同一のキャリアアップ計画期間内に含まれている必要があります。

<昇給制度の規定例>
「昇給は、勤務成績その他が良好な労働者について、毎年○月○日をもって行うものとする。」

賃金規定等改定コースの対象となる労働者・事業主

対象となる労働者の要件

以下のすべてに該当する労働者が対象です。

①賃金規定等を増額改定した日の前日から起算して3か月以上前の日から、増額改定後6か月以上の期間継続して雇用されている有期雇用労働者等であること
②増額改定した賃金規定等が適用され、改定前の基本給に比べて3%以上昇給していること
③増額改定した日の前日から起算して3か月前の日から支給申請日までの間に、合理的な理由なく基本給および定額で支給されている諸手当を減額されていないこと
④増額改定した日以降の6か月間、当該事業所において雇用保険被保険者であること
⑤事業主または取締役の3親等以内の親族でないこと
⑥支給申請日において離職していないこと

一部の労働者のみを対象とした賃上げでも、雇用形態別(正社員・パート・アルバイト等)、職種別、業務レベル別などの合理的な区分に基づく場合は助成対象となります。ただし、年齢のみを理由とした限定(「○歳未満に限る」等)は認められません。

また、国や都道府県による最低賃金の引き上げがあった場合、最低賃金の効力発生日以降の改定については、最低賃金に達するまでの増額分は増額率に含められない点にも注意が必要です。

最低賃金はいくら?【2026年最新】47都道府県一覧|全国平均1,177円・引上額・発効日はいつから

対象となる事業主の要件

以下のすべてを満たす事業主が対象です(⑤⑥は加算措置を受ける場合のみ)。

①有期雇用労働者等に適用される賃金規定等を作成していること
②賃金規定等を3%以上増額改定し、当該賃金規定等に属する有期雇用労働者等に適用させたこと(新たに賃金規定等を整備する場合を含む)
③増額改定前の賃金規定等を3か月以上運用していたこと(新規整備の場合は、整備前3か月分の賃金支払状況が確認できること)
④増額改定後の賃金規定等を6か月以上運用し、かつ、対象労働者について定額で支給されている諸手当を減額していないこと
⑤【職務評価加算】有期雇用労働者等および正規雇用労働者を対象に、職務評価を実施したこと
⑥【昇給制度加算】雇用するすべての有期雇用労働者等に適用される昇給制度を新たに規定したこと

既存の賃金規定等を改定する場合は、対象労働者が位置づけられていない等級も含め、原則すべての等級を3%以上増額改定する必要があります。合理的な区分によらず等級間で引き上げ率が異なる場合は、最も低い引き上げ率の助成単価で支給額が決定されます。

全コース共通の要件

キャリアアップ助成金には、全コース共通の要件も定められています。こちらも忘れずに確認しておきましょう。

①雇用保険適用事業所の事業主であること
②雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いていること(複数の事業所および労働者代表との兼任は不可)
③雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に係るキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長に提出していること(届出のみ、認定不要)
④対象労働者の労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにできること
⑤キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだこと(支給申請時点で各コースに定めるすべての支給要件を満たす必要あり)

なお、以下に該当する事業主は受給できません。

・支給申請した年度の前年度より前のいずれかの保険年度の労働保険料を未納の事業主
・支給申請日の前日から過去1年間に、労働関係法令の違反を行った事業主
・性風俗関連営業、接待を伴う飲食等営業またはこれらの営業の一部を受託する営業を行う事業主
・暴力団と関わりのある事業主
・支給申請日または支給決定日の時点で倒産している事業主

賃金規定等改定コースの申請の流れ|5つのステップ

申請の流れは以下の5つのステップです。特に、キャリアアップ計画は賃金規定等を改定する日の前日まで、支給申請は6か月分の賃金を支給した日の翌日から2か月以内という期限に注意しましょう。

①キャリアアップ計画の作成・届出(賃金規定等を改定する日の前日まで)

雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置し、労働組合等の労働者代表の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成、管轄労働局長に提出(届出)します。2025年4月より認定は不要となり、届出のみに簡素化されました。

計画期間は3年以上5年以内で設定します。提出期限は取組実施日の前日までですが、不備があった場合の再提出リスクを考慮し、1か月前を目安に余裕を持って提出しましょう。

②賃金規定等の3%以上増額改定

賃金規定等のすべて(または合理的な区分に基づく一部)について、基本給が3%以上の増額となるように改定します。賃金一覧表を作成して取り組む場合の手順例は以下のとおりです。

・有期雇用労働者等の基本給を時給・日給または月給に換算する
・金額の多寡の順に一覧表を作成する
・すべての等級が3%以上の増額となるように改定し、改定後の基本給で実際に給与を支給する

なお、常時10人以上の労働者を使用する事業所では、就業規則(賃金規定・賃金一覧表等の附則のみの改定を含む)の改定後、速やかに労働基準監督署へ届け出る必要があります。遅くとも支給申請前までに届出を済ませてください。

③改定後の賃金規定等で6か月運用・賃金支給

増額改定後の賃金規定等に基づき、6か月分の賃金を支給します。この間、基本給や定額で支給されている諸手当を適用前と比べて減額していないことが必要です。

なお、勤務日数が11日未満の月は6か月のカウントから除かれます(有給休暇等により賃金が全額支給された日は出勤日とみなします)。

④助成金支給申請(賃金支給日の翌日から2か月以内)

増額改定後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して、2か月以内に管轄の都道府県労働局へ支給申請します。

たとえば、賃金締切日が月末・翌月15日払いの企業が4月1日に改定した場合、9月30日が6か月目の賃金締切日、10月15日が賃金支払日となり、支給申請期間は10月16日〜12月15日です。金融機関の休日等で前倒し支給した場合は、実際に支給した日の翌日から起算します。申請期間を1日でも過ぎると受理されないため、期限管理は厳重に行いましょう。

申請は窓口持参・郵送のほか、「雇用関係助成金ポータル」からの電子申請も可能です。電子申請にはGビズIDの取得が必要で、キャリアアップ計画の届出から電子申請で行っている必要があります。

⑤支給決定

労働局の審査を経て、支給・不支給が決定されます。申請状況により、4〜5か月など審査に時間を要する場合があります。

申請時に提出する書類

賃金規定等改定コースの支給申請では、以下の書類の提出が必要です。

申請書類・キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)
・賃金規定等改定コース内訳(様式第3号・別添様式3)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
・支払方法・受取人住所届(未登録または振り込み口座変更の場合)
添付書類・管轄労働局長に受理されたキャリアアップ計画書(写し)
・改定前後の就業規則または労働協約等(写し)※新たに賃金規定等を整備した場合、改定前の規定は不要
・対象労働者の改定前後の雇用契約書または労働条件通知書等(写し)
・対象労働者の改定前後の賃金台帳等(写し)※改定前3か月分・改定後6か月分
・対象労働者の改定前後の出勤簿またはタイムカード等(写し)※賃金台帳等で出勤日数および労働時間数が確認できない場合
・賃金台帳等に関する確認書

上記の他、代理人が申請する場合は委任状(原本)、常時雇用する労働者数で中小企業であることを証明する場合は事業所確認票(様式第4号)の提出が必要です。職務評価加算を受ける場合は職務評価を実施したことがわかる書類(職務評価表や評価結果一覧表等)と賃金規定等への反映がわかる書類、昇給制度加算を受ける場合は規定前後の就業規則の提出も必要となります。

なお、添付書類は実際に事業場で調製している原本またはその複写である必要があります。原本から転記・加工した書類の提出は、不支給や不正受給と判断される場合があるため避けてください。

申請前に確認したい注意点

申請前に、以下の点をご確認ください。

・同一の取組について2つ以上の助成金を申請した場合、いずれか一方しか支給されない場合があります(併給調整)。特に、短時間労働者労働時間延長支援コースとは助成内容が重なるため併給できません。
・本助成金は支給申請時の書類をもとに審査されます。一度提出した書類の差し替えや訂正は原則できないため、申請前に要件をすべて満たしているか十分確認してください。
・年度の途中で制度の要件等が変更になる場合があります。取組を実施する前に、必ず最新の要件を管轄の労働局またはハローワークにご確認ください。
・支給申請書や添付書類の写し等は、支給決定日から5年間の保存が必要です。

賃金規定等改定コースに関するよくある質問

賃金規定等がなくても対象になる?

はい、新たに賃金規定等を作成して対象労働者の基本給を3%以上増額した場合も支給対象となります。その場合は、整備前3か月分の賃金台帳等と比較して3%以上の増額が確認できることが条件です。

パート・アルバイトの賃上げにも使える?

使えます。本コースの対象となる「有期雇用労働者等」には、パート・アルバイト・契約社員など、正規雇用労働者以外の有期・無期雇用労働者が広く含まれます。パート・アルバイトの時給を定めた賃金一覧表を3%以上増額改定するケースは、本コースの典型的な活用例です。

最低賃金の引き上げ分は増額率に含まれる?

原則として含まれません。賃金規定が最低賃金を下回ることは法違反となるため、最低賃金を上回る部分の増額分しか計上できません。ただし、新最低賃金の公示日以降・発効日の前日までに増額改定を行った場合は、新最低賃金に合わせた賃上げ分も含めて増額率を計算できます。

一部の労働者だけ昇給しても対象になる?

なります。ただし、雇用区分・職種・業務レベルなど、合理的な区分による限定である必要があります。年齢のみを理由とした限定は認められません。

基本給を上げても諸手当を減額したら対象外になる?

対象外になります。基本給を3%以上増額改定した場合でも、定額で支給されている諸手当を合理的な理由なく減額していると支給対象外となります。

毎年申請できる?加算は何回まで?

本体助成は、年度ごとに賃金規定等を増額改定すれば繰り返し申請できます(1年度1事業所あたり上限100人)。一方、職務評価加算・昇給制度加算はそれぞれ1事業所あたり1回限りです。


参考:キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース以外)Q&A

まとめ

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは、有期雇用労働者等の基本給を3%以上引き上げることで、1人あたり最大7万円(上限100人)の助成が受けられる制度です。職務評価の活用や昇給制度の新設を組み合わせれば、さらに最大20万円が加算されます。

物価上昇や最低賃金の引き上げが続くなか、パート・アルバイトの賃上げは多くの事業者にとって避けて通れない課題です。本コースを活用すれば、賃上げに伴う人件費負担を抑えつつ、従業員の定着率向上や採用力の強化にもつなげられます。

キャリアアップ計画の届出は賃金改定日の前日までという期限がある点、支給申請は6か月分の賃金支給後2か月以内という点に注意しつつ、計画的に取り組みましょう。

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