この記事は、2020年4月に執筆したものになり情報が異なりますのでサイトTOPより
情報をご確認ください。
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今回は、事業承継やM&Aを行い経営革新等を図る中小企業者等の設備投資などを支援する「事業承継補助金」をご紹介します。
2017年度に中小企業庁が発表した「事業承継マニュアル」によりますと中小企業・小規模事業者の経営者のうち、65歳以上の経営者は全体の約4割を占め、今後数年で、多くの中小企業が事業承継のタイミングを迎えるとみられています。業績に問題はないのに後継者がいないという理由で廃業するケースもみられ、「雇用の創出」や「新技術の開発」などの役割を担う中小企業・小規模事業者の維持、成長は日本の今後を左右する重要な課題として捉えられています。
令和2年4月10日から公募開始となる事業承継補助金は、事業を引き継いだ中小企業等が行う新しいチャレンジを応援する制度で、申請型によりますが補助額の上乗せ等の要件を満たした場合、最大で1,200万円(補助率2/3)の補助が受けられます。
この度の新型コロナウイルス感染拡大による混乱で、業績の見通しを立てることや経営状況の把握も困難な状況かもしれません。事業承継補助金では、商工会議所や銀行などの認定経営革新等支援機関(中小企業への専門性の高い支援を行うために認定された機関)のサポートを受けながら計画から事業実施まで行いますので、少しでも事業承継に興味のある方は内容をご確認ください。
この記事の目次
事業の流れの確認
事業承継補助金の事業の流れを簡潔にあらわすと、以下5つのステップで説明できます。
①認定経営革新等支援機関(商工会議所や銀行など)へ経営相談をする。
▼認定支援機関一覧はこちらから
全国の認定経営革新等支援機関
②認定支援機関による資格要件、補助事業計画の内容、対象経費内訳などの確認後、「確認書」を発行してもらう。
③事業承継補助金の交付申請(電子申請)を行う。※「gBizIDプライム」のアカウントが必要です。
④交付決定の通知後に事業を実施し、補助金事務局へ実績報告を行う。
⑤事務局より確定通知を受けて補助金の請求を行い、補助金が交付される。
このような流れとお考えください。
まずは、本記事で補助金についての理解を深めていただき、その後活用を検討する場合は、認定支援機関への相談やgBizIDプライムの取得を行うといった流れがスムーズかと思います。
受け継ぐ想いに、チカラを!「事業承継補助金」とは?
事業承継補助金という名称を聞いて、M&A等にかかる費用が補助されるのかと思うかもしれませんが、そうではありません。事業を引き継ぐ人(承継者)が行う経営革新等のための取り組みが補助される制度で、たとえば店舗・事務所の工事、機械機器の調達、マーケティングや広報などにかかる経費が補助対象となり、経営資源を譲渡した事業者の廃業費も対象に含まれます。(※廃業費は単独で申請することはできません。)補助金の申請は原則として事業を引き継ぐ承継者が行います。
「事業承継補助金」の活用イメージがわかない場合は、公式サイトで採択事例をみることができますのでご確認ください。ここで1つ、サイトの事例集よりⅡ型:事業再編・事業統合支援型の例をご紹介します。
【事例:衰退していく街の電器店の新たなビジネスモデルの構築】
承継者:家電量販店や通販サイトで販売された家電の配送設置を行う電気工事業者
被承継者:家電販売・修理・リフォーム等を行う街の電器屋
承継前の事業課題
「承継者の課題:家電製品の販売をしたいが店舗がないため難しい」
「被承継者の課題:子どもが事業を承継しない」
承継後の経営革新等の取組み
老朽化した店舗の改修工事を行い、電器店の2Fにレストランを設置。レストランには大型モニターを設置してスポーツ観戦(パブリックビューイング)を実施し、子育て世代にはキッズスペースで新しい電化製品の体験していただける楽しい空間を提供。
補助対象経費の内訳
設備費(空調機器工事費)
外注費(リフォーム店舗デザイン費等)
なお、事業承継を行う承継者は、 認定市区町村等による特定創業支援等事業を受ける者など、一定の実績や知識などを有することや、地域の雇用をはじめ地域経済全般を牽引する事業を行う者であることなどの要件を満たす必要があります。
事業承継補助金の補助対象者とは?
補助対象となるのは、以下に該当する中小企業、個人事業主、特定非営利活動法人です。
(1)日本国内に拠点もしくは居住地を置き、日本国内で事業を営む者であること。(※個人事業主は青色申告者であること等の他要件あり)
(2)地域の雇用の維持、創出や地域の強みである技術、特産品で地域を支えるなど、地域経済に貢献している中小企業者等であること。
(3) 補助対象者又はその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会勢力との関係を有しないこと。
(4)補助対象者は、法令順守上の問題を抱えている中小企業者等でないこと。
(5) 補助対象者は、経済産業省から補助金指定停止措置または指名停止措置が講じられていない中小企業者等であること。
(6)補助対象事業に係る全ての情報について、事務局から国に報告された後、統計的な処理等をされて匿名性を確保しつつ公表される場合があることについて同意すること。
(7)事務局が求める補助事業に係る調査やアンケート等に協力できること。
事業承継補助金の補助対象事業とは?
では補助対象事業について、今一度確認しましょう。
ポイントは4つあります。
(1) 被承継者から事業を引き継いだ承継者による経営革新等に係る取り組みであること。(被承継者、承継者ともに中小企業者であること)
(2) 補助対象事業は、以下に例示する内容を伴うものであること。
・新商品の開発又は生産
・新役務の開発又は提供
・商品の新たな生産又は販売の方式の導入
・役務の新たな提供の方式の導入
・事業転換による新分野への進出
・上記によらず、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組 等
(3) 補助対象事業は以下のいずれにも合致しないこと。
・公序良俗に反する事業
・社会通念上、不適切であると判断される事業
・国(独立行政法人を含む)の他の補助金、助成金を活用する事業
(4)補助対象事業期間を通じた事業計画の実行支援が、認定経営革新等支援機関の記名・押印がある確認書により確認される事業であること。
(2)の例示内容からも、事業承継補助金では、新商品の開発や新分野への進出などの「新たなチャレンジ」が求められることがわかります。
事業承継補助金の補助対象経費とは?
対象経費は、補助事業を実施するために必要な経費で、次の要件をすべて満たすものです。
・使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
・承継者が交付決定日以降、補助事業期間内に契約・発注を行い支払った経費 (原則として、被承継者が取り扱った経費は対象外)
・補助事業期間完了後の実績報告で提出する証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費
対象経費には「事業費(新たなチャレンジを行うために必要な経費)」と「廃業費(事業の廃業・廃止を伴う事業転換に必要な経費)」の2種類があります。廃業費は事業転換により廃業登記費、在庫処分費、解体・処分費などがある場合のみ認められるもので、単独での申請はできません。
事業承継補助金の補助率・補助上減額
補助率は原則枠で1/2以内となり、要件を満たす申請であれば補助率が2/3以内になります。上限額はI型、Ⅱ型で異なります。
まずI型から確認しましょう。
■I型の補助内容
【原則枠】補助率:1/2以内 上限額:225万円 ※事業転換に伴う補助額上乗せの場合、上限額:450万円
【ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠】補助率:2/3以内 上限額:300万円 ※事業転換に伴う補助額上乗せの場合、上限額:600万円
■Ⅱ型の補助内容
【原則枠】補助率:1/2以内 上限額:450万円 ※事業転換に伴う補助額上乗せの場合、上限額:900万円
【ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠】補助率:2/3以内 上限額:600万円 ※事業転換に伴う補助額上乗せの場合、上限額:1,200万円
■ベンチャー型事業承継枠にて2/3以内の補助率となる要件は以下のとおりです。
(以下すべての要件を満たす必要があります)
・新商品の開発又は生産、新役務の開発又は提供、もしくは事業転換による新分野への進出を行う計画であること。
・事務局が定める期間において従業員数を一定以上増加させる計画であること。
・補助事業実施期間内において補助事業に直接従事する従業員を 1 名以上雇い入れた事実が確認できること。(有期の雇用契約は対象外)
■生産性向上枠にて2/3以内の補助率となる要件は以下のとおりです。
承継者が2017年4月1日以降から交付申請日までの間に、本補助事業において申請を行う事業と同一の内容で「先端設備等導入計画」又は「経営革新計画」いずれかの認定を受けていること。
なお、形式的に補助率要件を満たしている場合でも2/3以内の補助率が適用されない場合があります。交付決定される補助率は、審査により確定されるものとお考えください。
事業スケジュール
では最後に事業スケジュールを確認しましょう。
【交付申請受付】
2020年4月10日(金)~2020年5月29日(金)19:00
【交付決定日】
2020年7月(予定)
【事業実施期間】
交付決定日~最長2020年12月31日(木)まで
【実績報告期間】
事業完了日から30日以内
※補助金の交付には、実績報告書の提出後2~3か月程度の期間を要します。
まとめ
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、令和2年4月7日に緊急事態宣言が発令されました。宣言の効力は5月6日までで、感染が拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都道府県が対象となりました。緊急事態宣言を受けて4月8日から当面の間の臨時休業を決断した店舗も多くあります。
これからはじまる自粛が企業の事業活動にどのくらい影響を及ぼすのか、またその先に何が待ち受けているのか、定かではないことばかりです。企業の存続のためにできることを考え、以前からM&Aを検討していた、事業承継が取り得る戦略の1つに入っている、という場合は「事業承継補助金」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。