「他社をM&Aで買収したいが、仲介手数料が数千万円規模で踏み切れない」「FA費用やデューデリジェンス費用の負担が重い」――こうした課題を抱える買い手企業にとって、頼れる制度が事業承継・M&A補助金の「専門家活用枠 買い手支援類型」です。
専門家活用枠 買い手支援類型は、M&Aで企業や事業を譲り受ける買い手が支払う仲介手数料・FA費用・DD費用などを補助する制度です。補助上限は通常600万円(DD費用申請で+200万円、廃業費併用で+300万円)、100億企業特例を使えば最大2,000万円まで引き上げ可能で、中堅クラスのM&A戦略にも活用できる規模です。
2026年9月4日に開示された16次公募の公募申請受付期間は、2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00。M&Aによる事業拡大を計画している買い手企業にとって、いま準備すべきタイミングです。
この記事では、専門家活用枠 買い手支援類型の対象者・補助額・対象経費・M&A支援機関登録制度・100億企業特例の活用法・採択率を上げるコツまで、補助金ポータルが網羅的に解説します。
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この記事の目次
専門家活用枠 買い手支援類型とは何ですか?M&Aで企業を譲り受ける買い手の専門家費用を支援
専門家活用枠 買い手支援類型の位置づけ
専門家活用枠 買い手支援類型は、事業承継・M&A補助金の4つの支援枠の中で、M&Aの実行フェーズで発生する専門家費用を支援する位置づけです。
事業承継・M&A補助金の支援枠を、M&Aのフェーズで整理すると以下のようになります。
- 事業承継促進枠:5年以内の親族内承継・従業員承継に伴う設備投資等を支援
- 専門家活用枠:M&Aの仲介手数料・FA費用を支援 ←この記事で解説
- PMI推進枠:M&A後の経営統合を支援
- 廃業・再チャレンジ枠:廃業費用を支援
買い手支援類型は、事業再編・事業統合に伴い株式・経営資源を譲り受ける予定の中小企業者等が対象です。仲介手数料・FA費用は数百万円〜数千万円規模になるケースも多く、補助金の活用可否が買収判断を左右することもあります。
売り手支援類型・小規模売り手支援類型との関係
16次公募の専門家活用枠は、3つの類型と買い手支援類型の特例で構成されています。
| 類型 | 対象 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|---|
| 買い手支援類型(Ⅰ型) | M&Aで譲り受ける買い手 | 2/3以内 | 600万円(DD申請で800万円) |
| 買い手支援類型 100億企業特例 | 100億企業要件を満たす買い手 | 1,000万円以下は1/2、超過分は1/3 | 2,000万円 |
| 売り手支援類型(Ⅱ型) | M&Aで譲り渡す売り手 | 1/2または2/3以内 | 600万円(DD申請で800万円) |
| 小規模売り手支援類型 | 小規模事業者等の売り手 | 2/3以内 | 450万円 |
買い手と売り手は、それぞれが別々に申請できます。同一のM&A案件で買い手が買い手支援類型、売り手が売り手支援類型または小規模売り手支援類型を申請するパターンも可能です。
事業承継・M&A補助金の全体像を理解したい方へ
専門家活用枠 買い手支援類型は事業承継・M&A補助金の一部です。制度全体の枠組み・他枠との違い・16次公募のスケジュール全体については、以下の記事で網羅的に解説しています。
16次公募のスケジュールはどうなっていますか?
| 16次公募 主要スケジュール | |
|---|---|
| 公募要領の開示 | 2026年9月4日(金) |
| 公募申請受付期間 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00 |
| 採択日 | 2026年12月下旬以降 順次(予定) |
| 交付申請受付期間 | 2027年1月上旬〜2027年11月中旬(予定) |
| 交付決定日 | 2027年1月下旬以降 順次(予定) |
| 補助事業期間 | 2027年1月下旬(予定)から14か月以内 |
| 実績報告期間 | 2027年6月上旬〜2028年3月下旬(予定) |
| 補助金交付手続き | 2027年10月上旬以降 順次(予定) |
なお、16次公募の説明会はオンラインで開催予定です。申込受付は2026年9月9日(水)〜10月7日(水)17:00、説明会本番は2026年10月9日(金)14:00〜となっています。
買い手支援類型は誰が申請できますか?対象者と申請要件
買い手となる中小企業者等の定義
買い手支援類型の対象者は、中小企業基本法第2条に準じた中小企業者等です。業種別の規模要件(資本金・従業員数のいずれか)は次のとおりです。
| 業種分類 | 資本金・出資総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下または従業員900人以下、ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下、旅館業は資本金5,000万円以下または従業員200人以下という業種特例もあります。
一方、次に該当する場合は対象外です。
- 資本金または出資金が5億円以上の法人に直接・間接に100%株式を保有される法人
- 確定している直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者
- みなし大企業(発行済株式の1/2以上を同一の大企業が所有する等)
- みなし同一法人(親会社が議決権50%超を有する子会社等は、いずれか1社のみ申請可)
- 社会福祉法人・医療法人・一般社団財団法人・学校法人・農事組合法人・組合・法人格のない任意団体
法人・個人事業主それぞれの前提条件
申請の入口で見落とされやすい条件が2つあります。
- 法人:申請時点で設立登記および3期分の決算および申告が完了していること。3期分が未了の法人は対象外です
- 個人事業主:「個人事業の開業届出書」および「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日付から5年が経過していること
また、地域の雇用維持・創出、域内仕入の多さ、地域の強み(技術・特産品・観光等)の活用など、地域経済に貢献している(またはその予定である)ことも補助対象者の要件です。
買い手支援類型の補助対象事業の3要件
16次公募要領は、買い手支援類型の補助対象事業として次の3点をすべて満たすことを求めています。
- ① シナジーを活かした生産性向上等が見込まれること:経営資源を譲り受けた後のシナジー効果が要件そのものです
- ② 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること
- ③ デュー・ディリジェンス(DD)を実施すること:補助対象経費への計上有無を問わず必須
申請時点で成約していなくても申請は可能ですが、補助事業期間内に相手方と基本合意書または最終契約書が締結され、クロージングまで進むことが前提です。基本合意書や対象企業の概要書など、蓋然性を示せる材料があるほど審査では有利になります。
専門家を活用したDDの実施が必須要件
買い手支援類型の最も特徴的な要件が、DDの実施が必須である点です。
DDの主な種類は次のとおりです。
- 財務DD:資産・負債等に関する調査
- 法務DD:株式・契約内容等に関する調査
- ビジネスDD:ビジネスモデル等に関する調査
- 税務DD:税務リスク・税務処理の妥当性調査(財務DDに一部含まれることもある)
- その他:人事労務DD・知的財産DD・環境DD・不動産DD・ITDD 等
公認会計士・弁護士・税理士・コンサル会社などの専門家に委託することが一般的です。なお、FA業務・仲介業務を行わずDD業務のみを行う士業等専門家は、M&A支援機関登録制度の登録が不要です。
サイバーセキュリティ要件は必須ですか?
「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用は、事業承継・M&A補助金では必須要件ではなく加点事由です。公募申請時点で同サービスを利用している中小企業等は、審査で加点されます。
加点を狙う場合は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が登録・公表したサービスに加入し、申込書・請求書等の利用が確認できる書類を提出します。契約から書類がそろうまで時間がかかるため、早めの対応が必要です。
買い手支援類型はいくらまでもらえますか?補助上限・補助率の早見表
通常の補助率と補助上限
買い手支援類型(通常)の補助率・補助上限は以下のとおりです。
| 項目 | 金額・率 |
|---|---|
| 補助率 | 補助対象経費の2/3以内 |
| 補助下限額 | 50万円 |
| 基本の補助上限額 | 600万円 |
| DD費用を申請する場合の加算 | +200万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠の併用 | +300万円 |
| 最大補助額 | 1,100万円 |
たとえば仲介手数料・FA費用に900万円かかった場合、計算上は600万円(900万円×2/3)で上限と一致します。ここにDD費用を加えれば、上限は800万円まで伸びます。
補助下限額は50万円で、交付申請時の補助額が50万円を下回る申請は受け付けられません。また、DD費用は補助額ベースで200万円を超えない金額で申請しますが、有資格者が実施する財務DD・税務DD・法務DD等を複数行う場合は、DD1種につき補助額ベース200万円までの費用が認められることがあります。
賃上げは補助上限の引き上げにつながりますか?
専門家活用枠では、賃上げによる補助上限の引き上げはありません。賃上げは審査上の加点事由として扱われます(補助上限が800万円から1,000万円に引き上がるのは、事業承継促進枠とPMI推進枠 事業統合投資類型です)。
16次公募の賃上げ加点の要件は、補助事業が完了した日を含む事業年度(基準年度)の「従業員1人当たりの給与支給総額」と比較して、翌年度の同額の上昇率が2%以上となる賃上げを実施し、公募申請時に従業員へ表明することです。
加点を受けて採択された後に未達となった場合、事業化状況報告で未達が報告されてから18か月間、中小企業庁が所管する補助金への申請で大幅に減点されます。確実に達成できる場合のみ選択してください。
100億企業特例なら最大2,000万円
買い手支援類型の最大の魅力が、100億企業特例です。16次公募では通常の買い手支援類型・売り手支援類型とは別に、100億企業特例専用の公募要領が公開されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 1,000万円以下の部分は1/2、1,000万円超〜2,000万円までの部分は1/3 |
| 補助下限額 | 50万円 |
| 補助上限額 | 2,000万円以内 |
| 廃業・再チャレンジ枠の併用 | +300万円以内(補助率1/2以内) |
100億企業特例の主な追加要件は次のとおりです。
- 最低譲渡価額が5億円以上であること(実績報告時の最終契約書・クロージング証憑等で確認)
- 公募申請時に100億宣言が公表されていること:中小機構が運営する「100億企業成長ポータル」サイト上での公表が必要
- シナジー効果の類型を整理して提出:水平型・垂直型・集中型のいずれかに該当し、その根拠を申請書で示すこと
- 被承継者の従業員の雇用を3年間維持すること
- 事業計画書・事業計画書別紙・ローカルベンチマークの提出が必須
① 100億企業特例と通常の買い手支援類型は、同一公募回での併願ができません。どちらか一方を選択する必要があります
② 100億企業特例で不採択となっても、通常の買い手支援類型には自動的に移行しません
③ 雇用維持要件を満たせず、会社都合により雇用が維持されていないことが確認された場合、被承継者の従業員数の減少率に応じて補助金の返還を求められます
補助対象事業の金額が少額である場合は、通常の買い手支援類型のほうが有利になるケースもあります。制度の違いを確認したうえで、申請する類型を選定してください。
100億企業特例の補助額シミュレーション
補助率が段階制のため、補助額の計算はやや複雑です。専門家費用が合計4,200万円のM&A案件を例にすると、次のようになります。
- 補助対象経費4,200万円のうち、補助額が1,000万円に達するまでの部分(2,000万円分):2,000万円 × 1/2 = 1,000万円
- 残り2,200万円の部分:2,200万円 × 1/3 ≒ 約733万円
- 合計補助額:約1,733万円(補助上限2,000万円以内)
補助額が1,000万円を超える領域では補助率が1/3に下がります。事前に補助額を試算し、自己負担額を正確に把握してから申請類型を決めてください。
どんな経費が補助対象になりますか?M&A仲介・FA・DD費用の詳細
委託費(M&A仲介手数料・FA費用・DD費用)
委託費は買い手支援類型の中核となる経費区分です。16次公募要領で例示されている主な費用形態は以下のとおりです。
| 費用形態 | 概要 |
|---|---|
| 着手金・情報提供料 | FA・仲介とのアドバイザリー契約に基づき支払う着手金 |
| マーケティング費用 | 承継候補先の選定およびアプローチに係る費用 |
| リテーナー費用 | アドバイザリー契約に基づき支払う月額報酬 |
| 基本合意時報酬・成功報酬 | アドバイザリー契約に基づき支払う報酬 |
| 価値算定費用 | 企業価値・事業価値・株式価値等の算定費用 |
| デュー・ディリジェンス費用 | DD実施費用、環境調査・信用調査費用、クロージング前に実施したプレPMI費用 |
| 契約書等の作成・レビュー | 最終契約書等の作成・レビューを弁護士に委任した費用 |
| 登記費用 | 不動産売買・定款変更・根抵当権解除等の登記に係る司法書士費用 |
| セカンドオピニオン費用 | 選任専門家以外のM&A支援機関から意見を求める費用 |
・中間報酬:補助事業期間内に「専門家との契約締結」+「交渉相手との基本合意書締結」を行い、補助事業期間内に支払うこと(意向表明書は不可)
・成功報酬:補助事業期間内に「専門家との契約締結」+「交渉相手との最終契約書締結」を行い、補助事業期間内に支払うこと
※いずれもFA・仲介業者との契約書に、当該報酬支払いの旨の記載が必要です
表明保証保険料
M&A当事者間で交わされる最終合意契約に規定される表明保証条項に関して、事後的に違反が判明したことで発生する損害等を補償する保険の保険料も補助対象です。買い手支援類型では買い手手配の表明保証保険に係る保険料が対象で、同一成約事案に対して買い手・売り手が重複加入とならないようにする必要があります。
実績報告時には、表明保証保険利用の理由、買い手手配となった理由、DDの実施に関する事項等の報告が求められます。
廃業費(併用申請時)
廃業・再チャレンジ枠を併用する場合、廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・原状回復費・リースの解約費・土壌汚染調査費・移転移設費用が対象となります。ただし、商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費、ファイナンスリース取引の解約金・違約金は対象外です。
補助対象外となる経費と支払方法の制限
以下の経費は補助対象外です。
- M&Aの対価そのもの(株式取得代金・事業譲渡代金)
- 消費税額および地方消費税額
- 金融機関に対する振込手数料、為替差損
- 本補助金の申請書類作成代行費用(行政書士への委任費用を含む)
- FA・仲介契約締結前のコンサルティング費用、バリューアップのためのコンサル費用
- M&A成立後の経営改善等のコンサル費用、クロージング後に発生するPMI費用
- 日当・食卓料、タクシー代・ガソリン代・高速道路通行料金
特に「M&Aの対価そのもの(買収金額)」が補助対象外である点は誤解されがちです。買い手支援類型はあくまでM&Aに付随する専門家費用を補助する制度です。
支払方法も限定されており、補助対象となるのは補助事業者名義の口座からの銀行振込またはクレジットカード1回払いのみ。現金支払い、手形・小切手、仮想通貨、PayPay・Suica等のキャッシュレスサービスでの支払いは認められません。
相見積もりのルール
1件(案件・発注)50万円以上(税抜)の支払いは原則2者以上からの相見積が必須で、最低価格を提示した者を選定します。外注費・委託費・システム利用料・保険料は、1件50万円未満でも原則として相見積が必要です。
ただしFA・仲介費用は、選定専門家の見積額がレーマン表(譲渡額5億円以下の部分5%、5億円超10億円以下4%、10億円超50億円以下3% など)により算出される報酬総額以下であれば、相見積が不要となる例外があります。この場合も「関与専門家選定理由書」の整備と、選定先1社からの見積取得は必須です。
M&A支援機関登録制度とは?登録業者の確認方法
仲介手数料・FA費用は登録業者のみ補助対象
委託費のうち、FA業務または仲介業務に係る相談料・着手金・マーケティング費用・リテーナー費用・基本合意時報酬・成功報酬・価値算定費用等については、M&A支援機関登録制度に登録された登録FA・仲介業者が支援したものに限り補助対象となります。
登録が不要なケース
FA業務・仲介業務を行わず、財務・法務等のDD業務のみを行う士業等専門家は、登録制度の対象外です。同様に、M&Aマッチングサイトの提供のみを行うプラットフォーマーも登録は不要です。
ただし、DDが契約の主な内容であっても、支援内容にマッチング支援やM&A手続進行に関するものを含み、実質的にFA業務・仲介業務と同等と認められる場合は、登録業者による支援のみが補助対象となります。DD費用とFA・仲介費用は、見積・契約の段階で明確に区別しておくことが重要です。
登録されていない業者と契約してしまった場合
登録業者でない仲介業者と契約した場合、その業者への支払いは補助対象外となります。M&A取引そのものが無効になるわけではなく、「補助金で費用がカバーできない」という結果です。この場合の選択肢は次のとおりです。
- 当該費用は補助対象外として、DD費用・表明保証保険料等の他の経費に絞って申請する
- 契約を見直し、登録業者と再契約する(違約金等のリスクを確認のうえ判断)
なお、そもそも交付決定前に締結した契約は補助対象外です。登録状況の確認と契約タイミングの管理は、セットで進めてください。
買い手支援類型はどうやって申請すればよいですか?
公募開始前にやっておくべき5つの準備
- ① GビズIDプライムの取得:jGrants利用に必須。発行に1〜2週間、混雑時は3週間程度かかります。印鑑証明書(発行から3か月以内)の原本と法人代表者印を押印した申請書が必要
- ② M&A支援機関登録業者の確認・選定:登録業者リストから複数業者を比較し、自社の案件に合う業者を選定
- ③ DD専門家の選定:DD実施が必須要件のため、財務DD・法務DD等の専門家を事前に選定
- ④ 必要書類の準備:履歴事項全部証明書・代表者住民票は申請日以前3か月以内の発行分、決算書は直近3期分
- ⑤ 加点書類の収集:経営力向上計画の認定書、健康経営優良法人の認定証、賃上げ計画の誓約書など
必要書類リスト
買い手支援類型(公募申請類型番号1・法人の場合)の主な必要書類は次のとおりです。
| 区分 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 申請者(法人) | 履歴事項全部証明書(申請日以前3か月以内)、直近3期分の決算書(貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書・販管費内訳書等) |
| 法人の代表者 | 住民票(申請日以前3か月以内。マイナンバー部分は墨消し) |
| 個人事業主の場合 | 住民票、直近3期分の確定申告書Bと所得税青色申告決算書、開業届および青色申告承認申請書の写し |
| 100億企業特例の場合 | 事業計画書(PowerPoint)、事業計画書別紙(Excel)、ローカルベンチマーク |
| 行政書士に委任する場合 | 行政書士証票の写し、委任契約書等の写し |
| 実績報告時 | 常時使用する従業員1名の労働条件通知書、クロージングに伴う代金支払の証憑、M&A形態別の契約書・株主名簿等 |
事業計画書の主要記載項目
16次公募要領に示された買い手支援類型の審査の着眼点は、「経営資源引継ぎの計画が補助事業期間内に適切に取り組まれるものであること」「財務内容が健全であること」「買収の目的・必要性」「買収による効果・地域経済への影響」「買収実現による成長の見込み」の5点です。ここから逆算すると、記載すべき項目は次のようになります。
- M&Aの目的・必要性:どんな経営課題を解決するためのM&Aか
- 対象企業の概要と選定理由
- M&Aの進捗状況:基本合意書の有無、成約見込み時期
- シナジー効果:水平型・垂直型・集中型のどれに当たるか、その根拠と定量的効果
- 地域経済への影響:雇用維持・創出、域内仕入、域外販売など具体的な数値
- 成長の見込み:自社の事業環境・外部環境を踏まえた3〜5年の数値計画
- 専門家費用の内訳:仲介手数料・FA費用・DD費用などの予算明細
100億企業特例で申請する場合は、これに加えて「売上高100億円達成に向けた事業計画の実現可能性」も審査の着眼点となります。
申請代行に関するルール
買い手支援類型の採択率を上げるにはどうすればよいですか?
14次公募の採択実績
2026年5月15日に公表された14次公募の採択結果は次のとおりです。枠別の内訳も公表されています。
| 支援枠 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 専門家活用枠 | 299件 | 180件 | 約60.2% |
| 事業承継促進枠 | 169件 | 103件 | 約60.9% |
| PMI推進枠 | 43件 | 27件 | 約62.8% |
| 全体 | 512件 | 311件 | 約60.7% |
申請件数の約6割を専門家活用枠が占めており、M&Aの専門家費用を補助対象とするニーズが最も大きいことがわかります。
① M&Aの蓋然性を示す(基本合意書・IM等)
審査で重視されるのが、補助事業期間内にM&Aが成約する見込みがあるかです。蓋然性を示す材料として有効なのは次のものです。
- 基本合意書(LOI:Letter of Intent)
- 秘密保持契約書(NDA)
- 対象企業の概要書(IM:Information Memorandum)
- M&A検討プロセスのスケジュール表
「これからM&A相手を探します」という抽象的な計画では、不採択リスクが高まります。少なくとも対象企業が特定されているか、基本合意書レベルでの進捗があると有利です。
② シナジー効果を類型と数値で説明する
買い手支援類型では、シナジーを活かした生産性向上等が見込まれることが補助対象事業の要件です。100億企業特例では、次の3類型のいずれに該当するかを整理して提出することが求められます。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 水平型 | 既存技術と関連性の高い新製品・サービス等を、既存と類似した市場に投入 |
| 垂直型 | 既存技術と関連性の低い新製品・サービス等を、既存と類似した市場(川上・川下等)に投入 |
| 集中型 | 既存技術と関連性の高い新製品・サービス等を、異なった市場に投入 |
通常の買い手支援類型でも、この3類型の考え方に沿ってシナジーを説明すると、審査員に伝わりやすくなります。売上シナジー・コストシナジーを試算し、根拠とともに示しましょう。
③ 地域経済への貢献を具体的に示す
16次公募要領は補助対象者・補助対象事業の双方で「地域経済への貢献」を求めています。地域の雇用の維持・創出、域内仕入の多さ、地域の強み(技術・特産品・観光・スポーツ等)の活用、域外販売の多さといった観点で、自社と買収後の姿を数値で記述してください。
④ 加点事由を漏れなく取りにいく
16次公募の加点事由は次の10項目です。それぞれ、該当を証する書類の提出が必要です。
- ①「中小企業の会計に関する基本要領」または「指針」の適用を受けている
- ② 経営力向上計画の認定・経営革新計画の承認・先端設備等導入計画の認定
- ③ 地域未来牽引企業に選定されている
- ④ 小規模事業者等に該当する
- ⑤(連携)事業継続力強化計画の認定を受けている
- ⑥ ワーク・ライフ・バランス推進(えるぼし認定・くるみん認定等)
- ⑦ 健康経営優良法人に認定されている
- ⑧ サイバーセキュリティお助け隊サービスを利用している
- ⑨ 従業員1人当たり給与支給総額の上昇率2%以上の賃上げを表明
- ⑩ 米国の追加関税措置により大きな影響を受けている
②③⑤⑦⑧は申請前の準備で取得できる可能性がある項目です。認定取得には数週間〜数か月かかるものもあるため、早めに着手してください。
⑤ PMI推進枠との連携を視野に入れる
買い手支援類型は、PMI推進枠(PMI専門家活用類型)と同一公募回での同時申請が可能です。M&A実行フェーズの専門家費用を買い手支援類型で、統合フェーズの専門家費用をPMI推進枠でカバーする組み合わせが成り立ちます。
PMI推進枠は、公募申請受付終了時点でM&Aのクロージング日から3年を超えていない取組が対象で、PMI専門家活用類型は補助上限150万円、事業統合投資類型は補助上限800万円(賃上げ要件充足で1,000万円)です。M&A後の統合まで見据えて、補助金の使い方を設計しましょう。
専門家活用枠 買い手支援類型についてよくある質問にQ&A形式でお答えします
16次公募の申請締切はいつですか?
16次公募の公募申請受付期間は2026年10月2日(金)から2026年11月6日(金)17:00までです。締切日時を過ぎてからの申請は一切受け付けられません。申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で、申請・発行には1〜2週間、混雑時は3週間程度かかります。未取得の場合は今すぐ手続きを始めてください。
M&Aの成約前でも買い手支援類型は申請できますか?
成約前でも申請可能です。ただし補助事業期間(2027年1月下旬予定から14か月以内)に交渉相手と基本合意書または最終契約書を締結し、クロージングまで進むことが前提となります。基本合意書の取得や対象企業の特定など、M&Aプロセスが一定程度進捗していることが望ましいです。補助事業期間内にクロージングしなかった場合、補助上限額は300万円に変更され、原則DD費用のみが補助対象となります。
通常の買い手支援類型と100億企業特例は両方申請できますか?
できません。100億企業特例と、補助上限800万円以内とする通常の買い手支援類型は、同一公募回での申請が不可とされています。また、100億企業特例で不採択となった場合でも、通常の買い手支援類型へ自動的に移行することはありません。100億企業特例には最低譲渡価額5億円以上、100億宣言の公表、被承継者の従業員の雇用3年間維持といった追加要件があるため、補助対象事業の金額が少額な場合は通常類型のほうが有利になることもあります。
個人M&A(サラリーマンの会社買収)は対象になりますか?
買い手支援類型の対象は中小企業者および個人事業主です。個人が買い手となる場合は「個人事業の開業届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日付から5年が経過していることが要件で、直近3期分の確定申告書Bと所得税青色申告決算書の提出も必要です。開業間もない個人や、これから開業する個人は対象外となります。また、事業再編・事業統合の実態を伴わない投資目的の株式取得も対象外です。
海外企業の買収にも使えますか?
補助対象者は日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営む中小企業者等に限られます。また海外企業についても、資本金と従業員数がともに中小企業者の定義を超えている場合は「大企業」に該当します。100億企業特例では「日本国内において補助事業を実施すること」が明示的な要件です。個別案件の可否は補助金事務局へ確認してください。
同じM&A案件で売り手と買い手の両方が補助金を申請できますか?
はい、同じM&A案件で買い手は「買い手支援類型」、売り手は「売り手支援類型」または「小規模売り手支援類型」をそれぞれ申請可能です。買い手と売り手は別々の事業者として独立して申請手続きを行います。両者が補助金を獲得することで、M&A全体の費用負担を大きく軽減できます。
DDを自社で実施した場合は要件を満たしますか?
買い手支援類型では、補助対象経費への計上有無を問わずDDの実施が補助対象事業の要件です。DD費用を補助対象経費に計上する場合は交付申請時に見積書、実績報告時に証憑の提出が必要で、計上しない場合も実績報告時に実施証憑の提出が求められます。財務DD・法務DD等は公認会計士・弁護士など、それぞれの分野の外部専門家に委託することが一般的です。
既に仲介業者と契約してしまった場合は補助対象になりますか?
補助対象経費は、交付決定日以降かつ補助事業期間内に契約・発注を行い、支払いまで完了した経費に限られます。交付決定前に締結した契約は、補助事業期間中に支払いを行ったとしても補助対象外です。また、補助事業期間開始前に交渉相手と最終契約書を締結しているにもかかわらず、覚書等で契約日を期間内に延長する行為も、原則として期間内の最終契約とはみなされません。契約タイミングには細心の注意が必要です。
100億宣言はどこで行いますか?
100億宣言は、中小企業の経営者が「売上高100億円」という目標を目指し、実現に向けた取組を行っていくことを宣言するもので、中小機構が運営する「100億企業成長ポータル」(growth-100-oku.smrj.go.jp)で公表します。100億企業特例で申請するには、公募申請時点で同ポータル上に自社の宣言が公表されている必要があります。宣言後は事業の進捗報告も伴うため、中長期の成長戦略との整合性を確認したうえで実施してください。
M&A後のPMI費用も補助金で賄えますか?
買い手支援類型では、クロージング後に発生するPMI費用は補助対象外です(クロージング前に実施したプレPMI費用はDD費用の一部として対象になり得ます)。M&A後の統合費用は別枠の「PMI推進枠」で対応でき、PMI専門家活用類型は補助上限150万円、事業統合投資類型は補助上限800万円(賃上げ要件充足で1,000万円)です。買い手支援類型はPMI専門家活用類型と同一公募回での同時申請が可能なため、実行から統合まで一連で設計する戦略が有効です。
まとめ|買い手支援類型16次公募で次に何をすべきですか?
専門家活用枠 買い手支援類型は、M&Aで他社を譲り受ける買い手企業の専門家費用(仲介手数料・FA費用・DD費用等)を補助する制度です。通常類型は補助上限600万円(DD費用申請で800万円、廃業費併用で最大1,100万円)、100億企業特例なら最大2,000万円と、中堅クラスのM&A戦略にも対応できる規模です。
16次公募の申請受付は2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00。採択を勝ち取るには、M&Aの蓋然性を示す資料、シナジー効果の類型と定量化、地域経済への影響の具体化、加点事由の確実な積み上げがポイントです。
特に注意したいのが仲介・FA契約のタイミング。交付決定前に契約するとその費用は補助対象外となります。交付決定日(2027年1月下旬予定)から逆算した綿密なスケジュール管理が必須です。
① 申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00/通常類型は補助率2/3・上限600万円(DD+200万円、廃業費+300万円)
② 100億企業特例は上限2,000万円だが、譲渡価額5億円以上・100億宣言・雇用3年維持が要件で通常類型との併願不可
③ DDの実施は必須要件、FA・仲介費用はM&A支援機関登録業者のみ補助対象
申請を検討される方は、まず補助金ポータルの無料相談で、通常類型と100億企業特例のどちらを選ぶべきか、必要書類の準備状況はどうかについてアドバイスを受けることをおすすめします。
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