「会社を売却したいが、仲介手数料やデュー・ディリジェンス費用が重くのしかかる」「後継者がいないまま、自分の代で廃業すべきか、第三者に譲るべきか迷っている」――そんな悩みを抱える中小企業経営者は少なくありません。中小企業庁が2026年9月に公開した事業承継促進枠のチラシによると、60代で後継者が決まっていない企業は約4割。後継者を決めてから承継が完了するまでには3年以上かかるケースが多く、動き出しの遅れがそのまま「選択肢がない状態」に直結します。
「自分の代でたたむ」のではなく、「次の世代に託す」――その選択を費用面から支えるのが、M&Aで事業を譲り渡す売り手側の専門家費用を補助する「事業承継・M&A補助金 専門家活用枠 売り手支援類型」です。
2026年9月4日に開示された16次公募では、補助上限600万円に加え、デュー・ディリジェンス(DD)費用の申請で+200万円、廃業・再チャレンジ枠との併用で+300万円――合計最大1,100万円まで補助が受けられます。公募申請の受付期間は2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00です。
この記事では、16次公募の専門家活用枠 売り手支援類型について、対象者・補助率・対象経費・申請スケジュール・廃業費との併用パターン・小規模売り手支援類型との使い分け・採択のポイントまでをわかりやすく解説します。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する
この記事の目次
専門家活用枠 売り手支援類型とは何ですか?16次公募での位置づけ
専門家活用枠 売り手支援類型(Ⅱ型)は、M&Aで株式や経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等を対象に、ファイナンシャルアドバイザー(FA)や仲介業者への委託費用、DD費用などを補助する制度です。事業承継・M&A補助金(中小企業生産性革命推進事業)の一類型で、後継者不在に悩む中小企業の「出口戦略」を費用面から支えます。
売り手支援類型(Ⅱ型)の制度概要
売り手支援類型は、事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り渡す予定の中小企業者等を支援する類型です。補助対象事業の要件は、「地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること」と定められています。株式譲渡、第三者割当増資、株式交換、株式移転、新設合併、吸収合併、吸収分割、事業譲渡など、幅広いM&A形態が対象です。
・対象:M&Aで株式・経営資源を譲り渡す中小企業者等(個人事業主含む)
・補助率:1/2または2/3以内(赤字・営業利益率低下の場合は2/3)
・補助上限:600万円+DD費用申請で200万円加算+廃業費併用300万円=最大1,100万円
・補助下限:50万円
・申請受付:2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00
・申請方法:jGrants(電子申請)のみ・GビズIDプライム必須
買い手支援類型・小規模売り手支援類型との違い
16次公募の専門家活用枠は、買い手支援類型(Ⅰ型)、売り手支援類型(Ⅱ型)、小規模売り手支援類型の3類型と、買い手支援類型の100億企業特例で構成されています。
| 類型 | 対象 | 補助率 | 補助上限 |
|---|---|---|---|
| 買い手支援類型(Ⅰ型) | 経営資源を譲り受ける中小企業者等 | 2/3以内 | 600〜800万円 |
| 買い手支援類型 100億企業特例 | 100億企業要件を満たす買い手 | 1,000万円以下は1/2、超過分は1/3 | 2,000万円 |
| 売り手支援類型(Ⅱ型) | 経営資源を譲り渡す中小企業者等 | 1/2または2/3以内 | 600〜800万円 |
| 小規模売り手支援類型 | 譲り渡す小規模事業者等 | 2/3以内 | 450万円 |
買い手支援類型では、補助対象経費への計上有無を問わずDDの実施が必須要件とされています。売り手支援類型にDD実施の義務はありませんが、DD費用を申請する場合は補助上限が200万円加算されます。
小規模売り手支援類型とは何が違いますか?
小規模売り手支援類型は、小規模事業者等のM&Aを推進するために、FA・仲介業者等への手数料負担を軽減することを目的として設けられた類型です。16次公募の補助上限は450万円、補助率は一律2/3以内で、補助下限額の設定はありません。廃業・再チャレンジ枠との併用申請では+150万円が上限となります。
対象となる小規模事業者等の定義は次のとおりです。
| 業種分類 | 定義 |
|---|---|
| 製造業その他 | 従業員数20人以下の会社および個人事業主 |
| 商業(卸売業・小売業)・サービス業 | 従業員数5人以下の会社および個人事業主 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 従業員数20人以下の会社および個人事業主 |
16次公募のスケジュールはどうなっていますか?
16次公募の公募申請受付期間は、2026年10月2日(金)から2026年11月6日(金)17:00までです。公募要領は2026年9月4日に開示済みで、補助事業期間は2027年1月下旬(予定)から14か月以内が想定されています。
公募スケジュール
| 16次公募 主要スケジュール | |
|---|---|
| 公募要領の開示 | 2026年9月4日(金) |
| 公募申請受付期間 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00 |
| 採択日 | 2026年12月下旬以降 順次(予定) |
| 交付申請受付期間 | 2027年1月上旬〜2027年11月中旬(予定) |
| 交付決定日 | 2027年1月下旬以降 順次(予定) |
| 補助事業期間 | 2027年1月下旬(予定)から14か月以内 |
| 実績報告期間 | 2027年6月上旬〜2028年3月下旬(予定) |
| 補助金交付手続き | 2027年10月上旬以降 順次(予定) |
補助金の交付は精算払い(実費弁済)です。申請から入金までおよそ1年かかるため、事業実施期間中の資金繰りを織り込んだ計画を立ててください。
GビズIDプライムアカウントの申請・発行には1〜2週間、混雑時は3週間程度かかります。取得には印鑑証明書(発行から3か月以内)の原本と、法人代表者印を押印した申請書が必要です。締切日時を過ぎた申請は一切受け付けられません。
16次公募の説明会はいつですか?
事務局は16次公募の説明会をオンライン(Microsoft Teamsタウンホール形式)で開催予定です。申込受付は2026年9月9日(水)〜10月7日(水)17:00まで、説明会本番は2026年10月9日(金)14:00〜で、各事業枠の説明は15分〜55分程度が予定されています。公募要領を読み込んだうえで参加すると、疑問点を効率よく解消できます。
売り手として申請できるのは誰ですか?補助対象者と申請要件
補助対象者は、日本国内に拠点または居住地を置き、日本国内で事業を営む中小企業者等(個人事業主含む)で、地域経済に貢献している事業者です。株式譲渡の場合は、対象会社と支配株主(または株主代表)との共同申請が必須となります。
対象となる中小企業者等の定義
中小企業基本法第2条に準じて、業種別に以下の基準(資本金・従業員数のいずれか)を満たす事業者が対象です。
| 業種 | 資本金・出資総額 | 常時使用する従業員数 |
|---|---|---|
| 製造業その他 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
ゴム製品製造業(一部を除く)は資本金3億円以下または従業員900人以下、ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下または従業員300人以下、旅館業は資本金5,000万円以下または従業員200人以下という業種特例もあります。
ただし、資本金または出資金が5億円以上の法人に直接・間接に100%株式を保有される法人、確定している直近3年分の課税所得の年平均額が15億円を超える事業者、いわゆる「みなし大企業」「みなし同一法人」に該当する場合は対象外です。社会福祉法人・医療法人・一般社団財団法人・学校法人・農事組合法人・組合・法人格のない任意団体も対象外となります。
法人・個人事業主それぞれの前提条件
申請の入口で見落とされがちな前提条件が2つあります。
- 法人の場合:申請時点で設立登記および3期分の決算および申告が完了していること。3期分が未了の法人は対象外です
- 個人事業主の場合:「個人事業の開業届出書」および「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日付から5年が経過していること。直近3期分の確定申告書Bと所得税青色申告決算書の写しを提出できることも必要です
株式譲渡の場合の共同申請
売り手支援類型の株式譲渡では、対象会社(譲渡対象の株式を発行している会社)と、その議決権の過半数を有する支配株主または株主代表との共同申請が必須です。支配株主は1者で対象会社の議決権の過半数を有する者、株主代表は対象会社の議決権の過半数を有する株主の代表者(1者)と定義されています。
共同申請した場合、補助金は各補助対象者の補助対象経費への負担額に応じて交付されます。契約主体と支払主体を誰にするかを、申請前に整理しておいてください。
従業員1名の引継ぎ要件は業種を問わず必要ですか?
16次公募要領では、売り手支援類型の必要書類として業種に関わらず「常時使用する従業員1名の労働条件通知書」の提出が求められています。ここでいう常時使用する従業員とは、労働基準法第20条に基づき「予め解雇の予告を必要とする者」を指し、役員および個人事業主本人は含まれません。
常時使用する従業員1名以上の引継ぎが行われていない場合、経営資源引継ぎの要件を満たさないと事務局が判断する可能性があります。単なる不動産売買や物品売買、空き家・賃貸物件のみの売買は補助対象外です。
賃上げ加点を申請する場合の特則
加点事由のひとつである賃上げ要件を売り手が申請する場合は、M&A実施後も買い手等により賃上げの取り組みが実施されることの合意を得たうえで、「M&A以降も賃上げを実施する誓約書」の提出が必要です。買い手との交渉段階で、雇用条件・賃金条件をすり合わせておくことが前提になります。
いくら受け取れますか?補助率・補助上限額と最大1,100万円の内訳
売り手支援類型の補助上限額は600万円で、DD費用を申請する場合は200万円が加算されて800万円、さらに廃業・再チャレンジ枠を併用すると+300万円で合計最大1,100万円となります。補助率は原則1/2ですが、一定の要件を満たすと2/3に引き上げられます。
補助率2/3となる2つの要件
以下のいずれかに該当する場合、補助率は2/3以内に引き上げられます。該当しない場合は1/2以内です。要件はいずれか1つのみを選択して申請します。
① 物価高等の影響により、営業利益率が低下している者
・直近の事業年度(申告済み)と2期前の事業年度を通年で比較
・または直近期および進行期のうち、それぞれ任意の連続する3か月(前年度同時期)の平均を比較
② 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の者
補助上限600万円+DD上乗せ200万円の考え方
通常の補助上限は600万円です。デュー・ディリジェンス(DD)費用を補助対象経費として申請する場合は200万円が上限額に加算され、上限は800万円となります。
補助下限額は50万円で、交付申請時の補助額が50万円を下回る申請(補助対象経費に補助率をかけた金額が50万円未満)は受け付けられません。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 補助率 | 1/2または2/3以内 |
| 補助下限額 | 50万円 |
| 基本の補助上限額 | 600万円 |
| DD費用を申請する場合の加算 | +200万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠の併用 | +300万円 |
| 最大補助額 | 1,100万円 |
DD費用は、対象経費に補助率をかけた額で、補助額ベース200万円を超えない金額で申請します。ただし有資格者が実施する財務DD・税務DD・法務DD等を複数行う場合は、DD1種につき補助額ベースで200万円までの費用が認められることがあります。
廃業・再チャレンジ枠との併用で+300万円
M&Aと同時に事業の一部または全部を廃業するケースでは、廃業・再チャレンジ枠を併用申請できます。廃業費(在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費用など)に対して追加で300万円まで補助されます。併用申請の場合の補助率は、各事業における事業費の補助率に従います。
ケース別「いくらもらえるか」シミュレーション
実際の事業者像に当てはめた補助額のイメージを示します。あくまで概算で、正確な金額は公募要領と個別案件の経費構成で決まります。
- ケース①:直近決算が黒字の製造業が株式譲渡、仲介手数料900万円 → 補助率1/2で450万円
- ケース②:直近決算が赤字の卸売業が株式譲渡、仲介手数料900万円 → 補助率2/3で600万円(上限)
- ケース③:赤字企業が仲介手数料900万円+売り手DD費用300万円 → 上限600万円+DD上乗せ200万円=800万円
- ケース④:赤字企業が事業譲渡(仲介手数料900万円)+譲渡対象外事業の廃業(解体・原状回復費500万円) → 売り手支援類型600万円+廃業費300万円=900万円
どの費用が補助対象になりますか?対象経費と対象外経費
補助対象経費は、謝金・旅費・外注費・委託費・システム利用料・保険料と、廃業費(廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・原状回復費・リースの解約費・土壌汚染調査費・移転移設費用)です。中核となるのは、FA・M&A仲介業者に支払う委託費です。
委託費(FA・M&A仲介費用・DD費用)
委託費は売り手支援類型の中核となる経費区分です。16次公募要領で例示されている主な費用形態は以下のとおりです。
| 費用形態 | 概要 |
|---|---|
| 着手金・情報提供料 | FA・仲介とのアドバイザリー契約に基づき支払う着手金 |
| マーケティング費用 | 承継候補先の選定およびアプローチに係る費用 |
| リテーナー費用 | アドバイザリー契約に基づき支払う月額報酬 |
| 基本合意時報酬・成功報酬 | アドバイザリー契約に基づき支払う報酬 |
| 価値算定費用 | 企業価値・事業価値・株式価値等の算定費用 |
| デュー・ディリジェンス費用 | 売り手によるDD実施に係る費用(仲介者が行うものを除く) |
| 契約書等の作成・レビュー | 最終契約書等の作成・レビューを弁護士に委任した費用 |
| 登記費用 | 不動産売買・定款変更・根抵当権解除等の登記に係る司法書士費用 |
| 許認可等申請費用 | 最終契約書に基づき取得すべき許認可等の取得費用 |
| セカンドオピニオン費用 | 選任専門家以外のM&A支援機関から意見を求める費用 |
M&A支援機関登録制度の登録FA・仲介業者要件
委託費のうちFA・M&A仲介費用については、「M&A支援機関登録制度」に登録された登録FA・仲介業者が支援したものに限り補助対象となります。登録の有無は交付決定時に確認されます。登録業者のリストは中小企業庁HPまたはM&A支援機関登録制度事務局HP(ma-shienkikan.go.jp)で公開されていますので、契約前に必ず確認してください。
なお、FA業務・仲介業務を行わず、財務・法務等のDD業務のみを行う士業等専門家は登録制度の対象外です。ただしDDが契約の主な内容であっても、支援内容にマッチング支援やM&A手続進行に関するものを含み、実質的にFA業務・仲介業務と同等と認められる場合は、登録業者による支援のみが補助対象となります。
・中間報酬:補助事業期間内に「専門家との契約締結」+「交渉相手との基本合意書締結」を行い、補助事業期間内に支払うこと(意向表明書は不可)
・成功報酬:補助事業期間内に「専門家との契約締結」+「交渉相手との最終契約書締結」を行い、補助事業期間内に支払うこと
※いずれもFA・仲介業者との契約書に、当該報酬支払いの旨の記載が必要です
※補助事業期間開始前に最終契約書を締結済みのM&Aは、覚書等で契約日を期間内に延長しても原則対象外です
廃業費(在庫廃棄費・原状回復費等)
売り手支援類型で対象となる廃業費は、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費用です。ただし次の費用は補助対象外となります。
- 商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費(キックバックを含む)
- ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金、リース資産の売買費用
- 登録免許税、定款認証料、収入印紙代などの租税公課
- 土壌汚染対策工事の費用(調査費は対象)
- 原状回復の必要がない賃貸借物件・設備機器等、自己所有物の修繕費
補助対象外となる経費と支払方法の制限
以下の経費は補助対象外です。
- 消費税額および地方消費税額
- 金融機関に対する振込手数料、為替差損
- 本補助金の申請書類作成代行費用(行政書士への委任費用を含む)
- FA・仲介契約締結前のコンサルティング費用、バリューアップのためのコンサル費用
- M&A成立後の経営改善等のコンサル費用、クロージング後に発生するPMI費用
- 再生計画書の作成等のコンサル費用、債務整理手続に係る費用
- 日当・食卓料、タクシー代・ガソリン代・高速道路通行料金
支払方法も限定されており、補助対象となるのは補助事業者名義の口座からの銀行振込またはクレジットカード1回払いのみです。現金支払い、手形・小切手、仮想通貨、PayPay・Suica等のキャッシュレスサービスでの支払いは認められません。
相見積もりのルール
補助対象経費は、1件(案件・発注)50万円以上(税抜)の支払いについて原則2者以上からの相見積が必須で、最低価格を提示した者を選定します。外注費・委託費・システム利用料・保険料は、1件50万円未満でも原則として相見積が必要です。
ただしFA・仲介費用については、選定専門家の見積額がレーマン表(譲渡額5億円以下の部分5%、5億円超10億円以下4%、10億円超50億円以下3% など)により算出される報酬総額以下であれば、相見積が不要となる例外があります。この場合も「関与専門家選定理由書」の整備と、選定先1社からの見積取得は必須です。
M&Aとみなされず対象外となるケース
以下に該当するM&Aは、承継者と被承継者による実質的な事業再編・事業統合が行われたとみなされず、原則補助対象外です。
- グループ内の事業再編に相当する場合
- 親族間の事業承継に相当する場合
- 物品・不動産等のみの売買に相当する場合
- 事業譲渡の譲渡価格が0円、株式譲渡の株価が1円等で取引価格の合理性が確認できない場合
- 取引価格が補助対象経費(専門家への委託費用等)に比して低額な場合
- 株式譲渡後に承継者が保有する対象会社の議決権が過半数に満たない場合
- 休眠会社や事業の実態がない会社におけるM&A
親族内承継・従業員承継を予定している場合は、専門家活用枠ではなく事業承継促進枠が受け皿となります。
どうやって申請しますか?申請の流れ・必要書類・加点事由
申請はjGrants(電子申請)のみで、GビズIDプライムアカウントが必須です。採択後に交付申請を行い、交付決定通知書を受領してから補助事業に着手する流れとなります。
jGrantsでの電子申請ステップ
- ① 公募要領・Webサイト掲載情報を確認し、補助事業への理解を深める
- ② M&Aに際しての専門家活用等について検討を行う
- ③ GビズIDプライムアカウントを取得(未取得の場合・1〜3週間)
- ④ 公募申請に必要な書類を準備
- ⑤(任意)加点事由に該当することを証する書類を準備
- ⑥ jGrantsにログインし、申請情報を記入
- ⑦ 必要書類をPDFで添付(パスワードは設定しない)
- ⑧ 提出処理を行い、提出完了を確認する
- ⑨ 事務局からの差し戻し・再提出依頼に速やかに対応する
公募申請類型番号3(株式譲渡)の必要書類リスト
株式譲渡で対象会社が申請する場合(公募申請類型番号3)の主な必要書類は以下のとおりです。
| 区分 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 申請者(対象会社) | 履歴事項全部証明書(申請日以前3か月以内)、直近の確定申告書(別表一・二・四)、直近3期分の決算書、株主名簿(代表者の原本証明付き)、常時使用する従業員1名の労働条件通知書 |
| 対象会社の代表者 | 住民票(申請日以前3か月以内。マイナンバー部分は墨消し) |
| 共同申請者(支配株主・株主代表) | 住民票または履歴事項全部証明書、株主代表に係る確認書 |
| 補助率2/3を希望する場合 | 営業利益率低下に関する計算書+損益計算書、または直近期の損益計算書(赤字の証明) |
| 賃上げ加点を申請する場合 | 賃金引上げ計画の誓約書、従業員への賃金引上げ計画の表明書、M&A以降も賃上げを実施する誓約書 |
| 行政書士に委任する場合 | 行政書士証票の写し、委任契約書等の写し |
個人事業主が事業譲渡で申請する場合(公募申請類型番号2)は、住民票、直近3期分の確定申告書Bと所得税青色申告決算書、開業届および青色申告承認申請書の写し、常時使用する従業員1名の労働条件通知書が必要です。
加点事由10項目
審査では以下の事由に該当する場合、加点が行われます。それぞれ該当を証する書類の提出が必要です。
- ①「中小企業の会計に関する基本要領」または「指針」の適用を受けている
- ② 経営力向上計画の認定・経営革新計画の承認・先端設備等導入計画の認定
- ③ 地域未来牽引企業に選定されている
- ④ 小規模事業者等に該当する
- ⑤(連携)事業継続力強化計画の認定を受けている
- ⑥ ワーク・ライフ・バランス推進(えるぼし認定・くるみん認定等)
- ⑦ 健康経営優良法人に認定されている
- ⑧ サイバーセキュリティお助け隊サービスを利用している
- ⑨ 従業員1人当たり給与支給総額の上昇率2%以上の賃上げを表明(売り手は買い手との合意・誓約書が必要)
- ⑩ 米国の追加関税措置により大きな影響を受けている
なお賃上げ加点は、採択後に要件を達成できなかった場合、事業化状況報告で未達が報告されてから18か月間、中小企業庁が所管する補助金への申請で大幅に減点されます。確実に達成できる場合のみ選択してください。
採択率を上げる事業計画書のポイント
16次公募要領に示された売り手支援類型の審査の着眼点は、「経営資源引継ぎの計画が補助事業期間内に適切に取り組まれるものであること」「譲渡の目的・必要性」「譲渡による効果・地域経済への影響」の3点です。
売却理由の明確化(後継者不在/選択と集中等)、雇用維持と地域経済への貢献、買い手企業による事業継続の見込みを具体的に記載することが採択率向上のカギとなります。特に「地域経済への貢献」は補助対象者の要件にも含まれており、域内仕入の多さ、域外販売の多さ、地域の強み(技術・特産品・観光等)の活用といった観点で、自社の実態を数値とともに示しましょう。
なお、行政書士(または行政書士法人)でない者が申請者に代わって有償で申請の作成を行うことは行政書士法違反に該当する可能性があり、交付決定後に判明した場合は交付決定の取消となる可能性があります。
事業承継・M&A補助金 売り手支援類型に関するよくある質問
買い手が決まっていなくても申請できますか?
買い手が確定していない段階でも申請は可能ですが、補助事業期間(2027年1月下旬予定から14か月以内)に交渉相手と基本合意書または最終契約書を締結し、クロージングまで進むことが前提です。買い手未定の段階では、企業概要書・マッチングプラットフォーム掲載資料・専門家の調査報告書等の専門家作成資料が実績報告時に必要となります。経営資源引継ぎが期間内に実現しない場合、売り手支援類型では原則DD費用およびシステム利用料のみが補助対象となります。
16次公募の申請締切はいつですか?
16次公募の公募申請受付期間は2026年10月2日(金)から2026年11月6日(金)17:00までです。締切日時を過ぎてからの公募申請は一切受け付けられません。申請にはGビズIDプライムアカウントが必須で、申請・発行には1〜2週間、混雑時は3週間程度かかります。未取得の場合は今すぐ手続きを開始してください。
売り手支援類型と小規模売り手支援類型はどちらで申請すべきですか?
両者は同一公募回での申請ができないため、事前に選択する必要があります。小規模売り手支援類型は補助上限450万円・補助率一律2/3・補助下限なしで、対象は小規模事業者等(製造業その他は従業員20人以下、商業サービス業は5人以下、宿泊業娯楽業は20人以下)に限られます。一方、売り手支援類型は補助上限600万円(DD費用申請で800万円)ですが、補助率は赤字または営業利益率低下に該当しなければ1/2です。専門家費用の総額が大きい場合は売り手支援類型、そうでなければ小規模売り手支援類型が有利になるケースが多くなります。
譲渡価額に下限はありますか?
公募要領上、明確な下限額の規定はありません。ただし、事業譲渡における譲渡価格が0円(無償)、株式譲渡における株価1円等の取引で「取引価格の合理性が確認できない場合」は補助対象外となります。また、事業再編・事業統合における取引価格が補助対象経費(専門家への委託費用等)に比して低額である場合も対象外です。譲渡価額と補助対象経費のバランスに留意してください。
親族内承継でも使えますか?
親族間の事業承継は「実質的な事業再編・事業統合が行われたとみなされない例」として明示されており、専門家活用枠の対象外です。被承継者またはその株主と承継者との関係が本人または同族関係者(法人税施行令第四条を適用)である場合、支配関係のある法人である場合も対象外となります。親族内承継を予定している場合は、5年以内の親族内承継・従業員承継を対象とする「事業承継促進枠」(補助上限800万円、賃上げ要件充足で1,000万円)の活用を検討してください。
個人事業主でも申請可能ですか?
個人事業主も申請可能です。ただし「個人事業の開業届出書」および「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出した日付から5年が経過しており、直近3期分の確定申告書B(第一表・第二表)および所得税青色申告決算書(P1〜P4)を提出できる必要があります。M&A形態は事業譲渡、または事業再編等+廃業が対象です。加えて、常時使用する従業員1名の労働条件通知書の提出も求められます。
FA・M&A仲介業者はどこに依頼しても補助対象になりますか?
FA・M&A仲介費用を補助対象経費とする場合、「M&A支援機関登録制度」に登録された登録FA・仲介業者による支援に限られます。登録の有無は交付決定時に確認されるため、契約前に中小企業庁HPまたはM&A支援機関登録制度事務局HP(ma-shienkikan.go.jp)で必ず確認してください。なお、登録FA・仲介業者またはその法人の代表者が補助事業者となる場合、自己またはその関連会社を委託先とする事業は対象外です。
廃業費との併用申請は誰でもできますか?
廃業費との併用は、M&Aと同時に事業の一部または全部を廃業する売り手が対象です。複数事業を営む企業が一部事業を譲渡し、譲渡対象外の事業を廃業するケースや、株式譲渡後に支配株主(個人)が事業を廃業するケースが該当します。在庫廃棄費、解体費、原状回復費等が+300万円まで補助対象となります。ただし廃業費は、関連する経営資源の引継ぎが補助事業期間内に実現した場合のみ補助対象となる点に注意が必要です。
補助率2/3になるための「営業利益率低下」はどう証明しますか?
「営業利益率低下に関する計算書」(補助金Webサイトから雛型をダウンロード)に必要事項を記載して提出します。比較方法は2通りあり、(1)直近の事業年度と2期前の事業年度を通年で比較する場合は両期の損益計算書(個人事業主は所得税青色申告決算書)、(2)直近期および進行期のうち任意の連続する3か月を前年同期と比較する場合は比較対象月の試算表を添付します。試算表がない場合は、顧問会計専門家が作成し押印した計算書のPDFを提出します。
経営資源引継ぎが期間内に実現しなかった場合はどうなりますか?
補助事業期間内にクロージングしなかった場合、売り手支援類型では原則としてDD費用およびシステム利用料のみが補助対象として認められ、補助上限額も300万円に変更されます。あわせて「未成約時の追加報告書(様式第19)」の提出が必要で、経営資源引継ぎがなされなかった要因分析、期間終了後の引継ぎに向けた計画、取組状況を事後報告する旨の宣誓を含めます。補助事業期間終了後3年間の事業化状況報告も必要です。なお廃業費は、経営資源引継ぎが実現しなかった場合は補助対象外となります。
まとめ|会社売却の経費負担を抑えて雇用を引き継ぐために
事業承継・M&A補助金 専門家活用枠 売り手支援類型は、後継者不在に悩む中小企業経営者にとって、FA・仲介手数料の負担を最大2/3まで軽減できる支援制度です。16次公募では補助上限600万円に加え、DD費用の申請で+200万円、廃業費併用で+300万円――合計最大1,100万円までの補助が受けられます。
中小企業庁の資料では、60代で後継者が決まっていない企業は約4割、後継者決定から承継完了までは3年以上かかるケースが多いとされています。選択肢が残っているうちに動き出すことが、雇用と技術を次の世代につなぐ最短ルートです。
公募申請の受付は2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00と約5週間しかありません。GビズIDプライムの取得に最大3週間かかること、M&A支援機関登録制度の登録FA・仲介業者の選定、共同申請書類の準備など、事前準備に時間を要します。検討中の方は今すぐ準備を開始しましょう。
① 申請受付は2026年10月2日〜11月6日17:00/補助上限600万円+DD200万円+廃業費300万円=最大1,100万円
② 補助率は原則1/2、赤字または営業利益率低下に該当すれば2/3
③ 株式譲渡は対象会社と支配株主等の共同申請が必須、従業員1名の労働条件通知書も業種を問わず必要
補助金ポータルでは、事業承継・M&A補助金の申請サポートに関する無料相談を受け付けています。類型の選び方や採択率向上のポイントについて、お気軽にご相談ください。
▼▼▼日々配信中!無料メルマガ登録はこちら▼▼▼
メルマガ会員登録する



