「グローバル枠」は、中小企業の海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化を支援する申請枠です。2026年度から、ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合された「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の一枠として引き継がれました。
補助上限額は賃上げ特例の適用時に最大9,000万円、補助率は小規模事業者を含め一律2/3となり、旧制度で補助率1/2だった中小企業者については引き上げられています。
この記事では、新制度グローバル枠の対象事業、補助上限額・補助率、対象経費、申請要件、スケジュールを解説します。輸出や海外販路開拓を見据えた設備投資を検討している製造業をはじめとした中小企業の方は、ぜひ参考にしてください。
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この記事の目次
2026年度からのグローバル枠は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の一枠に
これまで別々に運営されてきた「新事業進出補助金」と「ものづくり補助金」は統合され、2026年6月29日から「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として第1回公募が開始されました。新制度には以下の3つの枠が設けられています。
| 枠 | 支援内容 |
|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 技術的革新性のある新製品・新サービス開発の取組を支援 |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組を支援 |
【重要】対象は「輸出に向けた国内体制強化」に一本化
旧ものづくり補助金のグローバル枠(第23次公募まで)では、①海外への直接投資に関する事業、②海外市場開拓(輸出)に関する事業、③インバウンド対応に関する事業、④海外企業と共同で行う事業の4類型が対象でした。
一方、新制度のグローバル枠は、自社製品等の輸出(海外販路開拓)に必要な国内製造等拠点の強化に対象が一本化されています。旧制度で対象だったインバウンド対応(訪日外国人向けサービス)や海外拠点への直接投資を主目的とする事業は、新制度のグローバル枠では対象になりません。旧4類型を前提に検討していた事業者は、事業内容が新制度の対象に合致するか必ず確認してください。
補助上限額・補助率の新旧比較
| 項目 | 旧:ものづくり補助金グローバル枠(第23次) | 新:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 グローバル枠 |
|---|---|---|
| 対象事業 | 海外事業4類型(直接投資・輸出・インバウンド・海外企業との共同事業) | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化に一本化 |
| 補助上限額 | 一律3,000万円(特例時最大4,000万円) | 従業員規模別 最大7,000万円(特例時最大9,000万円) |
| 補助率 | 中小企業1/2、小規模事業者2/3 | 全規模一律2/3 |
| 補助下限額 | 100万円 | 750万円 |
| 補助事業実施期間 | 交付決定から12か月以内(採択発表から14か月以内) | 交付決定から14か月以内(採択発表から16か月以内) |
| 建物費 | 対象外(工場建屋等の取得費用は補助対象外) | 対象(機械装置・システム構築費といずれか必須) |
| 機械装置費以外の経費上限 | 総額1,000万円(税抜)まで | 総額での上限なし(経費区分ごとの上限のみ) |
補助率は全規模一律2/3となり、旧制度で1/2だった中小企業には大きな拡充です。また、旧制度では工場建屋等の建物費が対象外でしたが、新制度では建物の建設・改修費が補助対象に加わり、輸出向けの生産施設整備を伴う大型投資がしやすくなりました。
一方、補助下限額は750万円に引き上げられたため、補助対象経費(税抜)でおおむね1,125万円以上の投資規模が必要になる点には注意が必要です。
グローバル枠の対象事業
新制度のグローバル枠では、次の2つをいずれも満たす事業が補助対象です。
・事業により製造等する製品等の属する市場が、事業を行う中小企業等にとって新たな海外市場であること
「新たな海外市場」とは、既存事業において対象となっていなかった国・地域の市場を指します。ここでの地域とは、統計上、国に準じてカウントされる領域であり、行政区画ではありません。
なお、取引先主導の事業は自発的な取組とは言えず補助対象外です。たとえば取引先からの要請で海外向け部品の増産体制を整えるだけの事業は対象になりません。また、補助対象となるのは、日本国内に本社および補助事業実施場所を有する事業者です。
製造業の輸出・海外販路開拓に使える補助金として
グローバル枠は、たとえば次のような取組を想定した、輸出体制の構築に必要な国内の設備投資・建物投資を支援します。
・輸出向け製品の開発・製造に必要な機械装置やシステムの導入
・海外展示会出展や現地プロモーションなど、海外販路開拓に向けた広告宣伝(設備投資と併せて実施するもの)
・海外の商談・市場調査のための渡航(海外旅費として補助対象)
製造業に限らず、自社の商品・サービスを輸出する中小企業であれば業種を問わず申請できます。一方、「海外進出」でも、海外工場や海外販売拠点の設置といった海外への直接投資を主目的とする取組は本枠の対象ではありません。あくまで輸出のための国内投資を支援する制度である点に注意してください。
グローバル枠の補助上限額・補助率と補助対象経費
補助上限額は従業員規模別に設定されています。大幅な賃上げに取り組む「賃上げ特例」の適用を受けると、上限額が引き上げられます。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜20人 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
・補助率:2/3(中小企業者・小規模企業・小規模事業者・再生事業者とも一律)
賃上げ特例の適用には、通常の賃上げ要件に加えて「1人当たり給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上」「事業場内最低賃金+50円以上」の達成が必要で、未達の場合は引上げ分の補助金の返還が求められます。
なお、グローバル枠で申請する再生事業者は賃上げ特例を適用できません。また、グローバル枠は補助率がもともと2/3のため、地域別最低賃金引上げ特例(補助率引上げ)の対象外です。
補助対象経費
グローバル枠では、以下の経費が補助対象になります。機械装置・システム構築費または建物費のいずれかが必ず含まれている必要があります。
| 経費区分 | 具体例・補足 |
|---|---|
| 機械装置・システム構築費 (建物費といずれか必須) | 専ら補助事業に使用する機械・装置、工具・器具、専用ソフトウェア等の購入・製作・借用。単価10万円(税抜)以上 |
| 建物費 (機械装置・システム構築費といずれか必須) | 生産施設・加工施設等の建設・改修。建物の単なる購入や賃貸は対象外 |
| 運搬費 | 運搬料、宅配・郵送料等 |
| 技術導入費 | 知的財産権等の導入費(補助対象経費総額の1/3以内) |
| 知的財産権等関連経費 | 特許権等の取得に係る弁理士費用、外国特許出願の翻訳料等(同1/3以内) |
| 外注費 | 検査・加工・設計等の外注費(同1/4以内) |
| 専門家経費 | 技術指導や助言を受ける専門家への謝金・旅費(同1/5以内) |
| クラウドサービス利用費 | 専ら補助事業に使用するクラウドサービス・WEBプラットフォーム等の利用費 |
| 原材料費 | 試作品開発に必要な原材料・副資材の購入費 |
| 広告宣伝・販売促進費 | 海外展開に向けたパンフレット・動画制作、媒体掲載、展示会出展等(上限:事業計画期間1年当たりの新製品等売上高見込み額の5%) |
| 海外旅費 (グローバル枠のみ) | 海外渡航・宿泊費(補助対象経費総額の1/5以内) |
| 通訳・翻訳費 (グローバル枠のみ) | 通訳・翻訳の依頼費用(上限30万円・税抜) |
■海外旅費
海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航・宿泊費が対象です。
・海外渡航を目的とする国内乗り継ぎ費用も対象になります。交付申請時に渡航計画の事前申請が必要です。
・一度の渡航で対象になるのは事業者3名までです。専門家・通訳者が海外に同行する場合は、これに加えて2名まで対象になります。
・1人当たり最大50万円の限度額は、渡航費・宿泊費そのものの上限ではなく、補助対象経費に補助率を乗じた後の「補助金額」としての上限です(税抜)。
■通訳・翻訳費
事業遂行に必要な通訳・翻訳の依頼費用が対象です。
・翻訳は広告宣伝・販売促進に必要なもののみが対象で、事業計画に係る契約書の翻訳は対象外です。
■広告宣伝・販売促進費
補助事業で製造等する製品・サービスの広告作成・媒体掲載、ウェブサイト構築、展示会出展、ブランディング・プロモーションに係る経費が対象です。
・金額にかかわらず複数者からの見積もりが必要です。
・補助事業実施期間内に広告の使用・掲載、展示会の開催等が完了している必要があります。
・補助事業以外の自社製品や会社全体のPR広告は対象外です。
グローバル枠の申請要件
グローバル枠に申請するには、3〜5年の事業計画を策定し、次の基本要件をすべて満たす必要があります。旧ものづくり補助金から数値基準が変わっている点に注意してください。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 付加価値額要件 | 補助事業終了後3〜5年の事業計画期間において、付加価値額※の年平均成長率+4.0%以上 |
| 賃上げ要件【返還義務あり】 | 1人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上。交付申請時までに従業員等へ目標を表明 |
| 事業場内最賃水準要件【返還義務あり】 | 毎年、事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上 |
| ワークライフバランス要件 | 次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・公表(従業員数にかかわらず全申請者が対象) |
| 子育て等職場環境整備要件 | ライフデザインサービスの活用、家事代行・ベビーシッターサービスの活用、既存制度の周知・啓発のいずれか1つに取り組む(くるみん認定等の取得者は免除) |
| 金融機関要件 | 金融機関等から資金提供を受ける場合、「金融機関による確認書」を提出 |
賃上げ要件・事業場内最賃水準要件は、目標未達の場合に補助金の一部返還が求められます(付加価値額が増加せず営業赤字の場合等を除く)。
このほか、応募申請時点で従業員数が0名の事業者や、申請締切日を起点とする過去16か月以内に事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金・新事業進出・ものづくり補助金の補助金交付候補者として採択された事業者(採択を辞退した事業者を除く)などは補助対象外です。
事業計画書で示すべきポイント
公募要領では、グローバル枠の事業計画書について、次の点を示すことが求められています。
・本事業の顧客層が、これまでの事業と比べて、国・地域単位で異なること
また、書面審査では、輸出先の国・地域に特有のリスクや、文化、法規制、商習慣の違いを十分に把握していることが求められます。輸出先の市場規模や競合状況、法規制、商習慣については、ジェトロ(日本貿易振興機構)の国・地域別情報や輸出先国の公的統計、業界調査など、客観的な根拠を用いて説明することが重要です。
なお、旧ものづくり補助金のグローバル枠で必須とされていた「実現可能性調査の実施」「海外事業の専門人材の確保(または外部専門家との連携)」「海外市場調査報告書の提出」は、新制度の公募要領では明示的な要件・提出書類としては求められていません。ただし、審査で輸出先のリスクや商習慣の把握が問われることに変わりはないため、事前の市場調査や専門家との連携は引き続き採択の鍵になります。
グローバル枠のみの加点項目
審査での加点項目のうち、以下の2つはグローバル枠に申請する場合のみ対象です。申請締切日までに各ポータルサイトで登録を完了しておきましょう。
このほか、パートナーシップ構築宣言、くるみん・えるぼし認定、事業継続力強化計画、DX認定などの共通加点項目もあります。
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グローバル枠のスケジュール・申請方法
グローバル枠の第1回公募スケジュールは以下のとおりです。
| 公募開始 | 2026年6月29日(月) |
|---|---|
| 申請受付開始 | 2026年9月30日(水) |
| 申請締切 | 2026年10月30日(金)18:00 |
| 採択発表 | 2027年1月頃(予定) |
申請方法・事前準備
申請は電子申請システムでのみ受け付けられます。申請にはGビズIDプライムアカウントが必要で、郵送で発行する場合、1~2週間程度かかります。取得手続きの遅れによる申請期限の延長は認められません。
あわせて、一般事業主行動計画の策定・公表(「両立支援のひろば」への掲載)も申請要件となっており、公表手続きには1〜2週間程度かかるため、早めに準備してください。事業計画書は必ず申請者自身で作成する必要があります。外部支援者による代理作成は認められず、発覚した場合は不採択・採択取消・交付決定取消となります。
よくある質問
インバウンド(訪日外国人向け)事業は対象になる?
対象になりません。新制度のグローバル枠は海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化に一本化されており、旧ものづくり補助金にあったインバウンド対応の類型は継承されていません。
海外に工場や販売拠点をつくる費用は対象?
対象になりません。グローバル枠が支援するのは輸出のための国内投資であり、補助対象となるのは国内の製造等拠点の強化に係る経費です。
すでに輸出している国への輸出拡大は対象?
対象になりません。自社にとって新たな海外市場(既存事業で対象となっていなかった国・地域)への進出であることが必要です。
ほかの補助金を使ったことがあっても申請できる?
場合によります。申請締切日を起点とする過去16か月以内に事業再構築補助金・新事業進出補助金・ものづくり補助金等の採択を受けた事業者や、これらの交付決定を受けて事業実施中の事業者は対象外です。また、応募申請日を起点とする過去3年間にこれらの交付決定を合計2回以上受けている場合も対象外で、1回の場合は減点の対象になります。
まとめ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金のグローバル枠は、海外販路開拓(輸出)に向けた国内の設備投資・建物投資を、補助率2/3・賃上げ特例適用時に最大9,000万円で支援する制度です。海外販路開拓・輸出を目指す中小企業が、大規模な国内設備投資にも活用できるのが最大の魅力で、機械装置や建物への投資に加えて、海外旅費や通訳・翻訳費、海外向けの広告宣伝費まで補助対象に含められるのが特徴です。
一方で、補助下限額が750万円に引き上げられ、対象が「輸出に向けた国内体制強化」に一本化されるなど、旧ものづくり補助金のグローバル枠から変わった点も少なくありません。付加価値額+4.0%、1人当たり給与+3.5%といった要件の数値基準も変更されています。
GビズIDの取得や一般事業主行動計画の公表など、事前準備には数週間かかるものもあるため、輸出・海外販路開拓を検討している事業者は早めに準備を始めましょう。
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