高年齢求職者給付金とは、65歳以上の雇用保険被保険者を対象にした一時金です。本給付金は、就労意欲があるにも関わらず、一時的に失業した場合、求職中の生活を支えるための制度です。
高年齢求職者給付金は年金との併給が可能で、被保険者期間に応じて30日分または50日分が支給されます。
令和7年4月からは自己都合退職の給付制限期間が原則1か月に短縮され、また令和7年8月には基本手当日額の上限・下限が改定されるなど、雇用保険制度にはさまざまな変更がありました。こうした最新の制度改正を踏まえ、高年齢求職者給付金の受給要件や支給額、申請方法をまとめました。計算方法や受給額のシミュレーションもご紹介しますので、ご自身の受給額計算やイメージにお役立てください。
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この記事の目次
高年齢求職者給付金とは
高年齢求職者給付金は、65歳以上で雇用保険の「高年齢被保険者」であった人が失業した場合に支給される手当です。いわば、65歳以上の方のための失業手当ともいえる制度です。ここでは、高年齢求職者給付金の対象者や受給できないケースをご紹介します。
高年齢求職者給付金の対象者
高年齢求職者給付金の支給を受けるには、次の要件をすべて満たしている必要があります。
雇用保険の被保険者であった期間のうち、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。なお6か月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上の月を1か月として計算します。
②失業の状態にあること
離職し、「就職したいという積極的な意思といつでも就職できる能力があり、積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態」が対象です。
つまり「一定期間以上の被保険者であった高齢者が、なんらかの理由で一時的に離職し、さらに今後も就業意欲がある場合」が対象となります。
高年齢求職者給付金を受給できないケース
以下の場合は就職する意思・能力がないものと判断されます。
- 家事や学業に専念する
- 家業に従事し職業に就くことができない
- 自営を開始、または自営準備に専念する
- 次の就職が決まっている
- 雇用保険の被保険者とならないような短時間就労のみを希望する
- 自分の名義で事業を営んでいる
- 会社の役員などに就任している方
- 同一事業所で就職、離職を繰り返し、再び同一事業所に就職の予定がある
このような状況に該当する方は、失業状態とは認められず、高年齢求職者給付金の支給を受けることができません。
高年齢求職者給付金と失業手当は一緒に受けられない
高年齢求職者給付と失業手当を両方受け取ることはできません。雇用保険において、65歳以上の労働者は「高年齢被保険者」として、雇用保険の適用対象です。そのため、一般の雇用保険被保険者とは区別されています。65歳以上で離職する場合の給付金は、失業手当ではなく高年齢求職者給付が該当します。
高年齢求職者給付金は何歳までもらえるか
高年齢求職者給付金は、65歳以上であれば年齢の上限や受給回数に制限はありません。要件を満たせば何度でも受給できる点が特徴です。
高年齢求職者給付金の受給額はいくら?計算方法とシミュレーション
高年齢求職者給付の受給額は、基本手当日額(退職前6か月の賃金合計÷180×給付率)に雇用保険加入期間に応じた給付日数を乗じて計算します。そのため、受け取っていた賃金や雇用保険へ加入している期間によって受給額が異なるのです。基本手当日額
基本手当日額とは、1日あたりに受け取れる給付額のことです。基本手当日額は以下の計算式にあてはめます。
基本手当日額の計算で必要な「賃金日額」とは、退職直前6か月の賃金合計を180で割った金額です。これには手当を含めた総支給額が該当しますが、賞与や臨時に支給された金額は含みません。
また、給付率は、賃金日額によって異なります。給付率は以下で該当するものを当てはめましょう。
| 賃金日額と給付率の関係(令和7年8月1日~) | ||
|---|---|---|
| 賃金日額 | 給付率 | 基本手当日額 |
| 3,014円以上 5,340円未満 | 80% | 2,411円~4,271円 |
| 5,340円以上 13,140円以下 | 80~50% | 4,272円~6,570円 |
| 13,140円超 14,510円以下 | 50% | 6,570円~7,255円 |
| 14,510円(上限額)超 | ー | 7,255円(上限額) |
特に、賃金日額の部分では、「以上」や「未満」に注意して、該当する給付率を確認しましょう。
基本手当日額はさまざまな給付金計算で使われます。離職時の年齢によって額の根拠となる数字が異なりますが、高年齢求職者給付金を受給する場合は、「離職時の年齢が29歳以下」の数字を適用する点にご注意ください。また、雇用保険の基本手当日額は原則毎年8月1日に改定される点も理解しておきましょう。
参考:雇用保険の基本手当日額の変更~令和7年8月1日(金)から開始~(厚生労働省)
雇用保険の加入期間に応じた給付日数
高年齢求職者給付金は、雇用保険の加入期間に応じて、以下の給付日数で支給されます。
| 被保険者期間と給付日数 | |
|---|---|
| 被保険者期間が1年未満 | 30日 |
| 被保険者期間が1年以上 | 50日 |
高年齢求職者給付の受給額
基本手当日額と給付日数が算出できたら、以下の式にあてはめて高年齢求職者給付の受給額を算出します。
高年齢求職者給付金は、離職日の翌日から1年(受給期間内)に、「失業の状態である」と確認されれば、被保険者期間(被保険者として雇用された期間)に応じて定められた給付日数が一括して支給されます。
高年齢求職者給付金の受給額シミュレーション
高年齢求職者給付金は、賃金や雇用保険加入期間によって受給額が異なることがわかりました。そこで、具体的な受給額をイメージしやすくするための計算例をご紹介します。
シミュレーション①Aさんの場合
雇用保険に1年6か月以上加入していたAさんの高年齢求職者給付金を計算します。
- 退職時の年齢=67歳
- 雇用保険加入期間=1年6か月以上
- 退職前の月給=150,000円
高年齢求職者給付金の計算に必要な要素は以下のとおりです。
| Aさんの計算例 | |
|---|---|
| 賃金日額 | 150,000×6÷180=5,000円 |
| 給付率 | 80% |
| 支給日数 | 50日 |
| 高年齢求職者給付金 | 賃金日額(5,000円)×0.8×50日=200,000円 |
このように、Aさんの高年齢求職者給付金は200,000円です。
シミュレーション②Bさんの場合
雇用保険に11か月加入していたBさんの高年齢求職者給付金を計算します。
- 退職時の年齢=70歳
- 雇用保険加入期間=1年未満(11か月)
- 退職前の月給=120,000円
高年齢求職者給付金の計算に必要な要素は以下のとおりです。
| 賃金日額 | 120,000×6÷180=4,000円 |
| 給付率 | 80% |
| 支給日数 | 30日 |
| 高年齢求職者給付金 | 賃金日額(4,000円)×0.8×30日=96,000円 |
このように、Bさんの高年齢求職者給付金は96,000円です。
高年齢求職者給付金は、賃金日額と雇用保険加入期間がわかれば簡単に計算できます。どれくらいの金額を受給できるか確認したい場合は、計算式を活用してみましょう。
高年齢求職者給付金の申請手続きや受け取り方
高年齢求職者給付金を受け取るためには、お住まいの地域を管轄するハローワークで求職の申込みをしたうえで必要書類を提出します。
高年齢求職者給付の申請手続きで必要な書類は以下のとおりです。
| 必要書類 |
|---|
| ・離職票-1、離職票-2 ・マイナンバーカード(ない場合は、「個人番号確認書類」と「身元(実在)確認書類」の両方が必要) ・写真 ・本人名義の預金通帳またはキャッシュカード |
高年齢求職者給付金は、失業の認定日の約7日後に、本人の希望する金融機関へ振込まれます。このため、離職票-1の「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」で、払込先の金融機関を届出する必要があるのです。
ただし、「離職票-1」の備考欄に支払方法口座、金融機関名がアスタリスク(*)で印字されている方は、以前に雇用保険給付関係の利用時に登録があるため、「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」は必要ありません。
なお、同一都道府県内の別のハローワークで就職活動を行い、その管轄地域への就職を希望する場合は、ハローワークで相談してください。また、船員での就職を希望される場合は、地方運輸局での求職申し込みを行います。
高年齢求職者給付における待期と給付制限
高年齢求職者給付金は、ハローワークまたは地方運輸局に離職票の提出と求職の申し込みを行った日から、失業の状態にあった日が7日間経過してからでなければ支給されません。これを待期といいます。
ただし、自己都合で退職した場合は、さらに一定期間が経過するまで、高年齢求職者給付金が支給されません。これを給付制限といいます。
令和7年4月1日以降に退職した場合の給付制限は、以下のとおりです。
| 給付制限の期間(令和7年4月1日以降に退職した場合) | |
|---|---|
| 正当な理由がなく自己都合による退職 | 原則1か月(ただし、退職日から遡って5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合は3か月) |
| 自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇 | 3か月 |
待期や給付制限を経たあとに、失業の認定を受けた場合は、高年齢求職者給付金が支給されます。
参考:『雇用保険の高年齢求職者給付金を受けようとする方へ…』ハローワーク(公共職業安定所)・長野労働局
手続きのタイミングと注意点
高年齢求職者給付金の振込は、失業認定日の約7日後です。土日祝日などにより金融機関の休日がある場合は、その日数分だけ遅れて入金される点にご注意ください。
高年齢求職者給付金を受給するためには、待期および給付制限期間が経過することが見込まれる日の後、ハローワークまたは地方運輸局で失業の状態にあることの確認を受けなければなりません。受給期限は離職日の翌日から1年間と決まっているため、手続きが遅れた場合は受給期限後の給付金は支給されません。
高年齢求職者給付金と年金
高年齢求職者給付金と年金は同時に受給できます。年金受給者の場合、65歳未満で退職した方を対象にした基本手当(失業手当)と年金は併給できません。つまり、年金受給者が基本手当(失業手当)を受け取ると老齢厚生年金の支給が停止されます。
しかし、65歳以上で退職する際の高年齢求職者給付の場合は異なり、年金との併給が可能です。どちらかが調整されることもなく、全額受け取れるため、ご安心ください。
高年齢求職者給付と失業保険どちらが得?
高年齢求職者給付は65歳以上で退職した場合に受け取れる給付金です。一方、失業保険は65歳未満で退職した方を対象にした手当です。65歳前後で退職する場合、どちらを優先したほうがお得になるのでしょうか。
| 高年齢求職者給付 | 失業手当 | |
|---|---|---|
| 給付日数 | 30日もしくは50日 | 90日~360日※離職理由や雇用保険加入年数による※一般的な定年退職(加入期間20年以上)の場合は150日 |
| 年金併給 | できる | できない(年金が停止) |
| 支給回数 | 一括 | 分割(4週間ごと) |
参考:「基本手当の所定給付日数」ハローワークインターネットサービス
両者は、「年金の併給ができるかどうか」や「給付日数」などが人によって異なるため、高年齢求職者給付と失業手当のどちらが得かは一概にはいえません。そこで、判断基準となるポイントをご紹介します。
高年齢求職者給付を受け取る方が得になる人
高年齢求職者給付を受け取る方が得になるかどうかの判断基準は以下の点が挙げられます。
- 退職日が65歳誕生日の前日以降
- 老齢厚生年金の受け取り額が高い人
65歳の誕生日前日以降の退職では、失業手当は受給できず、高年齢求職者給付を受給することになります。高年齢求職者給付は、年金との併用が可能なので老齢厚生年金の受給額が高いほど、受け取れる金額が大きくなります。そのため、退職日が1日異なるだけで、老齢厚生年金が全額停止されるリスクもあるため注意が必要です。
失業手当を受け取る方が得になる人
- 退職日が65歳誕生日の前々日以前
- 老齢厚生年金の停止額以上に失業手当が高い人
失業手当は、受給資格のある方が65歳の誕生日前々日までに退職すれば、65歳を過ぎても最大300日を超えて失業手当を受給できます。失業手当受給中は、老齢厚生年金の支給が停止されますが、給付日数が長いため、最終的な受給総額が大きくなることがあります。特に、雇用保険加入期間が長い方は、給付日数が長くなる点を理解しておきましょう。
このように、失業手当の金額や老齢厚生年金の受給額がどれくらいかを事前に確認しておくことが大切です。どちらのほうが得かどうかは、雇用保険加入期間や給付日数によっても異なるため、慎重に判断するだけでなく、事前にハローワークなどで相談することが大切です。
高年齢求職者給付金に関するよくある質問
高年齢求職者給付金に関して、よくある質問と回答をまとめました。再就職しなくてももらえる?
高年齢求職者給付金は、求職活動中の方向けの給付金です。そのため、失業中でも、今後就職する意思がない場合は対象外です。
自己都合で退職してももらえる?
高年齢求職者給付金は、自己都合退職の場合も対象となります。ただし、ハローワーク等に離職票の提出と求職の申し込みを行った後、7日間の待期期間と、原則1か月の給付制限期間(令和7年4月1日以降に退職した場合)を経過しなければ支給は開始されません。なお、退職日から遡って5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合は、給付制限期間が3か月となります。
高年齢求職者給付金と失業保険(基本手当)の違いは?
高年齢求職者給付金と失業保険(基本手当)の主な違いは、対象年齢、給付資格、支給日数、年金との併給の可否にあります。高年齢求職者給付金は65歳以上で離職した方が対象で、1年間に6か月以上の被保険者期間が必要です。支給日数は30日分または50日分で、年金との併給が可能です。一方、失業保険(基本手当)は65歳未満で離職した方が対象で、2年間に12か月以上の被保険者期間が必要です。支給日数は90日~360日の範囲で、年金との併給はできません。申請者が選択するのではなく、年齢によって適用される制度が決まります。
高年齢求職者給付金はいくらもらえる?
高年齢求職者給付金の支給額は「基本手当日額×給付日数(30日または50日)」で計算されます。基本手当日額は退職前6か月の賃金を基に算出されるため、人によって異なります。たとえば、退職前の月給が15万円で雇用保険加入期間が1年以上の場合は約20万円、月給12万円で加入期間が1年未満の場合は約9.6万円です。基本手当日額の上限は7,255円(令和7年8月1日~)のため、最大でも362,750円(50日分の場合)が上限となります。
高年齢求職者給付金は何歳まで受給できる?
高年齢求職者給付金には年齢の上限がありません。65歳以上であれば、70歳でも80歳でも、要件を満たすかぎり受給できます。また、受給回数にも制限がないため、離職と再就職を繰り返した場合でも、そのつど要件を満たせば給付を受けられます。
高年齢求職者給付金はいつ振り込まれる?
高年齢求職者給付金は、ハローワークで失業の認定を受けた日から約7日後に、届出した金融機関口座へ振り込まれます。土日祝日を挟む場合はその分だけ遅れることがあります。失業手当のように4週間ごとの分割支給ではなく、一括で支給される点が特徴です。
高年齢求職者給付金を受けると年金は停止される?
高年齢求職者給付金を受給しても、老齢年金は停止されません。65歳未満の方が受給する基本手当(失業手当)は老齢厚生年金と併給できませんが、高年齢求職者給付金は年金との併給が認められています。どちらも減額されず、全額受け取ることが可能です。
高年齢求職者給付金に税金はかかる?
高年齢求職者給付金は非課税所得です(雇用保険法第12条)。そのため、受給しても所得税や住民税はかかりません。確定申告や年末調整の際に収入として申告する必要もなく、国民健康保険料の算定にも影響しません。
パート・アルバイトでも高年齢求職者給付金はもらえる?
雇用保険に加入していたパート・アルバイトの方であれば、高年齢求職者給付金を受給できます。週20時間以上の所定労働時間があり、31日以上の雇用見込みがある場合は雇用保険の加入対象です。離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あり、失業状態にあるなど、一般の受給要件を満たすことが必要です。
高年齢求職者給付金の受給期限はいつまで?
高年齢求職者給付金の受給期限は、離職日の翌日から1年間です。この期間を過ぎると、たとえ要件を満たしていても給付を受け取ることができなくなります。待期期間(7日間)や給付制限期間を考慮すると、手続きが遅れるほど受給できる金額が減る可能性があるため、早めにハローワークで手続きすることが重要です。
まとめ
高年齢求職者給付金は、65歳以上で離職した方が、再就職活動中の生活を支えるために受給できる給付金です。ただし、待期期間または給付制限期間が経過した後の支給となります。
令和7年4月1日以降の退職では、自己都合退職の給付制限期間が原則1か月に短縮されました。また、令和7年8月1日の改定により基本手当日額の上限・下限も引き上げられています。
受給期限は離職日の翌日から1年間です。早めの手続きを心がけましょう。
まだまだ働く意欲のある高齢者の活躍は、社会にとっても大きな利益となります。高年齢求職者給付金を活用し、これからも生き生きと働ける再就職先を見つけてください。
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