会社から「再就職援助計画対象労働者証明書」という書類を渡された。あるいは、これから渡されると説明を受けた。長い名前の見慣れない書類を前に、「これは何なのか」「受け取ると自分に不利になることはないのか」と不安になっている方は少なくないはずです。
結論からお伝えします。この証明書は、あなたが会社都合で離職することになったとハローワークが公的に証明した書類であり、持っていることであなたが不利になる仕組みは一つもありません。
むしろ逆です。厚生労働省は離職者本人に向けたリーフレットで、「再就職のための相談や応募・面接の際には再就職援助計画対象者であることを申告してください」と呼びかけています。この証明書を提示された企業は、あなたを採用することで1人あたり30〜40万円の助成金を受け取れるためです。
とはいえ、「リストラ対象だったと知られたくない」という気持ちも自然なもの。実はその点にも公式に配慮された仕組みがあります。この記事では、証明書の正体・使い方・気になるデメリットの有無を、厚生労働省の資料にもとづいて整理します。
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この記事の目次
再就職援助計画対象労働者証明書とは?
再就職援助計画対象労働者証明書とは、あなたが法令にもとづく「再就職援助計画対象労働者」であることを、ハローワークが証明した書類です。厚生労働省の資料でも、この定義がそのまま示されています。
前提となる「再就職援助計画」とは、労働施策総合推進法第24条にもとづく計画書です。1か月以内に常時雇用する労働者が30人以上離職するような事業規模の縮小・事業転換等を行おうとする会社は、この計画を作成してハローワークの認定を受けなければなりません。離職者が30人未満でも会社が任意で作成することができます。
つまりこの証明書は、「あなたは自分の落ち度ではなく、会社の事業縮小によって離職することになった人です」と国が認めた書類だと考えてください。
どうやって手元に届くのか
証明書は、あなたが自分で申請するものではありません。会社が再就職援助計画をハローワークへ提出して認定を受けると、ハローワークが対象労働者ごとに証明書を作成します。
会社が再就職援助計画を作成し、労働組合等の意見を聴いたうえでハローワークへ提出
↓
ハローワークが計画を認定し、対象労働者ごとに証明書を作成
↓
離職元の会社を経由して、あなたに証明書が交付される
なお、再就職援助計画は最初の離職者が生じる日の1か月前までに提出することとされています。そのため、証明書は多くの場合、実際に退職する前のタイミングで手元に届きます。
この証明書を持っているとどうなる?
証明書があなたにもたらす最大の効果は、応募先の企業にとって「採用する経済的なメリットがある人材」になれることです。証明書を持つ方を一定の条件で採用した企業は、「早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)」を受給できます。支給額は対象者1人あたり30万円、成長性の要件を満たす企業なら40万円です。
企業が助成金を受け取るには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。ここに、あなたにとっての意味が詰まっています。
| 企業側の条件 | あなたにとっての意味 |
|---|---|
| ①離職日の翌日から3か月以内に、期間の定めのない労働者として雇い入れる | 早く決まるほど企業にメリットがあるので、選考が前向きに進みやすい |
| ②雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として雇い入れる | 雇用保険に入る働き方での採用になる |
| ③雇い入れ日から6か月後の日において引き続き雇用している | 短期で切られる契約ではなく、定着前提の採用になる |
| ④雇い入れ後6か月間の各月の賃金を、雇い入れ前の賃金から5%以上上昇させる | 前職より5%以上高い給与でなければ企業は助成金を受け取れない |
とくに④が重要です。企業が助成金を受けるには、あなたの給与を前職より5%以上引き上げる必要があるのです。厚生労働省が「賃金上昇を伴う早期再就職につながる可能性があります」と呼びかけているのは、この仕組みがあるためです。
また①のとおり、有期雇用での採用や、有期契約から無期契約への切り換え、紹介予定派遣を経た採用は助成の対象になりません。最初から無期雇用で採用される必要がある点も、あなたにとっては有利に働きます。
証明書にデメリットはある?
「リストラ対象者だったと知られるのは不利ではないか」という不安から、デメリットを心配される方が多いようです。結論として、証明書を受け取ること自体にデメリットはありません。
理由は3つあります。
証明書が証明しているのは、勤務態度や能力の問題ではなく「会社の事業規模の縮小等により離職を余儀なくされた」という事実です。むしろ会社都合による離職であることの客観的な裏づけになります。
②持っているだけでは何の影響もない
証明書は受け取ったからといって自動的にどこかへ通知されるものではありません。使うかどうかはあなたが決められます。
③使えば企業側にメリットが生まれ、給与も上がる方向に働く
提示すれば企業は30〜40万円の助成金を受けられ、その条件として前職比5%以上の賃上げが必要になります。あなたの待遇にとってプラスに働く仕組みです。
提示するかどうかは、あなたが自由に決められます
不安の核心にあるのは「提示を強制されるのではないか」という点かもしれません。ここは明確です。
厚生労働省のリーフレットには、応募の段階で応募先に自身が再就職援助計画の対象者であることを申告したくない場合には、応募・面接時に証明書を提示しなくても差し支えないと明記されています。
提示は義務ではなく、あくまであなたの選択です。第一志望の企業には出さず、他の企業には出す、といった使い分けも自由にできます。
申告しづらいときはハローワークが代わりに伝えてくれます
「自分の口から言うのは気が引けるが、企業にメリットがあるなら伝えてほしい」という方のために、公式な仕組みが用意されています。
企業へ対象者である旨を申告しづらい場合は、ハローワークが代わりにその旨を伝えることも可能です。ただしこれは、ハローワークの紹介によって応募する場合に限られます。
自分から切り出しにくいと感じるなら、ハローワークの窓口でこの取り扱いを希望する旨を伝えてみてください。
証明書の使い方|いつ・どこに出すのか
使い方はシンプルです。就職を希望する企業へ、応募や面接の際に証明書を提示するだけです。
STEP1 離職元の会社経由で、ハローワークから証明書を受け取る
STEP2 ハローワークや民間の職業紹介事業者へ再就職の相談をする際、証明書を提示して対象者である旨を伝える
STEP3 応募・面接の際に、就職希望先の企業へ証明書を提示する
STEP4 採用が決まったら、企業へ証明書を提出する(企業はこれをもとに助成金を申請します)
提示するタイミングは早いほど効果的です。選考が進んで条件面の話になってから出すよりも、応募の段階で伝えておくほうが、給与提示の検討に反映されやすくなります。
いつまでに使えばいい?離職から3か月が実質的な期限
証明書そのものに有効期限は設けられていませんが、実質的なタイムリミットがあります。企業が助成金を受けられるのは離職日の翌日から3か月以内に雇い入れた場合に限られるためです。
離職から3か月を過ぎると、証明書を提示しても企業側にメリットが生まれなくなります。証明書の価値を活かしたいなら、離職前から求職活動を始め、遅くとも離職後2か月以内には内定を得ておくスケジュール感が理想的です。
自分は再就職援助計画の対象になる?
再就職援助計画の対象になるのは、経済的事情による事業規模の縮小等によって離職する方です。同じ「会社を辞める」でも、理由によって対象かどうかが分かれます。
| 離職の理由 | 再就職援助計画の対象 |
|---|---|
| 経済的事情による事業規模の縮小等による離職 | 対象 |
| その他の事業主都合による離職 | 対象外 |
| 定年退職 | 対象外 |
| 雇用期間の満了による離職 | 原則対象外。ただし更新を希望したにもかかわらず事業規模の縮小等により更新されなかった方で、実雇用期間が3年以上、または契約が更新されると明示されていた場合は対象 |
| 自己都合による離職 | 原則対象外。ただし事業規模の縮小等に起因する事情による離職の場合は対象となり得る |
「常時雇用する労働者」には正社員だけでなく、継続して6か月以上雇用されている方や、6か月以上雇用されることが予定されている方も含まれます。ただし1週間の所定労働時間が20時間未満の方は含まれません。
自分が対象になるかどうかは、最終的には会社が作成した再就職援助計画にあなたの氏名が記載されているかどうかで決まります。証明書が交付されていない場合は、まず離職元の会社に計画の作成状況を確認してみてください。
証明書に書かれている「離職前賃金」とは
証明書には、本人の同意がある場合に限り「離職前賃金」が記載されます。これは前職で最後に支払われていた、毎月決まって支払われる賃金の額です。
この金額は、企業が助成金を受けるための「前職比5%以上の賃金上昇」を判定する基準になります。つまり記載された賃金額の1.05倍以上の給与を出さなければ、企業は助成金を受け取れないということです。
賃金額の記載は本人の同意が前提です。同意しない選択もできますが、記載がない場合、企業側は給与明細などの別の書類で前職賃金を確認する必要が生じます。手続きが煩雑になるぶん、助成金の活用を見送られる可能性がある点は知っておくとよいでしょう。
なお、この賃金には時間外手当や休日手当は含まれません。基本給と、役職手当・資格手当など毎月決まって支払われる手当が対象です。通勤手当・家族手当・住宅手当も原則として含まれません。
記載された賃金額が離職時の実際の賃金と異なる場合は、本人からハローワークへ賃金の更新を依頼できる仕組みがあります。心当たりがある場合は、事業所を管轄するハローワークへ相談してください。
「求職活動支援書」との違い
再就職援助計画対象労働者証明書とよく似た書類に「求職活動支援書」があります。どちらも早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)の対象者であることを示す書類ですが、根拠となる法律と対象者の年齢が異なります。
| 項目 | 再就職援助計画対象労働者証明書 | 求職活動支援書 |
|---|---|---|
| 根拠となる法律 | 労働施策総合推進法第24条 | 高年齢者雇用安定法第17条 |
| 対象者の年齢 | 年齢の制限なし | 45歳以上70歳未満 |
| 作成のきっかけ | 1か月以内に30人以上が離職する事業規模の縮小等(30人未満でも任意で作成可) | 解雇等により離職することとなり、再就職を希望する場合 |
| 交付する主体 | ハローワーク(離職元の会社経由で交付) | 離職元の会社 |
どちらか一方を持っていれば、応募先の企業は雇入れ支援コースの申請が可能です。両方を受け取っている場合も、いずれかを提示すれば問題ありません。
失業保険(雇用保険)との関係
証明書を持っていることと、失業保険の給付内容は直接の関係がありません。ここは混同されやすいポイントです。
失業保険で給付制限の有無や給付日数を左右するのは、離職票に記載された離職理由です。倒産・解雇等の会社都合で離職した方は「特定受給資格者」となり、給付制限なしで受給でき、所定給付日数も自己都合離職より手厚くなります。
事業規模の縮小等による離職であれば、多くの場合は特定受給資格者に該当します。ただしそれは離職票の離職理由によって判断されるものであり、証明書の有無で決まるわけではありません。離職票を受け取ったら、離職理由の欄が実態と合っているかを必ず確認してください。
なお、失業保険を受給中に早期に再就職が決まった場合は「再就職手当」を受け取れる可能性があります。証明書による企業側の助成金とは別に、あなた自身が受け取れる給付です。
再就職援助計画対象労働者証明書に関するよくある質問
再就職援助計画対象労働者証明書をもらうとデメリットはありますか?
受け取ること自体にデメリットはありません。証明書はあなたの落ち度ではなく会社の事業規模の縮小等により離職することになったと国が認めた書類であり、持っているだけで自動的にどこかへ通知されるものでもありません。応募先に提示するかどうかはあなたが自由に決められ、厚生労働省の資料でも、申告したくない場合は応募・面接時に提示しなくても差し支えないと明記されています。
証明書はどうやって使えばよいですか?
就職を希望する企業へ、応募や面接の際に提示します。ハローワークや民間の職業紹介事業者へ再就職の相談をする際にも、対象者である旨を伝えてください。採用が決まったら企業へ証明書を提出し、企業はこれをもとに早期再就職支援等助成金(雇入れ支援コース)を申請します。提示のタイミングは早いほど、給与提示の検討に反映されやすくなります。
リストラ対象だったと知られたくないのですが、提示は必須ですか?
必須ではありません。応募の段階で対象者であることを申告したくない場合、応募・面接時に証明書を提示しなくても差し支えないとされています。また、自分から申告しづらい場合には、ハローワークが代わりに企業へその旨を伝えることも可能です。ただしこの取り扱いは、ハローワークの紹介による応募時に限られます。窓口で希望を伝えてみてください。
証明書を提示すると何かメリットがありますか?
提示された企業は、あなたを一定の条件で採用することで1人あたり30万円(成長性の要件を満たす企業は40万円)の助成金を受け取れます。その条件の一つが「雇い入れ後6か月間の各月の賃金を前職より5%以上上昇させること」であるため、前職より高い給与での採用につながりやすくなります。厚生労働省も、賃金上昇を伴う早期再就職につながる可能性があるとして申告を呼びかけています。
証明書に有効期限はありますか?
証明書そのものに有効期限は設けられていませんが、実質的な期限があります。企業が助成金を受けられるのは離職日の翌日から3か月以内に雇い入れた場合に限られるため、離職から3か月を過ぎると証明書を提示しても企業側にメリットが生まれません。離職前から求職活動を始め、遅くとも離職後2か月以内の内定を目指すことをおすすめします。
証明書をもらっていませんが、対象ではないということですか?
対象かどうかは、会社が作成した再就職援助計画にあなたの氏名が記載されているかで決まります。会社が計画を作成していない場合や、計画の対象者に含まれていない場合は証明書が交付されません。まずは離職元の会社に計画の作成状況を確認してください。なお、45歳以上70歳未満の方は「求職活動支援書」が交付されている可能性があり、こちらでも同じ助成金の対象となります。
自己都合で退職した場合も対象になりますか?
自己都合による離職は原則として再就職援助計画の対象外です。ただし、事業規模の縮小等に起因する事情による離職であれば対象となり得ます。また、雇用期間の満了による離職も原則対象外ですが、更新を希望したにもかかわらず事業規模の縮小等により更新されなかった方で、実雇用期間が3年以上、または契約が更新されると明示されていた場合は対象となります。定年退職は対象外です。
証明書に書かれている賃金の記載に同意すべきですか?
記載は本人の同意が前提であり、同意しない選択もできます。ただし記載がない場合、企業は給与明細など別の書類で前職賃金を確認する必要が生じ、手続きが煩雑になります。そのぶん助成金の活用を見送られる可能性がある点は知っておくとよいでしょう。なお記載される賃金には時間外手当・休日手当・通勤手当・家族手当などは含まれず、基本給と役職手当等の毎月決まって支払われる手当が対象です。
証明書があると失業保険で有利になりますか?
証明書の有無と失業保険の給付内容に直接の関係はありません。給付制限の有無や所定給付日数を左右するのは、離職票に記載された離職理由です。倒産・解雇等の会社都合による離職であれば「特定受給資格者」となり、給付制限なしで受給でき給付日数も手厚くなります。事業規模の縮小等による離職であれば多くの場合これに該当しますが、判断はあくまで離職票の離職理由によります。離職票を受け取ったら離職理由の欄を必ず確認してください。
ハローワークの紹介でない応募でも助成金の対象になりますか?
就職の経路は問われません。ハローワークからの職業紹介でない場合も助成の対象となるため、求人サイトからの直接応募や知人の紹介による転職でも、証明書を提示すれば企業は助成金を申請できます。ただし、ハローワークが代わりに対象者である旨を企業へ伝える取り扱いについては、ハローワークの紹介による応募時に限られます。
まとめ
再就職援助計画対象労働者証明書は、あなたが不利になる書類ではなく、次の職場での待遇を引き上げる材料になり得る書類です。要点を整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 証明書の正体 | 会社の事業縮小等により離職することになったとハローワークが証明した書類 |
| デメリット | なし。提示するかどうかは本人の自由で、申告しづらい場合はハローワークが代わりに伝えることも可能 |
| 使い方 | 応募・面接時に就職希望先の企業へ提示する |
| 実質的な期限 | 離職日の翌日から3か月以内の採用でなければ企業側にメリットがない |
| 企業側のメリット | 1人あたり30〜40万円の助成金。条件として前職比5%以上の賃上げが必要 |
思いがけない離職は、誰にとっても不安なものです。ただ、この証明書は「早く、そして前職より良い条件で再就職してほしい」という制度設計のもとで交付されています。使うかどうかはあなた次第ですが、選択肢として持っておく価値は十分にあります。
証明書の内容や自分が対象になるかどうかで迷ったときは、住まいの地域を管轄するハローワークの窓口で相談してみてください。
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