「取引先にCO2排出量の削減をお願いしたいが、コスト負担まで押し付けるわけにはいかない」――サプライチェーンの脱炭素に取り組む企業の調達部門やサステナビリティ部門から、こうした声が聞かれます。環境省のグリーン・バリューチェーンプラットフォームでも、企業のサプライチェーン排出量のうち、自社の直接排出よりもScope3(取引先など他社の排出)が大半を占めるケースが多いと整理されています。つまり、自社の工場や本社ビルだけを省エネ化しても、削減目標には届かないのです。
そこで注目したいのが、令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業)です。環境省が実施する本制度は、バリューチェーンを主導する「代表企業」と、その取引先である「連携企業」が組んで省CO2設備を導入する取組を、1事業者あたり最大15億円・補助率最大1/2で支援します。
令和8年度(2026年度)の公募は2026年7月30日(木)から11月13日(金)17時まで。しかも今年度は、中小企業でも使いやすくなる要件緩和が3点入りました。この記事では、対象者・補助率・対象設備・申請スケジュールまで、環境省の公表資料をもとにわかりやすく解説します。
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この記事の目次
脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(Scope3事業)とは?最大15億円・補助率1/2の制度概要

令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業)は、代表企業と取引先の連携企業が共同で省CO2設備を導入する取組に対し、1事業者あたり最大15億円、補助率は中小企業1/2・大企業1/3で支援する環境省の補助金です。令和8年度予算額は15億円、3年間で総額50億円の国庫債務負担が設定されています。
大きな特徴は、「1社で申請する補助金ではない」という点にあります。省エネ補助金の多くが自社の設備更新を対象とするのに対し、本制度は代表企業と連携企業がCO2排出削減について合意を交わし、セットで申請する仕組みです。代表企業から見れば取引先の排出量、つまりScope3の削減が進み、連携企業から見れば設備更新の資金負担が軽くなる。双方にメリットが生まれる設計になっています。
・正式名称:令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業)
・実施主体:環境省 地球環境局 地球温暖化対策課 地球温暖化対策事業室
・執行団体:一般社団法人地域循環共生社会連携協会(RCESPA)
・補助率:中小企業1/2、大企業1/3(一定要件で1/2)
・補助上限額:15億円(1事業者につき)
・事業期間:最大3カ年
・公募期間:2026年7月30日~11月13日17時(必着)
そもそもScope3とは?Scope1・Scope2との違いをわかりやすく解説

Scope3とは、自社の事業活動に関連する「他社」の温室効果ガス排出量のことです。環境省と経済産業省が策定した基本ガイドラインでは、サプライチェーン排出量をScope1・Scope2・Scope3の3つに分類しています。
| 区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| Scope1 | 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出 | 自社工場のボイラでの燃料の燃焼、工業プロセス |
| Scope2 | 他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出 | 購入した電力の使用 |
| Scope3 | Scope1・Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出) | 原材料の調達、物流、廃棄物処理、販売した製品の使用 |
Scope3はGHGプロトコルの「Scope3基準」により、原材料の調達から製品の廃棄まで15のカテゴリに分類されています。自社の努力だけでは削減できない領域だからこそ、取引先との協働が不可欠になるわけです。本補助金は、まさにこの「他社と一緒でなければ削減できない」という構造的な課題に対して、資金面から解を与える制度だと言えます。
令和8年度のScope3補助金は何が変わった?中小企業が使いやすくなった3つの改正点
令和8年度のScope3補助金では、CO2削減率要件の緩和・連携企業数の緩和・対象カテゴリーの追加という3点が改正されました。令和7年度に「要件が厳しくて手が挙げられなかった」という事業者ほど、今年度は再検討する価値があります。改正点1:CO2削減率が事業者ごと30%から「規模別」に緩和

令和7年度は、参加する事業者それぞれが30%以上のCO2削減率を達成する必要がありました。令和8年度は、事業全体で30%以上という基準は維持しつつ、事業者ごとの要件が企業規模別に設定されています。
| 企業規模 | 令和7年度 | 令和8年度 |
|---|---|---|
| 算定範囲 | 各事業者ごと | 代表企業+連携企業(事業全体)で30%以上 |
| 大企業 | 30%以上 | 30%以上 |
| 中堅企業 | 30%以上 | 20%以上 |
| 中小企業 | 30%以上 | 10%以上 |
たとえば、代表企業(大企業)が35%、連携企業B(中堅企業)が20%、連携企業C(中小企業)が10%の削減であっても、事業全体で30%以上を満たしていれば要件をクリアできます。設備更新の余地が限られる小規模な取引先も、連携の輪に加わりやすくなりました。
改正点2:中堅・中小企業が代表企業になる場合は連携企業1者でOK
令和7年度は、代表企業1者に対して連携企業2者以上との合意が必須でした。令和8年度は、代表企業が中堅・中小企業の場合、連携企業1者でも申請が可能になっています。代表企業が大企業の場合は、従来どおり連携企業2者以上が必要です。
取引先の数が限られる中堅・中小のメーカーや、特定のサプライヤーと深く結びついた事業構造の企業にとって、この緩和の意味は小さくありません。なお、設備更新は連携企業のみで実施する形も認められています。
改正点3:Scope3カテゴリー11「販売した製品の使用」を新たに追加
令和8年度から、カテゴリー11(販売した製品の使用)が条件付きで支援対象に追加されました。これは、自社が販売した設備機器を使う側の企業で発生する排出量を指します。
対象となるのは、CO2排出削減に寄与する高効率化・電化・燃料低炭素化を実現した産業用・業務用の設備機器や生産設備等であり、かつ代表企業のScope3対象の設備機器であることが条件です。設備メーカーが自社製品への更新を後押しする形で、下流側の排出削減を進められるようになったのが今年度の新しいポイントです。
Scope3補助金の対象になるのは誰?代表企業と連携企業の要件
本補助金には「代表企業」と「連携企業」という2つの立場があり、それぞれに求められる要件が異なります。まず自社がどちらの立場で参画するのかを整理することが、申請準備の出発点です。
代表企業の要件|GX率先実行宣言とScope3削減の合意が必須
代表企業とは、自社のScope3にあたるCO2を排出する企業と連携し、バリューチェーンの脱炭素化を主導する企業です。令和8年度の主な要件は次の2点です。
- 代表企業が「GX率先実行宣言」を行っていること
- 代表企業のScope3削減目標を踏まえ、代表企業と連携企業が本事業実施後の連携企業のCO2排出量について合意を行っていること
合意が必要な連携企業の数は、代表企業が大企業の場合は2者以上、中堅・中小企業の場合は1者以上です。GX率先実行宣言は経済産業省が推進するGXリーグの枠組みで行う宣言で、宣言のグレードは問われません。また、持ち株会社がGX率先実行宣言を行っている場合、その子会社が代表企業となることも可能とされています。
連携企業の要件|対象となるScope3カテゴリーは6分類
連携企業とは、代表企業のScope3削減に資する取引先企業のことです。代表企業から見て、次の6つのScope3カテゴリーに位置する事業者が対象となります。
| カテゴリー | 該当する排出活動の例 |
|---|---|
| 1.購入した製品・サービス | 原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達 |
| 4.輸送、配送(上流) | 調達物流、横持物流、出荷物流(自社が荷主) |
| 5.事業から出る廃棄物 | 廃棄物(有価物を除く)の自社以外での輸送・処理 |
| 9.輸送、配送(下流) | 出荷輸送、倉庫での保管、小売店での販売 |
| 11.販売した製品の使用 | 使用者による製品の使用(令和8年度から条件付きで追加) |
| 12.販売した製品の廃棄 | 使用者による製品の廃棄時の輸送・処理 |
注意したいのが、代表企業の連結財務諸表における子会社および関連会社等の扱いです。これらは代表企業のScope1・Scope2として扱われ、連携企業にはなれません。また、連携企業として交付申請した事業者は、その年度に代表企業になることはできない点も押さえておきましょう。
補助対象となる設備・経費|太陽光発電やLED単体は対象外
補助対象となるのは、現在の設備構成と比較して省CO2効果が見込める設備の導入で、具体的には電化・燃料転換・高効率化・熱回収などが想定されています。補助対象経費は設備費および工事費です。
一方で、対象外となる設備もあります。令和7年度の事業要件では、太陽光発電設備は補助対象外とされ、LED照明の更新も単体では対象外(中小企業に限り、主要設備の導入と併せて導入する制御機能付きLEDは対象)と整理されていました。また、費用対効果10万円/t-CO2以下、投資回収年数3年以上といった条件も設定されていました。
Scope3補助金の補助率・補助上限額はいくら?中小企業は1/2・上限15億円
令和8年度Scope3補助金の補助率は、中小企業が1/2、大企業が1/3です。ただし大企業でも、「GX率先実行宣言」を行い、かつ対策によりCO2排出量を3,000t-CO2/年以上削減する場合は補助率1/2に引き上げられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率(中小企業) | 1/2 |
| 補助率(大企業) | 1/3(GX率先実行宣言かつ3,000t-CO2/年以上削減で1/2) |
| 補助上限額 | 15億円(設備導入をする1事業者あたり、後年度分も含めた総額) |
| 補助対象経費 | 設備費・工事費 |
| 事業期間 | 最大3カ年 |
| 令和8年度予算額 | 15億円(3年間で総額50億円の国庫債務負担) |

補助率1/2は、省エネ関連の補助金としては手厚い水準です。たとえば設備投資額が1億円の中小企業であれば、5,000万円が補助される計算になります。投資回収年数を大きく短縮できるため、これまで「更新したいが採算が合わない」と見送っていた高効率設備への切り替えを検討しやすくなります。
なお、補助上限額の15億円は「設備導入をする1事業者あたり」の枠であり、応募事業の後年度分も含めた総額で判定されます。代表企業の子会社等が補助事業を実施する場合は、代表企業グループ全体で15億円が上限となる点にも注意が必要です。
Scope3補助金の申請方法とスケジュールは?締切は3回、Jグランツで申請
令和8年度Scope3補助金の公募期間は、2026年7月30日(木)から11月13日(金)17時(必着)までです。公募開始日は1回ですが、締切は3回設定されており、準備が整った段階で応募できます。
| 区分 | 締切日時 |
|---|---|
| 第1期締切 | 2026年9月4日(金)17時 |
| 第2期締切 | 2026年10月9日(金)17時 |
| 最終締切 | 2026年11月13日(金)17時 |
重要なのは、予算額がなくなり次第、受付が終了するという点です。応募状況によっては最終締切を待たずに募集が閉じられる可能性があり、予算額の残りは執行団体のホームページで公表される予定とされています。令和8年度の予算額は15億円で、補助上限が1事業者15億円であることを踏まえると、枠は決して大きくありません。早期の締切を狙う判断が現実的でしょう。
申請は原則としてJグランツ(デジタル庁が運営する補助金の電子申請システム)で受け付けられます。Jグランツを利用するにはGビズIDプライムアカウントが必要で、取得には2週間程度かかります。アカウント未取得の場合は、書類作成と並行して早めに手続きを進めてください。
Scope3補助金の申請はどんな流れで進む?代表企業の公募から実績報告まで6ステップ
本補助金は、代表企業の公募と連携企業の交付申請という2段階のプロセスで進みます。全体の流れを把握しておくと、社内外の調整スケジュールが立てやすくなります。
- ステップ1:代表企業がGX率先実行宣言を行い、Scope3削減目標を設定・公表する
- ステップ2:代表企業と連携企業がCO2排出削減計画について協議し、合意を締結する
- ステップ3:代表企業が執行団体の公募に応募し、審査委員会の審査を経て代表企業の資格認定を受ける
- ステップ4:連携企業(および要件を満たす代表企業)が交付申請を行う
- ステップ5:審査を経て交付決定、設備の発注・工事着手
- ステップ6:事業完了後、連携企業が排出量の実績を環境省に報告し、環境省から代表企業へ共有される

見落としがちなのが、事業完了後の報告義務です。連携企業は事業完了後の排出量を報告する必要があり、目標が未達の場合は代表企業と連携企業が共同で原因や対応を検討することが求められます。補助金を受け取って終わりではなく、継続的なモニタリングが前提となる制度である点は理解しておきましょう。
脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(Scope3事業)に関するよくある質問
Scope3補助金の補助率と補助上限額はいくらですか?
補助率は中小企業が1/2、大企業が1/3です。大企業でも「GX率先実行宣言」を行い、かつ対策によりCO2排出量を3,000t-CO2/年以上削減する場合は1/2となります。補助上限額は設備導入をする1事業者あたり15億円で、後年度分を含めた総額で判定されます。事業期間は最大3カ年です。
令和8年度Scope3補助金の公募期間と締切はいつですか?
公募期間は2026年7月30日(木)から11月13日(金)17時(必着)までです。締切は3回設定されており、第1期が9月4日(金)17時、第2期が10月9日(金)17時、最終締切が11月13日(金)17時となっています。ただし予算額がなくなり次第受付が終了するため、最終締切前に募集が閉じられる可能性があります。
中小企業だけでScope3補助金に申請できますか?
1社単独では申請できません。本補助金は代表企業と連携企業がCO2排出削減について合意することが前提の制度です。ただし令和8年度からは、代表企業が中堅・中小企業の場合、連携企業1者との合意で申請が可能になりました。代表企業が大企業の場合は、従来どおり連携企業2者以上との合意が必要です。
Scope3補助金で求められるCO2削減率は何%ですか?
本事業で導入する設備全体で30%以上の省CO2効果を満たすことが必要です。加えて令和8年度は、事業者の規模ごとに大企業30%以上、中堅企業20%以上、中小企業10%以上という要件が設定されています。令和7年度は事業者ごとに一律30%以上が求められていたため、中堅・中小企業にとっては要件が緩和された形です。
GX率先実行宣言をしていないと代表企業になれませんか?
代表企業の要件として「GX率先実行宣言」を行っていることが求められます。宣言のグレードは問われません。また、持ち株会社がGX率先実行宣言を行っている場合は、その子会社が代表企業となることも可能とされています。この場合、連携企業となれるのは代表企業となった子会社のScope3企業に限られます。
太陽光発電設備やLED照明はScope3補助金の対象になりますか?
令和7年度の事業要件では、太陽光発電設備は補助対象外とされていました。LED照明も単体での更新は対象外で、中小企業に限り主要設備の導入と併せて導入する制御機能付きLEDが対象とされています。この場合、主要設備として導入する設備の補助額がLEDの補助上限額となります。令和8年度の詳細は公募要領で必ず確認してください。
連携企業になれるのはどのような取引先ですか?
代表企業から見てScope3のカテゴリー1(購入した製品・サービス)、4(輸送、配送・上流)、5(事業から出る廃棄物)、9(輸送、配送・下流)、11(販売した製品の使用)、12(販売した製品の廃棄)に位置する事業者が対象です。カテゴリー11は令和8年度から条件付きで追加されました。なお代表企業の連結財務諸表における子会社や関連会社等は、代表企業のScope1・Scope2扱いとなり連携企業にはなれません。
2次サプライヤーもScope3補助金に申請できますか?
代表企業の2次サプライヤーが申請する場合は、代表企業と2次サプライヤーがCO2削減の合意を交わすことで交付申請が可能とされています。その際、1次サプライヤーが本事業の交付申請を行うことは必ずしも必要ではありません。合意書は代表企業・1次サプライヤー・2次サプライヤーの3社で締結するほか、代表企業と2次サプライヤーのみで締結する形も認められています。
Scope3補助金の申請方法を教えてください
原則としてJグランツ(デジタル庁が運営する補助金の電子申請システム)から申請します。Jグランツの利用にはGビズIDプライムアカウントが必要で、取得に2週間程度かかるため早めの手続きが必要です。申請前には代表企業と連携企業の間でCO2排出削減計画の合意を締結しておく必要があります。詳細な様式や提出書類は執行団体である一般社団法人地域循環共生社会連携協会のホームページで公表されています。
補助事業が完了した後に必要な手続きはありますか?
連携企業は事業完了後の排出量を環境省に報告する必要があり、その結果は環境省から代表企業に共有されます。目標が未達の場合は、代表企業と連携企業が目標達成に向けて共同で原因分析や対応を検討することが求められます。また、EEGS(温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の電子システム)での報告も義務づけられており、補助事業実施期間中の排出量についても報告が必要とされています。
まとめ|Scope3補助金は取引先の脱炭素を「一緒に」進めるための制度
令和8年度 脱炭素成長型経済構造移行推進対策費補助金(Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業)は、代表企業と取引先の連携企業が組んで省CO2設備を導入する取組を、1事業者あたり最大15億円・補助率最大1/2で支援する制度です。公募期間は2026年7月30日から11月13日17時まで、締切は9月4日・10月9日・11月13日の3回設定されています。
令和8年度は、CO2削減率が規模別に緩和され、中堅・中小企業が代表企業となる場合は連携企業1者でも申請できるようになりました。さらにScope3カテゴリー11(販売した製品の使用)が新たに支援対象へ加わり、設備メーカーが下流の排出削減を後押しする道も開かれています。
一方で、令和8年度の予算額は15億円と限られており、予算がなくなり次第受付が終了します。CO2排出削減計画の合意には取引先とのデータ調整が欠かせないため、準備には相応の時間がかかります。活用を検討している場合は、まず自社が代表企業と連携企業のどちらの立場になるのかを整理し、早い段階で相手企業との協議を始めることをおすすめします。
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