
令和3(2021)年10月に閣議決定した「地球温暖化対策計画」では、2030年度までに温室効果ガスを46%削減(2013年度比)する目標が掲げられました。この目標達成のために、エネルギー起源CO2は産業部門で38%削減、業務部門では51%の削減が必要です。
こうした取組を促進するため、「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)」には令和6年度補正予算で30億万円が計上されました。また令和7年度予算では、27億8,600万円が計上されています。
今回は令和6年度SHIFT事業第5次公募の概要と、令和7年度の事業についてまとめました。
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この記事の目次
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)とは?
SHIF事業は工場・事業場への脱炭素技術等の導入促進により、バリューチェーン全体でのCO2排出削減を図るものです。令和7年度も引き続き、設置が予定されています。
まずは参考として、令和6年度の概要を見ていきましょう。
事業内容
令和6年度のSHIF事業は、工場・事業場での脱炭素化取組のロールモデルとなる取組を創出し、中長期における温室効果ガス削減目標の達成に貢献することを目的として実施されました。
主な事業内容は、以下の2つです。
①CO2削減計画策定支援 中小企業等による工場・事業場でのCO2削減目標・計画の策定を支援 ■補助率 3/4 ■上限額 50~100万円 DX型計画策定支援は補助上限が100万円増額されます。 |
②省CO2型設備更新支援 A:標準事業 CO2排出量を工場・事業場単位で15%以上または主要なシステム系統で30%以上削減する設備更新を支援 ■補助率 1/3 ■上限額 1億円 B:大規模電化・燃料転換事業 主要なシステム系統で、要件を満たす設備更新を支援 ■補助率 1/3 ■上限額 5億円 C:中小企業事業 中小企業等による設備更新を支援 ■CO2削減量に比例型 以下のうち、いずれか低い額が補助されます。 ・年間CO2削減量×法定耐用年数×7,700(円) ・補助対象経費の1/2 ■上限額 5,000万円 |
出典:環境省
これらの支援は、令和7年度も引き続き行われる予定です。
そのほかに令和6年度は、Scope3削減に取り組む企業が主導した設備更新を促進する取組を支援する「企業間連携先進モデル支援」と、CO2排出量の管理・取引システムの提供、実施結果の取りまとめ等を行う「補助事業の運営支援」が設置されています。
補助事業の活用方法と脱炭素化のステップ
令和6年度のSHIFT事業の活用法は、以下のとおりです。
【活用パターン】 ・CO2削減計画策定支援を利用してCO2削減計画を策定し、自己資金で対策を実施する ・CO2削減計画策定支援を利用してCO2削減計画を策定し、省CO2型設備更新支援を利用して対策を実施する ・自ら所定様式のCO2削減計画を策定し、省CO2型設備更新支援を利用して対策を実施する |
いずれの場合も、まずはCO2削減計画を策定する必要があります。なお脱炭素化のステップとしては、以下の流れが想定されていました。
①削減余地の把握・対策検討
②実施計画の策定
➂対策実施
④CO2削減目標達成
まず「CO2削減計画策定支援」として、中小企業等に対して認定外部支援機関によるCO2排出量削減余地診断や、診断結果に基づくCO2削減計画の策定支援を行います。
その後の「省CO2型設備更新支援」は、工場等・事業場のCO2削減計画をもとに行う高効率設備の導入や電化・燃料転換等への支援です。
さらに「企業間連携先進モデル支援」として、Scope3削減に取り組む企業が主導して工場・事業場のCO2排出量削減に向けた設備更新の促進を行います。
応募要件
令和6年度の主な応募要件は、「年間CO2排出量50t以上3000t未満の工場・事業場を保有する中小企業等であること」でした。そのほかの対象者の主な要件は、以下のとおりです。
①事業を遂行するのに必要な費用の経理的基礎を有すること
②直近2期の決算において連続の債務超過がなく、適切な管理体制および経理処理能力を有すること
③補助対象設備の所有者であること
なお設備の所有者と事業所の所有者が異なる場合は、もしくはESCO事業やリース等を活用した参加に咲いては、設備の所有者を代表事業者とした共同応募が可能です。
ただし、風俗営業所等は対象外です。
対象経費
補助の対象となる主な経費は以下のとおりです。
- 工事費
- 設備費
- 業務費
- 事務費
また省CO2型設備更新支援では、以下の対象設備機器の導入・更新に関わる経費が対象となりました。
- エネルギー使用設備機器 高効率化あるいは電化・燃料低炭素化した産業・業務用設備機器や生産設備
- エネルギー供給設備機器 低炭素燃料供給設備および受変電設備
- 再生可能エネルギー発電設備・太陽熱供給設備・コジェネ発電設備
ただし交付決定前に発生した経費や、既存設備の撤去・移設・廃棄費等は対象外です。
また発電設備・熱供給設備は、100%自家消費する場合に限ります。
公募期間
令和6年度のSHIFT事業のスケジュールは以下のとおりです。
■CO2削減計画策定支援 ■省CO2型設備更新支援 五次:令和7年2月20日(木)~令和7年3月21日(金) |
令和7(2025)年3月現在、省CO₂型設備更新支援C(中小企業事業)について、五次公募が行われています。CO₂削減計画策定支援、省CO₂型設備更新支援(A/B事業)、企業間連携先進モデル支援の公募はありません。五次公募の締め切りは3月21日です。
令和7年度 SHIFT事業の概要
令和7年度のSHIFT事業は2050年カーボンニュートラルの実現や2030年度削減目標を達成するため、エネルギー起源CO2排出量のより少ない設備・システムへの改修を行う事業者を支援するものです。バリューチェーン全体のCO2排出削減を図るとともに、省CO2化の浸透を目指します。
出典:環境省
事業内容として、以下の4つが予定されています。
①省CO2型システムへの改修支援事業 |
---|
■補助率 1/3 ■補助上限 1億円または5億円 中小企業等におけるCO2排出量を大幅に削減する電化・燃料転換・熱回収等の取組により、工場・事業場単位でCO2排出量を15%以上(もしくは主要なシステム系統で30%以上)削減する設備の導入を支援します。 なお、蒸気システム・空調システム・給湯システム・工業炉・CGSに関する単純な高効率化改修は補助対象外です。 |
②DX型CO2削減対策実行支援事業 |
■補助率 3/4 ■補助上限 200万円 以下の取組を支援します。 ・DXシステムを用いた中小企業等の設備運用改善による即効性のある省CO2化 ・運転管理データに基づく効果的な改修設計などのモデル的な取組 |
③工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業 |
継続案件のみが対象です。 |
④工場・事業場の脱炭素化に向けた課題分析・解決手法に係る調査検討等 |
過年度事業の整理・分析・課題解決の検討等を行い、工場・事業場の脱炭素化普及促進に向けた取組を行います。 |
詳細は決まり次第、公表される予定です。
まとめ
令和6年度のSHIFT事業では、「CO2削減計画策定支援」と「省CO2型設備更新支援」を主軸とした支援が行われました。令和7年度は内容の一部が変更され、「省CO2型システムへの改修支援事業」「DX型CO2削減対策実行支援事業」など4つの事業が予定される予定です。電化・燃料転換・熱回収等による大幅なCO2削減やDXを活用した即効性のある省CO2化に重点を置き、バリューチェーン全体での排出削減が目指されます。
環境問題に対する態度は、企業評価にも直結します。SHIFT事業を始めとする支援制度を上手に活用し、負担の少ない事業場の改革を目指しましょう。