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ものづくり補助金とは?【2024年・令和6年】もの補助をわかりやすく解説

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ものづくり補助金は、日本の中小企業が革新的な製品やサービスを開発し、生産プロセスを効率化するための支援策です。政府は17次公募から新たに設置した「省力化枠」と「サービス高付加価値化枠」によって、省力化投資や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)を進めていきます。

令和6(2024)年3月11日から始まった18次公募は、令和5年度補正予算に基づき実施されました。その後の19次公募は未定となっていますが、採択交付決定・事業完了までの時間を考慮すると年内に完了することが難しいことから来年度になることが想定されます。令和6年度補正予算や令和7年度の本予算に注目しておきましょう。本記事では、ものづくり補助金の条件や対象となる事業、そして補助率や申請スケジュール等についてわかりやすく紹介していきます。

▼11月1日更新
令和6年10月30日に行われた「新しい資本主義実現会議」で、石破総理は総合経済対策を見据え、特に加速して取り組むべき重点施策を取りまとめました。中でも注目されるのは「中小企業生産性革命推進事業」の強化で、この事業にはものづくり補助金も含まれます。中小企業が生産性向上やデジタル化(DX)を進められるよう、今後政府が支援を加速する方針です。

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この記事の目次

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ものづくり補助金とは

正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業」で、中小企業等が行う、革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援する事業であり、令和5年度補正予算における「中小企業生産性革命推進事業」の事業の一つです。ものづくり補助金では、雇用の多くを占める中小企業の生産性向上、持続的な賃上げに向けて、新製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な設備投資等を支援します。

※ものづくり補助金の16次公募までについては以下のページで内容をご確認ください。

ものづくり補助金は個人事業主でも申請可能!?申請方法や採択ポイントとは

令和5年度補正予算 中小企業生産性革命推進事業とは


出典:令和5年度補正予算案の事業概要(PR資料)

中小企業生産性革命推進事業は、中小企業や小規模事業者が直面する多様な課題への対応を支援するための制度です。この事業の主な目的は、企業が生産性を高めるための設備投資、IT導入、国内外市場への販路拡大、並びに事業のスムーズな承継や引継ぎを行うための活動に対する補助を提供することにあります。これにより、企業が経営環境の変化に柔軟に適応できるよう支援することを目指しています。令和5年度の補正予算では2000億円を計上しています。

中小企業生産性革命推進事業で実施する補助金は、ものづくり補助金を含め、以下の4つです。

1.ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業(ものづくり補助金)
2.小規模事業者持続的発展支援事業(持続化補助金)
3.サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金)
4.事業承継・引継ぎ支援事業(事業承継・引継ぎ補助金)

ものづくり補助金の補助金額について

申請類型補助上限額補助率
省力化(オーダーメイド)枠750万円〜8000万円(1000万円〜1億円)中小:1/2、小規模・再生:2/3
※1500万円を超える部分は1/3
製品・サービス高付加価値枠通常類型750万円〜1250万円(850万円〜2250万円)中小:1/2、小規模・再生:2/3
※新型コロナ回復加速特例は2/3
成長分野進出類型
(DX・GX)
1000万円〜2500万円(1100万円〜3500万円)2/3
グローバル枠3000万円
(3100万円〜4000万円)
中小:1/2、小規模:2/3

()内の金額は特例適用時の上限額となります。

ものづくり補助金の変更点とは

令和6(2024)年ものづくり補助金の注目すべき変更点をまとめました。

「省力化(オーダーメイド)枠」の新設と補助上限額の引き上げ

「省力化(オーダーメイド)枠」は、中小企業や小規模事業者が人手不足の解消や生産プロセスの効率化に向けた取り組みを強力に支援するためのものです。

この枠組みでは、各事業者の個別のニーズに応じた省力化投資に対して、従来よりも大幅に高い補助上限額が設定されています。これにより、企業はより効率的な運営と成長を図ることができます。

「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の整理統合と、成長分野への重点支援

これまでの補助枠を見直し、「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」に整理統合されました。これにより、補助金の適用範囲と目的がより明確化されています。特にDXやGXなどの成長が期待される分野への支援が強化されており、これらの分野は通常よりも高い補助上限額と補助率が設定されています。

口頭審査の実施

新たな取り組みとして、補助申請額が特定の規模を超える事業者を対象に、口頭審査が実施されます。

口頭審査は交付候補者の決定前にオンラインで行われます。審査では、補助金の申請に関連する様々な側面について質問がなされる可能性があります。これには、申請に至った意思決定の背景や、事業実施に先立って行われたマーケティングの調査など、計画書に記載されていない情報も含まれることがあります。

大幅賃上げに係る補助上限額引き上げ特例の拡充

さらに、持続的な賃上げを実現するため、大幅な賃上げに取り組む事業者を対象とした特例が設けられています。従業員の規模に応じて、補助上限額を100万円~2000万円まで引き上げます。

特例における各枠の補助上限引き上げ額は以下のとおりです。

従業員数 省力化枠 製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠
5人以下 250万円 100万円
6~20人 500万円 250万円
21~50人 1000万円 1000万円
51~99人 1500万円 1000万円
100人以上 2000万円 1000万円

ここからは、それぞれの枠について紹介します。

省力化(オーダーメイド)枠

省力化(オーダーメイド)枠は、人手不足の問題を解決し、生産プロセスやサービス提供方法の効率化および高度化を目指す取り組みを支援するための制度です。補助上限は、通常750万円~8000万円ですが、賃上げを大幅に実施する事業者は最大1億円まで補助を受けることができます。補助率は、中小企業が最大で1/2、小規模事業者が2/3です。

従業員規模補助上限額補助率
5人以下750万円以内(1000万円以内)中小 1/2
小規模・再生 2/3
以内
※1500万円を超える部分は1/3
6〜20人1500万円以内(2000万円以内)
21〜50人3000万円以内(4000万円以内)
51〜99人5000万円以内(6500万円以内)
100人以上8000万円以内(1億円以内)

※()内は大幅賃上げにかかる補助上限額引き上げの特例を適用した場合
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)

この枠では、デジタル技術を活用した専用設備やシステムの導入に必要な投資を支援します。デジタル技術には、人工知能(AI)、ロボット、センサーなどが含まれます。

制度の特徴として、単にロボットなどを導入するのではなく、外部のシステムインテグレータ(SIer)と連携して、ロボットシステムなどを組み込んだ全体的なソリューションを構築することが求められます。

活用イメージとしては、例えば、熟練技術者が手作業で行っていた組立工程に、システムインテグレータと共同で開発したAIや画像判別技術を用いた自動組立ロボットを導入することが挙げられます。このような導入により、工程の完全自動化や24時間操業が実現し、生産性が大幅に向上します。また、熟練技術者は、単純作業から解放され、より付加価値の高い業務に専念することが可能になります。

サービス高付加価値化枠 通常類型、成長分野進出類型(DX・GX)

サービス高付加価値化枠では、2種類の類型が設けられています。通常類型は、750万円~1250万円の補助上限が設定され、大幅賃上げ特例を適用した場合は、850万円~2250万円になります。補助率は中小企業は1/2(新型コロナ回復加速化特例の場合は2/3)、小規模事業者や再生事業者は2/3となります。

従業員規模補助上限額補助率
5人以下750万円以内(850万円以内)中小 1/2
小規模・再生 2/3
新型コロナ回復加速化特例 2/3
以内
6〜20人1000万円以内(1250万円以内)
21人以上1250万円以内(2250万円以内)

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)

通常類型は、革新的な製品やサービスを開発するために必要な設備やシステムの投資を支援する制度です。活用イメージとしては、最新の複合加工機を導入することなどが挙げられます。このような先進的な設備を利用することで、精密加工が可能となり、国際基準に準拠した高品質の部品を開発することができます。これにより、製品の質を向上させると同時に、新たな市場ニーズに応えることが可能になります。

いっぽう、成長分野進出類型は、特に今後成長が見込まれる分野であるデジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)に関連する革新的な製品やサービスの開発を支援する型です。補助上限は1000万円~2500万円で、大幅賃上げ特例適用で1100万円~3500万円になります。補助率は2/3です。

従業員規模補助上限額補助率
5人以下1000万円以内(1100万円以内)2/3
以内
6〜20人1500万円以内(1750万円以内)
21人以上2500万円以内(3500万円以内)

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)

この類型では、新たな価値を顧客に提供する目的で、自社の技術力を活かして製品やサービスを開発するために必要な設備やシステムの導入に対する投資を支援します。

ただし、この制度では単に設備やシステムを導入するだけでは不十分で、実際に新しい製品やサービスの開発が伴う必要があります。つまり、技術的な革新だけでなく、市場における新しい価値の創出が求められます。活用イメージとして、AIやセンサーなどを活用した高精度な自律走行搬送ロボットの試作機の開発などが挙げられます。

グローバル枠

グローバル枠は、海外市場での事業活動を通じて国内の生産性を高める取り組みを支援する制度です。この枠において、補助が提供されるのは、海外直接投資、輸出、インバウンド市場へのサービス提供、または海外企業との共同事業など、国際的な事業展開に関連する設備やシステムの投資です。補助上限は3000万円、大幅賃上げ特例で3100万円~4000万円となっており、こちらも中小企業が1/2、小規模事業者が2/3の補助率で利用可能です。

補助上限額補助率
3000万円以内(4000万円以内) 1/2以内
小規模 2/3以内

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金について(Ver.1.0)

ものづくり補助金の要件は?何に利用できる?

ものづくり補助金の基本要件は、以下の要件を全て満たす3~5年の事業計画を策定することです。

・事業計画期間中、給与総額を年率平均1.5%以上増加させる
・同期間中、事業場内の最低賃金を地域別最低賃金より毎年30円以上高く設定する
・同期間中、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させる

これに追加して、枠ごとの要件が設けられています。

省力化(オーダーメイド)枠の要件・対象経費

省力化(オーダーメイド)枠の要件
①3~5年の事業計画期間内に、補助事業において、設備投資前と比較して労働生産性が2倍以上となる事業計画を策定する
②同期間内で投資回収が可能な事業計画を策定する
③外部SIerを活用する場合、保守・メンテナンス契約をSIerと締結し、適切な体制を整備する(※)
④金融機関からの資金調達を予定している場合、事業計画の確認と確認書の提出が必要

(※)外部SIerを活用する場合、保守・メンテナンス契約を締結することが要件となっていますが、利用するシステムに外部のSIerを活用することは必須ではありません。SIerでなくてもロボット・装置・工作機械等を組み合わせたシステムの構築ができる方が事業実施体制の中にいれば問題ありません。

【省力化(オーダーメイド)枠の対象経費】

  • 機械装置・システム構築費(必須)
  • 運搬費
  • 技術導入費
  • 知的財産権等関連経費
  • 外注費
  • 専門家経費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費

製品・サービス高付加価値化枠の要件

製品・サービス高付加価値化枠には、革新的な製品・サービス開発のための「通常類型」と、デジタル変革(DX)やグリーン変革(GX)などの成長分野への進出を目指す「成長分野進出類型」の2つがあります。ものづくり補助金の基本要件に加えた追加要件は以下のとおりです。

通常類型・成長分野進出類型(DX・GX)共通の要件
・3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定する
・金融機関からの資金調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認と確認書の提出が必要
成長分野進出類型(DX・GX)のみ
【DX】DXに資する革新的な製品・サービスの開発(AIやIoTなどのデジタル技術を活用した遠隔操作や自動制御の機能を持つ製品やサービス)であること
【GX】グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する革新的な製品・サー
ビスの開発であること

▼補助率が2/3に引上げられる特例の要件

新型コロナ回復加速化特例※通常類型のみ
以下の全ての要件に該当するものであること。

①常時使用する従業員がいる
②2022年10月から2023年8月の間、3か月以上、従業員の10%以上を地域別最低賃金+50円以内の賃金で雇用
③補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点で、給与総額が1.5%以上増加
④同時点で事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上

※③と④の要件が未達成の場合、補助率の引き上げ分を返還。この特例を利用する場合、賃金上昇に関する補助金上限額の引き上げは適用されません。

グローバル枠の要件・対象経費

グローバル枠は、新商品・サービスの開発改良、ブランディングや、新規販路開拓等の取組みを目的とする事業であり、事前にマーケティング調査(実現可能性調査)を実施し、その結果に基づく開発改良、ブランディング等を行うことが必要です。本申請類枠では海外事業を実施し、国内の生産性を高める取組みに必要な設備・システム投資等を支援します。

ものづくり補助金の基本要件に加えた追加要件は以下のとおりです。

グローバル枠の要件
・金融機関からの資金調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認と確認書の提出が必要

・海外事業に関する実現可能性調査を実施していること

・社内に海外事業の専門人材を有することまたは海外事業に関する外部専門家と連携すること

・以下①~④の事業のいずれかに該当するものであること
①海外への直接投資に関する事業で、以下を満たすもの
1. 国内本社が主体で、補助経費の半分以上が海外事業に関連すること、2. 国内外の事業が連動した設備投資の実施、3. 海外子会社の詳細資料の提出、4. 実績報告時の契約書と事業報告書の提出

②海外市場開拓(輸出)に関する事業で、以下を満たすもの
1.主な販売先が海外顧客であること、2.事前の市場調査を基にした計画を有すること、3.想定顧客の試作品評価報告書の提出

③インバウンド対応に関する事業で、以下を満たすもの
国内で製品・サービスを提供し、販売先の半数以上が訪日外国人、売上が補助額を上回る事業であること、インバウンド市場調査報告書の提出とプロトタイプの検証報告が必要

④海外企業との共同で行う事業で、以下を満たすもの
1.国内で外国法人と共同で行う研究や事業開発のための設備投資が対象。成果物の権利は補助事業者に帰属する、2.応募時に共同研究や業務提携契約書を提出、3.実績報告時に契約進捗報告書が必要

【グローバル枠の対象経費】
ものづくり補助金では、グローバル枠のうち、②海外市場開拓(輸出)に関する事業のみ、対象となる経費に以下の3つが追加されます。

  • 海外旅費
  • 通訳・翻訳費
  • 広告宣伝・販売促進費

ものづくり補助金の補助対象経費の全体像はこちらも参照してください。

出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版

大幅賃上げに係る上限額引上の要件とは

大幅な賃上げに取り組む事業者は、申請枠の補助金額の上限額に達していても、要件を満たした場合に上限額を引き上げることができます。

▼大幅賃上げに係る上限額引上げの要件

大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例
以下の全ての要件に該当するものであること。

①事業計画期間中、給与支給総額を基本要件の年平均成長率1.5%以上に加え、更に年平均成長率4.5%以上(合計で年平均成長率6%以上)増加させる
②事業計画期間中、事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+50円以上にし、さらに毎年、年額+50円以上増額する
③応募時に、上記1と2の目標達成に向けた具体的かつ詳細な事業計画を提出する

参考:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進事業公募要領(18次締切分)1.0版

ものづくり補助金のスケジュール


引用:https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r5/r5_mono.pdf

令和5年度の補正予算に基づく公募は2回程度実施される予定です(17次、18次)。補助事業実施期間は、いずれの公募回においても令和6(2024)年12月10日までとなります。

【18次公募:終了】
令和6年1月31日(木)公募開始

【電子申請受付】
令和6年3月11日(月)17:00~

【申請締切】
令和6年3月27日(水)17:00まで【厳守】
採択発表は、6月下旬頃を予定しています。

※公募受付期間の延長について
18次の締切が、令和6年能登半島地震で被害を受けた中小企業・小規模事業者向けに令和6年5月9日まで延長されました。対象は新潟県、富山県、石川県、福井県の事業者で、被災証明書の提出が必要です。延長期間の電子申請受付は4月1日から開始されます。

ものづくり補助金 19次公募は?

以下は、令和2年から令和6年までの各締切日を年次ごとに整理したものです。

回数 締切日
1次締切 令和2(2020)年3月31日
2次締切 令和2年5月20日
3次締切 令和2年8月3日
4次締切 令和2年12月18日
5次締切 令和3(2021)年2月22日
6次締切 令和3年5月13日
7次締切 令和3年8月17日
8次締切 令和3年11月11日
9次締切 令和4(2022)年2月8日
10次締切 令和4年5月12日
11次締切 令和4年8月18日
12次締切 令和4年10月24日
13次締切 令和4年12月22日
14次締切 令和5(2023)年4月19日
15次締切 令和5年7月28日
16次締切 令和5年11月7日
17次締切 令和6(2024)年3月1日
18次締切 令和6年3月27日

ものづくり補助金の18次が3月27日に終了し(能登半島地震で被害を受けた事業者の締切は5月9日)、次回の公募スケジュールについて関心を寄せる方も多いかと思います。

これまでの公募スケジュールを見ると年間に複数回の締切が設定されており、もし令和6年度の申請が2回で終わりならば、例年より補助金の申請ができない期間が長くなることになります。ものづくり補助金が、中小企業・小規模事業者等の重要な成長支援の一つであることを考えると、19次公募の可能性を完全に否定することはできません。

そのため、関心を持っている方や申請を検討している方は、必要な書類をあらかじめ準備しておくことをお勧めします。公募が開始された際にすぐに対応できるよう、事前準備を進めておくと良いでしょう。申請受付開始から締切までが非常に短い公募になる可能性も考えられます。

ものづくり補助金は今後も行われる?

製造業を巡る現状と課題今後の政策の方向性(2024年5月製造産業局)によると、政府はこれまで、DX投資喚起策(DX税制、ものづくり補助金等)を中心に、製造業DXを進めてきました。今後は、これらの施策を補完する形で、イネーブラーの育成と、異なる業界や企業が共通の目的に向かって効率良く作業できるような共通基盤の整備を行うとしています。

出典:製造業を巡る現状と課題今後の政策の方向性

政策の方向性(案)によると、DX投資の喚起に関しては、引き続きものづくり補助金等を通して需要サイドを喚起していく方針です。

ものづくり補助金を利用して生産性を高めよう!

産業の生産性向上は、経済成長の鍵となる要素です。日本生産性本部が発表する生産性に関する統計・各種データから製造業の労働生産性の推移についてみてみると、月ごとの労働生産性指数は、大きな変動が見られます。

例えば、2020年を100とすると、2022年3月の指数は118.2とピークを記録し、続く4月には98.2と大きく落ち込みました。このような波は続き、2023年には一定の回復が見られるものの、全体的に安定性に欠ける傾向があります。2024年初頭のデータもこれを反映しており、2月の97.0という低さから3月には110.7まで回復しています。しかし、この回復にも関わらず、2023年3月から2024年3月の間には、前年同月比で-4.6%の減少が見られました。

このようなデータから、製造業の生産性が短期的に大きな波を経験していることが読み取れます。これは、原材料の価格変動、世界経済の影響、国内外の政治経済情勢の不確実性など、多岐にわたる要因によるものである可能性が高いです。結果として、企業は生産プロセスの効率化やDX化、コスト管理に対する一層の注力が求められる状況にあり、持続可能な成長を目指すためには、革新的な技術の導入が不可欠です。

変動する市場環境の中で、競争力を維持し持続的な成長を確保するためには、補助金を活用した投資が効果的です。特に、最新の自動化技術やエネルギー効率の高い設備への更新は、生産性を高めると同時にコスト削減にも寄与します。ものづくり補助金を利用して技術革新を行うことで、企業は短期的な市場の波に左右されずに、長期的な競争力を確保することが可能になるでしょう。

ものづくり補助金の申請方法

以下、ものづくり補助金の申請にあたり、確認すべき点をまとめました。

1. GビズIDの取得
申請にはGビズID(アカウント)の取得が必要です。GビズIDプライムアカウントの発行に時間がかかるため、早めに準備しましょう。

2.申請準備と添付書類
「参考様式」を参照し、必要な入力項目を確認してください。また、書類の添付は指定されたファイル名で行うようにします。

3.電子申請
電子申請システムでは、電子申請マニュアルに従って、入力漏れや誤りがないよう、申請を行ってください。

4.事業計画書の作成について
公募要領の「6-1書面審査」の審査項目を参考に、事業計画書を作成します。事業計画書はPDF形式で電子申請システムに添付し、A4サイズで10ページ以内にまとめてください。

5.外部支援の明記
認定経営革新等の外部支援を受けている場合、事業計画書に支援者の名称、報酬、契約期間を記載する必要があります。これらの情報が記載されていない場合、申請は不採択や採択取消し、補助金の返還、不正内容の公表などの処置がとられる可能性があります。

ものづくり補助金の提出書類

申請に必要な書類は以下のとおりです。システムに直接入力または書類を添付して提出します。

提出物 提出対象者
法人番号、代表者氏名、本社所在地、株主等一覧などの事業者情報 全事業者
経費明細
事業計画名、事業計画書の概要
事業計画書
事業計画書算出根拠
補助経費に関する誓約書
賃金引上げ計画の誓約書
決算書等
従業員数の確認書類
労働者名簿
再生事業者 要件該当者
大幅な賃上げ計画書 大幅賃上げ特例申請事業者のみ
金融機関による確認書 金融機関から借り入れを行う事業者のみ
加点にかかるエビデンス 加点申請事業者のみ

ものづくり補助金で採択されるためのポイント

ものづくり補助金の申請を成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。これらの点を考慮することによって、採択の可能性を高めることができるでしょう。

事業計画書を書く時の注意点

【審査項目を重視】
事業計画書は、公募要領に記載された審査項目を満たすことが重要です。これには、技術面での製品やサービスの革新性、事業化面での事業化手法や市場性の具体性、および政策面での地域経済への貢献や国の政策への適合性などが含まれます。

【加点項目を確認】
ものづくり補助金には、年度によって異なる加点項目が設けられています。過去の例として、経営革新計画の承認や事業継続力強化計画の認定などが加点項目とされていました。加点条件を満たすことで、採択される可能性が高まりますので、事業計画作成時にこれらの項目についても確認しましょう。

事業計画書の作成時間はどのくらい?

「ものづくり補助金」のデータポータル内には、事業計画書の作成時間に関するデータが掲載されています。これにより、申請者がどの程度の時間をかけて計画書を作成しているかがわかります。

ものづくり補助金の13次~16次締切における作成時間の傾向を見ると、30時間以内で事業計画書を作成するケースがどの回でも最も多くなっています。しかし、30時間以内の採択率は47.4%と、他の時間帯に比べて決して高いわけではありません。これは、多くの申請者が短期間で計画を作成しているために、内容の精緻さや質が不足する可能性を示唆しています。適切な時間配分と計画の質が重要であり、特に40~120時間以内での計画作成が有利と考えられます。

出典:ものづくり補助金総合サイト データポータル

40~120時間の範囲でさらに詳細に見ると、50時間以内(採択率51.4%)と120時間以内(採択率54.1%)が最も高い採択率を示しています。特に、40~50時間の計画作成はバランスが良く、質と効率の両立が図られやすいと考えられます。一方、70~90時間帯では採択率が50.1%や51.4%とやや落ち着くため、作成時間が多すぎても採択率が伸び悩む傾向が見られます。

つまり、40~50時間の投入が効果的な準備時間といえ、効率的かつ質の高い計画作成が鍵となるということがデータから読み取れます。

審査項目の要件

具体的な審査項目を確認しましょう。

(1)補助対象事業としての適格性
申請される事業が公募要領に定められた基準を満たしているかが重要視されます。これには、補助対象となる事業の種類、対象となる事業者、必要な申請要件、補助の申請枠、そして補助率などが含まれます。加えて、申請される事業計画が3年から5年の期間内に「付加価値額」の年平均成長率を3%以上達成するなど、中長期的な成長目標を持っているかも評価の対象となります。

(2)技術面
「技術面」に関する審査項目は、以下のようにまとめられます。

【製品やサービスの革新性の評価】
製品やサービスの開発がどれだけ革新的か、また課題解決の方法が明確かつ具体的であるかが重要な評価基準です。一般的に普及している技術のみの導入や、技術革新性が低い事業は、低評価を受ける傾向にあります。

【省力化(オーダーメイド)枠の特別考慮】
特に省力化枠では、以下の二点が重視されます。

①システム開発: 既存のパッケージシステムを基に顧客のニーズに合わせたカスタマイズを行うか、あるいはゼロからのオーダーメイド開発が行われているか。
②効率化・高度化の取り組み: 人手不足解消のためのデジタル技術等を活用した専用設備の導入、革新的な生産プロセスやサービス提供方法の改善に向けた設備・システム投資が行われているか。

これらのポイントは、補助金を申請する事業計画の技術面における革新性や実用性を評価するために用いられます。特にオーダーメイド枠では、カスタマイズされたシステム開発や生産プロセスの高度化に焦点が当てられます。

(3)事業化面
「事業化面」に関する部分では、提出された事業計画の具体性と実行可能性に焦点を当てて評価が行われます。この審査では、計画されている事業の方法とスケジュールがどれだけ具体的であるか、また提案された製品やサービスが市場に受け入れられる可能性があるかを検討します。さらに、提案された事業が企業の収益性や生産性を向上させるかどうかも重要な評価基準となります。

(4)政策面
「政策面」に関しては、提出された事業計画が地域社会にどのような影響をもたらし、国の経済成長にどのように貢献するかが考慮されます。

(5)大幅な賃上げに取り組むための事業計画の妥当性
この審査では、賃上げ計画の具体性と持続可能性が重点的に評価されます。「様式4」に基づき、賃上げ内容の明確さと算出根拠の妥当性が検証されます。一時的な賃上げではなく、利益の増加を継続的に人件費に充当する計画の存在、設備投資等にも適切に資金を分配して企業成長を目指す取り組みが求められます。また、従業員のスキルアップとキャリア開発への取り組み、人事評価システムの導入、体制面と営業面の強化も評価対象となります。

加点・減点項目

中長期的な経済や社会構造の変化に適応し、自己変革を続ける事業者には、特定の取り組みに対して加点があります。(成長性加点、政策加点、賃上げ加点、賃上げ加点等)事業者は最大6項目まで加点申請が可能で、加点を受けるためにはエビデンスとなる添付書類の提出が求められます。加点項目は審査を経て、要件を満たした場合にのみ加点されます。

減点項目には主に二つの要素が含まれます。第一に、過去3年以内に同様の補助金で一度交付決定を受けている事業者には減点が適用され、2回以上の交付を受けている場合は申請資格が失われます。第二に、令和元年度補正予算のものづくり補助金以降に交付を受けた事業者で、収益納付を行っていない場合も減点対象です。ただし、十分な賃上げによる公益貢献で収益納付が免除された場合はこの規定が適用されません。

ものづくり補助金 採択結果

締切回 採択発表日 申請者数 採択者数 採択率
1次 令和2年4月28日 2,287 1,429 62.4%
2次 令和2年6月30日 5,721 3,267 57.1%
3次 令和2年9月25日 6,923 2,637 38.0%
4次一般型 令和3年2月18日 10,041 3,132 31.1%
4次グローバル展開型 令和3年2月18日 271 46 16.9%
5次一般型 令和3年3月31日 5,139 2,291 44.5%
5次グローバル展開型 令和3年3月31日 160 46 28.7%
6次一般型 令和3年6月29日 4,875 2,326 47.7%
6次グローバル展開型 令和3年6月29日 105 36 34.2%
7次一般型 令和3年9月27日 5,414 2,729 50.4%
7次グローバル展開型 令和3年9月27日 93 39 41.9%
8次一般型 令和4年1月12日 4,584 2,753 60.0%
8次グローバル展開型 令和4年1月12日 69 27 39.1%
9次一般型 令和4年3月25日 3,552 2,223 62.5%
9次グローバル展開型 令和4年3月25日 61 24 39.3%
10次一般型 令和4年7月15日 4,224 2,584 61.1%
10次グローバル展開型 令和4年7月15日 70 28 40.0%
11次一般型 令和4年10月20日 4,668 2,786 59.6%
11次グローバル展開型 令和4年10月20日 76 31 40.7%
12次一般型 令和4年12月16日 3,200 1,885 58.9%
12次グローバル展開型 令和4年12月16日 56 22 39.2%
13次一般型 令和5年2月20日 3,261 1,903 58.3%
13次グローバル展開型 令和5年2月20日 61 24 39.3%
14次 令和5年6月23日 4,865 2,470 50.7%
15次 令和5年9月29日 5,694 2,861 50.2%
16次 令和6年1月19日 5,608 2,738 48.8%
17次 令和6年5月20日 629 185 29.4%
18次 省力化枠 令和6年6月25日 599 204 34.0%
18次 製品・サービス高付加価値化枠(通常類型) 令和6年6月25日 3,591 1,384 38.5%
18次 製品・サービス高付加価値化枠(成長分野進出類型(DX・GX)) 令和6年6月25日 1,424 443 31.1%
18次 グローバル枠 令和6年6月25日 163 39 23.9%

ものづくり補助金の公募ごとの採択率には大きな変動が見られます。初期の公募では採択率が比較的高く、特に1次で62.4%に達していますが、4次での一般型は31.1%と大きく低下しました。
一方、グローバル展開型は採択率が全体的に低く、大きく変動することなく、一般型に比べて低い傾向が続いています。

【18次採択結果について】
新しい枠の公募が行われた18次では、革新的な製品・サービス開発に必要な設備・システム投資等を支援する「製品・サービス高付加価値化枠(通常類型)」の申請者数が最も多く、採択率も他の枠より高めになりました。グローバル枠は特定の事業を実施する企業に限定されるため、申請者数が最も少なく、採択率も低めになっています。

まとめ

経済産業省は、ものづくり補助金の目標として、事業終了後3年で付加価値額が9%以上向上する事業者の割合を50%に設定し、さらに、事業化を達成した事業者が5年後には給与支給総額を年平均で1.5%以上増加させることを目指しています。これらの目標は、国内外の競争力を強化し、日本のものづくり産業の持続可能な成長を促進するために設けられました。

ものづくり補助金を通じて、省力化、DX、GX、そして海外市場への展開など、生産性の向上を目指す多様な取り組みが支援されます。新しい枠組みのものづくり補助金は、企業が現代の課題に対応し、革新的な製品やサービスを市場に送り出すための重要な推進力となるでしょう。

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