令和5年4月19日より、生産性向上のための革新的サービス開発等に積極的な中小企業・小規模事業者等を支援する「ものづくり補助金」15次締切分の公募が開始されました。本補助金の中で、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組もうとする事業者へ補助金を交付する申請枠が「デジタル枠」です。
この記事では、デジタル枠の申請要件や補助上限額について詳しく解説します。今後働き方改革やインボイス等の制度変更に直面していく中で、DX推進により生産性向上を図りたい対象事業者はぜひ参考にしてください。
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2023年ものづくり補助金
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この記事の目次
ものづくり補助金(デジタル枠)とは
デジタル枠では、下記の取組に必要な設備・システム投資等を支援します。
- DXに寄与する革新的な製品・サービス開発
- デジタル技術を活用した、生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上
ものづくり補助金(デジタル枠)の補助上限額・補助率
【補助金額】
デジタル枠の補助金額は以下のとおりです。
従業員数 | 補助金額 |
5人以下 | 100万円~750万円 |
6~20人 | 100万円~1,000万円 |
21人以上 | 100万円~1,250万円 |
【補助率】
2/3
ものづくり補助金(デジタル枠)の補助対象者
下記①~⑤のいずれかに該当することが条件です。
①中小企業者(組合関連以外)
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(15次締切分)
②中小企業者(組合・法人関連)
※財団法人、社団法人、医療法人、法人格のない任意団体は対象外とします。
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(15次締切分)
③特定事業者の一部
出典:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領(15次締切分)
④特定非営利活動法人
⑤社会福祉法人
基本要件
事業計画期間で下記の基準を全て満たす3~5年の事業計画を策定します。
- 給与支給総額を年率平均1.5%以上増加させる。(被用者保険の適用拡大である中小企業が、制度改革に先立ち任意適用を行う場合は、年率平均1%以上増加とします)
- 事業場内最低賃金について、地域別最低賃金+30円以上の水準で毎年行う。
- 事業者全体の付加価値額について、年率平均3%以上増加させる。
下記に同意の上、事業計画を策定・実行する必要があります。
- 申請時点において、申請要件に沿った賃金引上げ計画を策定していることが求められます。交付後に策定していないことが判明した場合は、補助金額を返還する必要があります。
- 補助金等の返還額合計は、財産処分や収益納付等を含めた上で、補助金交付額を上限とします。
- 再生事業者は、各目標が達成できていなくても返還は免除となります。
給与支給総額の増加目標が未達の場合
補助事業完了後の翌年度以降、事業計画終了時点で給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標が未達の場合は、補助金額に対応する分の返還が求められます。(導入した設備等の簿価もしくは時価のいずれか低い額)なお、付加価値額が目標に届かなかった場合、給与支給総額の目標達成を要求するのは困難なため、下記のケースでは補助金の一部返還を求めません。
①給与支給総額の年率増加率平均が「付加価値額の年率増加率平均/2」を超過している。
②事業者の責任とみなされない理由(天災など)がある。
※給与支給総額の適用が不相応とみなされる特別な事情がある場合は、給与支給総額増加率の代わりに、一人当たり賃金の増加率を用いることが認められます。
デジタル枠の要件
デジタル枠の、基本要件に加えた追加要件は以下の3つです。
基本要件に加えた追加要件 |
(1)次の①もしくは②の要件を満たす事業である。 ①DXに寄与する革新的な製品・サービスの開発 例:AI・IoT、センサー、デジタル技術等の活用による、遠隔操作・自動制御・プロセスの可視化等の機能を備えた製品・サービス(部品やソフトウェア開発を含みます)の開発 ②デジタル技術の活用による生産プロセス・サービス提供方法の改善 例:AIやロボットシステムの導入を活かしたプロセス改善、複数の店舗・施設にサービスを提供するオペレーションセンターの構築等 ※既存の業務フローの見直しを伴わないものや、導入先企業で電子化にとどまるだけの製品・サービス開発は含まれません。 |
(2)経済産業省が公開しているDX推進指標を活用し、自己診断を実施(DX推進に向けた現状や課題への認識を共有する等)することに加え、自己診断結果を応募締切日までに独立行政法人情報処理推進機構(IPA)へ提出している。 |
(3)応募申請時点で、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が行う「SECURITY ACTION」の「★一つ星」もしくは「★★二つ星」のいずれかの宣言を実施している。 |
【申請要件】
同一法人・事業者による応募は1申請に限りとします。申請後の申請枠・類型の変更は不可です。
【実施場所】
補助事業の実施場所(工場や店舗等)を保有している必要があります。
※申請時点で建設中の場合、もしくは土地のみを保有して建設予定である場合は対象外です。
【その他要件】
下記に該当しない事業であることとします。
- 本公募要領に不相応な事業である。
- 事業の主な課題解決そのものを、他社へ外注・委託する内容である。
- 試作品等の製造・開発の主なセクションを他社へ委託し、企画だけを進める。
- 事業を実施する上で実質的に労働が付随しない、もしくは資産運用的性格が強い。
- 購入した設備を自ら占有し、事業用に利用せず特定の第三者に長期間賃貸させる。
- 公序良俗に反している。
- 風俗営業等の規制や、業務の適正化等に関する法律で定められている。
- 補助対象経費の各区分等の上限設定を超過する補助金を計上している。
- その他申請要件に該当しない。
デジタル枠の対象経費
補助対象経費は、本事業の対象として明確に区分でき、また必要性や金額の妥当性を証拠書類で確実に証明できる以下の経費です。
〈補助対象経費〉
- 機械装置・システム構築費
- 技術導入費
- 専門家経費
- 運搬費
- クラウドサービス利用費
- 原材料費
- 外注費
- 知的財産権等関連経費
〈補助対象外経費〉
- 補助事業期間中の販売が目的である製品、商品等の生産に関する機械装置・システム構築費以外の諸経費
- 工場建屋、構築物、簡易建物(ビニールハウス、コンテナ、ドームハウス等)の取得費用、並びにこれらを製作するための組み立て用部材の取得費用
- 再生エネルギーの発電を実施するための発電設備、並びに当該設備と一体不可分の附属設備
- 設置場所の整備工事や基礎工事に必要な費用
- 事務所等に関する家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
- 電話代やインターネット利用料金等の通信費(クラウドサービス利用費に含まれる付帯経費は除きます)
- 商品券等の金券
- 事務用品等の消耗品代、雑誌購読料、新聞代、団体等の会費
- 飲食、奢侈、娯楽、接待等の費用
- 不動産購入費、車両購入費・修理費・車検費用 等
なお、対象経費は「通常枠」と同じです。補助対象経費の詳細はこちらのリンクをご覧ください。
ものづくり補助金(デジタル枠)の申請スケジュール
【公募期間】
公募開始:令和5年4月19日(水)17時~
申請受付:令和5年5月12日(金)17時~
応募締切:令和5年7月28日(金)17時
※15次締切分の採択発表は、令和5年9月下旬頃に予定されています。
【申請方法】
電子申請(GビズID)のみで受け付けています。電子申請システム操作マニュアルに従い、内容を理解・確認して入力してください。なお、電子申請では、GビズIDプライムアカウントを取得する必要があります。未取得の方は利用登録を早めに済ませてください。
【必須の添付書類】
- 事業計画書
- 補助対象経費についての誓約書
- 賃金引上げ計画の誓約書
- 決算書等(個人事業主の場合は確定申告書等)
- 従業員数の確認資料
- 労働者名簿
- 再生事業者であることを証明できる書類(再生事業者のみ)
- 課税所得の状況が確認できる確定申告書類
- 大幅な賃上げ計画書(大幅な賃上げを実施する事業者のみ)
- その他任意の添付書類(経営革新計画承認書、履歴事項全部証明書もしくは開業届、事業継続力強化計画認定書、特定適用事業所該当通知書等)
デジタル枠の申請では、DXに寄与する革新的な製品・サービスの開発や、デジタル技術を活用した生産プロセス・サービス提供方法の改善等を実施する内容について、具体的かつ詳細に記載する必要があります。
まとめ
生産性が高い企業では、IT投資等への取組が積極的な傾向にあります。インボイスや社会保険の適用拡大など、今後相次ぐ制度変更の中で中小企業が生産性を向上させるには、DXの推進は避けて通れない課題でしょう。
DX推進をよりスムーズに実施したいとお考えの対象事業者は、ぜひものづくり補助金の「デジタル枠」の活用を検討してみてはいかがでしょうか。ただし、条件に満たない場合は補助金を返還する必要があるため、目標達成や返還義務などの条件を十分にご確認ください。